順位 |
名前 |
ポイント |
1回戦 |
2回戦 |
3回戦 |
4回戦 |
5回戦 |
1 |
金 太賢 |
92.1 |
13.1 |
53.8 |
66.6 |
13.0 |
-54.4 |
2 |
鈴木 たろう |
43.4 |
-7.9 |
5.2 |
-20.8 |
55.1 |
11.8 |
3 |
田内 翼 |
1.6 |
60.8 |
-16.9 |
-56.7 |
-48.2 |
62.6 |
4 |
角谷 ヨウスケ |
-138.1 |
-66.0 |
-42.1 |
9.9 |
-19.9 |
-20.0 |
【1日目観戦記】 | 2日目観戦記 | 3日目・最終日観戦記 |
【Aリーグ1位】鈴木たろう
7年連続9度目の決定戦。スマホゲームのガチャならレア扱いもされない出現率である。
前年角谷に大逆転を決められた屈辱を今日まで忘れた日はないだろう。
ついに迎えた再冠の時、一番熱いものを秘めているのはやはりたろうか。
【Aリーグ2位】田内翼
Aリーグ1年目、年齢も28とリーグ最年少ながら即決定戦進出を決めた。
年齢に似合わず、ただし体格からは割りとしっくりくる安定感のある麻雀が持ち味。
ヴェストワンカップ連覇の実績もあり大舞台の経験も十分。勝つための理由はいくつでも持っている。
【Aリーグ3位】金太賢
11期以来5年ぶりの決定戦進出。
しかし9、10、11期と連続での進出経験もあり、逃していた近年も常に上位のスコアを維持していた。
そんな金の麻雀は、常に変化しているイメージが強い。この決定戦でも、人生で一番強くなっている金が見られるはずだ。
上記3名を迎え討つは、
【現雀王】角谷ヨウスケ。
『サボらない麻雀』と評されるその麻雀は全局参加とも取れる積極的な戦局への参加。
その独創性は見るもの多くを魅了し、去年の決定戦での大逆転劇を生み出した。
頂点にたった今も実戦はもちろん配信対局などを隈なく視聴する勤勉性を持つ。
どんな展開になろうとも、角谷を中心に進んでいくことは想像に難くない。
【1回戦】
開幕から角谷が魅せる。1000点の横移動で迎えた東2局。
このイーシャンテンからをノータイムでツモ切り。
「らしい」放銃で12000を献上すると親を迎えた金に7700、2000は2300と連続放銃となり持ち点は早くも3000点に。
流石にラスを覚悟しそうなところだが、ここからがサボらない男・角谷の見せ所である。
この4局連続のアガリで持ち点は32500点まで復活、トップ目の金まで一アガリまで迫ったものの自らの放銃で1回目の親流れ。
まだ東場が終了しただけであるが、早くも角谷麻雀全開である。
南1局、その角谷がチートイツのイーシャンテン。
他家の河から拾える情報が少なく、何より自分の河がまだそこまで変則的ではないため素直に切り。
しかし次巡のツモがでテンパイ逃し。
それでも4巡後にテンパイを果たしリーチと出るも、親のたろうから追っかけリーチが入る。
純カラ対4枚残りの勝負は正当な抽選結果となってしまった。
あのツモを捉えられていると、早い段階でイーシャンテンになっていたたろうの手順はおそらく変わらないので1巡早くたろうの河のを捕まえていただろう。結果的に手痛い敗着となってしまった。
南2局、角谷に代わりラスを押し付けられていた田内に反撃のチャンスが訪れる。
3軒リーチを一発ツモの6000オールで制すと次局は角谷からの12000は12300で一躍トップ目に。
そのままリードを保ち、見事初決定戦の初戦をトップで飾る。
流局無しの全16局に及んだ半荘であったが、その内15局の点棒授受に参加した角谷。
しかも東1局は他家の横移動で終了しているため、なんと15局連続参戦。
見せ場こそ多い半荘にはなったものの、スコアだけに目を向ければ嫌な立ち上がり。
1回戦スコア
田内 +60.8
金 +13.1
たろう ▲7.9
角谷 ▲66.0
【2回戦】
親の田内がドラ色のホンイツに向かう中、最初にテンパイを入れたのは金。
ドラもなく、三色とピンフの手替わりがあるためダマを選択。
金としては三色でリーチを打ちたいところだが、アガリ牌であるをツモってきても切りのフリテン高め三色リーチを打つ気満々であっただろう。しかしこの間に田内にマンズの2副露目が入る。
ここは流石に・・・とアガリを宣言。
そしてこのアガリを皮切りに、極端な小場進行が開始される。
東2局、親の金が2900をアガるとなんとそれが最高打点のままオーラスに。
全員が2万点台、親の角谷のみアガリやめがないため条件があるものの全員がアガリトップの局面。
そんな中、たろうが4巡目にして盤石の役有りリャンメン-待ち。
流石に勝負ありと思われたが、早いのはたろうだけではなかった。
親の角谷、待ちも打点も優秀ではないものの迷わずリーチで他家を押さえつけに行く。
そこに仕掛けの効くイーシャンテンの田内もノータイムで無スジのをプッシュ。
そして次巡に持ってきたで少考。
たろうのロン牌である。
親の角谷のリーチだけを見ればまだまだ無筋も多く、ワンチャンスの牌でもあるため勝負に値する牌に思える。
しかし角谷のリーチは手出しでの対子落としから完全安牌の切りリーチであるため、通常より好系リーチである可能性は高い。
また、たろうが字牌とはいえション牌のをノータイムで切ってきているため押しているように見える。
更にこの1巡でピンズメンツがすべてリーチに通ったため安牌も足りそうである。
これらの情報を総合的に判断し、なんと田内はオリを選択したのである。
そしてこの田内の判断が場に想像以上の影響を与える。
この絶望的な配牌をもらった金だが、親リーチ+たろうのダマテンをケアしながらもイーシャンテンまで漕ぎ着けた。
-はワンチャンスだが角谷のリーチに通っておらずドラ跨ぎの牌、は押しているたろうの数少ない無スジである。
ここで金は長考の末、打をチョイス。
そして同巡たろうが手出しでとすると田内もを合わせ打つ。
これに金が反応、カンでチーするとたろうのスライドを読み切り打でついにテンパイ。
早々に決着がつくかと思われた今局がまさかのハイテイまでもつれた。
そのハイテイをツモるのはこれも因果か金。
ここまで演出されては、もういるべき牌は一つしかない。
『そこにはいるんだよ』
金がこの半荘の最高打点となるハイテイ・タンヤオ・ドラ1の1000・2000のアガリで締め括った。
2回戦スコア
金 +53.8(+66.9)
たろう +5.2(▲2.7)
田内 ▲16.9(+43.9)
角谷 ▲42.1(▲108.1)
【3回戦】.
南1局1本場、ここでの金とたろうの両極端な選択の相違が実に面白い。
まずは親の角谷から早い巡目のリーチが入る。
このリーチ棒を含め三本の供託が出ていることもあり、たろうもフリテン含みを残しながらもここから切りで目一杯に構える。
」
さらに持ってくるを暗カンし完全に戦闘モードに入った。
この暗カンで困ったのは現在トップ目の金。
を切れば高めチャンタ三色のテンパイである。
しかしたろうが無スジを開拓しているおかげでの危険度が上がっており、たろうの暗カンによって親の打点も向上している可能性がある。
でアガれればこの半荘の決定打になりかねない手であるが、親への放銃はここまで積み重ねたリードを帳消しにしかねない。
長くAリーグ上位の成績を維持し、今尚協会ルールの研磨を続けてきた金が選んだこの局面の最善手は打であった。
一方のたろうはそんな金の葛藤を知る由もなく、対象的な進行を辿る。
もっとも嬉しくないツモでのテンパイから、無スジのを切ってフリテンリーチを決行。
結果は平穏無事に流局。
追う者と追われる者の、たろうと金の思考の違いが如実に現れた局となった。
南3局、ここでもたろうの代名詞の一つが見られた。
問.『南家のたろうのこれからの進行を答えなさい』
こんな問題があったとしたら、殆どの方が同様の答えを用意していることだろう。
答え.ダマテンにしアガリ牌をツモってきた場合はフリテンリーチを打つ
視聴者の期待に答える展開となったが、たろうにとっては想定外の動きが起こる。
四暗刻のイーシャンテンであった金がこのをポンしテンパイ。
これに捕まったのは田内。
ラス目の親番、かつタンピン含みのイーシャンテンから止めろというのは酷である。
金はこの6400でトップ目に立つと、オーラスに加点も成功し連勝を飾った。
実は南1局1本場、金が角谷のリーチに対してを切って追っかけていると角谷から一発でが切られ16000のアガリとなっていた。
流局後に二人の開かれた手牌と裏ドラを確認した金は、眼鏡が割れるかと思うほどのショックを受けたそうだ。
この見るからにアガリを逃した事実を後悔しないためにも、絶対に死守したかったトップ。
ポイント以上に嬉しい結果となっただろう。
3回戦スコア
金 +66.6(+133.5)
角谷 +9.9(▲98.2)
たろう ▲20.8(▲23.5)
田内 ▲56.7(▲12.8)
【4回戦】
トータルポイントが金の一人浮きの状態となっている現状。
まだ3者に焦りはないものの、このまま離されるのは流石に宜しくない。
そんな思いを余所に、金が気持ち良いハネ満で早々にリードする。
しかしこの状況を打開すべく、今まで沈黙を保っていたたろうがついに動き出す。
※たろうにしては大人しいという意味で、相対的な大人しさではありません。
ドラのを切ればかなり広いイーシャンテンだが打点に不満あり。
ここは場に2枚切れのを見てソーズを外していく。
この選択がピタリと嵌まる。
ツモで最速のテンパイは逃したものの、すぐにを引き競技麻雀における代表的勝負手に変化。
これをメンホ…ホンイツチートイツのテンパイを入れた角谷から8000の出アガリ。
南2局2本場、たろうが所謂「軽い仕掛け」を入れる。
場に5枚目とはいえシャンテン数の変わらない鳴きでタンヤオに向かう。
守備力の低くなりやすいクイタンを極端に嫌うたろうにしては珍しい鳴きである。
しかしこの鳴きが功を奏し、全員の手が進むことなく1人テンパイで望外の収入。
オーラスには2回戦のデジャブの如く、3巡目に-待ちのテンパイ。
今回はアガリをものにし今回の決定戦初トップを奪取、トータルもプラスに転じた。
4回戦スコア
たろう 55.1(+31.6)
金 +13.0(+146.5)
角谷 ▲19.9(▲118.1)
田内 ▲48.2(▲61.0)
【5回戦】
1回戦にトップを取ってからはなかなか展開に恵まれない田内。
2回戦以降、3着・4着・4着と引きトータルポイントもマイナス域に。
トータル首位の金とは早くも200ポイント以上離されておりここが踏ん張りどころ。
ここから打でチートイツに決めると、残したを重ね2枚切れの待ちでリーチ。
誰が打ってもおかしくない局面であったが一番嬉しいツモ決着+裏ドラのおまけ付きで3000・6000。
東4局、親の田内が更なる加点を目指す。
13巡目ながらホンイツドラドラのテンパイ、なら18000の勝負手だ。
角谷からリーチが入るも、このリーチのお陰で金が痛恨のオリ打ち。
田内は道中のツモのところでを選択していると、でポンテンを取るまでは一緒だがすぐにをツモっておりアガリを逃した形。
しかしそれが結果的にトータルトップ目の金のオリ打ちにつながり最良の目が出たことに。
金はこのオリ打ちに加え次局もこの半荘唯一といえる明らかなボーンヘッドで3900は4200を放銃。
更に追い打ちをかけるよう、親のたろうの早いリーチに手牌を目一杯に受けていたのが仇となり一発放銃で12000を献上。
一気に箱下まで行き、ここに来て大崩れを予感させたが今日の金は一味違う。
スッタンに向かうか迷う素振りも見せたが、トータルポイントの優位性を生かしそつなくツモ宣言。
倍満を渋々アガる姿もなかなか見れるものではない。
この倍満が本日の打ち止めにはなったもの、最低限の素点回復を図れたことは大きい。
トップは田内が東場で築いたリードを維持し、最後に気持ちよく締め括った。
5回戦スコア
田内 +62.6(+1.6)
たろう +11.8(+43.4)
角谷 ▲20.0(▲138.1)
金 ▲54.4(+92.1)
最後に大きめのラスを引いた金も1日を通して見れば満足のトータルトップ。
たろうもラスなしで1トップ分の浮きで2位につける。
田内は道中貯金をなくすも最後の大きなトップで終わってみればトータルプラスに。
そんな三者を余所にひとり憂いを受け止めるのは王者角谷。
唯一トップがなく苦しい立ち上がりとなった。
しかし去年の決定戦は240ポイント以上を捲っての逆転優勝だった。それに比べたら、ポイント的にも残り回数的にもまだまだ焦る要素はない。
このまま終わる角谷ではないことをこの1年で証明してきた。あとは次節以降、その姿を再び体現するだけである。
(文・橘 哲也)
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