≪決勝レポート≫
【担当記者・坂本 太一】 2月24日(祝)。晴天。 『第10回チャンピオンロード〜グランドチャンピオン大会』(以下GC大会) 毎年開催されているこのGC大会も、今年で記念すべき第10回目。まず、簡単にGC大会のシステムを簡単に説明させていただきます。 年間7回開催されるプロ・アマ混合のワンデー大会「チャンピオンロード」。 その成績上位者にGCポイントというポイントが付与され、各チャンピオンロードシリーズでのポイント通算上位24名がGC大会で優勝を争います。 GC大会は、まず予選を4回戦行い上位8名が準決勝戦に進出。以後ポイント持ち越しで準決勝戦(8人)、決勝戦(4人)の全6回戦で優勝者を決める。 年々チャンピオンロードの参加者は増えてきており、大勢の一般の方に参加していただいていますが、ここ数年はプロの参加者も増えてきています。 「特別昇級制度」 チャンピオンロード年間2回優勝 or GC大会優勝でリーグ戦昇級。 この制度が若手プロの参加を促している面は大きいだろう。 多くのプロ・アマを相手に好成績を挙げてきたアマの強豪達。そして目の前に「昇級」という人参をぶら下げられているプロ達。 総勢24名。 また、今年から準決勝戦(8名)・決勝戦(4名)はスリアロチャンネルで放送される(準決勝戦は2卓のうち1卓が放送卓)。 誰もが勝ち残りたいと願っていただろう。 そんな中、準決勝戦進出を決めた8名のうち、協会員は6名。 人参パワー強し。いや、プロの意地なのか。 16時25分。 準決勝戦開始。 強豪のアマチュアとプロ相手に全くひけをとらず、好成績で準決勝戦まで歩を進めた壱岐信人さん(3位)、山口敬さん(6位)。この一般参加者2名と、黒崎有希(2位)、冨本智美(7位)女流プロ2名の戦いがスリアロチャンネルで放送された。 結果から言うと、トップをとった黒崎のみ決勝戦へと進出。残り3名はここで敗退となってしまった。しかし、敗退した3名とも見事な内容であったと思う。 壱岐さんは放銃することが多くなってしまったが、それは勝負するに見合った手を作り続けた結果。打点への意識の高さと手作りは流石のものだった。 終始苦しい配牌と展開だった山口さんも、最後まで丁寧に、最善を尽くす選択をしていた。 同卓者の中では1番条件が厳しかった冨本プロも、最終局は裏ドラが乗っていれば決勝戦、というところまで迫っていた。 この準決勝戦の模様はスリアロチャンネルで見ることができるので、是非ご視聴いただきたい。 そして、決勝戦に残ったのは以下4名の協会員。 黒崎有希プロ +209.5 柳田憲昭プロ +146.1 コウプロ +97.2 畠弥峰プロ +63.2 (以下敬称略) 黒崎が少し抜けている状況。黒崎以外の大まかな優勝条件は、以下の通り。 柳田:トップをとり、黒崎が2着の場合は23500点差以上、3着の場合は3500点以上の差をつける コウ:トップをとり黒崎を4着にしたうえで、32400点以上の差をつける 畠:トップをとり黒崎を4着にしたうえで、66400点以上の差をつける 3人とも自身のトップがほぼ必須。そのうえで黒崎を沈めたい。決勝戦ではそんな思惑が見て取れる、条件戦ならではの熱戦が期待できそうだ。
17時55分。 決勝戦開始。 座順は、東家:畠 南家:柳田 西家:コウ 北家:黒崎 「優勝すればリーグ戦昇級」 脳裏にちらつく。 目の前に人参を吊り下げられ、興奮しない馬はいない。人間も一緒だ。 東1局0本場:畠・柳田の2人聴牌 東1局1本場:黒崎がコウから1000は1300点のアガリ。 開局から壮絶な、殴り合いのような展開になるのでは、と予想していた。 しかし、始まりはとても静かなものだった。 これは嵐の前の静けさなのか… 東2局0本場。 黒崎以外の3者が立直。手詰まった黒崎が、親の柳田に3900点を放銃する。 河を見てもらいたいが、このが放銃になるとはなかなか思えない。致し方ない放銃に見えた。しかし、 「よし、これで並びはできた」 黒崎以外の3者全員がそう思い、ほくそ笑んだに違いない。たぶん。 東2局1本場:柳田の1人聴牌。 東2局2本場:柳田がコウから1500は2100点のアガリ。 柳田がジリジリと点棒を伸ばしていく。 こういう条件戦では、「親VSトータルトップ者」という構図になり易い。 まだ始まったばかりではあるが、長い半荘になりそうだ。 東2局3本場。 面子手・刻子手どちらも見える悩ましい手牌。ここからコウは刻子手を重くみた切り。打点が欲しい状況。ドラの西は是が非でも使いたい。 そして、見事ノーミスで単騎の七対子を聴牌する。 ここでコウはダマテンを選択。黒崎を4着にするため、畠から出た場合は見逃し、黒崎からの直撃確率を上げるためか。繊細な選択。 その後、畠から立直が入り、聴牌をいれている黒崎の切り番。 畠の河にはが置いてあり、は畠の立直に対する危険牌。巡目も終盤。 コウは立直にそこまで危険な牌を切っておらず、そこまで聴牌気配は出ていないようにみえる。 コウのダマテン戦略が実るかと思われたが、黒崎はをツモ切り。点棒状況的に打点が欲しかったことが大きな要因であろうが、積極的な選択が満貫放銃を回避させた。 この戦いは、コウが残り1枚のを手元に引き寄せ跳満をアガって決着。 東3局0本場。 親番のコウが、前局同様ダマテンからの満貫ツモアガリ。 徹底している。徹底して、黒崎に4着を引かせにきている。 東3局1本場。 5巡目でこのイーシャンテン。(自称)「ワンデイのコウ」がここで大きく突き抜けるのか… しかし、この局にアガったのは畠。順子手・対子手両方みえる手牌から見事に手牌をまとめあげ、赤ドラ・裏ドラなしの珍しい倍満をツモアガった。 東4局0本場。 四暗刻も見える手牌だったが、ターゲットの黒崎が親番。黒崎にアガらせる訳にはいかない。をポンして、聴牌をとるコウ。 しかし、このままやられる訳にはいかない黒崎が渾身の立直をかける。 そして、黒崎がコウから一盃口のつく高めを打ち取り、裏ドラ2枚の大きなおまけつきで18000点をアガる。 放銃した場面について少し触れてみよう。 コウの目からが4枚みえていた。 単独でと持っている可能性は低い。からのを切ってのシャンポン待ちも考え辛い。 一番ありがちなのは「」「」という複合形からの切り立直。 しかし、これも自身の目からが2枚見えており、可能性は低い。 並びができているとはいえ、コウは32400点以上黒崎と差をつけなければいけない。ここで4000点オールでもツモられようものなら、条件はまた厳しくなる。 自身の加点チャンスでもあり、致し方ない放銃にみえた。しかし、あまりにも大きな18000点の放銃。 東4局1本場。 黒崎はドラのを引くと、ここでタンヤオを強くみて打とする。 12巡目、コウから5800点は6100点のアガリ。 2巡目の段階でを選択していたからこそを重ねることができ、アガリに結び付けることができた。 このアガリには師匠であり解説の矢島もニッコリ。 続く東4局2本場も、黒崎が畠から軽快に2900点は3500点をアガる。 東4局3本場。 柳田が満貫をツモアガり、黒崎の長い連荘を止める。 1時間20分にも及ぶ長い東場がようやく終わった。 南1局0本場。 ここから数時間は連荘したい親番の畠。6巡目で四暗刻がみえるドラ2枚のチャンス手となる。 この手牌から畠は七対子に決める打を選択。 四暗刻に必要なとは現状1枚みえており、浮き牌の全てそれなりに重ねやすそうな場況。 実際、は山に1枚だったものの、は山に2枚生きていた。 ドラのが場に放たれる可能性も低い。苦しいポイント状況の中で、現実と理想の中でバランスの取れた選択をしているようにみえた。 しかし、現実は無常。いつまでも聴牌しないどころかを暗刻にし損ね、更に上家黒崎にドラのをツモ切られてしまう。 そして、柳田がをツモって700/1300のアガり。 畠の連荘+ドラの引きを願ってダマテンにしていたが、黒崎からドラのが切られ猶予がないとみてツモアガった。 畠にとってはあまりにも痛い親落ち。ここまで畠は非常にバランスの優れた選択を随所に見せていた。 しかし、現状の厳しい優勝条件を考えると四暗刻を目指す選択もあったかもしれない。 ここで優勝争いからは実質脱落となってしまった畠だが、入会1年目でチャンピオンロード日本オープンシリーズを優勝した期待の若手。 これからの活躍が期待される。 南2局0本場。 親番の柳田は打点上昇のためを残し続け、ここから打。 この後、→と引き即立直。打点づくりのお手本のような麻雀で、コウから5800点をアガりきる。 ロン ドラ 裏ドラ 南2局1本場。 柳田からの立直が入るも、ここは畠が追いかけ立直。一発でドラのをツモアガり、2000/4000は2100/4100のアガりを決める。 優勝は厳しいが、ここから2連続で役満をアガることもあるかもしれない。 現実的にトータル2位を目指すという意味でも、ここは最善の選択だったように思う。 痛い親落ちかと思われた柳田だったが、 柳田憲昭 35400点 畠弥峰 33700点 黒崎有希 30000点 コウ 900点 現状このまま終われば柳田が優勝となる。 南3局0本場。 もう後がない親番のコウにチャンス手がはいる。ドラは。 を切るのか、ホンイツをみてを切っていくのか。 を切っていき、見事な6000点オールのツモアガり。 南3局1本場。 コウはここでも4000は4100オールのツモアガり。 コウ 31200点 柳田憲昭 25300点 畠弥峰 23600点 黒崎有希 19900点 このアガりによって、優勝条件を満たしているのは目下ラス目の黒崎となった。 南3局2本場。 是が非でもトップ目にたちたい柳田の配牌。一気通貫の1シャンテン。 親番コウの追いかけ立直・ライバル黒崎の仕掛けがあったものの、ここで柳田が2000/4000は2200/4200をツモアガる。 ここで実質、(自称)「ワンデイのコウ」は敗退となってしまった。このメンバーでは最古参ということもあり、条件戦の戦い方を1番熟知しているように感じた。 現在、協会チャンネルで放送されている「fuzzカップ」でも活躍しており、この先ワンデイ大会だけでなく「ビッグタイトルのコウ」と呼ばれる日が来るかもしれない。 柳田憲昭 34900点 コウ 26000点 畠弥峰 21400点 黒崎有希 17700点 このまま柳田が優勝するのか。それとも、黒崎がラス親で巻き返すのか。 長きにわたるシーソーゲームも、ついにオーラスを迎える。 南4局0本場。 から上家のをチーする柳田。 全力でタンヤオだ。 最速のアガりを目指す。 しかし、ここまで我慢を重ねてきた黒崎が最高の入り目を引き、先制立直をかける。 柳田もタンヤオの聴牌をいれる。 アガれば優勝。 山には両者のアガり牌が黒崎が3枚、柳田が2枚生きていた。 ほぼ互角。決着はつきそうだ。 どちらに勝利の凱歌はあがるのか。 1牌の後先で運命は大きく変わる。 安全牌0のこの手牌。アガれば優勝という状況。このを止められるはずがない。 いや、切るべき牌だろう。 柳田は流れるような動作でを河に置く。 少し震える手で手牌を倒す黒崎。 めくった裏ドラ表示牌は。 裏3。ライバルから、18000点の直撃となった。 柳田の第10回GC大会はここで終わった。 打点を追う局、スピード優先の局。そのメリハリがはっきりしており、打牌のテンポも一番良かったと思う。 柳田は唯一、同一年チャンピオンロード2回優勝を果たしており(その当時、特昇制度はなかったが)、来年もまたこの舞台で今年以上の結果を見せてくれるのではないか。そう思わせてくれるような内容だった。 南4局1本場。 暫定優勝者が何度も入れ替わったこの半荘。 最後は流局し、誰よりも深々と頭を下げた黒崎が栄えある第10回GC大会優勝者となった。 師匠の矢島からのコメントをもらい、涙ぐむ黒崎。 要所要所で裏ドラが乗ったことは大きかったが、日和ってしまいそうなトータルトップ目という立場からでも、積極的な鳴き仕掛けや押し引き判断をみせてくれた。 打点を見据える手組は師匠の矢島譲りなのか、大器の片鱗をうかがわせる優勝者に相応しい内容だったと思う。 最後のコメントでもまず始めに周りへの感謝の言葉を述べていた。 この先も伸びていけば、いずれは女流という枠を超えて活躍していくプレイヤーへと成長していくかもしれない。 黒崎プロおめでとうございます! この熱戦を未だ見ていない方は、是非スリアロチャンネルでご視聴ください! また参加してくださった一般参加者の皆様、誠にありがとうございました。 第11回チャンピオンロードシリーズでまたお会いしましょう!!
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