順位
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名前
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TOTAL
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第1節
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第2節
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第3節
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1位
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眞崎 雪菜 |
169.5
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44.9
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142.6
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-18.0
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2位
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後藤 昌子 |
-12.5
|
10.8
|
-124.7
|
101.4
|
3位
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櫻井 はるか |
-44.7
|
-137.3
|
161.1
|
-68.5
|
4位
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大澤 ふみな |
-112.3
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81.6
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-179.0
|
-14.9
|
各節5回戦 計15回戦
今年で5回目を迎える女流雀王決定戦。
現女王眞崎を含め、今年は当協会でデビューした選手ばかりのフレッシュな顔合わせとなった。
創設から5年の歳月が流れ、女流の選手層も厚くなり、勝ち上がるのが厳しくなったことの表れか。
よく「華やか」とか「華麗」とかと称される女流戦。
確かに「華やか」であるが、ただそれだけでは物足りなかろう。
時には「美しく」、時には「激しく」、そして時には「力強く」…。
元来、人はそれぞれ性格や考え方が異なる。
無論、麻雀においても千差万別の考え方、戦い方があろう。
充実した闘いの成果として花が咲くのであれば、それは個々の「花」の咲かせ方。
今、自分が表現できる自分の「花」の咲かせ方を4人ともが実践し咲かせた「花」を競い合い、
最も美しく、大きく咲き誇った「花」が優勝という栄誉を受けてほしい。
そして、咲いたすべての「花」に賞賛の声がある戦いであってほしい。
2月10日(土)決定戦初日
まず最初に会場に現れたのは現女王眞崎であった。
昨年は最終日の5回戦だけで380Pものビハインドをはねかえし大逆転優勝。
今回は挑戦を受ける立場となって実力の真価を試される時か。
緊張しない性格とは本人の弁だが、なるほどかけらも見当たらない。
次に会場に現れたのは後藤。
予選では、辞退による繰り上がり。本戦では「最終戦終了時卓内3位」
別卓の結果待ちというほぼ絶望的な状況であったが、奇蹟的にクリア。
まさにミラクルガール。今期1番のダークホース。ちょっと緊張気味の面持ちに見える。
次は大澤。最も明るく会場入りしたのは彼女。
協会に入ってまだ2年であるが、着々と結果を出している。
今年は本戦からの登場で、最終戦を迎える時点で唯一の当確ランプがつくほどの圧勝。
中盤での手組みの選択がうまく、攻める時に豪快に攻めきることができるのが彼女のよさ。
見かけによらず?神経質かと思ったが、今日はそんな感じはみてとれない。
最後は櫻井。
唯一の関東以外からの選手。予選・本戦と10日以上もの対局日の度に関西から上京。
彼女についてとにかく印象が強いのは、麻雀の中身も動作もとにかくスピーディ。
ピンと伸びた背筋から素早い動作で躊躇ない攻撃を繰り出してくる。
姿勢が崩れた所を見たことがない。こちらも緊張はあまり感じられない。
定刻の11時。立会人の合図のもと、決定戦初日が静かに幕を開けた。
1回戦 後藤→大澤→眞崎→櫻井
先制点は後藤。
配牌から対子のダブ東を10巡目にポンしてテンパイすると13巡目にツモ和了。
ポン ツモドラ
幸先よい2,600オール。一番緊張気味に見えた後藤に最初の和了。
これで少し落ち着いて対局できよう。
しかし、1回戦のトップは大澤。東2局の親で連荘。
2,000オール、3人テンパイ、4,200オールで4万点を超えるとそのまま逃げ切り。
2着争いは接戦だったが、南2局に2,000・4,000をツモった眞崎が制した。
大澤 56.6 眞崎 9.4 後藤▲22.9 櫻井▲43.1
2回戦 眞崎→櫻井→大澤→後藤
東1局に4,000オールを和了の眞崎。東3局にも11巡目に次のリーチ。
ドラ
場にはピンズが安く、は1枚切れ。何の躊躇いもなくリーチに踏み切る。
これに飛び込んだのは親の大澤。手牌はドラ含みの充分形のイーシャンテンでは止まりようがない。
一発に裏ドラが乗って12,000。これで眞崎、このゲームは5万点越え。
しかし東4局に後藤が連続和了。
リーチ ロン ドラ 裏 +12,000
ロン ドラ 裏 +12,000(+300)
リーチ ロン ドラ 裏 +5,800(+600)
これで後藤、眞崎を巻くってしまう。
実はこれらの和了、すべて櫻井からの出和了。
0本場は自分もテンパイしていたので致し方なしともいえるが後の2つは防ぐこともできたもの。
ちょっともったいなかったか?
後藤はオーラスにも2,000オールを和了して6万点越えのトップ。
後藤 58.6 眞崎 40.0 大澤 13.9 櫻井▲112.5
3回戦 大澤→櫻井→眞崎→後藤
先行したのは大澤。東1局に連荘。
4,000オール、1,100オール、2人テンパイ、2人テンパイで45,000点。
これを追いかけたのは眞崎。東1局4本場に1,300・2,600をツモ和了すると、東3局には4,000オール。
さらに南1局には2,000・4,000で大澤を逆転。
眞崎の猛攻に押されっぱなしに見えた大澤だが、逆転されて目が
覚めたか南2局から3連続和了。
南2局 リーチ ツモ ドラ 裏 13,00・2,600
南3局 リーチ ロン ドラ 裏 5,200
南4局 ポン ツモ ドラ 裏 1,300・2,600
眞崎、どうしてもトップが取れず3連続2着。
大澤 87.7 眞崎 51.3 後藤▲6.8 櫻井▲132.2
4回戦 櫻井→後藤→眞崎→大澤
小場で進んだ南3局。3着目の後藤が以下のリーチ。
ロン ドラ 裏
放銃したのは、2着目の眞崎。トップ目とは3,600差で親番。
七対子の単騎でテンパイしていたがに待ちかえして放銃。
どちらも厳しい状況に見え、ドラもない手牌ゆえテンパイをはずした方がよかったように思えたがどうか。
結局これが決勝点で後藤がトップ。
大澤 97.9 後藤 47.5 眞崎 29.9 櫻井▲175.3
5回戦 後藤→櫻井→眞崎→大澤
もし大澤が優勝できなければ、相当悔いが残るであろうと私は感じたのがこのゲーム。
東4局に12,000を和了し、南1局に700・1,300を和了して
この時点で持ち点が41,700。2着目の親番は落とし、自分がラス親。
初日を気分よく終えるには絶好の展開であったはずである。
しかしふとしたことから、事態は急変する。
南2局、4巡目に七対子含みの下記のイーシャンテン
ドラ
そして、直後に下家から打ち出されたをポン(打)。
特にまずい仕掛けとは思わない。トップ目でもあるし打点が必要な局面ではない。
さっさと局を進めればよいのだから。
ただ結果は最悪ともいえる方向に転んでしまった。
大澤のポンした直後にテンパイが入ったのは櫻井。
今日ここまでいい所なくきてしまい、この回もラス目。
ようやく訪れたチャンスに威勢よく即リーチとする。
リーチ ロン 12,000
文脈からして放銃したのが誰かはご察しの通りで大澤。
さらに1本場には1,500、2本場には4,800、3本場にはノーテンバップ
を支払い、たちまちラス争いまで落ちてしまった。
そして苦しかったこのゲーム、ここまで息をひそめていた女王眞崎がついに攻めに回ってきた。
リーチ ツモ ドラ 裏
高めのを一発でツモりあげ3,000・6,000。
ラス目から一気にトップ目に浮上。
ただし、まだ僅差。安心できる状況ではない。
なかなかトップがとれず2着ばかりの眞崎、ここまで3ラス、どうしてもひとつトップを取ってマイナスを減らしておきたい櫻井。
両者オーラスにテンパイでのめくりあいとなる。
ドラ カンドラ 裏 カン裏
(櫻井)
カン リーチ
(眞崎)
2着目櫻井とトップ目眞崎との間は2,200。
櫻井から見て3着目とは1,700、ラス目とは2,100の大接戦。
非常に難しい局面と思ったが、櫻井の選択は「リーチ」であった。
このリーチを受けて、放銃すればトップからラスまで落ちる可能性のある眞崎。
この厳しい状況下でも迷うことなくツモ切った牌は。裏が乗ればラスであったが、乗らずの2,300。
終了後「トップが取れないよぉ」と開口一番言っていた眞崎であるが、
内心ホッとした2着だったのではないか?
大澤 81.6 眞崎 34.9 後藤 10.8 櫻井▲127.3
2月23日(金)決定戦2日目
暖冬と言われる今年でなければ、雪とでもなっていようか。
小雨の降る中、決定戦2日目は行われた。
6回戦 大澤→櫻井→後藤→眞崎
初日は一人沈みとふるわなかった櫻井だが、
約2週間のインターバルでいくらか本来の持ち味を思い出したか?
ほんの少し大澤リードで迎えた南2局。13巡目にこのテンパイが入る。
ドラ
場には2枚見えており、しかも上家大澤にものテンパイがすでに入っている。
和了はかなり厳しいかに見えたが、16巡目にスッと卓上に置かれた牌は。均衡を破る4,000オール。
連荘の次局。13巡目に3着目後藤からリーチ。
これを受けて櫻井、確かに手牌はタンピン系の十分なイーシャンテン。
ただし、巡目の深さもさることながら、2着目大澤との差は約12,000点。
現物には窮さない手牌だっただけに我慢した方がよかったのではないか?
一発でを放銃して8,000点を献上。またしても混戦。裏が乗らなかったのは幸いか?
今度は後藤が微差ながらトップ目。しかし今日の櫻井は一味違う。
7巡目に下記の手牌でテンパイ後、9巡目に意を決したかリーチ。
ドラ
リャンメンにふりかわる牌はフリテンとなる牌が多く、結果としてこのリーチが大成功。
を暗カンした後をツモ。カンドラが、裏ドラがで3,000・6,000。
オーラスを迎えての並びは、櫻井→後藤→大澤→眞崎。
眞崎がひとり取り残された状況だったが、このゲームずっと辛抱し続けた眞崎がコツコツと動き始める。
二人テンパイ、1,500は1,800、500は700オールと小刻みに加点し
迎えた3本場、5巡目に独特のモーションからリーチを放つ。
ドラ
誰もが前に出にくい状況で一人旅。10巡目にをツモあがると裏がで4,000オール。
ついにこの時点で櫻井を400点かわしてトップ目にたってしまう。
ようやく4本場に大澤がラス抜けの和了で連荘が止まったが
眞崎、初日にどうしてもとれなかったトップを最後は他力とはいえ取ることができた。
これで眞崎はこの時点でトータルトップに躍り出る。
眞崎 87.4 大澤 63.7 後藤▲35.9 櫻井▲115.2
7回戦 櫻井→大澤→後藤→眞崎
眞崎、櫻井に軽い和了が入って迎えた東4局、突然大物手が炸裂する。
西家大澤、8巡目に次のテンパイ、
ポン ドラ
ドラのを打ってのテンパイ。ここに11巡目親の眞崎が次のリーチを放つ。
大澤の仕掛けはホンイツとは断定しにくい河をしており、
また脇の二人は手牌がまとまらずに引き気味に打っているように見える。
1対1のめくりあい濃厚と踏んでのリーチだろう。
このめくりあいの軍配は眞崎。大澤の放銃牌は高めの、しかも裏ドラは。
この24,000で眞崎は6万点超え。しかし、この和了を境に大打撃戦が始まる。
まずは次局に大澤が6巡目に3,000・6,000。
南場に入り櫻井が2,000オール、4,000は4,100オール。
安泰かと思われた眞崎のリードはたった3局、放銃なしのままわずか4,000ちょっとに。
あせりが多少はあったか?次局眞崎は自ら3フーロしてさばきにかかるがそこに大澤が次のリーチ。
ドラ
眞崎、これに一発で飛び込み8,000は8,600。ついにトップから陥落。
この後は櫻井が落ち着いてヤミテンで和了を拾い、そのままの着順で終了。
眞崎 105.1 大澤 40.2 櫻井▲49.3 後藤▲96.0
8回戦 櫻井→大澤→後藤→眞崎
今回トップならば負債を完済できる櫻井。このゲームでも東2局に次の手牌
ドラ 裏
イーシャンテンから5巡目に、を引き込んで切りリーチとすると一発でをツモって3,000・6,000。
まさに極上の仕上がり。
対照的に今日の大澤は歯車がかみあわない。
東3局に6巡目で次の手牌
三暗刻などの対子手も三色同順も狙える手牌だが、大澤の選択は打。
9巡目にをツモって打としたところに眞崎がリーチ。
リーチと言われた瞬間、大澤の表情が曇ったような感じがしたが
この直感は正しく、眞崎のリーチは次の通りの待ち。
次巡、眞崎のツモ切ったをポンして、打で放銃。
「そりゃそうか」とでも言いそうな顔で点棒を支払う大澤。
始めの手牌で何を切るかは選手個々の選択にまかせるとして、
1手間に合わなかった手牌をどう考えたのであろう?まして相手はトータルトップの眞崎。
自重する選択肢はなかったか?
結局この日1日、大澤は歯車の狂ったまま終えてしまう。
眞崎 114.4 櫻井 6.0 大澤▲2.8 後藤▲117.6
9回戦 眞崎→後藤→大澤→櫻井
少し長めの休憩を挟んでのこの日の後半戦。
追う3人は何を思って卓についたであろうか。
その考えが何であったにしても、あっというまの出来事でこのゲームは眞崎リードで始まる。
次のリーチを一発ツモで6,000オール。
ツモ ドラ 裏
協会ルールに限らず、一発裏ドラアリのルールでは理想的ともいえる跳満。
3人を萎えさせるのには十分な和了で、このゲームはこのまま眞崎がトップで終える。
そして3人にとってはトップを取られるだけでは済まされないゲームとなってしまう。
事件は東3局。眞崎に次の配牌。
何の変哲もない配牌だが、ここからと引き込んで、4巡目にをポン。
ポン
さらに2巡後を引いて小喜和のイーシャンテンに大化けする。
ここに間が悪いことに大澤にテンパイが入り、リーチをかけてしまう。
そして仕掛けとリーチに挟まれた南家櫻井。切る牌に窮して、対子だったを打ち出してしまう。
当然、眞崎はポンしてテンパイ。
思いついたようなのポン。リーチがなければ出なかったハズの。
異様な雰囲気の中、しばらく大澤、眞崎のツモ切りが続き、流局間際の18巡目、
眞崎が一際耳に残る申告を口にする。8,000・16,000。
結局このゲームの眞崎のプラスは100P越え。
そして、3人にとってはポイント以上に精神的にやっつけられたゲームではなかったか。
眞崎 227.7 櫻井▲37.4 大澤▲72.7 後藤▲112.6
10回戦 櫻井→後藤→大澤→眞崎
追う立場にとってここはまさに土俵際であろう。
眞崎にトップを取られれば、ほぼ終戦。
また、自分がトップを取らなくては相当にきびしく、願わくば眞崎をラスにしたい。
3人が同じテーマを胸に秘めて臨んだ10回戦、これを成し遂げられたのは
今日、唯一眞崎と五分にわたりあえている櫻井であった。
開局早々4,000オールで先行すると、小刻みに加点。
オーラスを迎えての持ち点状況は
櫻井 47,200 後藤 19,700 眞崎(荘家) 16,800 大澤 16,300
点棒には若干のゆとりがあるとはいえ、うかうかしていては眞崎の連荘を誘発しかねない。
この局で願わくば眞崎をラスに落として決着させたい。
その櫻井、7巡目に次の手牌
ドラ
打でヤミテンに構え、ツモか眞崎からの直撃を待つであろうと私は思ったが、
櫻井の選択は打のリーチ。
選択の行方にドキドキする間もなく、あっさりと決着はつく。
2巡後にツモ。
選択の是非はさておき、櫻井は最良の結果を取ることに成功する。
これでまた明日も闘える。
眞崎 177.5 櫻井 33.8 大澤▲97.4 後藤▲113.9
2月24日(土)決定戦最終日
女王眞崎にとって昨夜はどんな夜だったであろうか。
昨年は大きなマイナスをかかえて迎えたこの日だが、今年は逆に大きなリードを持って迎える。
現実に大逆転を演じた張本人なだけに、リードを守ることの難しさも知っているはず。
緊張しない性格と自称しているのだから、単なる杞憂か?
11回戦 大澤→後藤→眞崎→櫻井
眞崎にとって残りのゲームのすごし方はいたって簡単。
トータル2着目にトップを取られないというのが、まずこのゲームでの最優先事項だろう。
東1局、早くも眞崎にとって絶好の展開となる。
櫻井から大澤に12,000。
あとは櫻井をこのままラスにしておけばかなり楽になる。
実際、無理なリーチなどは控え、安くても確実に和了を拾い
配給原点近辺の点棒を維持し続ける。
オーラス、後藤が櫻井から8,000を和了したのも、トップがどちらでも関係ない。
ただトータル2着目との点差が広がっただけ。
眞崎 156.3 櫻井▲23.8 後藤▲54.0 大澤▲78.5
12回戦 眞崎→後藤→櫻井→大澤
あと4回。さすがに追う3人は眞崎にラスを引かせないといけない状況だろう。
そして眞崎としては、とりあえずラス回避が至上命題、あまり無茶な攻撃は仕掛けてこないであろう。
眞崎の8,000が東2局に出たものの、その後眞崎が無理せず構えた結果、
オーラスは3人の思惑が一致できているかどうかが問われる接戦の持ち点状況となる。
大澤(荘家)20,600 眞崎 25,900 後藤 30,400 櫻井 23,100
後藤としてみれば、ここはアガリトップ。是が非でもほしいトップを優先したいところ。
大澤からしてみれば、眞崎を直撃でラスに落としてから連荘したい。
櫻井からしてみれば、マンガンつくって出来れば眞崎から
悪くても眞崎が3着となる大澤からの出和了でトップをとりたい。
しかしこのゲームが終われば残りは3回戦、いや3回戦もある。
いやらしいことを書くようだが、後藤の立場からは今後もまだ必要な「結託のための信用」を、大澤に対し見せにいってもよかったのではないだろうか。
大澤にすべてを託し、眞崎からの直撃、もしくは大澤が眞崎をかわしてからトップを取りにいってもよかったのではないか?
目先のトップを優先しにいったのであろう後藤、次の手牌から仕掛け始める。
ドラ
まず7巡目にをポンして打。続いて8巡目にをポンして打。
でこのテンパイ。
ポン
そしてこのテンパイの後、眞崎が動き出す。をでチー。
役はまだ不明。点数も不明。
しかし、3人からしてみれば眞崎に2着をとられてはこの後が相当きつい。
少なくとも大澤はそう考えていたに違いない。
これらの仕掛けを見ながら、大澤は躊躇いつつもリーチと発声する。
リーチすることで相手の後退を願っていたか…。
しかし、リーチとしても眞崎は無筋を打ってくる。相当まずい。
そして後藤がツモ切ったに、大澤はがっかりした感じで「ロン」の声をかける。
これでは、大澤と後藤の立場が変わっただけ。眞崎は2着のまま。
むしろトータルラス目の大澤がトップの方が微妙な差とはいえ眞崎に
とってはラッキー。
後藤、は大澤の現物なだけにここは思い直して、まわってほしかった。
なんとか眞崎からの直撃を…、と大澤が必死の連荘を試みるも
願いは叶わず、眞崎が2着を確保する和了を取る。
眞崎 165.4 大澤▲27.4 櫻井▲42.3 後藤▲95.7
13回戦 櫻井→後藤→大澤→眞崎
東1局、いきなり櫻井に大物手。
ドラ
ツモれば順位点込みで一気に100Pは縮まる。11巡目にテンパイ即リーチとする。
しかし願いは虚しく、リーチの時点で待ちは純カラ。
次局は大澤にチャンス手。
配牌からドラの、、自風のと対子で入っており、3巡目にから仕掛け始める。
そしてさらに次巡、を暗刻にするがなんとまだこの時点でターツ不足。
ポン ドラ
もう少し手組みが整ってからポンしたかっただろうが、実はこのは2枚目。
2巡ツモ切りが続いたところで眞崎からリーチが入る。
なんの躊躇いもなく即リーチ。は大澤の河に1枚。
和了に自信があったのか、いつもよりもさらに堂々としている。
結局、大澤は一応テンパイはしたものの、うまく手牌はまとまらず、実質、眞崎の一人旅。
流局かと思われたが、16巡目にをツモって2,000・4,000。
こうなってしまうと、またしても眞崎の思う壺。
無理せず、ラスを回避するには十分の持ち点。
オーラスを、ラスまで15,000点も離れた2着で迎えると優勝に向けてこれを決定打とするべく8巡目にリーチを放つ。
ドラ
決着までは時間がかからなかった。わずか2巡後、あっさりツモ。
裏もで8,000オール。
観戦者までもが「参りました」といわんばかりの表情。
今年の決定戦はここで事実上の終戦を迎えたといってよい。
眞崎 235.9 大澤▲48.4 後藤▲89.3 櫻井▲98.2
14回戦 眞崎→大澤→後藤→櫻井
見ているものは終戦と思っても、対局しているものはそうはいかない。
確かに心の中ではそう思うかもしれないが、そういった状況の中で
可能性がある限りそれを追求し、しっかりと打って負けなければならない。
またその経験が必ず明日に生きてくる。
東1局に櫻井が眞崎から8,000を取り上げる。
ポン ロン
ドラ
ダメでもともと、大三元まで狙っていきたいところだが、
眞崎からリーチされていてのテンパイなので致し方なし。
それでも眞崎ラス目の形にはなった。あとは3人がかりで眞崎の点棒を多く削らなければならない。
眞崎とすればトータル2着目の大澤ならまだしも、櫻井がトップならば
多少点棒を失ってもかまわないので、普通に前に出てくる。
ゲームは櫻井トップ目のままオーラスに入る。
櫻井(荘家)38,300 眞崎 22,700 大澤 17,100 後藤 21,900
私が後藤、大澤の立場であったらどうするであろうか。
無論、それが必ず正しいとは思わない。
が、優勝の可能性を極力残すため、またこの並びとなっていることに儚い望みを託し、
櫻井が連荘で眞崎から点棒を削り、ラス目に落としてくれるのを待つであろう。
当然、役満クラスの大物手の直撃チャンスを伺いながら。
実際には、後藤が眞崎から1,000点を和了し、後藤が2着に浮上して終了。
しかし、逆転優勝はあまりにも非現実的なので責められるようなことではないか。
眞崎 217.6 櫻井▲39.9 後藤▲86.4 大澤▲91.3
15回戦 後藤→眞崎→大澤→櫻井
一応、逆転の条件ぐらいは頭に入れておくべきだろう。
トップラスは当たり前として
櫻井は177,500点差、後藤は224,000点差、大澤は228,900点差を眞崎に対してつけなければならない。
当協会のルールでは役満の複合がある(もちろんトリプルも)。
とはいえダブル役満直撃圏内までいくのも厳しい。
予選から通して奇蹟をおこし続けてきた後藤。
今期のラッキーガール、何かミラクルを起こしてくれそうと期待した後藤。
奇蹟ともいうべきものは確かに起こった。
それは南1局の出来事。配牌を取り終えるとしばし停止。
「ツモ」との発声に会場全体が驚く、確かに天和。
ドラ
あと2回戦ぐらい早くでていれば、また違った展開があったであろう。
時すでに遅し…。
この天和をもってしても、まだあと160,000点ぐらい差を縮めなければならない…。
いよいよオーラス。ラス親櫻井、テンパイ、テンパイ、1,000は1,200オール
6,000は6,300オール、テンパイと連荘したが5本場についに眞崎が和了してゲームセット。
ロンドラ
今期の女流雀王は眞崎の優勝(連覇)で幕を閉じた。
昨年は最終日の大逆転優勝。展開の利もあったと思う。
しかし今年は終始、安定した闘いぶりでのまさに圧勝。
スコアからは想像しにくいが実は眞崎、15回戦中トップは3回しかない。
オカがある当協会ルールでは致命的かと思われるが、ラスはどうでもよかった最終戦を含めて2回だけ。
素点だけで10万点以上浮いていた。
とにかく無駄な失点が少なく、和了に結びつかないと判断した局での徹底した守り、逆に自分の和了に自信のある局での豪快な攻め、
いわゆる「押し引き」のよさが際立っていたように思う。
性別関係なく、まさに実力・実績共に当協会を代表する打ち手の一人と言って間違いない。
間もなく新しいシーズンに突入する。
年々レベルアップが顕著な女流戦。
眞崎を倒すのは再挑戦組なのか、はたまた新興勢力なのか。
来期もまた目が離せない。
文:二見大輔
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