順位 |
名前 |
TOTAL |
2日目まで |
7回戦 |
8回戦 |
9回戦 |
10回戦 |
1 |
矢島 亨 |
308.2 |
154.0 |
55.8 |
71.2 |
-42.4 |
69.6 |
2 |
坪川 義昭 |
178.5 |
147.8 |
-23.2 |
-15.9 |
50.2 |
19.6 |
3 |
吉田 航平 |
-201.5 |
-150.8 |
-45.5 |
18.2 |
10.1 |
-33.3 |
4 |
江崎 文郎 |
-285.2 |
-151.0 |
12.9 |
-73.5 |
-17.9 |
-55.9 |
|1・2日目観戦記|【3日目観戦記】|最終日観戦記|
【雀竜位決定戦 3日目観戦記】
6回戦開始時のスコア
矢島154.0
坪川147.9
江崎▲150.9
吉田▲151.0
★7回戦
オープニングヒットは坪川。
親の江崎の3巡目平和リーチに対して果敢に勝負しドラのとのシャンポンで追いかけ満貫をツモアガる。
ツモ
ドラ
裏ドラ
なんと坪川はここまでアガリの平均打点が約8000点と驚異的な数字を記録している。
タイプとしては守備寄りなイメージだったのでこの辺りは決定戦仕様にしてきた印象だ。
・・・前回と同じような展開か。
と江崎の立場では思ってしまいそうだが次局では見事なアガリを見せる。
東2局 北家 江崎
ドラ
4巡目にテンパイだがを切ってテンパイを外し
をツモると三色を見切って打。
次巡を引きを一発ツモ。なんとこれが裏裏で、倍満。
苦しい展開が前回続いた中でこれは一安心できたか。
しかし、坪川が2600オール。
続いて矢島が4000オールで江崎に並ぶ。
江崎は追撃の糸口が上手くつかめないまま南場の親を迎える。
残り半分の半荘ではあるが300差が上に二人いる場合、2人とも捲るのは至難の業である。
この親番でなんとかしたい。
意気込んだ江崎に与えられた配牌がこちらだ。
「・・・・・・・うん、無理。」
と心の中で思ったかは定かではないが、江崎はいつものポーカーフェイスでを切り出していく。
トップ目の矢島が5巡目にを仕掛けて無慈悲な-のテンパイ。
次巡の江崎が、
ドラ
なんとか少しは形になったがまだまだ厳しい。
これは矢島のアガリと誰しもが思ったが-がなかなか顔を出さない。
江崎が追いついたのは12巡目。
チー
ドラ
矢島がテンパイなのは分かっている。
頼むテンパイ維持できるなら流局でもいいと、願いが叶ったか矢島がをつかみ2900のアガリ。
続く親番で早々にイーシャンテンになりドラのをリリースする江崎。
しかし、イーシャンテンからが長く吉田がリーチ。
ドラ
リーチ宣言牌のが愚形のフォローとするならばを先切っての両面固定などはよくある話だ。
普段の江崎なら恐らく降りたであろう。
しかし、2連覇した雀竜位以降もさまざまな舞台で強者と対戦してきた男はここで切りを選択した。
強い意思でも押しハイテイ直前でテンパイすると一発とハイテイ狙いのツモ番なしのリーチ。
しかし、これは実らず。
矢島と江崎がさらに加点し、オーラスを迎えた。
伏せることができればトップの矢島だが坪川、吉田の2軒リーチに挟まれ長考に入る。
みなさんなら何を切るだろうか。
坪川の手は点差的にもチートイツが濃厚、ならばとは切れない。
吉田も安いことはないだろうがアンパイはない。
矢島が導き出したのは2人に無筋だが2巡しのげる打。
坪川の手は実際にチートイツの単騎だったがここは吉田がツモ。
7回戦は矢島がトップ。
★8回戦
坪川がじっくり河を見つめる。
ソーズの上に狙いを定め、切りリーチ。
これはがなんと5枚当たり牌が残っている。
5/18ならほぼ当選か。見事にをツモリあげる。
ツモ
ドラ
裏ドラ
東2局1本場 南家 坪川
ドラ
ここから打。
将来的な守備と高打点の最終形を見据えた打牌だ。
去年の決定戦の坪川とは違う選択を見せるのが今年へ懸ける想いを感じさせられた。
坪川の独走になるかと思ったがここから矢島が圧巻のアガリショーを見せ付ける。
東3局 南家 矢島
ドラ
を一発ツモ。
東4局1本場 親矢島
ポン
ドラ
江崎からロン12000。
南1局
ロン1600で坪川のドラ3枚のテンパイを交わす。
一気にトップ目に立ち、三者の望みを打ち砕いていった。
南2局
東家から
吉田 26300
坪川 27000
矢島 46900
江崎 ▲200
親が落ちた江崎は自分にミッションを課した。
1.吉田の親で矢島をまくらせる。
2.その間は上家の矢島を牽制する。
3.吉田がトップになった後に3局で坪川をまくる。
吉田が2600オールをアガった後に、吉田のホンイツに連続アシストでさらに2600オールを加点させる。
さらさらに吉田が坪川から5800をアガり、ついに矢島を捉えた。
江崎のミッションの第2段階までは完了。
第3のミッションは坪川をまくることだ。
しかし、このミッションは完遂することなく葬られることになる。
それがこの一撃だ。
ツモ
ドラ
裏ドラ
坪川、逆襲の跳満ツモ。
オーラス
東家から
矢島 41800
坪川 28100
吉田 41900
江崎▲11800
江崎・吉田軍は吉田をトップ。
坪川は跳満ツモでトップを狙いつつ、無理そうなら吉田をトップにする。
しかし、吉田がアガることができず迎えた2本場に矢島が鉄槌を振り下ろす。
リーチツモ
ドラ
裏ドラ
これで矢島の2連勝。
矢島は苦悩していた。
2年連続の雀王戦Aリーグでの降級争い、矢島の評価が下がったと言うものもいた。
A リーグまでストレート昇級
雀王決定戦進出
日本オープン制覇
これだけの成績を残してきた矢島が初めてといっていいほど自分の麻雀に疑問を感じた。
どうすれば勝てるのか。このままでいいのか。
矢島は雀力は当然高い。しかし、持ち前のポジティブな性格からか、時折とてつもない放銃をするときもあった。
「読み」
矢島が出した答えは読みの精度を上げることだった。
繊細さを身に着けるため矢島は読みに優れているAリーグの田内等に教えを請い、実力を磨くことに時間を費やした。
最初はリズムも乱れ、戦慄の速射砲と言われる矢島の小気味良いリズムも狂った。
しかし、リーグ戦後からの約5ヶ月後に持ち前のセンスで吸収し、過去最高といえる状態でこの場に立っている。
私ごとではあるが、江崎・矢島とは毎週「やじ研」と呼ばれる勉強会を行っていたりと親交がある。
2日目の終わりに個人的に連絡をとると、
「前より強くなってる」
と矢島自身、今のスタイルには手ごたえを感じているとのことだ。
★9回戦
なんとここまでトップは矢島、坪川しかとっていない。
このポイント状況になれば江崎、吉田軍も実質の降参か。あとは自力でトップをとり続けるしかない。
矢島 281.0
坪川 108.7
吉田 ▲178.3
江崎 ▲211.4
東場は大きな動きはでず。
南3局で坪川が膠着を破る満貫ツモ。
ポン
ツモ
ドラ
オーラス。
追い詰められた江崎はここでを切りフリテンリーチを打つ。
吉田から追いかけリーチ後に裏目のをツモるが被弾覚悟でを河に置いた。
流局してテンパイノーテンの差で坪川との差を詰めるためだが、裏を返せばもうそこまでやらなければいけない状況になってしまっているということだ。
次局、江崎が6巡目リーチ。
ドラ
坪川も仕掛けてテンパイを入れる。
チー
ドラ
困ったのは吉田、押すしかないが何を切る。
ここは前巡に自分でを切った筋を活かし切りでテンパイ。
見事に坪川と同じテンパイにすると、指に最高の感触が伝わった。
ツモ
ドラ
大きな大きな4000オール。
吉田 32300
坪川 28000
江崎 22100
矢島 17600
吉田としては最高の並びができた。
吉田テンパイだがどうする?
坪川が長考してドラのを河においた。
よほどテンパイ気配に見えるのだと思う。
ノーチャンスのを並べての連打。
これが吉田が描いたこのままの並びで終わらせるプランだった。
しかし、このにまさかの声がかかる。
ドラ
ロン
点数が必要な者が二人ではドラのは河に出ないと判断してツモ切った坪川の英断だった。
(はツモか吉田からの直撃でトップ)
吉田にとっては坪川がテンパイと見れば逆に直撃もあるため、思いきってリーチしてさらに加点を目指す選択もあったが最高の並びであることが逆に枷になってしまったか。
9回戦は坪川が矢島とのトップラスを決めた。
★10回戦
江崎、吉田はここで3.4位なら五連勝でも優勝できない可能性まである。
仮に矢島とトップラスを5回決めても坪川をまくれない可能性があるからだ。
それでも二人はやるしかないのだが・・・
東3局
矢島が得意のホンイツを決める。
ポン
ツモ
ドラ
ドラの待ちなら跳満だがはまだ山にあると判断しテンパイ後に即ツモアガリ。
この後は坪川が江崎から8000。
続く親番で4000オール。
南1局1本場
をヘッド候補とした切り?
2度受けを嫌う切り。
切りなんてのもある。
坪川は2度受けを嫌う落としを選択したがなんとこれがテンパイもできず。
矢島の最終手番でツモ。
は4枚見えているが矢島はを切って降りを選択。
矢島の思考は、
1.親の坪川がの両面を手出しで序盤から早いと感じている。
2.手出しのでイーシャンテンと思っていたところに、手出しが2枚切れのでチートイツも否定。
3.最終手出しがでテンパイ濃厚。ドラも見えていない。
4.ドラのとは打てない。
以上の条件から矢島はを打たなかった。
後に聞くとは持ってくる前から打たないと決めていたらしい。
今回は当たりではなかったがこの繊細さが磨いてきた成果なのだろう。
矢島はオーラスも坪川を交わす2600オールをアガリ、この日三勝目を飾った。
3日目終了時スコア
矢島 308.2
坪川 178.5
吉田 ▲201.5
江崎 ▲285.2
江崎、吉田にとって最終日は辛い戦いになってしまったが手が入らないなか試行錯誤を重ね二人を何度も追い詰めたことは称賛に値する。
最終日は矢島が逃げ切るか、または坪川がここから捲ることができるのか。
二人のマッチレースの行方に注目したい。
(文・浅井
堂岐)
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