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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
薬王寺 重成
139.4
-18.8
21.4
55.9
10.8
70.1
2
牧野 伸彦
69.8
8.0
-29.9
11.2
56.4
24.1
3
中島 浩太
-52.3
67.3
-61.0
-12.5
-17.5
-28.6
4
比嘉 秀仁
-159.9
-56.5
69.5
-54.6
-51.7
-66.6

≪観戦記≫

第1回、関西チャンピオンシップ

その名の通り、関西で第1回の開催となる協会の公式戦。その前身は2009年よりウェスタンチャンピオンシップとして過去8年間で毎年開催されており、歴代優勝者には当協会の関西本部長である一北寛人、現Aリーガーの下石戟など関西の実力者が名を連ねている。
そして今年2018年より関西以外の競技団体所属者、他プロ団体にも門戸を開き、その名も『関西チャンピオンシップ』とリニューアルされた。

今回の決勝メンバーは
協会から2名・・・比嘉秀仁、薬王寺重成
最高位戦から1名・・・牧野伸彦
RMUから1名・・・中島浩太
とリニューアルの期待通り各団体の選手が鎬を削る戦いとなった。

【1回戦】

東1局から手がぶつかる。
10巡目に牧野(東家)が
ドラ
この形からドラを切ってリーチをかけると先に仕掛けていた比嘉(北家)がそのドラをポン!!
ポン
すぐ次巡に好配牌を上手くまとめた薬王寺(南家)も追いつきリーチ。
ドラ
さらに薬王寺の宣言牌を鳴く中島(西家)。
ドラ
ここからのチー。
一発消しの意味もあるだろうが、比較的通り安そうな東を切りつつ、あわよくば・・・という貪欲さを感じさせる仕掛け。
結末は親の牧野がツモってリーヅモ三暗刻の4000オール。



東1局1本場
中島(南家)が

から大胆にと切り出していき、
ポン チー ロン

東2局
中島の最速リーチドラ1で2600

東3局
連続であがって親を迎えた中島は4巡目に以下の形。
ドラ
ともに生牌である。親ということもあり、先制リーチを打つ人もいるかもしれない。
しかし中島は三色同順やタンヤオも見すえて打
9巡目にを引いて、目論見通りの三色テンパイ。
ドラ
14巡目にツモアガって4000オール。
これで中島は3連続アガリとなり点棒は4万5000点を越える。

かわす仕掛け、打点のある仕掛け、最速リーチ、逆に最速手順をはずした手役狙い。
「協会ルールはこう打つんだよ」と言わんばかりの中島である。
そして様々な打ち筋で魅せるとともに、1つ1つの選択がとても速い。
誰もが緊張する決勝の1回戦である。さらに中島は決勝メンバーの中で1人だけのRMU所属で、唯一の東京からの参戦。
もちろん初めての会場だろうし、初対面の人間も多かっただろう。むしろ緊張する要素しかないくらいだ。
しかし中島の打つ牌からは緊張など微塵も感じない。むしろ普段の鍛錬、己の打ち方に対する自負をひしひしと伝わってくる。

「もしかすると協会所属の2人よりも、中島の方が協会ルールを打ち慣れているのでは??」

そう思わせるほどに中島の打ち筋は自信と確信に満ちていた。
中島は南場もリードを保ったまま、誰もが欲しい初戦のトップを奪取する。

1回戦結果
中島 +67.3
牧野 +8.0
薬王寺 ▲18.8
比嘉 ▲56.5


【2回戦】

東1局
いきなり大物手がさく裂する。
薬王寺(南家) 
ツモ ドラ
テンパイ即ツモの8000-16000。しかも前回トップの中島を親カブリさせるおまけ付きである。ひとアガリでトータル首位の中島とは128ポイント(この時点での順位点込み)ひっくり返り、薬王寺が暫定首位となる。
薬王寺はハッピーハッピー。中島には完全に災難だが、他2者にとっては「ポイント首位の中島より上に行きやすい」という意味ではまだマシな役満。決勝はわずか5回戦、めげている暇はない。

逃げる薬王寺に追う3者。「絶対に負けたくない」その思いがぶつかり合う。

南1局
8巡目、牧野(北家)リーチ
ドラ
12巡目、比嘉(西家)、当たり牌の八を入り目にして追いかけリーチ。
ツモ ドラ
14巡目に薬王寺(南家)、同じく当たり牌のを入れて追いかけリーチ。
ツモ ドラ
比嘉、薬王寺の打ち回しも素晴らしいが、牧野としては自分のところに来てくれよというが脇に流れた上に3軒リーチとなってしまう。
結果は、さらにを掴んだ薬王寺が比嘉への放銃(牧野は頭ハネられ)。
これで追撃の1番手に名乗りをあげたのは比嘉だった。

南2局
中島は役満の親カブリ以降も良いところなく5700点持ち。3着とも1万点以上離れたラス目だ。親もない。とは言え、このままでは終われない。
そんな中島は比嘉、牧野の2軒リーチを受けて12巡目にこの形。
ツモ ドラ
珍しく中島の手が少し止まる。
待ちのは4枚切れ、それも良い方のが3枚切れである。
ラスを逃れるだけでも何とかしたいが、アガって2600点。出ていくも2人に無筋である。ドラまたぎのこの牌で打って安いということはあまりない。
初戦トップを取っているだけに小さなラスで済ませれば・・・という考えも浮かぶ。
考え抜いた決断は切りリーチ。
協会ルールらしい殴り合いの結果は比嘉の勝ち。中島から2600点のアガリとリーチ棒。

南3局2本場
比嘉は前局のアガリ以外にもノーテン罰符などでコツコツと差を縮めていく。
役満をアガッた薬王寺と比嘉の差はわずか5000点にまで縮まっている。
6巡目、薬王寺(北家)がリーチ。
ドラ
それを受けて8巡目の比嘉(東家)
ドラ
ソウズの待ちは比嘉にとってフリテンターツな上に場に5枚切られている。
しかしソウズは薬王寺のリーチに通っていない。比嘉は冷静にのターツを落としていく。すると12巡目に嬉しいをお帰りツモ。
ツモ ドラ
追う立場の比嘉は当然の追いかけリーチ。
待ちが半分かぶっているのでの対決。制したのは比嘉。それも薬王寺からデバサイの直撃で、役満ツモられからの逆転に成功する。
薬王寺のリーチは賛否のあることと思う。という出やすい待ちであるから、ダマテンでそっと比嘉の親を流す選択も当然ある。しかしそれでは打点は1000点だ。次のオーラスでまた比嘉と競争をしなければならない。(通常のフリー対局と違い点差の離れた他家は軽いアガリをして来ない可能性が高い)
一方、リーチをしてツモれば比嘉との差は9000点。一発や裏ドラがからめば、次局に跳満でも大丈夫な点差になる。結果は裏目だったが「優勝するんだ!!」という薬王寺の強い意志が垣間見られた。

南4局
比嘉42400点、薬王寺41400点のアガリ勝負。
1巡目に比嘉の切ったドラのを薬王寺がポン!
役牌バックやホンイツ、トイトイなどまだ何でもある仕掛け。
ドラを切った比嘉も当然速い。4巡目にしてこのテンパイ。
ポン ドラ
さらに失う物のない親、牧野もアンカンして同巡リーチ。
暗カン ドラ
この修羅場に対してトップ目の比嘉が猛プッシュ!!
南3局の繊細な打ちまわしとは一転して4つの無筋や生牌を高速で通していく。

「比嘉さんは『比嘉さん』なんですよね」「比嘉さんにさん付けしたら『比嘉さんさん』かな??笑」
対局の合間に、実況席に座っていた御崎千結が笑って言った。放送対局ではたとえ先輩・後輩であっても、初対面の他団体の方であっても、呼び捨てが通例である。しかし「比嘉さん」に限ってはどうも「さん付け」してしまうのである。「比嘉さん」より年上かつ先輩の私にしてもそうだ。なんだか彼には不思議と親しみやすい魅力がある。この決勝戦でも1番応援コメントが多かったのも比嘉である。
そんな比嘉は今回の決勝メンバーの中でも最年長・・・、というよりも1人だけ30代でプロ歴10年目、他3人の倍ほどある。もしかすると勝ちたい気持ちが1番強いのは比嘉かもしれない。「薬王寺、勝ちたいのはお前だけじゃない!!」そんな比嘉の心の声が聴こえるかのようだった。
そんな比嘉の執念が実り、牧野からの出アガリ。初戦のラスを振り出しに戻す大きなトップを獲得する。
また比嘉だけでなく、全員が1回戦とちょうど逆の順位となったため、かなり平たいポイント差となった。


2回戦結果
比嘉 +69.5(+13.0)
薬王寺 +21.4(+2.6)
牧野 ▲29.9(▲21.9)
中島 ▲61.0(+6.3)
※カッコ内はトータルポイント


【3回戦】

東1局
薬王寺(南家)が11巡目までに3副露。
ポン チー ドラ
高めなら一通付きの跳満である。
それを受けて中島(西家)は薬王寺に絞りながらテンパイを入れる。
ツモ ドラ
薬王寺がマンズ模様の仕掛けをしているためピンズの場況はとても良い。
しかしドラで放銃すれば跳満、倍満の可能性もある。
中島はここは冷静に切り。当たり前と言えば当たり前だが、前回の手痛いラスの次戦である。落ち着いた打ち回しに解説陣も感服する。
中島はすでにテンパイの薬王寺からを鳴くと
ポン ドラ
親満をテンパイした比嘉からをゲット。
比嘉は無念の放銃であるし、薬王寺も大物手を潰された形。これは上手い。

東3局
9巡目に薬王寺(北家)の三色リーチ。
ツモ→打 ドラ
同巡に牧野(南家)は以下の形。
ツモ ドラ
薬王寺のリーチは三色を強く意識したためのトイツ落としなどが入っており、宣言牌のも込みで字牌の単騎やシャンポン待ちは無さそうだが・・・??
冷静に現物のを抜くも次巡のツモは。普段大人しい牧野だがここは少し悔しそうな動作を見せていた。
一方、比嘉(西家)は
チー ツモ ドラ
ここから手拍子でを切ってしまい、痛恨のリーチ三色5200の放銃。
薬王寺の捨て牌にはがあり、相対的によりはの方が安全度が高い。比嘉本人もここまで丁寧に打っていただけに、対局後このミスを悔いていた。

南1局
マイナスしている比嘉の親番。
またも薬王寺(南家)が果敢に仕掛ける。7巡目に2つ鳴いてテンパイ。
ポン ドラ
8巡目に中島(西家)もテンパイ。
ツモ ドラ
ピンフのみだが薬王寺が仕掛けているため、またマンズの場況がとても良い。
だがテンパイ取らずのツモ切り。結果としては当たりではなかったが、中島は本当に押し引きのメリハリが効いている。
誘惑に負けず、行かない牌は絶対に行かない。

16巡目の比嘉(東家)。
ポン ドラ
この形から「薬王寺の放った」に飛びついてしまう。ポンしてテンパイ打牌は
7巡目からずっと薬王寺の手牌は
ポン ドラ
またしても涙の8000点放銃となってしまう。
薬王寺は北家でない。この16巡目の時点でずっとツモ切りをしていて、字牌ならが生牌、ピンズも2枚余っている。冷静に考えれば相当に危険なだ。
しかし比嘉の「アガリたい」「取り返さなければ」その気持ちが空回りしてしまう。

南2局
9巡目、薬王寺(東家、39200点持ち)がリーチ。
ドラ
10巡目に牧野(西家32200点持ち)もテンパイ。
ドラ
は薬王寺の親リーチの現物だ。しかし自分からがともに3枚見えていて、場況がとても良い。
この半荘単位にしてもトータルポイントにしても追う立場の牧野であればリーチをしても良かったかもしれない。
牧野の選択はダマ。すぐに脇から出アガって目論見通り薬王寺のリーチをかわす。

南4局
点棒状況は東家から
牧野33200
比嘉6400
薬王寺36900
中島23500

2回戦までのトータルポイントがほぼ平たい状況なので、みな少しでも加点したいところ。
牧野は親番なので何でもアガれば良い、中島は満貫ベースの手作りか。
そんな中で1番苦しい比嘉にわずか2巡でテンパイが入る。
ドラ
跳満ツモでも順位が変わらないため、素点だけでも稼ぎたいところだが、さすがに愚形リーチのみは・・・と一旦手替わり待ち。
3巡目
ツモ→打
4巡目
ツモ→アガラズ打
5巡目
ツモ→打
6巡目
ツモ
好形テンパイではあるが打点に不満のためツモ切り。
7巡目
ツモ→打
ドラを引いて高めツモ満貫テンパイ(順位変わらず)となるが、さらに高みを目指す。
比嘉がぐるぐると回っている間に中島(北家)も追いつく。
ドラ
高めのドラをツモっての裏、または牧野から高めが出ての裏条件だが、もう細かいことは言ってられない。最悪でも加点を目指すリーチとする。
高めをツモるも裏乗らずで3着終了。

3回戦結果
薬王寺 +55.9(+58.5)
牧野 +11.2(▲10.7)
中島 ▲12.5(▲6.2)
比嘉 ▲54.6(▲41.6)
※カッコ内はトータルポイント


【4回戦】

薬王寺が一人浮き。
とは言えまだプラス58.5ポイント。1回のトップ分しかない。まだこれからだ。

東1局1本場
7巡目に比嘉(東家)からリーチ。
ドラ
ドラ待ちだがツモれば2600オール。そこそこの打点が見込めるリーチだ。
しかし先に仕掛けていた薬王寺(南家)に恐ろしいテンパイが入っていた。
チー ドラ
比嘉の欲しいドラが暗刻、しかも待ちの-が比嘉の現物だ。
リーチ一発目に無筋のもノータイムで切り飛ばしていく。
このピンチに牧野(北家)は
ツモ ドラ
リーチの現物はだ。
粘るならのトイツを切りたいところだが、牧野は冷静にを抜く。薬王寺の仕掛けとノータイム押しを見て、ここは三歩引く構えを見せる。
比嘉以外の2人が引いた結果、待ちの枚数通り薬王寺のツモアガリとなった。

東2局
薬王寺(東家)が10巡目にこのテンパイ
ツモ ドラ
から手替わりを待ち、13巡目にリーチ
ツモ ドラ
中島に追いかけリーチされるも、薬王寺が高めのをツモって2600オール。
ツモ ドラ
これで薬王寺の持ち点は43100点。他3者にとって薬王寺の3連勝だけはまずい。

東3局
薬王寺を追いたい2者の手がぶつかる。
8巡目、比嘉(西家)リーチ。
ドラ
10巡目、中島(東家)リーチ。
ドラ
先行リーチの比嘉がで一発で飛び込んで5800を献上。
比嘉は苦しい。

東3局1本場
牧野が丁寧に手役を追う。
6巡目に
ツモ ドラ
から切りとすると次巡に
ツモ
ここもテンパイ取らずの打、さらにを引いて

一通と三色の両天秤に構えると、10巡目に狙い通り三色同順のリーチ。

親の中島も黙ってはいられない。
ドラ
ここから薬王寺の切ったをチー。
チー
かなり不安定な形だが、戦いの場に出て行く。
13巡目に比嘉(西家)も
ドラ
ここから生牌のドラを切ってリーチ。
両者とも局収支で言えば得かどうかは微妙だが、もう4回戦。前に出ざるをえない。
最悪、薬王寺以外に当たればまだ並びは作れるのだ。
ここは比嘉が高めを出アガリ3900は4200の加点。

南入して1本場、点棒状況は以下の通り。
東家から
比嘉28300
薬王寺41500
中島23600
牧野6600

トータル首位の薬王寺がこの半荘でもトップ目に立っており、ほか3者は何とか引きずりおろしたいところ。
ここで眠れる獅子が目覚める。
いや、眠っていたわけではない。虎視眈々とチャンスを窺っていた男がいた。牧野だ。
1〜3回戦から4回戦途中までの打ち筋を見ても牧野は徹底してリスクを負わない。
現段階のポイントやこの6600点という持ち点にしても無駄に放銃したわけではなく、キー牌を止めるなど要所でファインプレイを見せることも多かった。ただそれが結果に結びつかず、他3者の攻めのあおりを受けた形だ。

牧野は「たこやき研」という関西の若手プロ主体の研究会を主催している。普段の研鑽の成果か、この決勝戦メンバーで最年少の28歳にして打ち筋は老練そのもの。
協会のチャンピオンロードでも2勝しており、今回のメンツでは決勝経験は最も多い。その経験をして「まだ慌てるような時間じゃない」と考えていたのかもしれない。
(後述するが「最終戦の展開」も、ほぼ牧野の予想通りになっていた。)

南1局2本場
牧野(北家)
ツモ ドラ 裏ドラ
これをツモって裏ものせる。まずは跳満のアガリ。

南3局 15巡目
先刻の跳満ツモで2万点台に回復した牧野(南家)。
ツモ ドラ
親の中島が役役含みの3副露しており、待ちの-は場に5枚見えている。とは言え、まだまだビハインドの状況。うっかりツモが偉すぎる。ここは目をつぶってリーチか??
いや、牧野はここでも取らずの切り。
牧野はラス親だ。ここもまだ「慌てるような時間じゃない」のだ。

南3局2本場
他者の怖い仕掛けやリーチに飛び込まず、耐えた牧野に先制リーチが入る。
ドラ
これもきっちりツモって牧野が2着目に浮上。そしてラス親だ。

南4局
牧野(東家)
ロン ドラ

南4局1本場
牧野(東家)
チー ツモ ドラ

これで牧野が薬王寺をかわし、この半荘トップで終了。

4回戦結果
牧野 +56.4(+45.7)
薬王寺 +10.8(+69.3)
中島 ▲17.5(▲23.7)
比嘉 ▲51.7(▲93.3)
※カッコ内はトータルポイント


【5回戦】(最終戦)

規定によりトータル首位者が北家でスタート。
東家から牧野―中島―比嘉―薬王寺の座順。

各々の優勝条件は

〇薬王寺(トータル1位)
以下の3名の条件を満たされなければ良い。
実質的には牧野との着順勝負。

〇牧野(トータル2位)
トップまたは薬王寺と2着順以上差なら無条件。
薬王寺と1着順なら3600点差をつけること。
競技麻雀においてラス親は有利(条件のない人はあがらないため流されにくい)なのだが、牧野曰く
「一進一退の展開になった時は僕の方が有利。ラス親の薬王寺はリードしてからさらに安全圏まで逃げるか、僕のあがりを防いでノーテン宣言しなければならない。僕はまくった瞬間に試合終了するのでそこは楽」とのこと。

〇中島(トータル3位)
トップはほぼ必須。
その上で薬王寺2着なら53000点差以上、牧野2着なら29400点差以上が必要。
牧野2着以下、薬王寺3着以下にして大トップをとるイメージ。

〇比嘉
上から比嘉―中島―牧野―薬王寺という並びで、かつ2着と3万点、4着と6万点近くの点差をつけなければならない。西家スタートというのがまだ救いか。


東1局
薬王寺は無理にトップを取らなくて良い。牧野にさえ上に行かれなければ相当の余裕がある。だがえてしてそんな時は・・・
牧野(東家)
ツモ ドラ
牧野が1300オールのアガリ。
東1局とは言え、この瞬間は薬王寺を逆転し優勝ポジションとなる。

東1局1本場
牧野(東家)が先行リーチ
ドラ
次巡に中島(南家)が追い付く。
ツモ ドラ
は親リーチの現物だ、は押す。それはいい。だがリーチかダマか??
中島は少なく見ても5万点以上のトップと並びが必要だ。
中島の選択はダマ。トータルトップの薬王寺狙いか。
しかしこれに飛び込んだのは比嘉。
中島にとってはこの半荘の暫定トップ目に立ったものの、並びは最悪だ。
比嘉からすれば痛恨の降り打ち??
いやいや、比嘉はもともと非常に苦しい立場だ。自身のトップはもちろん比嘉―中島―牧野―薬王寺の並びが必要。自分が中島に振り込む分には後で加点して返して貰えば良い。
比嘉は「よし、並びを作ってやったぞ!」と頑張って欲しいところ。

東2局
筆者の声が聴こえたのか、元気よく比嘉(南家)の先行リーチ。
ドラ
トータルラス目、この半荘もラス目の比嘉。当面は比嘉があがっても誰も困らない。このリーチに逆らって行く人はいない。
牧野(北家)
ツモ ドラ
現物のすら打たずにを抜く。
薬王寺(西家)
ツモ ドラ
現物のがあるにも関わらず、無筋切りリィーーチ!!!!!
(リーチの現物として1枚切られているので見た目3枚の追いかけだ)
その選択の是非は置くとしても、ここまでの牧野、薬王寺の打ち筋を象徴するような1局であった。
薬王寺、渾身の1000-2000ツモ。薬王寺が優勝ポジションへ。

東3局
薬王寺(南家)がドラ単騎リーチ。
ドラ
牧野(西家)も追いついてこのテンパイ。
ドラ
牧野、が薬王寺リーチの現物のピンフテンパイ。ただしは3枚切れ。ここはダマで押していく。
結果は薬王寺からの直撃。再び牧野が優勝ポジションへ。

東4局
8巡目、薬王寺の親リーチ。
ドラ
一方の牧野は
ツモ ドラ
このメンホンイーシャンテンから当たり牌のを引かされてきっちり降り。
結果は薬王寺のツモ。裏も乗って、4000オール。

積極果敢に攻める薬王寺、守備と我慢の牧野。
その選択の是非は別として、これまでの決勝戦の打ち方を象徴するような東場だった

南1局
薬王寺35000点、牧野32600点。
ジリジリと牧野が差を詰める。牧野は薬王寺を逆転すればトップ目に立ち、自動的にトータルでも逆転となる。
薬王寺の先行リーチや仕掛けもかいくぐり、流局が続いた5本場。

またしても薬王寺(北家)の先行リーチ。
ドラ
次巡、牧野、無筋を切って追っかけリーチ。
ツモ ドラ
ここまで我慢に我慢を重ねて来た牧野。「俺の勝負所はここだ。」と言わんばかりに牌を叩きつける。(※実際には強打はしていません。心情的なお話です。)
薬王寺が一発で高めを掴み、12000は13500(+リーチ棒)の放銃。
再々度、牧野が優勝ポジションへ。
薬王寺は牧野に26000点差をつけられてしまう。
薬王寺の-はダマであれば他からすぐに出たかもしれない。しかしここで2000点をあがってもまた次局も勝負が続く。この選択は責められない。

そうして牧野のほかに、ずっと我慢して来た男がもう1人いる。中島だ。
この薬王寺の放銃により、並びが出来た。自身が加点しさえすれば優勝も現実的になってきた。

南2局
中島にとって正念場
並びは出来ているのでひたすらあがるしかない。
しかし牧野が仕掛けて無情の高速テンパイ。優勝への3階段のうちの1つ目を上がる。

南3局
牧野の仕掛けをかわして薬王寺が1300-2600
いよいよ2人のデッドヒートの様相。

最終5回戦、オーラス。
薬王寺24700点、牧野48900点。その差は24200点。
ここで最終戦前の牧野のコメントを思い出して欲しい。
「一進一退の展開になった時は僕の方が有利」
まさにその予想通りになった。
薬王寺は24200点差を逆転して、なおかつ『もう1局』をこなさなければならない。

南4局
薬王寺の手が悪い。
出る ドラ
わずか9巡目にこの手を両面チー。
決勝戦のオーラスである。条件のない比嘉は決して甘い牌を打ってこない。
もう間に合わないという薬王寺の判断だ。
この局は薬王寺の1人テンパイ。
そうして2局連続、薬王寺の1人テンパイ。満貫ツモで逆転できるところまでこぎつけた。

南4局3本場
形式テンパイで粘った薬王寺についに本手が入る。
ドラ
17巡目、三色テンパイで粘る牧野に危険牌が
ポン チー ツモ ドラ
薬王寺のリーチにソウズはしか切れていない。マンズは捨て牌的には通りそうだが、そもそもこの極限状況下で捨て牌を信じていいものだろうか??
残りツモ1回の牧野の選択は自分を信じる打
そして次巡、また選択が訪れる。
ポン チー ツモ ドラ
今度は当たり牌のだ。自分のツモはない。ハイテイは薬王寺。ノーテン罰符で削られるのも嫌なもの、そもそもハイテイで薬王寺が掴むかもしれない・・・
しかしここは冷静に打としてテンパイを崩す。
落ち着いている。この極限に近い状況の中で押すべき牌は押し、引くべき牌は引く。
しかし無情にも薬王寺のハイテイツモは。裏ものって6000オール。
これで薬王寺が優勝ポジションに。この半荘で何度目かわからない逆転劇。

南4局4本場
牧野が逆転のリーチを入れるも流局。


第1回、関西チャンピオンシップ優勝は薬王寺重成!!!!

実際、この決勝戦を通じて薬王寺は最も手が入っていた。しかしその手を生かし、アガリに結びつけたのは薬王寺の攻めがあったから。危うい場面もあったが、「俺が優勝するんだ!!」という強い意思を1番感じたのは薬王寺だった。
これからも関西の、いや麻雀界を背負って立つプロになってください。
おめでとうございます。

最終戦の最終局まで優勝者がわからない決勝戦はそう多くない。
選手はとても疲れる戦いだっただろうが、見ている方もまた痺れる対局だった。
その対局を作り上げた牧野、中島、比嘉。
牧野にあと1牌が違う順で来ていたら。オーラスで手が入っていた比嘉、中島。この手が3、4回戦で来てくれれば・・・、いや最終戦でもほんの30分前に来てくれたら全く違う展開になっていたであろう。
その貪欲さと行動力でまた必ず関西チャンピオンシップを狙いに来て欲しい。

トータル結果
薬王寺 +70.1(+139.4)
牧野 +24.1(+69.8)
中島 ▲28.6(▲52.3)
比嘉 ▲66.6(▲159.9)




                                                                             (文:角谷ヨウスケ)

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