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≪大会レポート≫

第9回チャンピオンロード、その3戦目である新人王シリーズが9月24日に開催されました。
定員120名の2会場での開催。みなさんのご参加、本当にありがとうございました。
今回レポートを担当します、第17期新人王の佐治敏哲です。

メインゲストとして大会に参加したのですが、参加が決まった当初、参加者が少なかったらどうしようなどと心配してました。
大きな大会のゲストが初めてということもあり多少の不安もあったり。
そんな考えは杞憂に終わり、伸び伸び打てたと思います。

おかげで僕の成績は3着2着4着3着。・・・あれ?
赤ありは得意だと思っていたのですが、どうも勘違いしてたみたいです。
104位というのもなんともイジりにくい。
少しプランと違いましたが、大会自体は盛り上がったので良しとしましょう!

さて、決勝に進んだのは以下の4名。
1位通過 嶋田学さん  +305.6
2位通過 大森康弘プロ +263.7
3位通過 鈴木翔穂さん +257.5
4位通過 黒田翔平さん +232.2

暫定1位の嶋田さん。僕はこの人に謝罪したい。
レポート担当に決まったはいいものの、チャンピオンロード初参加のため一般の方の情報が全くない。
今回の決勝は一般の方3人とプロ1人。
情報が少しでも欲しい。終わりのタイミングで嶋田さんに僕はこう尋ねた。
「チャンピオンロードにはよく参加されているんですか?」
地雷を踏み抜き、大爆発した瞬間である。
嶋田さんはチャンピオンロードに意欲的に参加しており、シリーズ2回優勝、グランドチャンピオン大会2回優勝という「超」常連の強豪だった。

本当にすみませんでした!!!
勿論その場でも失礼を詫びたけど、あらためて謝罪いたします。
僕の愚問に大人の対応で答えてくれた嶋田さんには感謝しています。
104位の人間が何を言っているのかと、僕のような勉強不足な奴はむしろ怒られた方がよかったかもしれない。


2位の大森プロは最高位戦日本プロ麻雀協会の所属。
協会をはじめ他団体の大会にも積極的に参加している。
協会主催の日本オープンで同卓したこともあるが、非常に熱意のある選手だ。
競技麻雀に対するその前向きな姿勢は、我々協会員は是非とも見習うべきだろう。


3位通過の鈴木さんは遠方からわざわざ足を運んでくれたらしい。
今年のチャンピオンロード〜ClubNPM感謝祭〜のファイナリストでもある。
決勝経験があるというのは大きな武器だ。
優勝への意気込みは十分だろう。


4位の黒田さん。実は決勝で1番注目していた選手だ。
大会に参加中、ずっと冷えピタをおでこに貼っていた。大会の最中もたまにその姿が視界に入り、気にならないといえば完全に嘘だった。
体調がよくないのだろうか。おそるおそる尋ねると「これがユニフォームだ」という最高の答えが返ってきた。
あとは最高の結果を残すのみ。
(以下、敬称略)

並びは起家から、鈴木→大森→嶋田→黒田となった。
トップをとった者が優勝となりそうだが、4位の黒田は1位の嶋田と73.4p差のためトップの上で素点もしくは嶋田との並びが必要となる。
ラス親の権利を活かしたいところだ。

〇東1局 親:鈴木
開始早々から、決勝ならではの独特の空気が漂ってきた。
1回勝負で優勝を狙わなくてはならない。
そんな緊張感のある静寂を破ったのは北家の黒田。
ツモ ドラ 裏ドラ
いきなり大物の勝負手。
これをパシンっと一発ツモ。安めではあるがハネマンのアガリと、上々のスタートを切った。

〇東2局 親:大森
親の大森が5巡目に先制リーチ。
ドラ
河もこれという特徴もなく、対応が難しい。

ここで北家の鈴木視点。
ドラ
親のリーチを受けて一発目。白は生牌で現物はのみ。
最初の跳満親っかぶり、赤2枚のイーシャンテン、親の河が強い。押す理由はたくさんある。
ちょうど鈴木と大森の2人の間で見ていた私は、くらい切りそうだし、ぶつかるなと思っていた。
しかし鈴木の選択はの暗刻落とし。
これを見て、凄いと思ったのは言うまでもない。
一発勝負で自分にきたチャンス手。しかも点数ビハインドの中で、受けを選択するのは余程の我慢強さが必要だ。
1回勝負で親に押し返す怖さをよく知っている。日々の積み重ねがなければ、この我慢はできない。
流局して大森の1人テンパイ。

〇東2局1本場
南家の嶋田、本手にもできそうなリャンシャンテンの手を巡目との相談により捌き手として仕掛ける。
黒田から2000は2300のアガリ。
チー ロン ドラ

〇東3局 親:嶋田
相手の親を流して場を整え、自分の親に繋げた嶋田。
さぁこれから!と思いきや、西家の鈴木の第1ツモが手牌に入ることなく河に横に置かれた。
ドラ
ちなみに南家黒田の第1ツモがだった。1牌隣だったら大事件である。
内心ヒヤヒヤする私をよそに、卓上の4人は冷静だった。
鈴木は最後まで態度を変えることなく、静かにツモ切りし続ける。
他3人はしっかり対応、大森がキッチリ海底をずらして流局。鈴木の1人テンパイ。
この手がテンパイ料だけで終わるのは、鈴木としても悔しいことだろう。

〇東4局1本場 親:黒田
トップ目で親の黒田が早い巡目に両面チーから入る。
子方3人からしても、安い仕掛けには見えないだろう。慎重にならざるをえない。
8巡目、親の黒田テンパイ。
チー ドラ


その仕掛けに待ったをかけたのが北家の嶋田。
ドラ
丁寧な手順でテンパイすると即リーチ。
しかし両者アガることなく2人テンパイで流局。

ここで今回テンパイした2人、黒田と嶋田の姿勢について触れておきたい。
黒田は、卓の縁に常に指を伸ばした状態で右手を置くスタイル。日頃からのマナーのよさが伝わってくる。
嶋田は打っている時の姿勢が1番よく、打牌の時も体が全くブレない。発声も明瞭。左利きであり、存在感が凄い。
彼らのこの姿勢は卓外の自分でも伝わってきた程だから、同卓したらもっと感じるモノがあるだろう。
それをこの決勝という舞台でこなすというのは、本当に身が引き締まる思いだ。

〇東4局2本場
供託が2本ある2本場。
アガリに2600点がついてくるのは、決して無視できない。
そのため全員が前に出てきやすく、こういった局はぶつかりやすい。

南家の鈴木、北家の嶋田が役牌を仕掛けて前進。
対面同士の仕掛けのため、残りの2人は仕掛けに挟まれた形になり、立ち回りが難しくなる。
南家の鈴木から2つ目の鳴きが入った。
チー ポン ドラ
実際は苦しい形のイーシャンテンだが、相手は知る由もない。を早めに切っていて、ドラのを対子以上で持っているようにも見える。
ここにリーチと攻め込んだのは西家の大森。
ドラ
アガりを渇望する両者をよそに流局。鈴木、大森の2人テンパイ。

折り返して南場となる。ここで各選手の持ち点を確認しよう。
鈴木 20000
大森 22000
嶋田 23300
黒田 31700
(供託3000点)

比較的に平たい点差であり、まだ全員に優勝の可能性がある。
一発裏赤ありのこのルールではこれほどの点差ならば下手に意識せず、自分の点数を伸ばすことを考えた方がよさそうだ。

会場全体に重い空気が流れていた。
その理由は決勝という事とは別に、ここまでの局展開にある。
ここまで計6局、うち4局が流局に終わっている。
相手に簡単にはアガらせたくない気持ちと、自分でアガリきりたいという思い。
流局による細かい点棒移動や供託の存在が、押し引きバランスや手作りを普段以上に難しくしている。
果たしてどんな結末を迎えるのだろうか。

〇南1局3本場 親:鈴木
供託3本の3本場。3900点というアガリ1回分のボーナスはとても大きい。
嶋田に白の仕掛けが入り、場の緊張感がグッと強くなった。
11巡目、嶋田が先制テンパイ。
ポン ドラ
12巡目、大森が平和ドラドラをリーチ。
ドラ
供託がさらに増え、嶋田はここが勝負所と本命にも見える無筋を真っ向勝負。


残り2巡、親の鈴木にテンパイが入った。
ツモ ドラ
ここで鈴木が長考。
大森、嶋田の2人テンパイは濃厚。嶋田の勝負により2人が両面待ちと仮定すると、通ってないのは筒子の-から上の4筋しかない。
テンパイのためには、そのうちの1つを切らなくてはならない。
は現物ではないが中筋のため、対子落としで凌いであと2回のツモでテンパイ復活を狙うこともできる。
自分がアガれる可能性、放銃した時の打点、オリて親落ち後のチャンスはあるのか。
ここまで器用な立ち回りと我慢強さを見せてきた鈴木。落ち着いて考えた結果、を横に置くことにした。
大森、8000は8900と供託3000点の大きなアガリ。
ロン ドラ
鈴木は親番もなくなり、かなり苦しい立ち位置となった。

〇南2局 親:大森
前局のアガリでトップ目となった親の大森が5巡目先制リーチ。
ドラ
リーチ後に白を暗槓し、場に不穏な空気が走る。
ツモられたら4000オール以上が確定。
嶋田がなんとか粘ろうとするが間に合わず、大森以外の3人が最も聞きたくない声が聞こえてきた。
「ツモ」
大森、非常に大きな4000オール。

〇南2局1本場
優勝した大森が反省しているのがこの局。
決定打となる4000は4100オールをツモるのだが、その手順を間違えたと言っていた。
大森は45900点持ち、2着の黒田が27700点と18000点離れている。
大森の5巡目の手牌がこちら
ドラ
マンズがちょっと複雑にも見えるが、のイーシャンテン。
大森はここから打としドラ対子を固定。一見よくある一手にも見えるが罠がある。
残したが機能していないのだ。有効と思えるツモの受け入れも、を打っていても有効。
打点はドラ2枚で十分なため、イッツーにこだわる必要はない。
同じイーシャンテンをキープしながら、索子の変化を逃す方が痛い。
実際とツモ切り、10巡目にツモでテンパイ。

ドラ
人によってはこので既に4000オールのアガリ。当然大森もアガリ逃しは気付いている。
彼のリーチモーションは、そんな事実を振り払うかのように見えた。
そして最後のツモ番に牌は応えた。
ツモ ドラ 裏ドラ
大森、4000は4100オール。

〇南2局2本場
決勝は90分1本勝負。ここで残り30分のコール。
嶋田の決勝スタイルを見たのはその時だった。
ドラ
10巡目に出たダブをスルー。
大森58200
嶋田15200
この点差とはいえ、鳴いてアガって次の自分の親番に託す人もいるだろう。
10巡目というのも妥協ラインとしては十分だ。
しかし嶋田の腕は、これまで通りスムーズな動きでツモ山へ伸びた。
この点数状況だろうと、残り30分だろうと、冷静に、そして思考が完了している。
同じく10巡目、黒田リーチ。
ドラ
黒田としても、オーラス親番とはいえ道中の加点チャンスはモノにしたい。
しかしここは2枚目のを仕掛けた嶋田が1000/2000は1200/2200のツモアガリ。
ポン ツモ ドラ
嶋田の冷静な判断があってこその見事なアガリだった。

〇南3局 親:嶋田
東場では鈴木のダブルリーチに対応し、親を落とされてしまった嶋田。しかし今回はそうはいかない。
3巡目、大森
ドラ
出てくるをスルー。点棒も56000点とそれなりに十分だし、局消化のために仕掛けると思っていた。
自力決着をしなければ残りの親番はほぼ落ちない。しかし仕掛けた後、上家の鈴木に対応されると厳しい。
残り時間が25分ほど。色んな要素が詰まったスルーだ。

6巡目に親の嶋田がリーチ。
ドラ
大森はこの事態も想定していたのかもしれない。のスルーが生きた。手詰まることなく受けていく。
17巡目に嶋田がようやくツモ牌を手元に引き寄せた。
ツモ ドラ 裏ドラ
1300オールのツモアガリ。
裏ドラがないことに、流石に少し残念そうな顔を浮かべていたのが印象深い。
しかし親番は続行、可能性はまだ残されている。

〇南3局1本場
打っている4人の集中力からくるのだろう、会場の熱気がすごい。
ドラ
嶋田、大森の第1打から積極的に仕掛けていく。どんなに形が苦しくても諦めるわけにはいかない。
9巡目に黒田からリーチがかかる。
ドラ
この時、嶋田はまだリャンシャンテン。
さすがに勝負あったかと思われたが、アガったのは親の嶋田。
ツモ チー ポン ドラ
これぞ執念といった500は600オール。

〇南3局2本場
嶋田27500
黒田18500
鈴木▲100
大森54100


箱下となった鈴木がを暗槓して四暗刻を目指す。
ドラ
新ドラがソウズとなり、黒田は一色手へ向かう。
ポン ドラ


残り時間は長くない。煮詰まる局面。
しかし親の嶋田も勝負手を作っていた。
ドラ
平和ドラ3のリーチ。しかも裏ドラが2枚めくれるのは大きい。
トップ目の大森が最も恐れていた展開になってしまった。
一方で狙い通りの清一色をテンパイしていた黒田。
ポン ドラ
持ってきたのはだった。
の槓が入っている以上、有力な手替わりはほぼ無い。何よりこの手を迂回していたら優勝はない。そっとツモ切る。
できればツモって跳満確定以上にしたかった嶋田がロンアガリ。
しかし裏ドラにはドラマが待っていた。
ロン ドラ 裏ドラ
リーチ平和ドラ7。24000は24600のアガリ。

〇南3局3本場
嶋田52100
黒田▲6100
鈴木▲100
大森54100

終わってみるまで何が起きるかわからないとは、まさにこのことだろう。
大森の優勢ムードは、気付けばわずか2000点の薄氷の壁となっていた。
ここでトータルポイントに換算してみると、
嶋田337.7
大森337.8
なんとわずか100点差のデッドヒート。
見ている我々も固唾をのんで見守る状況。
そこに残り時間5分前のコールが響いた。

先に動いたのは大森。
ポン ドラ
積極的に前に出る。
対する嶋田は非常に冷静だった。
ツモ ドラ
は生牌。は大森にピンズで両面に当たる可能性のある唯一の筋だ。
大森に無筋は打ちたくない。しかしテンパイ料が結果に左右するかもしれない局面。
速度を落とすリスクを承知での対子落とし。
その後嶋田は上手いこと形式テンパイを入れるが、終盤に表ドラでもあるを持ってきてギブアップ。
大森の仕掛けからしてかなり通りそうではあるが、万が一の放銃は終戦になってしまう。
大森の1人テンパイで流局。

〇南4局4本場 親:黒田
時間的にもこれが最終局。連荘もほぼ考えにくい。
鈴木はダブル役満条件。親の黒田は役満ツモでも少し足りない。
実質、大森と嶋田のアガリ競争となった。
嶋田はトータル4100点差。したがって4100点以上のアガリが必要だが、4本場のため条件はかなり緩和されている。

2人の配牌はこちら。
嶋田
ドラ
大森
ドラ


若干だが大森の方が有利か。
打牌音だけが聞こえる静かな時間が過ぎていく。
8巡目、最初にテンパイしたのは大森。
ポン ドラ
12巡目、嶋田がようやくテンパイし、気合を込めてリーチ。
ドラ
大森から直撃かツモなら優勝。果たしてどうなる!

しかしエンディングは予想以上に早かった。
ポン ツモ ドラ
嶋田のリーチと同巡、大森のツモアガリ。
決着の時はきた。

優勝を決めた大森は身体から力が抜けていた。
目の前の相手からの握手にも気付かない程だったと言えば、どのくらいの脱力ぶりか想像しやすいと思う。

他団体の大会で周りは協会員ばかり。一般3人対プロ1人。全7回戦という長期戦。
プレッシャーだったり目には見えない疲労もあっただろう。
それだけ麻雀に集中していた証でもある。
もちろん嶋田、黒田、鈴木にも同じことが言える。
優勝できない悔しさもあるが、解放感のような、どこかやりきったような顔をしているようにも見えた。

やはり決勝の舞台というのはいいものだ。
最近の麻雀の決勝は、配信でPCや携帯の画面越しでしか見れないことが多い。
手軽に見れたり記録に残ったりとメリットもたくさんある。

しかし、どこか寂しく感じるのは自分のワガママだろうか。
リアルでしか感じ取れない選手たちの息遣いや独特の空気感が好きだ。
広い空間で唯一稼働する中央の1卓。周りを取り囲むギャラリー。全てが終わり湧き上がる歓声。そんなイメージ。
選手たちの気持ちのぶつかり合いを肌で感じることができるし、その刺激が自分のモチベーションにも繋がる。
だからこそ、今までこの大会に出られなかったことを悔いたのは言うまでもない。

これからは時間を作って、一競技選手として可能な限り出場したいし、すべきだろう。
それこそ大森プロの麻雀への積極的な姿勢を見習わなくてはと強く思った。
あらためて、大森プロ優勝おめでとうございます!


さて、次回は11月23日(金祝)のオータムチャンピオンシップシリーズ。
先日優勝した朝倉ゆかりプロをメインゲストとして、歴代王者が参加します。
ワンデー大会のため、誰にでもチャンスがあります。
今回104位の僕にも優勝のチャンスがあるわけですね。
みなさまのご参加を心からお待ちしています。


                                                                        (文・佐治敏哲)




 

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