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最終ポイント成績

 
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
仲林 圭
36.7
-24.2
-11.4
-7.5
42.6
37.2
大崎 初音
2.6
23.3
12.9
-22.5
-25.6
14.5
水崎 ともみ
-17.9
-5.4
-25.3
3.4
20.9
-11.5
鍛冶田 良一
-21.4
6.3
23.8
26.6
-37.9
-40.2

【決勝観戦記】

「おはようございま〜す!」
会場一番乗りは現女流雀王・大崎 初音。
第9・10期と女流雀王連覇を達成し、今や協会女流の顔である。
表情を見るに緊張もなく非常にリラックスしているようだ。
「歴代女流雀王はみなさん他のタイトル戦でも結果を残してるけど、まさか私が女流雀王以外の決勝に残れるなんて思ってませんでした。今回決勝に残れただけでも嬉しいです!」
なんとも控えめなコメントである。
準決勝もそうだったが、大崎の後ろには数多くのファンが観戦をしている。本日の決勝においても大崎の後ろが一番観戦者が多い。
ファンのためにも負けられない。大崎の戦いが始まる。

「おー坪川か!なんだよー応援しに来てくれたの?嬉しいなおいー!え?観戦記者?そうかそうか、じゃあ格好良く書いてくれよな」
次に会場に入ったのは当協会副代表・鍛冶田 良一。
第1・2期雀竜位、第4期雀王など数え切れないほどのタイトルを持つこの男。
さらにオータムCCでも決勝経験ありと、今回の決勝メンバーの中で経験という意味では一人飛びぬけている。
近年はタイトルに縁がなく、ここぞという場面で力を発揮できていない。今回優勝すると7年ぶりのタイトルとなる。
「若いやつらの邪魔いっぱいするから見とけよ」
気合も程よく入っており、2日前にギックリ腰になった以外は万全か。

鍛冶田と談笑しているとエレベータが開く。
現雀竜位・仲林 圭の登場である。
「俺しかいないでしょ?もう決勝戦も慣れっこだし、今日も龍出すよ」
元協会・吉田光太プロ(現在は最高位戦日本プロ麻雀協会所属)の弟子として腕を磨き、師匠譲りの龍を右腕に宿す男である。
今回の決勝でもここぞという場面で龍を出すことができるのだろうか。非常に楽しみである。
また、自分が優勝する絵しか見えないとのこと。自信満々で卓に着く。

最後に会場入りしたのが水崎 ともみ。
昨年の第10期女流雀王では惜しくも準優勝。勉強会等も積極的に参加し雀力向上に励んでいる。
また、今回オータムCCで唯一予選からの勝ち上がり者である。
勢いは他のタイトルホルダー3人にも引けを取らないか。
「緊張は・・・してます。みなさん実力者ですし、敵わないかもしれませんが、決勝を楽しみながら自分の麻雀を打ち切りたいと思います」
教科書通りの回答である。表情からも緊張感が伝わってくる。

11時ちょうど静かに1回戦が始まった。

★1回戦★(鍛冶田-水崎-大崎-仲林)

開局から仲林が好手を見せる。配牌こそ
仲林(北家)
 ドラ
とパッとしなかったが、2巡目を引いたところで冷静にペンチャンを払い打点を作りにいく。
ツモもかみ合い11巡目にリーチ。開局早々に勝負を決めるアガりが出るか?
仲林(北家)
 ドラ

このリーチに真っ向勝負を挑んだのが大崎である。
とポンをし、無スジをそっと押していく。
大崎(西家)
 ポン ポン ドラ

しかし、この局を制したのは意外にも水崎。6巡目に親から放たれる
水崎(南家)
 ドラ
この形からスルーした後、上家から降りてくるも鳴かず。
門前で打点をというよりは守備的な意味でのスルーだろう。このスルーが唯一のアガりへの道筋になる。
仲林のリーチ後に上家からこぼれる3枚目のをチーして大崎から2000点。
水崎(南家)
 チー ロン ドラ
打点こそ低いものの2人の勝負手を潰した上に初アガりと水崎にとって最高の出だしだ。

流局が続き迎えた東3局3本場ドラ
3本場の上にリーチ棒が3本転がっており、争奪戦が始まる。
まずは水崎が7巡目にをポンして前に出る。
8巡目に仲林がイーシャンテンになる。
仲林(南家)
 ツモ ドラ
場状的にもカンは悪い受けではないのでここは素直にドラを叩き切るかと思って見ていたのだが、ここから打とする。
をポンしている水崎の河が濃く、ポン出しが完全安牌のであることも加味して受けに回ったのだろう。

しかし、同巡の水崎の少考から手出しを見て攻めに入る。
大崎が打ったをポンし、少し強めにドラのを叩きつける。声は掛からず。

対局後に仲林は語る。
「あの少考でまだ聴牌が入っていないのがわかったからドラ切るならあのタイミングしかないでしょ」
対局者の細かい挙動を見逃さない仲林らしい一打である。
立て続けにもポンして聴牌。
仲林(南家)
 ポン ポン ドラ
14巡目に親の大崎が追いつきリーチ。一発目に掴んだを仲林がそっと河に置くと声が掛かる。
声の主は大崎ではなく水崎。
・・・1000点で済んだか。
現実はそうそう都合よくできてはおらず想像の8倍の高さに仲林の顔が歪む。あまりにも手痛い失点。
水崎(北家)
 ポン ロン ドラ

その後、仲林が意地で2000・4000をツモり上げ迎えた南3局。
点棒状況は下記のようになっている。
東家 大崎17600
南家 仲林28500
西家 鍛冶田30500
北家 水崎43400

ここまで静かだった大崎が攻め立てる。まずは12巡目にリーチ。
大崎(東家)
 ドラ
捌きにかかった仲林がワンチャンスを頼り4800を放銃。

続く1本場も大崎が先手を取り10巡目にノータイムで牌を曲げる。
大崎(東家)
 ドラ
2巡後に力強くをツモり2000は2100オール。

2本場でも6巡目リーチ。
大崎(東家)
 ドラ
リーチを受けた3人は、「またですか・・・もう勘弁してください」そんな表情である。
大崎の心境としては「君らがッ!泣くまで殴るのをやめないッ!」そんなところか。
この早いリーチにで飛び込んだのがトップ目の水崎。
他に打つ牌もなく致し方なしか。これで大崎がトップ目に立つ。

鍛冶田が大崎の親を流して迎えたオーラスでは2600点を大崎に放銃で水崎は3着まで落ちてしまう。
水崎この展開で3着とは具合が悪い。
逆に親番だけでトップを捲くった大崎、耐えて2着を拾った鍛冶田はニッコリ笑顔である。

「ラスもそこまで大きくないし、余裕よ。余裕」と仲林。
まだまだ全5回戦の内の1回戦が終わっただけである。先は長い。

1回戦結果
大崎+23.3 鍛冶田+6.3 水崎▲5.4 仲林▲24.2

 

★2回戦★(仲林-水崎-鍛冶田-大崎)

水崎が激しく仕掛ける。
東3局 ドラ
親の第一打のをポンから入り、チーさらにポンし聴牌。
水崎(北家)
 ポン チー ポン ドラ
ここに攻め入ったのが親の鍛冶田。
最後のを鳴かせた後もフフゥーと息を荒げながらと押してくる。もはや聴牌は確実だ。
河底が水崎に回る。持ってきたのは
鍛冶田にが通っているのでに手をかけるかと思って見ていたがノータイムでを放り鍛冶田に2900を放銃。
水崎前回の半荘で少し熱くなっているか。
そんな水崎に麻雀の神様が難しいパズルをプレゼントする。

東3局1本場 ドラ
6巡目に手牌がまとまりはじめ下記の牌姿になる。
水崎(北家)
 ドラ
ここから打。さらにをツモ切り、を引いて打としツモで打
10巡目にをポンし聴牌を入れる。
 ポン ドラ
この難しいパズルを最速で最高の聴牌まで持っていく。
ここはさすがに水崎のアガりかなと思ってみていると、すぐに鍛冶田のアタり牌のラス牌を持ってきて1500は1800の放銃。
麻雀の神様がなかなか水崎に微笑まない。

逆にこれで気を良くした鍛冶田がアガりを重ねる。
3900は4500を大崎から、3900は4800を仲林からアガり、最後は聴牌から即ツモの4000は4400オール。
鍛冶田(東家)
 ツモ ドラ
キャッチフレーズの「破壊王」らしく暴れまわり鍛冶田の持ち点は60000点を越える。
5本場で大崎が鍛冶田から直撃を取るも、痛みはほとんどなし。

南2局 ドラ
まずは鍛冶田が3巡目に仕掛ける。
鍛冶田(南家)
 チー ドラ
次巡を持ってくるがノータイムで河にを並べていく。
点棒もそうだが、内容も良く精神的にもかなり余裕がでてきたか。
対照的なのが仲林だ。
仲林(北家)
 ドラ
5巡目に上家から降りてくるドラをスルーし山に手を伸ばす。
これはどうしたものか。門前で仕上げるのは非常に難しく、鳴けば3900が確定する上に満貫になる可能性も十分ある。
後に仲林本人も語るがこの早い巡目にドラのが放たれることを想定できていなく、体が反応できなかったという。打ち込み不足が原因か。
2人がモタついている内に親の水崎から切りリーチが入る。
水崎(東家)
 ドラ
7巡目大崎がを放つと仲林今度はチー、さらにもポン。大崎も仕掛けを入れ捌きにかかる。
これに挟まれた鍛冶田11巡目に完全に手詰まりを起こしてしまう。
鍛冶田(南家)
 チー ドラ
ソーズは水崎のリーチ、大崎の仕掛けに危険。も落としにくい。マンズはというと仲林の捨て牌がこうである。


ドラのをチーでのトイツ落としを入れ、のポン出しがである。
鍛冶田の目から見るとチンイツに見えるこの仕掛けだが、を見送った2巡後のはチーという情報から二度受けは考えにくい。
スッとを河に置くとロンの声。声の主はもちろん仲林である。
仲林(北家)
 ポン チー ロン ドラ
仲林はスルーから鬼の連続引きで鍛冶田を捕らえる。
この後味の悪い7700放銃。点棒的にはまだ余裕があるが、鍛冶田に焦りが見え始める。

流局を挟み迎えたオーラス。
南4局1本場 ドラ
東家 大崎29400
南家 仲林23000
西家 水崎20700
北家 鍛冶田45900

2巡目に仲林がをポン、合わせるように親の大崎もを仕掛ける。ポンポン合戦で13巡目には2人の手牌が4枚になる。
大崎(東家)
 ポン ポン ポン ドラ
仲林(南家)
 ポン ポン ポン ドラ
仲林のアガり牌は山にはなく大崎への放銃で終わるかと思っていたのだが、飛び込んだのはトップ目の鍛冶田である。
すでに聴牌が入っていたのだがここはもう少し慎重にいくべきだったか。

大崎はさらに2900は3500を仲林からアガり暫定トップ目に浮上。700は1000オールで差を広げる。

南4局4本場 ドラ
東家 大崎43000
南家 仲林18500
西家 水崎19700
北家 鍛冶田38800

大崎に連勝されると後半戦が苦しくなる。仲林・水崎の両者は、大崎の着順を下げて尚且つ自分は3着に縋り付きたいが、
お互いの点差が点差なだけに手をじっくり作るのは難しいか。

親番の大崎がさらに点差を広げようと手を作り13巡目に聴牌が入る。
大崎(東家)
 ドラ
ここから当然打とすると仲林からロンの声。
仲林(南家)
 ロン ドラ
値千金の3900は5100を大崎から直撃。これで大崎の2連勝が阻止され、さらに仲林は3着に浮上。

2回戦結果
鍛冶田+23.8 大崎+12.9 仲林▲11.4 水崎▲25.3

2回戦終了時トータル
大崎  +36.2
鍛冶田 +30.1
水崎  ▲30.7
仲林  ▲35.6

ラッキーな展開でトップを取った鍛冶田、2着ではあるが素点を含めポイントを上乗せできた大崎はまたもやニッコリ。
苦しいながらもオーラスに最高の上がりが出来た仲林だが内容の悪さに不満気味。
水崎は手は入るがなかなかアガりに結びつかず、ポイント以上にストレスを感じているだろう。

2回戦後の休憩中。応援に駆けつけた仲間達と談笑する仲林。
「最後のは大崎さん以外からは見逃すつもりだったんだよねー!フフン」
「それはそうと、あんなスルーとかどうしたの?」
「悪かったよ。反省してる。もうあんなミスはしないから」
やはり仲林の内容の悪さを周りも気にしているようである。

仲林は一呼吸置いて気合を入れ直し卓に着いた。

 

★3回戦★(鍛冶田-水崎-仲林-大崎)

鍛冶田の好調が続いている。
取った配牌を丁寧にまとめ上げリーチをかけてツモアガる。さらに打点も付いてくる。
所謂「流れが良い」というやつだ。
他3人は先手を取ろうとしても中々取れずツモられ貧乏となり点棒を削られていく。

南2局 ドラ
東家 水崎28700
南家 仲林27400
西家 大崎22500
北家 鍛冶田41400

親番を迎えた水崎にチャンス手が入る。手に取った配牌が
水崎(東家)
 ドラ
そろそろ点棒を稼がないと最終戦まともな麻雀を打たせてもらえなくなってしまう可能性があるため、ここは慎重にいきたいところである。
想いとは裏腹に4巡目鍛冶田の牌が横に曲がる。
ここは勝負所と無筋を叩き切って全軍突撃の構えだったがすぐに鍛冶田の手牌が倒され1300。水崎の地獄いつまで続くのか。

南3局 ドラ
ここでやっと親番の仲林が闇聴で鍛冶田から2400の直撃を取る。
仲林(東家)
 ロン ドラ
風向きが変わりはじめたか。

続く1本場でも親番の仲林が丁寧に手牌をまとめ上げ13巡目にリーチ。
仲林(東家)
 ドラ
仲林の一人旅かと思われたが、スッとさらにと押してくる者がいた。
鍛冶田だ。
仲林が力なくを河に置く。
鍛冶田(西家)
 ロン ドラ
連荘すらできないのかとうな垂れる仲林。勝負どころを知り尽くしている鍛冶田はさすがと言ったところか。

オーラスを迎えて点棒状況が下記の通りである。
東家 大崎22500
南家 鍛冶田42600
西家 水崎27400
北家 仲林27500

トータルトップ目の大崎がラス目である。
水崎、仲林はここで大崎に捲くられては元も子もないので一刻も早く自分が上がってこの半荘を終わらせたい。

2巡目に水崎が自風のをポン。
水崎(西家)
 ポン ドラ
見た目もへったくれもない。ここで必死にならなかったら勝てる勝負も勝てない。
上家が鍛冶田ということも加味した仕掛けである。
鍛冶田も水崎の鳴けそうな牌を優先して河に置いていき、最後は水崎のカンチャンに差し込み成功である。
水崎(西家)
 チー ポン ロン ドラ
トータルトップ目の大崎に土を付けたのは大きい。
ここから水崎の逆襲始まるか。

3回戦結果
鍛冶田+26.6  水崎+3.4  仲林▲7.5 大崎▲22.5

3回戦終了時トータル
鍛冶田 +56.7
大崎  +13.7
水崎  ▲27.3
仲林  ▲43.1

鍛冶田はまたもやトップで優勝が見えてきた。水崎もやっと連に絡んで気分は上々か。
大崎手痛いラスを引くがまだまだプラス領域。次が正念場だろう。

そういえばここまで連に絡んでいない仲林はどこへいった。
会場の隅で小さくなっている彼を見つけるがまるで生気を感じない。

・・・仲林の気配が消えた。

 

★4回戦★(鍛冶田-仲林-大崎-水崎)

会場のムードが鍛冶田色に染まっていく。確かに鍛冶田の好調を目の当たりにして「他に誰が勝つんだよ」そんな感じである。
言葉では表現しにくいがそう思ってしまうんだからしょうがない。
流局を挟んで迎えた東1局1本場。
やはりと言うべきか鍛冶田が6巡目先制リーチを入れる。
鍛冶田(東家)
 ドラ
またサックリアガってしまうんじゃないかそんな幻想に陥りそうである。
10巡目まだツモらない。まぁでもまだツモ回数はたくさんある。
「・・・リーチィ・・・」
誰だ?こんな合戦場にボディーブレード1本で挑んでくるような愚弄者は。
仲林だ。
これが10年前だったらどんな風に書かれることだろうか。

14巡目に仲林が良い音でツモ牌を叩きつける。
仲林(南家)
 リーチツモ ドラ
2000・4000は2100・4100。
ここまで好不調がハッキリしている二人がツモり合って絶不調の仲林が勝つなんて・・・どういうことなのよ。
そういえば薄っすら仲林の腕に龍が見えたような。いや幻か。

東2局 ドラ
親の仲林が配牌から色に寄せ7巡目にはこう。
仲林(東家)
 ドラ
次巡出る2枚目のをポン。渋々聴牌取りかと思われたがを叩き切り大きく狙う。
確かに仲林のポイント状況は鍛冶田と100ポイント近くあり、このくらいの無理はしていかないと山頂は見えてこない。
この勇気の一打に牌が応え始める。
すぐにを引き--の聴牌さらに2巡後あっさりとツモで4000オール。
仲林(東家)
 ポン ツモ ドラ
仲林の気配は消えたはずなのに、どういうことなんだ。

1本場は500は600オール。
2本場でも11巡目に先制リーチを入れるが、大崎のチートイツドラドラに放銃してしまう。
大崎(南家)
 ロン ドラ
大崎は終盤ということもあり、危険牌単騎にしていたところをキャッチ。
仲林はさらに東4局に不運な5800を水崎に献上。

南2局 ドラ
東家 仲林35500
南家 大崎31800
西家 水崎27600
北家 鍛冶田25100

大量リードを一周してる間に消化してしまった親番の仲林の配牌がすごい。
仲林(東家)
 ドラ
これを丁寧に内に寄せ9巡目に聴牌。
 ポン ドラ
トータルトップ目の鍛冶田から直撃すると一気に景色が変わる。
見逃しも十分ありえそうだが、アガり牌が場に出たのが13巡目と微妙な巡目でありここは手牌を倒す。
放銃したのは大崎だ。
常に対局中も笑顔を忘れず、発声も大きく、マナーも素晴らしい。プレーヤーの見本のような彼女の顔が曇る。

南3局 ドラ
東家 大崎22100
南家 水崎27600
西家 鍛冶田23200
北家 仲林47100

ここまで静かだった水崎が意地を見せる。
水崎(南家)
 ドラ
この配牌をもらい西家の鍛冶田の第一打から仕掛けて寄せるかと思ったがはスルー。
この選択がピタリと嵌る。を重ねて即ポン。さらにピンズを2つ晒して聴牌。
 チー チー ポン ドラ
上家の大崎も2つ晒して最後の親番維持に必死である。
11巡目に高めのをツモり2000・4000。やっと水崎の反撃開始である。

オーラス親番の水崎が今までの鬱憤を晴らすようにアガり倒す。
 リーチツモ ドラ
まずは2000オールから。

 ポン ツモ ドラ
1300は1400オールで仲林を微差で捲くる。
4巡目聴牌の上にトータルトップ目の鍛冶田と大崎がラス争い中で大崎の方が3100点下という状況も加味して大崎から見逃し後のツモアガり。
条件をしっかり理解し繊細さが垣間見える素晴らしいアガりだ。
牌のめぐりが水崎に味方し始める。

南4局2本場 ドラ
東家 水崎45800
南家 鍛冶田17800
西家 仲林41700
北家 大崎14700

親番の水崎が勢いのままにポン、チーとし11巡目にホンイツ聴牌を入れる。
水崎(東家)
 チー ポン ドラ
13巡目に仲林、大崎が同時に聴牌即リーチと出る。
仲林(西家)
 打リーチ ドラ
大崎(北家)
 打リーチ ドラ
仲林は大崎からリーチ棒が出たためどこからでもアガれるようになり、大崎もアガればラス抜けである。
次巡水崎が手出しが入る。
鍛冶田が死のバミューダ・トライアングルにかかる。
鍛冶田(南家)
 ドラ
マンズは全て親の水崎に危険。ピンズは仲林、大崎のリーチに全て完全無スジ。
はどうだろう。水崎には通り、仲林の中スジではあるが大崎には完全無スジだ。
打つ牌が1つもない。
そうだ仲林の宣言牌はだ。さらに大崎の河にもがある。が1枚切れなので鍛冶田の目からは全て見えている。
が当たるとしたら水崎がとのシャンポン待ちから待ち変えをした場合のみ。目を瞑ってを切るしかないか。いや待てよ・・・

鍛冶田の長考が入る。本当に切るもんがないんだからしょうがない。
意を決して放たれる
水崎はこの瞬間を待っていた。
 チー ポン ロン ドラ
ついにトータルトップ目の鍛冶田から5800は6400の放銃を取りラスに沈めることに成功。

南4局3本場 ドラ
トップの水崎まで13500点差の仲林が3巡目ポン。
仲林(西家)
 ポン ドラ
実質ほぼ不可能だが満貫直撃なら変わる点差だ。仕掛けるしかない。
するとどうだろう、6巡目にを重ね即ポン。さらに9巡目を引き寄せ、寒気が走る。
15巡目、仲林の右腕に龍が舞い降りた。指先の感触は一番欲しかったアレではないが十分だ。
 ポン ポン ポン ツモ ドラ
4000・8000は4300・8300。
もう勝負に参加できないかと思っていた仲林が最後の最後で追いついた。
総合ポイントがホワイトボードに書き込まれる。

4回戦結果
仲林+42.6 水崎+20.9 大崎▲25.6 鍛冶田▲37.9

4回戦終了時トータル
鍛冶田 +18.8
仲林  ▲0.5
水崎  ▲6.4
大崎  ▲11.9

4人のポイントが30ポイント以内に集結した。近年稀に見る大接戦。
一観戦者として全員が最後まで戦える試合を見れることが嬉しい。こうなるともう誰が優勝してもおかしくない。
最後の最後で追いついた水崎、仲林は気持ちも高ぶっているだろう。大崎もポイントを減らしはしたが、とても穏やかな雰囲気である。
ついに追い詰められた鍛冶田だが仲間と笑顔で談笑しているところを見ると焦りはなさそう。
どうやら最後も良い麻雀が見れそうだ。

 

☆最終戦☆(鍛冶田-水崎-大崎-仲林)

開局で飛びぬけた配牌を貰ったのが仲林。すぐに有効牌を引き3巡目リーチ。
仲林(北家)
 ドラ
打点、待ち共に文句のないリーチである。これは簡単にアガってしまうかな・・・
こんなところで決めさせるわけにはいかない。勇気を持って無スジを叩ききったのが大崎。
と押し仲林のを捕まえる。
大崎(西家)
 ロン ドラ
打った仲林の動きが止まる。簡単にアガれると思っていた手がまさか放銃になるとは・・・
相手の手を潰しチャンスをものにした大崎は最終戦最高の入り方である。

次局も仲林は親の水崎に5800を放銃し、熱くなり始めたか。

東3局に仲林、大崎、鍛冶田の3軒リーチがかかり、制したのは仲林。大崎から3900を直撃。

勝負は南場まで持ち越し。
現状総合トップ目は水崎だが、点差がかなり僅差な為、数千点でコロコロと順位が変わるような状況だ。

南1局の鍛冶田の親番は仲林が500・1000。
南2局の水崎の親番は鍛冶田の300・500で流され小場が続く。
南3局親の大崎のリーチを受け全員が受けに回り流局を挟んだ1本場。

点棒状況は下記の通り。
東家 大崎33400
南家 仲林23400
西家 鍛冶田28400
北家 水崎33800

仲林がまたも好配牌を手にする。
仲林(南家)
 ツモ ドラ
を打った後、をトイツ落としをしながら三色まで付くと最高だ。
しかし、次巡持ってくるのが
仲林が顔を歪める。これで1300リーチのイーシャンテン。
大崎が5巡目にをチーしてソーズに染め始める。次巡、仲林聴牌渋々リーチと出た。
仲林(南家)
 ドラ
打点こそ低いが大崎がソーズに染め且つまだ聴牌は入ってそうにない。
勝算は十分にあるリーチだ。
一発目に大崎の手からドラのが溢れ出す。
一瞬で場が凍りつく。さらにまでツモ切りでもはや聴牌を疑う余地もない。
11巡目「ツモッ!!!!」
大崎(東家)
 チー ツモ ドラ
あまりにも大きすぎる4000は4100オール。大崎の目の前にゴールテープが用意された。

南3局2本場 ドラ
東家 大崎47700
南家 仲林18300
西家 鍛冶田24300
北家 水崎29700

もう後がない仲林が魅せる。
ドラトイツの配牌を丁寧にまとめ上げ10巡目にリーチ。
仲林(南家)
 ドラ
一発でをツモる。腕だとか流れだとかそんなもんじゃない。気持ちでツモり上げたという表現が正しいような気がする。

オーラスを迎えて下記の点棒状況。
東家 仲林26900
南家 鍛冶田22100
西家 水崎27500
北家 大崎43500

条件としては
・ 大崎→アガりトップ。
・ 鍛冶田→出アガり6400以上。水崎からは5200でも可。ツモは1300・2600以上。
・ 水崎→ツモアガり、出上がり共に倍満。大崎からは8000以上で可。
・ 仲林→アガり止めがない為、連荘し続けるしかないが4000オールで首位に立つ。
全員に現実的な条件が残った。オーラスの時点でも4人誰が優勝してもおかしくない決勝が未だかつてあっただろうか。

全員が細かい条件を確認した上でオーラスが始まる。
最後に微笑むのは誰なのか。
連荘しなくてはいけない仲林が5巡目にをポン。7巡目にドラ単騎の聴牌。
仲林(東家)
 ポン ドラ
一方鍛冶田はというと7巡目にイーシャンテン。
鍛冶田(南家)
 ドラ
ツモ条件のリーチはもう数巡で打てそうである。
そしてアガりトップの大崎も5巡目からこのイーシャンテン。
大崎(北家)
 ドラ
倍満条件の水崎はかなり厳しいか。

三者が祈るようにツモ切りを繰り返す。どうしてもあと一牌が引けない。

運命の14巡目。

「なんか海底か嶺上牌にいると思ったんだよね」

そんなもんわかるわけないよ。ただの願望でしかない。

仲林が4枚目のを引き加カン。嶺上牌を天高く振りかざしこの日一番力強く手元に叩き付けた。
仲林(東家)
 加カン リンシャンツモ ドラ
この4000オールで大崎を800点差で捲くり総合トップ目に躍り出た。

南4局1本場
条件が変わり下記の通りとなる。
・ 大崎→アガりトップは変わらず。
・ 鍛冶田→大崎or仲林からハネ満直撃、ハネ満ツモ。
・ 水崎→ツモアガり、出アガり共に倍満。
・ 仲林→現状800点大崎より上だが大崎が聴牌の場合ノーテンで伏せることは出来ない。

南4局1本場 ドラ
最初に条件を満たす聴牌を入れたのが鍛冶田。
5巡目にツモれば無条件だ。
鍛冶田(南家)
 ドラ
まさかこんな早い巡目にあっさりと条件を満たす聴牌が入るとは、これが鍛冶田の太さか。

上がりトップの大崎も仕掛けを入れ自らの手でゴールテープを切ろうとする。
親番の仲林も自風のをポンし、あとは誰のアガり牌が先にいるかどうか。それだけのゲームになった。

15巡目、鍛冶田が力なくを河に落とした。

仲林(東家)
 ポン ロン ドラ

冒頭の宣言通り若手3人を苦しめ続けた破壊王。
結果としては逆転を許してしまったが、強さを十分すぎる程見せ付けた。
ぎっくり腰さえ完治していれば優勝していたかもしれない。
4位 鍛冶田 良一

一日中、牌の廻りに苦しまれ続けたが道中には切れ味鋭い攻めも見せ最後の最後まで勝ちに拘った麻雀を打ち続けた。
目を潤ませながら悔しさを語った彼女がタイトルを取るまでそう時間はかからないだろう。
3位 水崎 ともみ

ゴール目前で追い抜かれてしまったが、今自分に出来ることは全てやりきりました。後悔はありませんと語る現女流雀王。
最後まで笑顔を忘れず、大勢のファンを背負いながら自分の麻雀を打ち切った。
タイトル戦決勝でまた彼女の麻雀を見るのが楽しみだ。
準優勝 大崎 初音

後半戦の2半荘だけで大逆転を果たした現雀竜位。
4回戦オーラスの倍満、最終戦オーラスの4000オールと12000は彼の意地であり、魂が宿ったアガりだったように思う。
2つ目のタイトルを獲得しこれからも協会のエースとして活躍していくことだろう。
優勝 仲林 啓

「おう!見てた?何度も龍出してやったぞ!」

確かに彼の右腕に龍は宿っていた。
著者が3回戦終了時に感じた仲林の消滅は幻想でしかなく、その幻想は彼の右腕によってぶち壊された。
最後に彼の口から次の目標が語られる。

「もちろん雀竜位も連覇するから」

(文・坪川 義昭)

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