

最終ポイント成績
順位
|
名前 |
TOTAL
|
1回戦
|
2回戦
|
3回戦
|
4回戦
|
5回戦 |
1
|
麻生 ゆり |
76.6 |
-24.3 |
-47.3 |
53.6 |
4.1 |
90.5 |
2
|
山浩 |
67.3 |
12.1 |
59.5 |
12.6 |
-17.1 |
0.2 |
3
|
柴 卓司 |
59.5 |
57.0 |
10.2 |
-43.6 |
60.1 |
-24.2 |
4
|
田村 翔梧 |
-203.4 |
-44.8 |
-22.4 |
-22.6 |
-47.1 |
-66.5 |
≪決勝観戦記≫
この関西限定タイトルももう7回目!そろそろこの私も獲らねばな?と思い、昨年に引き続き予選を突破…
今年こそ決勝だと意気込んで本戦に行くものの、昨年同様またもやベスト8で敗退(涙)
そんな不甲斐ない私や他強豪選手達を超えて決勝に臨んだ選手たちを紹介したい。
麻生 ゆり(11期前期)
決勝に残った紅一点。C1リーグ所属。
私のイメージとしては攻撃守備とも基本的には素直な打ち手だが、時折見せる打点の爆発力の凄まじさが武器。
柴 卓司(11期後期)
なんとこのウエスタンチャンピオンシップ決勝は3回目。来期からB2リーグ。
昨年、白虎杯という関西のプロ限定の大会でも優勝。今まさに脂の乗った最盛期の選手だ。
田村 翔梧(12期前期)
一昨年の新人王を獲得。C1リーグ所属。私の知っている中ではもっとも麻雀に熱意を持つ男の一人だ。
柔軟な思考で場況読みに秀でている印象で、スピード、守備、打点のバランスがこの中では最も良いように思う。
山浩(12期前期)
C3リーグ所属。私がプロになった直後くらい(約8年前)にはもう競技麻雀の大会によく出ていたと記憶している。
元々はずっしりとした腰の重い打ち手だが、最近はスピード麻雀にも対応してきている。
こうして見てみると、全員10期以降の若手強者が揃った決勝。皆前に出ることが多いタイプで、派手な「斬り合い」が見られそうだ。
周りにそんな期待を持たせてくれる面子。さていよいよ決勝のスタートだ。
☆1回戦☆(柴→山浩→麻生→田村)
静かに進んでいく東1局。全員考えるのは、やはり初っ端は打点を作りトップを獲りに行くこと。
協会ルールはトップが偉い。誰も仕掛けず淡々と場は進む。そんな中で最初にテンパイを果たしたのは田村。
勿論迷うことなくリーチを打ち、一発でツモり上げる。
田村(北家)
            ツモ ドラ 裏ドラ
高めツモ、しかも裏ドラが乗りハネ満。田村としては思惑通りのトップスタート濃厚の嬉しい出だしだろう。
しかし、ここから予想以上の激しい争いが待っていようとは皆思ってもいなかっただろう。
東2局はハネ満親かぶりの柴がリーチを打つも、田村がピンフのみで流す。
東3局麻生の親。麻雀は親の先制リーチが間違いなく強い。
麻生もそれはよくわかっていて、何度私も準決勝で彼女の先制リーチに苦しめられたか…いや私の話はよい。
とにかく、麻生は9巡目、親の先制リーチを「さあ私に向かってこれるかしら?」と言わんばかりに打つ。
麻生(東家)
            ドラ
リーチのみだが、両面だしアガっても流局でも連荘。リーチを打たない理由は無し。唯一の懸念はドラが見えてないこと。
そのドラはいったいどこに…ドラを固めていたのは柴。リーチを受けてこの形。
柴(西家)
            ドラ
まだリャンシャンテンだが、是非物にしたい手だ。ラス目だし、少しくらいは押していきたい。
が、親リーに対抗するにも手はイマイチ。さてどうするのか…?
田村がリーチ宣言牌の をチー、タンヤオのみカン をテンパイして をリリース。
それを柴がチーして打 (1枚切れ)。無スジの を打ち戦闘体勢に入る。
だが、2巡後、柴が掴んだのは 。ツモ切って麻生に放銃。無情なことに裏ドラ表示牌は 。
麻生の手のヘッドである。ラス目からの踏んだり蹴ったりの7700だ。
1本場、麻生が2000の1本場をアガり、2本場・3本場もテンパイ流局。
トップ目の田村に追い縋っていく。
続く4本場、ようやく山浩が見せ場を作る。
15巡目の終盤、柴が2つ仕掛けてテンパイを入れているくらい。
そこでドラの を叩っ切り、見事に一発でハネ満をツモりあげる。
山浩(北家)
            ツモ ドラ 裏ドラ
山浩は自分で を2枚切っているのだが、12巡目に3枚目の を引き戻し、手に留めてカン を引き入れる。
そして を一発で引くという手順。一度は  の形から を切って打点に拘ったが、うまく柔軟に対応しアガり切った。
私はちょうど後ろでこれを見ていたが、さすがに舌を巻いた1局であった。
東場から凄く激しい点の取り合い。そこに参加できず点が減る一方の柴はさぞストレスフルだろう。
ネットだったらマウスを破壊するのを我慢しているところだ。そんなところにいきなり手が入ってくる。
東4局
柴(南家) 4巡目リーチ→10巡目和了
            ツモ ドラ 裏ドラ
南1局
柴(東家) 9巡目リーチ→11巡目和了
            ツモ ドラ 裏ドラ
満貫、親満連続ツモ。これで一気に3着浮上。なんというカオスな展開。
全員2万点台に戻るという拮抗した状態。全員のなんとしても自分がトップを獲ろうという意志がひしひしと伝わる。
南2局1本場は山浩が満貫ツモ、南2局2本場は田村が1300・2600をツモ。
誰も振り込まず、先制リーチをかけた者がツモで点数を奪い返していく。
緊張は続く。ここから突破口を見出し、突き抜けるのは誰なのか?
さて、ラス前。ジリ貧の麻生は最後の親番に賭けてストレートに手を進める。
しかし、そこに立ちはだかるのは先ほど息を吹き返してきた柴。7巡目に先制リーチ。
柴(西家)
            ドラ
愚形だが は1枚切れ。ドラは無くともリーチでツモって裏乗せればトップの可能性がグンとあがる。
手変わり待ちもさほど嬉しくないので私もさっさとリーチする。現代麻雀なら当然の選択肢だ。
焦りが見える麻生だが、同巡に待望のテンパイを果たす。
麻生(東家)
            ツモ ドラ
受け選択はドラの を切ってアガリ重視の 待ち。
一発目にドラを切るのは躊躇われるが、勝つなら勿論この一手である。
麻生は「当たり前でしょ?」といった面持ちだ。
状況は が1枚見えているくらい。こうなると麻生優勢だろう。
さあ、結果は?どちらに神が微笑んでくれるのか?
勝負が付いたのは3巡後。ピンズ染め手の田村がリーチの1巡後に柴がツモ切った のスジ、 を切る。
そして―――裏ドラ表示牌には 。裏2で田村手痛い8000の放銃。
オーラス…柴は無駄ヅモ無しで最速5巡目テンパイ、もちろんリーチ。
柴(南家)
            ドラ
まっすぐ行くしかない田村、345三色イーシャンテンの手で放った が捕らえられ、裏ドラ表示牌が 。
なんとラスまで落ちてしまう。開局ハネ満引きあがっての最高のスタートだったはずの田村は数々の裏ドラに殺されてしまった。
東場終わりまでダンラスだった柴が終わってみればトップ。まさに期待していたような「斬り合い」の半荘であった。
しかし、まだ1回戦。これからが本当の勝負である。
1回戦結果
柴 +57.0 山浩 +12.1 麻生 △24.3 田村 △44.8
☆2回戦☆(山浩→田村→麻生→柴)
東1局、親の山浩、7巡目手なり最速テンパイでリーチ。
山浩(東家)
            ドラ
高め三色。高めをツモって裏ドラを乗せたい手。
みんなオリてくれ!という山浩の心の声が聞こえてきそうだ。
しかし、そうは問屋が卸さない。柴がすぐに追っかけリーチを果敢に打つ。
柴(北家)
            ドラ
三色の同時性、なんて言葉があるが、打点のぶつけ合いが早くも起こる。
出アガリでもツモアガリでもいきなり点数が大きく動きそうだ。
田村、麻生はなすすべなくオリに回る。
結果、山浩が安めの を引き、2600オール。
1本場は麻生の13002600のツモアガリで山浩の連荘を許さない。
東2局、親の田村が1回戦ラスを取り戻すべく攻めたいところだが、柴が無情にも3巡目リーチ。
柴(西家)
            ドラ
この日、全体的に柴にはよく手が入っている印象だったが、私が観戦していてこの手はそれを最も象徴していた。
1回戦のオーラスもそうだが、「優勝者のツモ」を彷彿とさせる。
それに屈してはいられない他の3人。特に田村はビハインドを埋めなければならない。
11巡目、少し押しながら待望のテンパイを入れ、もちろん即リー!そして良形の柴リーチを潜り抜け、親満ツモ!
田村(東家)
            ツモ ドラ 裏ドラ
しかし、そこから抜け出すのを邪魔するかのように、続く1本場、山浩の5巡目ほぼノーヒントリーチ。
田村のそのリーチを受けたときの一発目の手牌。
田村(東家)
            ツモ ドラ
山浩の現物は今ツモってきた しかなく、ドラの さえ切ればすぐにでも三色をテンパイしそうな手広い手牌だ。
ここをチャンスと見たのか田村、 をさらりと切るが、これが山浩の 待ちに刺さってしまう。
ならリーチのみの凡手だが、ドラと一発がついて5200。今日は田村の選択と場がうまく噛みあってないようだ。
東3局も山浩が3900をアガリ、この半荘のトップを確定させようとする。
が、それを阻止するのが親の柴。ここぞとばかりに連荘。
東4局
柴(東家)
      リンシャンツモ ポン  加カン  ドラ 
東4局1本場
柴(東家)
            ロン ドラ 裏ドラ
トップの山浩に迫る柴。1回戦トップなので、連勝するとかなり優勢だ。
逆に言うと、他の3人は柴にだけは連勝を許してはならない。
東4局2本場、それを強く意識した麻生、田村。

麻生はマンズ染め気味の柴にきっちり絞り、田村はバックの手で柴の親を流そうと端がらみカンチャンから仕掛ける。
今にもテンパイしそうな柴のホンイツを寸手のところで阻止。ナイスコンビネーションである。
2人の目的意識がはっきりと確認できた、よいプレーだ。決勝に残ったのは伊達ではない。
南場に入ってもそれぞれの牽制は続く。
南1局は柴の1000・2000ツモ。南2局流局。1本場は麻生が田村から5200。
そして南3局、柴が親の麻生の第1打 をチー!そして、これは結構スゴいチーだ。
皆様も是非「全体牌譜」をご覧いただきたい。

ここを乗り越えるとオーラスは自分の親、どうにでもできるとの判断だろう。
食いタンで少しでも早く、という意志の感じられる仕掛け。2副露目も世が世ならご法度のシャンテン数の変わらないチー。
奇抜に見え批判する人もいるだろうが、私は悪いとは思わない。ポン材も残るし、 も割と上家から鳴けそうなところ。
さて、マンズの両面を埋めテンパイを果たした柴。このままさらりとアガるのか?
だが、それを阻むのが田村。強い河でメンタンピンリーチを打つ。
そして麻生も同巡、役ホンイツをテンパイ。
3者オリてはいられない、まさに勝負どころ!!!
その機を制したのは麻生のテンパイ時の入り目 を勝負し、両面に切り替えた後に をツモった柴。
これで柴は連勝目前。もはや他3人にはエマージェンシー・ランプが灯っている。
そしてこれからの展開が大きく変わるオーラスが始まる。
なんとここで柴、ドラトイツと役牌2種( と )が配牌に。オーラスで止まるような役牌では無い。
ここで親満、親ッパネを上がられると3人にとってはさらに展開がキツくなること必至だ。
山浩が第1打でさっそく を打つ。…しかし柴はこれをスルー。
手牌を短くせず流すことを第一に考えたのだろうか?
しかし、今日の柴のツモは並ではない。門前縛りでもこうなるのである。
柴(東家) 10巡目
            ドラ
道中の もスルーしており、 は一枚切れ。こんなもの止まるわけがない9600。
振り込んだ人はメンタルブレイクしてもしょうがない。ダメ押しの手。
だが、ここでさっきまで静観していた男、山浩がついに前に出るリーチ!
そして、値千金の一発ツモが炸裂する。
山浩(南家) 11巡目
            ツモ ドラ 裏ドラ
柴の連続トップを阻止。これでまだまだ勝負はわからなくなった。
2回戦結果
山浩 +59.5 柴 +10.2 田村 △22.4 麻生 △47.3
トータル
山浩+71.6
柴 +67.2
田村△67.2
麻生△71.6
上二人、下二人の構図。田村、麻生は次で逆連対だと結構厳しい。
上二人をなるべく沈めてトップをもぎ取りたいところ。
☆3回戦☆(田村→麻生→柴→山浩)
さきほどトップの山浩、調子が良い。
東1局、麻生からクイタンで1000点。東2局、5巡目ピンフリーチを一発ツモ。
他の追随を許さないぞ、とアガりを手にする。
負けてられない麻生、東3局5巡目リーチ。単なる印象ではなく、このメンツ早いリーチをきっちりと打ってくる。
先制リーチはどんなルールの麻雀においても非常に強い。
現代風といえばそうなのだが、決勝という場、打点作りなどで焦っていつもと違うことをするプレイヤーもいるだろう。
そのプレッシャーに負けず優位性を理解し、いつもどおりしっかり先制リーチを打つことが大事だな、と改めて思う。
話が逸れてしまった。麻生のリーチだ。柴が7巡目、高めタンピンイーペーコードラ1をテンパイ、勿論追いかける。
結局、柴が麻生の当たり牌を引いて麻生3900のアガリ。
麻生はリーチを打ちまくってたくさんあがり、裏ドラで加点増加を図るタイプだが、なかなか伸びてこない。
東4局、ようやく田村にピンフドラ1テンパイが入り、さあ反撃だというところで場に2枚切れで安全牌として残していた 。
それが、ダブ を仕掛けていた柴の仮テン単騎に突き刺さる。

1本場、またもや柴のリーチが皆の前に立ち塞がるが、粘って田村と麻生はテンパイをとる。
2本場、先ほど一人ノーテンの山浩が鬱憤を晴らすかのごとく満貫ツモ。これで点棒が4万弱。連勝に近づく。
南1局、もう一刻の猶予も無い田村。連荘でなんとかするしかない。
まずはスピード優先の仕掛けで柴から2900。
1本場は麻生に入ったハネ満手を1500でいなし、2着に浮上。
だが、山浩が連荘を許させず、2本場は柴から1300で田村の親を流す。
南2局は柴の1人テンパイで流局。淡々と進む場。
そして、南3局。ここがターニング・ポイントとなる。
7巡目にピンフテンパイしていた麻生、アガリ牌の をツモ。
麻生(北家)
            ツモ ドラ
現状、自分が優勝するためには、
1)自分がトップ
2)柴・山浩をトップにさせない
この2つの条件が第一命題である。
麻生は小考後、 を切ってフリテンリーチを敢行する。賭けに出た。
まだ2回戦残っているとはいえ、ここでトップを取っておくと今後の展開がだいぶ楽になる。私はこれを賢明な判断だと思う。
麻生はこの賭けに勝てるのか?
14巡目、麻生の手元に引きよせられたのは念願の 。
周囲からアガった瞬間、感嘆の声が漏れる。そして、神からのご褒美、裏ドラ表示牌は が転がっていた。
これで麻生が一気にトップ。逆に追い詰められたのが田村だ。このままラスだと優勝の可能性が無くなる。
そして、オーラス。田村は苦渋の選択を迫られる。

田村はここでハネ満をツモあがっても2着にはなれない。
一番現実的なのは、柴とちょうど1000点差なので、せめて3着になる。そうすることで連勝で優勝できる可能性を残せるのだ。
なので、早々にクイタン仕掛けをし、最速のテンパイを取りにいく。
11巡目、 待ちでテンパイ。そして12巡目に山浩から が出る。が、これはスルー。
山浩から1000点が出ても、柴と同点になる。協会ルールは同点はウマをわけ、△20ずつ。
これではあまり旨味が無いのだ。柴からの直撃か、ツモあがり。キツい条件を強いられる田村。
先ほどの麻生のアガらずとは対照的なアガらずである。しかも親の柴がオタ風 加カンのテンパイ気配。
覗いてみたらドラ トイツのトイトイ。なんともリスキーな綱渡りをさせられている田村。
ハイテイ手前の18巡目、柴が切った により、田村の願いは成就した。
3回戦結果
麻生 +53.6 山浩 +12.6 田村 △22.6 柴 △43.6
トータル
山浩+84.2
柴 +23.6
麻生△18.0
田村△89.8
☆4回戦☆(柴→山浩→田村→麻生)
30分ほどの休憩をとった後の4回戦。山浩が頭一つ抜けてはいるが、まだ全員にチャンスがある。この半荘が非常に重要だ。
東1局、終盤に親の柴がリーチ。麻生が追っかけるも、1300オールツモでスタート。
1本場、2本場ともリーチの声は止まないが皆慎重なのか、誰も振り込まず流局。
3本積まれた東2局、山浩リーチも田村が役牌のみ300・500をツモ。リーチ棒を回収しトップ目へ。
そのままそのまま...が、もちろんそう上手くは事は運ばない。
東3局は山浩が田村から3900を討ち取る。
柴も負けてはいない。東4局、柴が山浩から1000点。東場はほぼ平たく終わりを迎える。
南1局も柴がのみ手一発ツモ2000オール。トップは渡さないぞ!という強い意思表示のアガりだ。
これ以上連荘させるわけにはいかない。山浩がリーチのみだが足止めにかかる。
柴がオリ打ち気味にこれに放銃。裏ドラが乗って2600。

柴がまだ抜けているものの、全員トップ圏内は変わらず。
が、南2局柴が今日何度目かもう分からない早いリーチ4巡目。
柴(北家)
            ドラ
早い巡目で打点もある。これをアガられると非常にマズい。他の3人の心の声が聞こえてくるようだ。
これに対して田村、イーシャンテンの手から一発目でドラの 切り!!!
「俺がなんとかするしかない」勝負所と信じ、自分の手の成就のための鬼プッシュ。
オリないよ、と涼しい顔で無スジを連打する田村。時間はかかったが12巡目でテンパイ。勿論リーチ!
田村(南家)
            ドラ
ドラも何も無い手だが、柴のアガりを阻止することに価値がある。
打点のある手が押すべき手、というのは確かに正しくはあるのだが、こういうのもれっきとした勝負手なのだ。
柴の手を潰せるか田村?しかし、15巡目に田村が持ってきたのは 。裏ドラこそ乗らなかったが、無慈悲な6400。
麻雀は4人でやるゲームで、少なくとも1人は割を食うものだ。今日は田村がその悪い展開を一身に受けている。
残った親番で挽回するしかない。次は南3局、その田村の親。前半荘オーラスの見逃しは活かすことはできるのか?
南3局、柴が早々に仕掛け、役牌・ドラドラをテンパイ。
ダメ押しか?と思ったところに田村、6巡目にテンパイを入れる。
田村(東家) 6巡目
            ドラ
一見即リーチにいきたい手だが、なんと が2枚切れ。さすがに最後の1枚に託せない田村、ダマテン選択。
手変わりか最後の一枚ポロリ、を願うが9巡目でさすがに我慢できなくなったのか手の内の を空切りしてリーチ。
最悪テンパイ流局辞さず、というところだ。その小さな望みすら叶えられず、山浩がいつのまにかテンパイしており500・1000のアガり。
山浩(北家)
            ツモ ドラ
親リー蹴れて正解、といったところか。
ただ、優勝を争っている柴を苦しめるためにもリーチしてもよかった手だ。
田村のリーチの直前にテンパイしていたので、この選択はもしかしたら後に展開を変えていた可能性もある。
たらればの話をしてもしょうがないのだが、こういう場での最善の選択とは?と考えさせられる。
なんにせよ、いよいよオーラス。
親の麻生がリーチのみをテンパイ。安めをツモって1000オール。
この1000オール、まだまくれず3着なのだが、非常に大きい1000オールとなる。
オーラス1本場、麻生はドラ トイツのホンイツ手。だがこれは田村と持ち持ち。
その隙に柴がカンチャンから仕掛け バックをテンパイ。
その時点で は麻生の手の内に1枚。手が進めば出てしまう…
だが、すでに役無しテンパイをしていた山浩が を掴み、柴に1000は1300を放銃。
これにより山浩は3着に落ち、麻生は最終戦の優勝条件が少し楽になる。
まだマイナスなので苦しいのは変わりないが、協会ルールはトップラスで80ポイント差以上ひっくり返る。
ラストチャンスを手にすれば麻生の優勝の可能性もまだあるわけだ。
4回戦結果
柴 +60.1 麻生 +3.9 山浩 △17.1 田村 △47.1
トータル
柴 +83.7
山浩+67.1
麻生△13.9
田村△136.9
☆5回戦☆(麻生→山浩→田村→柴)
いよいよ最終戦。柴、山浩、麻生の三つ巴になりそうだ。田村は親番がある限りは諦めず戦うだろう。
開局は麻生の6巡目親リーチから始まる。ピンフドラ1だが  待ちの良形。
しかし、誰も振り込まず、そして麻生はこれをツモれず。15巡目には田村の追いかけ。
結局流局だが、  はなんと田村と山浩がすべて吸収。麻生これがアガれないのはつらいところだ。

だが、連荘でまだまだチャンスはある。
1本場、ただいくだけの田村が終盤にメンタンピンリーチを打つものの、リーチの安全牌に窮した山浩が トイツ落とし。
それを麻生がポンし、次巡軽やかに高めのドラをツモ。
麻生(東家)
         ツモ ポン  ドラ
2000オールで2本場となる。
麻生、 をポン。まだまだ連荘しますよ!そんなことを言いたげな顔をしている。
山浩、柴はそろそろこのじゃじゃ馬を止めておきたいところだ。
手も少しずつ整いつつあり、反撃しますかね、と手に従って不要牌を整理していく2人。
しかし、たった5巡、たった1副露…麻生から「ロン」の声がかかる。
麻生(東家)
         ロン ポン  ドラ
隠れドラ暗刻の親満。柴は目が飛び出そうになったであろう。
麻雀でこうなることは別に珍しくはないが、決勝という場でこれをされるとメンタルには来るものだ。
だが、柴は揺れない。東1局3本場、じっくりと自分の手を作り、ドラ表の を暗刻にしてリーチ。
メンホンチートイの田村が放銃してしまう。

東2局も柴のリーチに田村が満貫放銃。田村も手は整っており、行く選択をとらざるを得ない以上、仕方ない。
東3局、田村が連荘狙いで1500。
そして、1本場、この半荘まで我慢を重ねてきた麻生がついに爆発する。
麻生(西家) 9巡目
            ツモ ドラ 裏ドラ
倍満ツモでついに6万点台へ。優勝へ向かって突き進む!
東場最後は山浩が柴から8000をアガリ、運命の南場へ。
南1局、田村はまだまだ諦めない。12巡目にリーチ。
だが、優勝争いの邪魔はさせない、とばかりに柴が追っかけリーチ、そして一発ツモ!
柴(北家) 13巡目
            ツモ ドラ 裏ドラ
麻生を親被りさせ、決定打を繰り出させない。 が田村の現物なのだが、ダマとはしない。
柴のしぶとさ、強さがここによく現れている。
南2局、今度は麻生のリーチ。田村も追いかけるが、田村の今日の不運は極まっている。3200放銃。
南3局、山浩のリーチ、アガれず。柴以外はテンパイで連荘。
1本場も山浩リーチ、麻生が1300を放銃。田村の親が落ち、ここでリタイヤ。オーラスに入る。
オーラス条件は、
麻生:5200以上アガれば優勝
山浩:アガるか、このまま流局
柴 :親なのでアガりつづけ、山浩をまくる
ついに全員が固唾を呑むオーラス。
空気が重い。静かに進むが、山浩が仕掛けて のクイタンテンパイ。
これで決着か…と思われたが、柴、麻生もテンパイを取りにいく。
麻生も仕掛け、ついにテンパイというときの打牌。 と の選択で、麻生は打 を選択!
どちらも通っておらず、危険だ。麻生はスレスレを通り抜け、次局の条件の維持に成功。
3人テンパイで1本場へ。なかなかのせめぎあいなので、是非牌譜をごらんいただきたい。

そして1本場、柴が8巡目に 待ちのピンフリーチ!
麻生が一発目に何事もないかのように無スジの !
これは勝負手が入っているのか?観戦者の目は卓上に釘付けになっている。
麻生が手出しをした次巡、安全牌に窮した山浩、仕方なく前巡田村が通した のスジ、柴の現物でもある を打つ。
麻生がそれに「ロン」の声。
麻生(南家)
            ロン ドラ
きっちり6400を仕上げ、麻生の優勝が決まった。初戴冠だ。
5回戦結果
麻生 +90.5 山浩 +0.2 柴 △24.2 田村 △66.5
トータル結果
麻生+76.6
山浩+67.3
柴 +59.5
田村△203.4
今回の決勝も大変見ごたえがあった。
田村
今回は巡りが悪かったが、最善を尽くし勝つための努力を懸命にしていた。
柴
有利な状況から窮地に立たされるも、最後まで粘り強く優勝者を苦しめた。
山浩
きっちりと打点を作り上げ、いい位置をキープして手に汗握る優勝争いを演出。
麻生。
序盤の厳しい状況に耐え、最後まで諦めず勝負して優勝を勝ち取った。
競技麻雀の決勝の過程には観戦者を唸らせ、期待させ、落胆させる、さまざまなドラマがある。
臨場感が無いと感じ取れないこともいっぱいある。事実、ここに書ききれないこともたくさんあった。
もっともっと競技麻雀が好きな人には決勝を見に来てほしい。そう思わざるを得ない楽しい決勝だった。
ともあれ、麻生プロおめでとう!!! 他の3人もよくがんばった!!!
来年こそは私が決勝へ…(いける?)
〜了〜
(文・比嘉 秀仁)
準決勝
準々決勝
予選スコア
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