≪大会レポート≫
「この中で俺だけが雀王戦Aリーガーだから」
「タイトル取ってから時が経つと、ゲストに呼ばれるのもいたたまれなくなるから。お前ら、これからそれを味わうんだよ。
俺はこの中で一番古くて新しい雀竜位だから」
と、ゲスト陣の醜い煽り合いで始まった雀竜位シリーズ。
第6期、そして現14期雀竜位の吉田基成と第7期雀竜位の福田聡は4回戦でひっそりと消え、
第10期雀竜位の仲林圭と13期雀竜位の武中進は準決勝(ベスト12)まで頑張ったが、同卓してともに討ち死に。
決勝に残ったゲストは第12期雀竜位の斎藤俊だけだった。残る3人のうち2人も協会員だった。
コバはこの日好調で、首位で決勝進出。坂本太一は今期入ったばかりの新人だが、準決で仲林、武中相手に堂々とトップを取っての決勝進出。
もう1人はチャンピオンロード常連の丸江茂さんである。
ここまでのポイントは以下のとおり。
コバ +329.4
坂本太一+292.1
斎藤俊 +239.3
丸江茂 +236.4
斎藤と丸江さんはトップ必須。かつ、コバがラスなら約1万点以上、3着なら約3万点以上の差をつけなければならない。
また、その場合に坂本が2着だと面倒。斎藤は12900以上、丸江さんは15800以上の差をつけなければならない。(同点は先行有利)
逆に言えば、コバと坂本には2着残りでも優勝の可能性がある。
座順は、斎藤→丸江→坂本→コバとなった。ポイント上位でラス親になったコバが有利だろうか。
東1局、起家の斎藤が9巡目、
ドラ
にを引き入れて打リーチ。
2巡後にコバが追いつき、
リード者らしく、リーチの現物でヤミテンするも、13巡目に斎藤にをツモられ出し抜かれてしまった。
裏ドラで2600オール。
1本場、丸江さんは10巡目に、
ドラ
テンパイするも、を切って苦しいドラ表受けでは間尺に合わないとして、打のテンパイ取らず。
次巡を重ねてドラ切りリーチとした。
しかし、をポンしていた斎藤が、さらにを仕掛け、丸江さんのツモ切ったで、
ロン ポン ポン ドラ
の7700は8000をアガる。
次局、斎藤がノリノリでまたも9巡目リーチ。
ドラ
ツモリ三暗刻形だが、丸江さんが1枚切れのを安牌ぎみに持っており、「出アガリの2400だろうな」と思って見ていた。
ちなみに、この手の配牌は、
というものであり、第1打、2巡目のをカンせずツモ切っている。
10巡目、斎藤ツモ切り。
丸江さんはリーチ一発目は2枚切れの。
そしてこの巡目は前巡、坂本が3枚目を見せたドラと切り、いよいよ次はに手が掛かるかという感じだった。
坂本は手出し。
コバ、いま斎藤がツモ切った。
これに坂本からロンの声が掛かった。
ロン ドラ
たったいま、斎藤がアンコにしているを引き入れてのヤミテンだった。
コバに気のゆるみがあったわけではない。坂本が切ったは、斎藤の序盤の捨て牌が前述したとおりなので、まったく強い牌ではない。
もし、ここでの坂本の打牌が目を引くものであったら、コバはとっておきの安牌である3枚切れの、2枚切れのを切って様子を見ただろう。
このは丸江の現物、コバもを切っていてスジ、斎藤にもほぼ安全、つまり3人の安牌であり、かつ自分の一色手のテンパイを悟られないような牌として残していたようだ。この残しにはセンスを感じる。
東2局、坂本とコバが激しく喰い仕掛ける中、あせらずじっくりと手を育てた丸江さんが、
ドラ
高目6000オールのリーチを打つも、コバのロン牌を持って来て2000点の放銃。
東3局、親になった坂本、
ドラ
の一通、タンヤオどちらも望める好形イーシャンテンに9巡目をツモッて切り三単吊(サンタンチャオ=3メンタンキ待ち)で即リーチ。
これにピンフ・ドラ1イーシャンテンの斎藤がをプッシュして(現物はなかった)一発放銃7700(裏ドラ)。
この直撃で坂本43700、斎藤33100とトップ逆転になった。そして、この親番は長かった。
1本場はダブをポンしたホンイツをコバから。
2本場はこのリーチ。
ドラ
イーシャンテンだった斎藤、
ドラ
ツモ、あるいはかが暗刻になれば出ていかないドラだったがを引いたためにリーチ打牌で親満放銃。
3本場はリーチ・赤1の3900+900(放銃・斎藤)。
4本場は8巡目リーチ。誰も立ち向かえず、流局。1人テンパイ。
5本場もリーチ。
ドラ
赤が2枚あって、高目出アガリ、ツモなら安目でも親ハネだったが、斎藤の追っ掛けリーチを受けてあろうことか3枚目の赤牌を持って来て放銃してしまう。
ロン ドラ 裏ドラ
しかし、それでも坂本の点箱は64900と溢れ、2着の斎藤と38700もの大差となっていた。
東4局、親番のコバはピンフ・ドラ1の2900をアガッたが、1本場は1人ノーテンで無念の移局。
南1局2本場は斎藤がリーチ・一発・三色・ドラ1・赤1の親ハネ。
放銃は丸江さんだが、斎藤のツモって14枚のイーシャンテン形が、
ドラ
だったためにリャンカンを残すより広い打となり、の切り順(入り目)でのリーチだったのでが盲点になっていた。
これで斎藤は坂本まで20100差。しかし、元々のポイント差があるのでトップを奪い返すだけではだめで、トップと2着の順位点差40を考慮しても12800点上にならなければならないので実質32900点差である。
斎藤は3本場、リーチしての1人テンパイ。
4本場、形テン(坂本1人ノーテン)と粘ったが、5本場に坂本がポンの5200をアガッて、斎藤の親番は流れてしまった。
南2局は斎藤がリーチ・ツモ・ピンフ・ドラ1・裏1の満貫をツモ。
南3局、坂本の親番では、コバがリーチ・一発・ツモ・ドラ1の満貫ツモで、箱点からようやく復活。
あとはラス親のコバがどれだけ連チャンできるかだが、実質勝負は決していた。
決勝は打ち切りを90分と長めに取っているのだが、局数があまりに多く、この時点で残り10分のカウントダウンが始まっていたからだ。
ラス親のコバが手にしたのはリーチを掛けてのテンパイ料のみで、
1本場の途中で最終局コールが掛かり、もはや逆転は望めるべくもなく、流局で終了した。
ゲスト陣の煽り合いで始まった雀竜位シリーズであったが、それだけにゲスト陣は好成績だったと思う。
約2名を除いて結構最後のほうまで頑張っていたからだ。
その中で準決勝で仲林、武中相手にトップを取り、決勝で斎藤と堂々と渡り合って優勝した坂本太一は今期入ったばかりの新人だが、いい経験になったと思う。ちなみに前期の雀王戦Dリーグで昇級を決めている。
天鳳九段で「しゃるうぃ〜てんほう!」にも出ているのだが、TOKIOとV6を混ぜ込んだような名前とともに、
その恥ずかしいID(広島の種馬)にも今後、注目してあげてください。
(文・五十嵐 毅)
|