
≪大会レポート≫
2月11日に第6回チャンピオンロードも終盤戦となる女流雀王シリーズが行われた。
参加した歴代女流雀王は第7期から第14期まで総勢5名。
各々が落ち着いてスピーチをする中、新女流雀王の佐月だけがまだ慣れぬ様子でいたのもなんだか微笑ましい。
決勝に残ったのは以下の4名。
愛内 よしえ +337.8
増村 一也 +299.8
秋山 裕邦 +262.4
吉田 航平 +253.3
この6回戦までで愛内はなんと5連勝2着1回の好成績。
各々の条件としては、増村はトップならば無条件、愛内と1着順差なら18100点以上、2着順差で無条件。
秋山、吉田は愛内とトップラスといったところだ。
決勝の舞台に慣れた様子で落ち着いている愛内、秋山とは対照的に、吉田、増村は初の舞台に少し緊張した面持ちだ。
座順は起家・吉田、南家・秋山、西家・増村、北家・愛内で対局開始となった。
東1局。
4巡目に親が切った を南家の秋山がポン。
ドラが1枚のカンチャン2つの一向聴と少し苦しめではあったが果敢に攻める。
5巡目に親の吉田が、
            ツモ ドラ
から を引っ張ったのが功を奏し、12巡目に
            
でテンパイしてリーチ。
次巡仕掛けてテンパイを入れていた秋山から をとらえて5800点の出アガリとなった。
雀頭もあるので凡庸に打 などとしていたらこのアガリはとらえられなかっただろう、打点も見据えたいい手順でのあがりだ。
東1局1本場は、親の吉田が ポン、 チーをしてホンイツ狙いの秋山から を打ち取って2900点は3200点の出アガリ。
この時、実は北家の愛内も前巡 が通ったばかりの 待ちのタンピンドラドラのダマテンが入っていた。
しっかりとダマテンにしたのがここは裏目に出てしまったか。
東1局2本場。
ここまでゆったりと門前で構えていた愛内が仕掛ける。
ポン、 ポン、さらに をポン。
愛内の河にはマンズとソーズの中張牌がばら切りされていてピンズのホンイツが濃厚。
しかし 、 、 がまだ見えておらず、もしかしたら役満の可能性も捨てきれない。
ノータイムで をツモ切っている愛内に対し、果敢に を押した親の吉田だったが12巡目に掴んだ で手が止まる。
だけはなんとか止めてテンパイに持っていこうとした吉田が17巡目に で8000は8600点の手痛い放銃。
ここは序盤のリードもあったため、ピンズと字牌での放銃だけは避けたほうが無難だったであろう。
トータル首位の愛内がトップ目になったことにより、追う立場の三者が全員苦しい展開となる。
東2局。
ドラの を切ってリーチをした吉田に愛内が1300点の放銃。
吉田は打点が欲しいので、ここはテンパイを外してドラにくっつけなおす手もあったか。
放銃した愛内もほっと胸を撫で下ろす。
東3局。
ここまで苦しい手しか入らなかった秋山についに勝負手が入る。
8巡目に、
            ドラ
絶好の を引いてリーチ。
次巡、一発で をツモアガって2000・4000。
東4局。
トップ目で親の愛内が9巡目に、
            ドラ
ドラ表示牌待ちのカン をノータイムでリーチ。
次巡さらりと当たり前のような顔で を一発ツモ。
大きな大きな4000オールのアガリとなる。
追われる立場にありながら、必要以上に臆することなく迷わずリーチに踏み切った愛内の勝負強さがここに見せられた。
トップラスを決めたい吉田と秋山にはさらに厳しい展開だ。
東4局1本場。
6巡目に秋山からリーチ。
            ドラ
打点が欲しい秋山だが三暗刻形に変化する牌とアガリ牌の枚数は同じ8枚、しかも三暗刻が確定する牌は2枚しかない。
それならば現状のテンパイでリーチであろう。
しかし数巡後、一番欲しかったであろう をツモ切ることになる、悔しいがこれはさすがにとらえられない。
10巡目に吉田から を出アガリ1600は1900点。
南1局。
点棒を持った愛内が局を消化にかかる。
カン チーから入り、さらに をチー。
      チー  チー  ドラ
567の三色と バックの両天秤だが、道中打たれた1枚目の はスルー。
ただテンパイやあがりを目指すだけではなく、守備力もそなえた仕掛けだ。
さらに を引き入れて絶好の 待ち。
タンヤオ仕掛けに見えるため は盲点になりがちだ。
しかし親の吉田も黙ってはいない。
9巡目に、
            でリーチ。
持ってきた無筋の を押しきれずに南を打ってまわった愛内だったが、次巡フリテン受けだった赤 を引き戻してテンパイ復活。
流局するかに思われたが18巡目に4枚目の をつかんだ吉田が3900点の放銃となった。
南2局。
ここまでただ見守る側に回るしかなかった増村がついにリーチ!
            ドラ
親番を落とせない秋山が一発で を押して放銃。
裏も乗って8000点の出アガリとなった。
南3局。
局を消化しに ポンから入る愛内に対し、増村も腹をくくって仕掛け返す。
   チー  チー  ポン  ドラ
更に を引いて と落として 単騎へ。
これをピンズのホンイツで満貫をテンパっていた秋山からとらえて2000点の出アガリ。
南3局1本場。
親の増村はタンピン三色赤ドラの一向聴。
これは逆転があるか?と思った矢先に愛内からロンの声。
            ロン ドラ
増村から愛内に6400は6700点。
南4局。
オーラスを迎えて条件は増村の三倍満ツモ以上を残すのみ。
流石に条件は満たせず、流局して愛内圧勝での優勝が決まった。
麻雀人生の中で、今日だけは皆が自分のために麻雀をしている、そう思えるくらいすべてがうまくはまる日がごく稀にある。
今日は彼女にとってまさにそんな日だったのではないだろうか。
今日は間違いなく、彼女の日であっただろう。
しかし、彼女はただ運に任せて勝ったのではない。
攻撃、守備、読み、持てる技を最大限に生かし、それが最大限に発揮された上でマッチしたのだ。
彼女は強い。
ライバルであると思うと同時に、これからも活躍してほしいと応援し続ける女流プロの一人である。
(文・冨本 智美)
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