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≪大会レポート≫

こんにちは、黄河のんです。今回は、観戦記風にまとめました。
以後、敬称略とさせていただきます。

9月22日、チャンピオンロード〜新人王シリーズ〜を迎えた。
出場人数は、95名。闘牌場所も2会場に分かれ、各所熱気に包まれる。

そこで決勝に進出したのは、稲波祟・森浩二・江崎文郎・佐々木雄一の4名。
ポイントは、稲波+344.2 森+266.2 江崎+264.8 佐々木+206.2となっている。
現時点で一番苦しいのは佐々木。
稲波と138P差のため、協会ルールとはいえ、トップラスを決めた上での条件付きだ。
引いたのは起家。親番でどれだけ爆発できるか。

東1局、6巡目に「リーチ!!」
声高に宣言したのは佐々木。
 ツモ ドラ 裏ドラ
リーチ・ピンフ・ツモ・ドラ2で4000オール!
このままで、頼むから、このままで。佐々木の心の声が聞こえてくる。

次局、北家の森がドラドラの配牌、ホンイツも見える。
 ドラ
しかし、最終形はこうだ。
 ドラ
そこに佐々木が、タンヤオ赤2テンパイでリーチに飛び込み、8000点。
親番を終わらせないという強い意志。当然、佐々木は条件の厳しさを分かっていた。
だが、そう簡単にはいかない。東1局だけで誰もが痛切に感じ、会場が息を呑んだ。

東2局、親の江崎が8巡目にを鳴いて、がフリテンのため-のリャンメンターツを外す。
 ポン→打 ドラ
さらに江崎が10巡目にをポン。
 ポン ポン→打 ドラ
14巡目、ノータイムでを加カン。
をツモると、打としてトイトイに固執しなかった江崎。
スピーディーな判断で、思惑通り1人テンパイで流局。
 ポン ポン ドラ

東2局1本場 ドラ 親・江崎
ドラは誰が持っているのか。1段目全員が様子を伺っている。
突如7巡目、稲波がをリャンメンチー。
 チー→打 ドラ
名乗りを上げたのは、稲波だ。すかさず森が役牌のをポン。
 ポン→打 ドラ
稲波は、が重なって手牌は以下の様に進化した。
 チー ドラ
さらに12巡目、をチーして、打
 チー チー ドラ
捨て牌が3段目に入り、意を決した江崎が宣言牌でリーチ!
 ドラ
絶好の-テンパイ!
稲波はポンして打。親との直接対決にもっていく!
 ポン チー チー ドラ
と思われた次の瞬間、前巡にひっそりテンパイしていた森がでロン、2000は2300点。
 ロン ポン ドラ
一牌の後先が、結果を大きく左右する。決勝戦とはそういうものだ。

東3局 ドラ 親・稲波
佐々木に赤が2枚あり、タンヤオが見える手牌。1番手は佐々木か。
8巡目、にポンの声。親の稲波だ。そして右にを持っていくと、打
ドラが出てきたとあって、他家の視線が集まる。
 ポン→打 ドラ
ここから稲波はドラを見切った。トイトイに照準を合わせた早めの判断。
しかし、は離さない。上家の江崎が苦しそうな表情で捨てたをチー。
 チー ポン ドラ
佐々木からでロン。タンヤオ・イーペーコー・赤赤ドラのイーシャンテンには不要。
をチーせず、ポンであれば確かに高打点が見込める。
しかし、まず間違いなく佐々木とぶつかっていただろう。
時として打点に拘らず、柔軟に。稲波の判断力と場に合った絶妙なバランス。
この局だけでなく途中も稲波は鳴く局面が多かったが、引き出しの多さが際立った。
一方佐々木は苦しい。己の手牌が良い時に限って、他家の調子が良い。

東4局は、稲波が赤赤。親の森がドラドラ。
この局はぶつかりそうだ!同卓者と同様鼓動が高まる。
だが先制で発声したのは、なんと江崎。リーチ・ピンフ・ドラ1、-待ちだ。
 ドラ
これまで静かに丁寧に打ってきた森、しかし大事な親番。簡単におりてはいられない。
森がを仕掛け、 ポン ドラ
さらにツモ、打。そしてツモ
 ツモ ポン ドラ
ここへ来て、リズミカルだった森の動きがピタッと止まった。
背中越しに森の肩がフッと上がり、大きく息を吸ったのが見えた。
次の瞬間、打。江崎の真っすぐな声が響く。

南入した際の点数は、東家・佐々木23600、南家・江崎35200、西家・稲波15600、北家・森25600
平たいこの状況で親は佐々木。
南1局で、佐々木は森の四暗刻イーシャンテンをかいくぐり2600オール。
同1本場、ラス目の稲波からリーチがかかる。
親は落とせない。しかし、稲波に放銃してしまっては元も子もない・・・。
奥歯を噛みしめる佐々木。苦しい。厳しい。しかし辛い人がもう1人、江崎だ。
 ドラ
全て無スジだ。
が鳴ければ満貫。しかし稲波がリーチし、誰もが歯向かいづらいこの状況。
・・・・動けない。2人も長考の末、撤退を決意。
稲波の1人テンパイで流局したのだが、公開された手牌は、
 ドラ
稲波は、
この手牌からを引き入れて即リーチに踏み切った。
手替わり枚数や待ちの悪さを鑑みて、ダマにする人やテンパイ取らずの人が居るかもしれない。
だがこの局面において、稲波に誰も逆らえない。リーチは、究極の攻撃手段なのだ。
佐々木の親番が終わった。
佐々木は終局に至るまで、テンパイを取り続ける努力だけは怠らなかったと、仲間に聞いた。
自分がラスになってはならない。せめて、着順は落とさないように。
それが出来る打ち手が、当会に何人所属しているだろうか。ふと、自分を省みる。
麻雀プロの友人が多く、その中で人一倍切磋琢磨している佐々木。プロ仲間も、口を揃えて佐々木の技術を誉めていた。
ただし、本人に聞こえないように。きっと近い将来、北海道から関東にやってくるに違いない。そう、私は予想する。

南2局、リーチ合戦を制した森が稲波から3900点出アガリ。
南3局、東家・稲波22500、南家・森24500、西家・佐々木26400、北家・江崎26600
江崎が仕掛けて終わらせようとする中、南3局は3本場までもつれ込んだ。
ようやく森がピンフ・ツモ・ドラ1の700・1300をアガり、オーラスを迎える。

南4局、東家・森28100、南家・佐々木25400、西家・江崎25600、北家・稲波20900
まさに、4者の勝ちへの拘りを表現したかのような点棒状況。
誰もが、なんとしても。自分が、いや俺が、目の前にある優勝を手にしたい。
そしてただ1人、優勝をものにしたのは・・・江崎 文郎。

江崎の圧倒的強さは続く。

なんと、この大会の2日後、200名近いプロが出場した「麻雀最強戦2015全日本プロ代表決定戦」でも、優勝を果たしたのだ。
3日間で、あっという間に時の人となった。

振り返れば江崎は、チャンピオンロード9回目の挑戦だった。
前回出場して決勝に残った時は、自分の後ろに閑古鳥が鳴いていたそうだが、この日は違った。
同期や親しい仲間で溢れ、観戦したくても見れない程だった。
大会後彼の友人に聞いたら、あんなに笑顔で饒舌に話す江崎は見たことがない、別人のようだと。
祝勝会では、誰よりも先にメニューを見て取り仕切り、普段飲まないお酒も嗜んでいた。
9回目にして初優勝、この喜びを、仲間と分かち合える高揚感を、抑えることができない様子だった。
もちろん、抑える必要は一切ない。その光景だけでも、この大会を開催し続ける意味がある様に思えた。

人はよく、優勝した相手に対して【もっている】と言う。
【もっている】と本人以外が言うと、相手の実力や努力を認めていないようにうつる。
確かに、もっていなければ優勝なんて絶対出来ない。

しかし注意すべき点は、
【ツイている時に確実に勝てる様に、相手は日々努力している】
という事。日々努力しているからこそ、もっているのだ。

たった3日間でチャンピオンロード・最強戦の2回の優勝。確実に勝ち切る力強さ。
今までの努力と自分の実力に、有無を言わせない、そう、何より成績が物語っている。

おめでとう。
優勝は、日本プロ麻雀協会第13期後期入会の江崎 文郎!

(文・黄河 のん)

 

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