≪大会レポート≫
年の瀬も迫る12月23日、日本プロ麻雀協会の2014年最後の行事となるチャンピオンロード〜日本OPシリーズ〜が開催されました。
例年のことですが、日本OPシリーズは他のシリーズと比べるとやや参加人数が少なめです。
特に今年は年末開催ということもあり…
又同日に第13期女流雀王決定戦の最終日が行われたこともあり…
更には他のシリーズに比べると協会員の優勝者が少ない事などもあり…
運営サイドも不入りを予想していましたが、何と予想以上の方々にご参加いただくことなり、2会場での開催する運びとなりました!
ご参加頂いた皆様、本当にありがとうございます!!
…このシリーズが不入りだと何となく私はちょっと肩身が狭いので、来年も皆様よろしくお願いします…(笑)
という訳で今回のレポートは、私武中 真が担当させて頂きます、よろしくお願い致します。
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2会場に渡って行われた戦いを潜り抜け、決勝卓にたどり着いたのは以下4名。
森 秀人さん(351.5)
久間 史郎(288.8)
山中 直人(262.7)
綱川 隆晃(234.1)
※()内はここまでのトータルポイント
道中6半荘中5回のトップを取った森さんが頭一つ抜けた展開。
その森さんを追撃する3名だが経験豊富な現オータムCC優勝者の綱川、プロ3年目の若手山中、今期入会の新人久間と
全員20代ながら各々の立場がかなり異なる3人が残る形となった。
起家から山中→久間→森さん→綱川の座順となった決勝戦。
東1局は綱川の先制リーチ、5200のアガリで幕を開ける。
東1局 綱川(北家)
ロン ドラ
この綱川のリーチに放銃したのは好形イ―シャンテンとなっていた久間、正直最悪の立ち上がりである。
ここで"最悪"と位置づけたのは、自身の手組とか放銃した打点が高いとかいう問題ではない。久間の精神状態を踏まえての話だ。
久間はこの日がカップ戦、タイトル戦を含めて公式戦初の決勝となる舞台。
採譜をとられるのは勿論、諸先輩のプロや一般の方々に観戦される対局もほぼ初めての経験だっただろう。
準決勝の対局の時から明らかに緊張の色が顔に出ていた。
この決勝、序盤に簡単な手が上がれれば少しは緊張も解れると思っていたのだが、結果は上述の通り放銃スタート。
「東場はガチガチでした」
本人が決勝後にこう述べた様に、この後東場の久間は卓内の相手だけではなく、自分への緊張とも必死に闘っていた様に映った。
結果的には決勝に残った4人の中で手牌に一番恵まれなかったし、誰がこの席に座ってもおそらく優勝は難しかっただろう。
只麻雀の内容という点については、本人も決して納得のいくものでは無かったと思う。
一方好スタートを切った綱川もトータルトップとの森さんとの差が決勝時点で100ポイント以上離れており、
この位の加点ではまだまだ優勝は現実味を帯びてはこない。
迎えた東3局森さんの親番、今度は森さんの持ち点を削るべく、再び綱川が先制リーチを打った。
東3局1本場 綱川(南家) 5巡目
ドラ
このリーチを受けた直後森さんは以下の形。
東3局1本場 森さん(東家) 6巡目
ドラ
ここから一発で綱川に無スジのを河に置きファイティングポーズをとる。
こうなると綱川への放銃も十分に考えられる形な訳だが、
次巡にを引くとまるで当たり牌が見えているかの様に中抜きで撤退し、結果は流局。
捲られた裏ドラを見て顔をしかめる綱川、逆に森さんにとっては会心の放銃回避。
続く東4局でも森さんが親・綱川の急所牌を的確に止め、結局東場はそれ程大きな点棒移動は無く南入。
完全なオカルトだが、ここまで他家のキー牌をことごとく止めている森さんの優勝をこの時点では勝手に予想していのだが…
このゲームを大きく動かしたのは森さんではなく、南1局に親番を迎えた山中だった。
南1局 山中(東家) 6巡目
ドラ
6巡目に先手、好形と文句なしのこの形でリーチ。
終盤、綱川の追いかけリーチを受けるもを自力でツモると、裏ドラは。
4000オールでまずはトップ目に浮上した。
続く1本場、今度は久間が先制リーチ。
南1局1本場 久間(南家) 3巡目
ドラ
入り目のは打点的に大いに不満だが当然の即リーチ。
一人旅かと思われたが、一旦迂回した山中が終盤2枚の無スジを押して、久間の切ったに手牌を開いた。
南1局1本場 山中(東家) 15巡目
ロン ドラ
連続での親満アガリとなり、一気に優勝を引き寄せる。
さらに山中は止まらない。
ポイント的に一番の対抗相手となる南3局、森さんの親番ではこのアガリ。
南3局 山中(西家) 10巡目
ツモ チー ドラ
4巡目にをチーして単騎のホンイツテンパイから、すぐにを引き入れて盤石の5面張。
がポンカスとは言えマンズが絶好のこの場況では、10巡目アガリは遅いとさえ思えてしまう。
最後の親番で反撃をしたかった森さん、この局ピンズのチンイツテンパイを入れていた綱川も
この最終形を見せられて負けを悟ったのではないだろうか。
とは言えここは決勝の舞台。
実は山中本人はもう一波乱あるのではと、気が気ではなかったらしい。
オーラスを迎えた時点での点棒状況は以下の通り。
綱川 22300
山中 64800
森さん 1400
久間 10500
久間の優勝条件は山中からの役満直撃とかなり厳しい。
森さんは倍満ツモ条件、綱川はラス親で山中を捲れば優勝。
勿論楽ではないが、赤有りのルールと決勝オーラスである事を考えれば、平素の半荘より勝負が縺れる確率は高い。
まずは平場、綱川がまだ終わらせないとばかりにリーチで攻め立てる。
南4局 綱川(東家)
ドラ
道中の面子選択が難解であったが、おそらく殆どの人が-待ちのリーチを打つことになるだろう。
しかしこれはリーチの時点で純カラで結果は流局。
捲られた裏ドラは。綱川この半荘2回目の裏3空振りで頭を抱える…
もしツモれていれば8000オールで、一気に山中を射程圏に追い詰めていた。
続く1本場、綱川の先制リーチを掻い潜り、今度は森さんが優勝へ最後の執念を見せてくれた。
南4局1本場 森さん(北家)
ドラ
ツモれば三暗刻もついて文句無しの倍満。しかしこれも結果流局となり、これで2人は力尽きた。
続く2本場、好形の配牌を貰った山中が速攻で仕掛けを入れ、自ら上がり切って決勝の幕を下ろした。
山中の前に、この日初の決勝卓を体験した久間について少し書こうと思う。
優勝した山中と久間は現在雀王戦で同じリーグに所属しているのだが、この日の決勝だけに関して言えば結果も内容も正直に山中の完勝だった。
この両名の明暗を分けたのは細かな雀力の差ではない、経験の差である。
入会前から足繁くチャンピオンロードの大会に足を運び、何度も決勝へ駒を進めて経験を積んできた山中との場数の差が如実に出たということだ。
久間に助言を送るとすれば、肝心なのは次以降決勝に進んだ時、健全なメンタルで勝負に挑めるだけの経験を積むことだ。
「駄目だったのが大きなタイトルの決勝ではなく、今日のカップ戦で良かった」
これ位の気持ちで次に臨んで欲しいと思う。
これは何も久間だけに限ったことではない。
前回のオータムCCシリーズで決勝に残った新人江崎も然り、最初から自分で納得のいく内容とメンタル状態で決勝を打てる選手の方が稀だと思う。
もし若手でこういった重圧を即座に克服できる自信が無い選手は、やはりもっとチャンピオンロードに足を運んで欲しいと個人的には願っている。
経験値を上げることも然ることながら、身近で一番結果を出しやすい公式戦でもあり、参加するだけでGCポイントも増えるのだから。
さて、山中は第2回チャンピオンロード・新人王シリーズに続く3年ぶり2回目の優勝。
3年前の優勝時は協会にまだ入っていなかったため、プロになってからの公式戦初優勝となった。
山中本人にとってチャンピオンロードはプロとなるきっかけになった思い入れのある大会だろうし、喜びもひとしおだろう。
協会に入ってからもほぼ毎回この大会には出ている姿を見てきたし、決勝もその経験が存分に活きた堂に入った内容であった。
年末のGC大会でも是非結果を出して、協会にチャンピオンロードのタイトルを久々に持ち帰ってくれることを期待している。
ちなみに私自身もGC大会に残れる様頑張りたいが、今のポイントでは何とも厳しい…orz
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最後に、この大会が行われた同日には第13期女流雀王決定戦の最終日が催され、見事豊後 葵の優勝で幕を閉じました。
次回のチャンピオンロードは2015年1月12日(月祝)、この日激戦を制した豊後も参戦する女流雀王シリーズとなります。
皆様のご参加を是非お待ちしております!!
(文・武中 真)
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