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≪観戦記≫

令和元年の夏、予選を勝ち上がった35名と本選シード選手を加えた48名で夏の関西協会の風物詩となったウェスタン・カップ決勝大会が開催されました。

今回、私が開始前から最も注目していたのは協会シード選手1番手、女流雀王の称号を手に入れ関西へ帰ってきた逢川恵夢。彼女は、8年前にプロテストの会場で初めて出会った同期の仲間である。まさか、この観戦記の主役になろうとは開始時には思いもしなかったのだが・・・。

さて、3回戦を終え48名から20名へと絞られた。13名もいた協会プロもたった4名となっていた。この4回戦序盤では、上位選手が苦しめられる展開となっていたが3連勝中の4年前の覇者でもあり本年度のプロアマシリーズ第1戦優勝の湯村さんが終始ラス目の展開から一転、逆転で4連勝を決め優勝に大きく近づいた。隣の卓では橋場が東1局で8万点オーバーのトップ目になっていたが、3回戦終了時2位の逢川が史上稀にみる大逆転を演じ10万点超のトップを奪い、湯村さんを逆転して首位に立つ。

8名で行われた5回戦は湯村さんと逢川の2人が大きく抜け出した状況であったが、別卓でどちらも3着に沈み、全員にチャンスが残った決勝戦を迎えることとなった。

決勝進出となったのは、上記2名に加え5回戦1卓からは夏月と橋場のアガった方がトップで決勝へ進めるオーラス、制したのは関西女流といえば私だ!と言わんばかりの気迫の夏月美勇。2卓からは混沌とした展開から6000オールを決めて豪快にトップをもぎ取った高橋さん。

決勝進出時のスコアは次の通りです。(以下敬称略)

東家 湯村(一般) 212.9
南家 高橋(一般) 162.5
西家 夏月(協会) 163.4
北家 逢川(協会) 251.9

簡単な優勝条件は、湯村はトップを取れば無条件、2着なら4者のポイント次第といったところ。高橋、夏月は湯村、逢川を上回る必要があるので条件は複雑で容易ではないが逢川とトップラスを決めれば現実的である。逢川はこれらを満たされないように終わればよいのでやや有利。4着の場合はかなりの確率で負けとなり、湯村トップは許されないので大きなアドバンテージがあるわけではない。

東1局から、逢川を追う3者のテンパイで火花が散る。
夏月
ドラ
8巡目に場に出る2枚目のをスルーするとすぐにドラを重ねる。
しかしまだアガりまでは遠そうだなと思っていたが、を引くと高橋からドラがツモ切られポン!

このときの高橋はすでに満貫のダマテンに構えていた。
ドラ

ドラポンが入ったところでツモ切りリーチといくが・・・
実はチートイツでテンパイ一番乗りだった親の湯村もそう簡単に降りることはない。

高橋のリーチ時点で1シャンテンだった夏月が連続でを引いてようやくテンパイを果たすと、リーチに対してほぼ通りそうなを掴んだ湯村の放銃となる。
ロン ポン ドラ

東2局、湯村、高橋から2600のロンアガリ。
東3局、先制リーチを打った逢川が湯村に追いかけられるも1000-2000ツモアガリ。
東4局、夏月、高橋から3200のロンアガリ。

とここまで大きな動きはなく4局で東場は終わり、逢川の点棒は減ることなく南入となる。
嵐の前の静けさの様に・・・。

ここからは、逢川以外の3者にとって簡単には落とすことのできない親番が続く。親対逢川の熾烈な戦いが続く。

南1局
湯村、筒子の多い配牌をもらい早々にをポンして一色手へと一直線。
8巡目に逢川にテンパイが入る。
ドラ
一番終わらせておきたい湯村の親を流す選択もあったが、待ちの優秀さと決定打となりうるチャンスなので果敢にリーチを宣言!

高橋、夏月は親の湯村と逢川の勝負に水を差さないように慎重にベタオリを開始。
12巡目にようやく、安全牌のを切らずに、ここまで無筋をツモ切り続けた湯村に待望の
テンパイが入るが・・・
ツモ ポン ドラ

これでは打点的に不服といった感じもあり、逢川の切り順はいたって普通の字牌からの切り出しで、なおかつこの仕掛けを見てポイント状況から愚形リーチの可能性は低い。となると、自体の危険度もかなり高い。

しかし受け入れは狭く、テンパイすら入らない可能性もあるのにこの決断には勇気がいっただろう。そして、16巡目には待望のを引き-待ちのチンイツテンパイ。
テンパイの同巡、の対子落としは明らかでチンイツテンパイの気配がムンムンとする中、逢川はをツモり強張った表情で河にそっと置く。
湯村もここまで健闘を見せたが、次巡に安目で打点こそ2000点ではあったが優勝が大きく後退する放銃となった。

ロン ドラ 裏ドラ

南2局
逢川が颯爽とをポンして、6巡目には絶好の4面待ちテンパイ。
ポン ドラ

ところが、この使いづらい待ち牌は5枚も山にいるのになかなか姿を現さず、夏月に激しく仕掛け返されトイトイドラ3のテンパイが入れられると、さらに親のリーチが飛んでくる。

夏月
ポン 加カン ドラ

高橋
ドラ

夏月はこの危険な状況で、湯村からの2枚目のをスルーして直撃を狙う。
これが、結果的に親の高橋のアガリとなり、逢川を3着へと引きずり下ろす。

高橋

ツモ ドラ 裏ドラ

南2局1本場
夏月の先制リーチが入るが、その同巡ここで親番のない湯村にチャンスが訪れる。
ツモ ドラ
を切ってダマテンに構えると、をポンした高橋から高めのが出て8000点を・・・
とはならずに軽快に見逃すと、次巡にツモ切りリーチといく。

この宣言牌を高橋が仕掛けて、テンパイ。さらに逢川にもテンパイが入り全員テンパイでのめくり合いが始まる!

南2局1本場 ドラ
高橋
チー ポン

夏月
(リーチ)

逢川


湯村
(リーチ)
湯村はリーチ後にも高橋から切られるをスルーして、見逃された高橋が夏月から1500は1800をアガり、なんとか親番をキープして望みをつなぐ。

南2局2本場でも夏月から2000は2600をアガり順調に加点していく。

南2局3本場
逢川がポン。
6巡目に-待ちテンパイが入るも、また簡単にはアガらせてもらえない。
9巡目に全くいらないを掴んだ湯村は手牌を崩してオリに回る。
そうこうしているうちに、夏月からまたしてもリーチが掛かる。

逢川が一発目に掴んだ牌は無筋の
安全牌は幸いにも4枚もあるが、ここは引かずにそのままツモ切る。
新人王を取ってから8年の時が経ち、多くの経験を積んできた逢川。8年前にこの場面に出くわしていたら同じ選択ができたかだろうか、できたとしても明確に意思をもって切ることはできなかっただろう。
次巡、待望のをツモり優勝がグッと近づく。

南3局
夏月の親番、何度目のテンパイだろうか、そしてこの半荘何度目のアガリ牌の見逃しだろうか。
ドラ
一度、二度、そして三度と放たれるを見逃し、残り1枚となったの逢川からの直撃かツモに祈りをこめる。

逢川、ハイテイのツモ番・・・、
ツモ ドラ
この満貫のツモアガりで半荘でもトップ目に立ち、逢川は優勝確率99.99%といったところか、3者にとっては絶望的な条件が突きつけられる。
この条件でこんなにも熱くなることがあるのだろうか、戦いは最後まで分からない。

条件を確認して、伏せれば優勝の逢川が親番なのでほぼ1局勝負のオーラスが始まった。
高橋はこの半荘2着目ながら、逢川の着順を落とすことが困難なため条件は役満以上の直撃。
さすがにこれを満たせるようなチャンスは来ず終戦。

しかし今日の戦いぶりは本当に素晴らしく、競技麻雀の大会にも多数出ておられその技術は決勝を戦った他の3人に決して引けを取るもではなかった。


湯村、三倍満以上の直撃か役満条件。
8巡目にしてこの形。
暗カン ドラ
残念ながら、テンパイすることはなかった。
協会のプロアマ混合戦には毎回と言っていいほど参戦していただき、結果も残してきた。今日は一歩届かなかったが、また決勝の舞台で見られる日もそう遠くはないかもしれない。


夏月、役満ツモか三倍満以上の直撃条件。
14巡目、バラバラの手牌はついに条件を満たす国士無双のテンパイ。
ツモ
逢川優勝の瞬間が刻一刻と迫っている中、夏月この半荘9度目となるテンパイは優勝へのテンパイである。

15巡目、
違う、これはもう持ってる。

16巡目、
違う、全然違う。

最終巡目、風牌!!
親指をズラすと、そこに書かれていた文字は「」・・・
近年関西出身の女流プロも結果を残すことが増えてきている。その中でも熱心に麻雀を研究して、多数の対局をこなしてきており次の関西女流の筆頭格へとのし上がって来ている。ポイント差は大きくとも優勝者との差は本当にわずかだった。

そして、逢川にようやく満面の笑みがこぼれる。
関西に戻ってきて、さっそく存在感をアピールする優勝となった。

8年の時を経て幼かったあの逢川は立派に成長していた。
その手組み、押し引き、何をとっても一流の雀士になったんだなあと、同期の仲間として感極まるものがあった。

逢川恵夢、優勝おめでとう!

逢川が一半荘目、僅差のオーラストップ目の親で伏せればトップなのに国士無双のテンパイを見せびらかしてトップをまくられかけたのは、本人の名誉のためにもこの観戦記を読んでくださったみなさんと私の秘密にしておこう。

                                                                             (文・新田 友一)

 


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