≪大会レポート≫
今期も始まりましたチャンピオンロード、今年で6年目です。
一発目は昭和の日(4/29)に「ClubNPMファン感謝祭」として、多数の女流ゲストが参加して開催されました。
その女流の中から決勝に進出したのが中月裕子。
協会員でもう一人、大森康平。
ともに昨年入会したばかりの新人です。
中月は美大出身で大森は京大工学部卒、東大大学院在学中。
なんでも「半導体の研究をしている」とのこと。
もうちょっと突っ込んだところで、半導体の知識が3本足のトランジスタで止まっているこちらの脳ミソでは理解できない返答が返ってくると思ったので、「へえ〜、半導体か。すごいね」とだけ答えておきました。
一般参加の岡本義徳さんには、私は久しぶりに会いました。
実は最高位戦の23期生。
水巻渉さん、いわますみえさん、協会では田中智紗都、崎見百合の同期に当たります。
ただし1年だけの在籍でしたので、覚えている方は少ないか。
樋口健二さんはこの日の参加者の中でおそらく最年長。
5回戦終了時にコンビニで会ったとき「腰が痛い」とおっしゃっていました。
7回戦目となる決勝卓、スタミナだけが心配です。
ここまでのポイントは、
大森 康平 +277.6
岡本 義徳さん+267.6
樋口 健二さん+223.7
中月 裕子 +209.5
樋口さんトップの場合、大森が13900差以内の2着なら大森優勝、岡本さんが3900差以内の2着なら岡本さん優勝。
中月トップの場合、大森が28100差以内の2着なら大森優勝、岡本さんが18100差以内の2着なら岡本さん優勝。
また、中月-樋口-大森の並びでも、3着大森と中月の点差が8100以内なら大森優勝。
これらのケース以外はともかくトップを取った人が優勝です。
起家から大森→岡本→中月→樋口の座順でスタートしました。
東1局、ドラを2枚抱えた中月が5巡目にチーと果敢に攻める。
チー ドラ
で晒し、を手に残して少しでも内側の伸びを見たほうがいいが、まだ5巡目で捨て牌にホンイツ風味がまだ出てないので、字牌の出を止めないためにこう喰ったようだ。これが功を奏し、次巡すぐが上家の岡本さんから鳴けた。打でとのくっつきイーシャンテン。
しかし、いくら中月の捨て牌がホンイツに見えづらいとはいっても、生牌のを切ったほうにはそれなりの理由がありました。
2巡後、中月がをツモ切ると、南家の岡本さんが「ロン」
ロン ドラ
岡本さん、実はこの後、手に恵まれないこともあって防戦一方になるのですが、ツモられとノーテン罰符で少し削られるだけで、この満貫一個分のリードをかなり長時間守り続けます。この辛抱強さはたった1年とはいえ、競技の世界を味わった経験があるからでしょう。
東2局、上家の親・岡本が2枚目のを切った6巡目の中月の手牌。
ドラ
これ、私は喰います。残った形がいいし、満貫放銃を満貫で取り返そうとは思いません。
それより親の岡本さんがさらに加点することを防ぎ、自分の親番を早く持ってきたいと思うからです。
しかし、フカした中月が正解。すぐに、そしてドラのを連続で引き入れて即リーチ。これを見ていて「やるなぁ」と思いました。
結果は、ピンフ・ドラ2で追いついた大森が次の手牌で追っかけリーチを打つも、
ドラ
を掴んで中月に満貫放銃。
私はこの日、中月と5回戦で同卓しました。
東2局に私のいち鳴きホンイツの満貫手に放銃。
しかし中月はその後も迷わず攻め続けてきて、相当の圧力を感じていました。
この半荘は辛くも逃げ切れましたが、私と違ってポイントを十分持っていた中月は3着で上等。
中月と卓を囲んだのはこの日が初めてでしたが、あきれる…いえ、感心するほどの攻撃力でした。
決勝に残った段階で、その攻めダルマぶりがいいほうに出れば、もしかすると……と予想したほどです。
東3局は大森のメンピンリーチに樋口さんが放銃。
東4局は、中月が、
ドラ
ツモ、切りでタンキを選択。は場に1枚切れ、場に2枚。そして3枚目のが切られたところでツモ切りリーチを掛けました。
は読みどおり2枚生きでしたが、親の樋口さんが追っかけてメンピンツモ。
ツモ ドラ 裏ドラ
1本場、樋口さんが終盤にドラ暗刻のリーチを打つも、
ドラ
流局。岡本さんと2人テンパイ。
2本場は大森の4巡目リーチに、
ドラ 裏ドラ
中月
から、にチーテンを入れた中月がで放銃。
南1局は親・大森が喰いタン1500(放銃・中月)
1本場は流局、大森と樋口さんがテンパイ。
2本場は中月がリーチ。
ドラ
が中スジ引っかけになっていることもあって、親でイーシャンテンの大森がで放銃。
南2局も中月がリーチ。ドラも何もないカン待ちをツモッて裏ドラを乗せて1300・2600。
シャカリキに攻め続ける中月、これでトップ目岡本さんに600差と迫ります。
南3局、親の中月11巡目。
ツモ ドラ
打でリーチ。ヤミでも親満、ツモで6000オールの手をリーチ。
強欲すぎる?
いえ、岡本さん2着では、18200以上の差をつけなければいけないので、ここは出アガリ18000、ツモって裏ドラを乗せての8000オール狙いが最上策。3巡後にツモ。裏ドラはで乗らずでしたが6000オール。ついに東1局から守り続けた岡本さんのトップがまくられました。
中月46500、岡本さん23100と、その差23400。
しかし総ポイントでは5300差でしかない。
1本場、岡本さんが早々にテンパイ。
ドラ
ピンフ、できればイーペーコーもつけようと手変わり待ちでヤミ。
すると8巡目に中月がリーチ。
これで1000・2000ツモだけでなく、2600直でトータルトップ返り咲きの線も出た。
そこで、岡本さんはこの形のままツモ切り追っかけ。しかし、掴んだ牌が中月のロン牌でした。
ロン ドラ 裏ドラ
この5800直で決定打。
中月優勝―――と思われたのですが、オーラスにもうひと波乱。
樋口さんが七対子タンキをリーチしてツモ、3200オール。これで中月に18100差と迫る。
次局も樋口さん4巡目リーチ。
ドラ
この親満をツモられたら危なかったが、ここまで局数が多かったために12巡目の段階で打ち切り時間(決勝は90分)となり、そのまま流局した。
ちなみにリーチの2巡後、中月はここから、
をチーして打と喰いタンに向かう仕掛けを入れたのだが、この鳴きで樋口さんのツモるを喰い下げている。
そのときはまだ打ち切り時間になっていなかったので、4000オールでさらにもう1局、樋口さん優勝の可能性が十分にあっただろう。
中月 裕子、おめでとう。
女流にしては少数派と思われる攻め屋であることが今回わかりました。
今回、勝ちの味を占めたこともあって、短期の決勝などでは一目置かなければならない存在だと思います。
しかし、全15局、90分越え、みなさんお疲れ様でした。
(文・五十嵐
毅)
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