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最終ポイント成績

 
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
伊達 直樹
49.9
13.4
13.0
8.2
39.2
-23.9
小倉 孝
15.5
-26.9
-48.2
27.8
5.9
56.9
崎見 百合
-8.3
26.3
-2.9
-23.3
-12.3
4.4
須田 良規
-57.1
-12.8
38.1
-12.7
-32.3
-37.4

早速だが、決勝進出者を紹介していこう。まずは、

小倉 孝

第6期雀王、第3・4期雀竜位、第6期新人王。現在はリーグ戦を休場中。
この数々のタイトルを見ればお解りいただけるだろうが、とにかく無類の強さを誇る。

彼の信条は、
『シンプルイズベスト』

勝利という目標に向かってただただ突き進んで行く。
しかし、彼の緻密な状況判断による押し引きは、ほとんど狂いが生じない。

彼のこの強さは、如何なるときもほとんどブレない思考と、
それをもたらす強靱な心臓があるからこそ。


須田 良規

第5期雀王。雀王戦Aリーグ所属。

自身をモデルとした『東大を出たけれど』をはじめ、
数多くの漫画原作やコラムなどを手掛けていることもあり、とにかく技の引き出しが多い。

攻撃面でも守備面でも、状況に応じた最善手を常に追い求めているストイックさは、
当協会の中でもトップだ。

今も尚、成長することに妥協をしないのが彼の強さであり、
彼を慕っている若手プロの多さは、人柄も含め、そういったところではないだろうか。

 

崎見 百合

第3・6期女流雀王の他に、
他団体のタイトル戦やテレビ対局などでも優勝を重ねる当協会のトップ女流プロ。
雀王戦Aリーグ所属。

もはや女流の域をとっくに通り越したと言っても過言ではない。
経験の豊富さと持ち前の感性から打ち出される牌は彼女の強さであり、
最後に絶大な破壊力をもたらす。

 

 


大脇 貴久

第8期雀竜位・第4期新人王。雀王戦Aリーグ所属。

昨年度の雀竜位を獲得するなど、その実力はまだまだ上昇中。
今期の雀王戦では、最後まで運に恵まれなかった部分をあるが、
研ぎ澄まされた感性から繰り出される攻撃的な打牌は、周囲の者を度々驚かせる。

優れた嗅覚を持つ彼の強さは、いかなる状況でも無視できない。

 

 


兎にも角にも、全員タイトルホルダー、そしてAリーグ経験者という顔ぶれ。
今回、全員シード選手ということもあるが、
それにしてもなかなかこういうメンバーにはならないものだ。

私は、この4人をよく知っている。
Aリーグやタイトル戦で何百半荘と採譜者として見てきたが、
実にその約8割をこの4人の後ろで記録してきたのだ。

しかも、負けているところをほとんど見たことがない・・・。
そんな4人の中で、誰が優勝するかなど到底見当もつかないわけだ・・・。

 

☆1回戦☆

起家から 小倉-須田-崎見-大脇

決勝を幾度となく経験してきた4人、誰の顔からも緊張の色など一切伺えない。

東1局は、7巡目にリーチをかけた須田が小倉から2600の和了で静かな開戦。

東2局0本場 9巡目
東家 須田
 ツモ ドラ
少し間をおいて、切りのダマテンを選択。

次巡、大脇より以下のリーチ。
北家 大脇

七対子ドラ2を躊躇なく曲げてきた。
場に1枚切れの待ち。2巡目に自らがを放っている為、ここはノータイムのリーチも頷ける。
リーチを受けた須田、次巡を少し考えた後ツモ切り、役なしダマテンを続行。
そのすぐ後、崎見にも大脇の現物のを切り、愚形ではあるがカンでテンパイ。
西家 崎見
 ポン
2巡後、須田は大脇のツモ切りに合わせた小倉のをチーして打
東家 須田
 チー

日本プロ麻雀協会公式ルールであればこの食い変えは成立しないが、このオータムルールならば問題なし。
ダマテンを選択した理由は、この変化も当然加味してのことだろう。
当たり前のことであるが、流石に隙はない。
結果は、大脇がを掴み、崎見に2000の放銃。

東3局0本場 8巡目 
南家 大脇
 ツモ ドラ
ここも迷うことなくリーチを宣言。
前局に続き、で和了ならば高打点のテンパイだ。
他の三人は、しばらく回りながら何とかテンパイにこぎつけようとするが、終盤には完全撤退。
ただ、撤退しつつも須田が大脇の海底をずらす為に、チーを入れる。
摘めることのできる芽は、当然摘むわけだ。
しかし結果は、
 ツモ
と、大脇が高めのをツモ和了。
当たり前のことをすれば、最悪の結果がついてくる。
何とも理不尽なゲーム。

東4局は、小倉が1000、2000をツモ和了。

4局で早くも4者が初和了を実らせた。
これも、実力伯仲という現れなのか。

南2局またも、大脇がノータイムリーチを放つ。
南2局0本場 8巡目
西家 大脇
 ドラ
そこにすぐさま、イーシャンテンの小倉がを放つ。
7700の和了。

小倉が驚いた表情を見せた。
実は、全員の河にが2枚、が3枚放たれている。

比較的安全であろう牌で7700という思わぬ失点が、思わず表情に出てしまったのだろう。

南3局1本場 18巡目
北家 須田
 ポン ポン ロン ドラ
あと2牌で流局というこの場面、崎見は最後のツモでを引き入れ僥倖のテンパイ。
しかし、が3枚という状態からを打ち出さなければいけない。
崎見は、12巡目の須田の最終手出しを横目でしっかり確認していた。
ほぼ当たり牌ということは覚悟していたのだろう。

(仕方ないか・・・。)

点棒を支払う崎見から、こんな風な表情が読みとれた。
実は、須田からも同じ表情が読みとれていた。

あと2牌で流局。
ここで2300を崎見から和了しても、オーラストップ目の大脇とは、8800点差。
一人テンパイで流局となれば7100点差となり、条件が異なる。
この局の途中から、その計算は頭にあったはずだ。

しかし、親である崎見がひねり出してきたでは、テンパイであることは濃厚。
トップの大脇との点差は縮まるが、親続行の崎見にもチャンスは広がる。
様々な思考が交錯したであろう後の和了であったに違いない。

そして、迎えたオーラス南4局。
最初のテンパイは、崎見。
南4局0本場 7巡目
北家 崎見
 ドラ
タンヤオ七対子。

大脇との点差は4500点差。
リーチを宣言すれば、文句なしでどこから出和了をしてもトップだが、ここをダマテンに構える。
ただ、ツモアガリか大脇から直撃でも問題ない。
焦らず、ツモが可能で且つ大脇からこぼれそうな牌を模索するつもりなのだろう。

しかし、その直後小倉からが放たれる。

崎見は、これを見逃した。

今回はオータムルールなので、オカがなく順位ウマも5-15と普段のルールより小さい。
トップの価値が大きい普段のルールとは異なる。
まだ1回戦でもあるし、ここは無難に和了かと思ったが、平然と見逃しを決行したのだ。
もちろん、大脇が下家いることもあり、山越しを掛けることも可能ではある。

次巡のでは、待ちを変えることもできず、大脇からこぼれることもなかったが、
須田が放ったを見た後、意を決してツモ切りリーチと出る。
崎見の目から見て、が3枚、も2枚見えている。
ここはこのでいけると踏んだのであろう。

流石の読みは正しく、この時点で山に2枚眠っている。
すると、すぐさま須田から追っかけリーチが入る。
西家 須田
 ツモ
を切れば、高め三色になるのだが、如何せんドラということもあり、仕方なく勝負牌をとしてリーチ。
ここでも、須田の選択が難しい。

トップの大脇との点差は、8800点。
崎見のリーチ棒が出たので、現状1300、2600のツモ和了ならば、同点トップ。
待ちは崎見の現物でもあり、ダマテンで大脇からこぼれる可能性もある。
となれば3900点の直撃でこれも同点トップ。

リーチをした場合、ツモ和了ならば文句なしの単独トップ。
しかし、大脇から和了牌がこぼれる可能性も低くなる。
さらに一番可能性の高いであろう崎見から出和了は7700点で1000点を加えてもわずか100点届かない。

比較的高い同点トップの可能性を追うか、勢いよく単独トップへの狭い穴を通すかである。
須田は勢いに身を委ねた。
崎見、須田の待ち牌は、山に2枚ずつ。

そして、決着は。

南4局0本場 17巡目
北家 崎見
 ロン ドラ
須田がを掴み、崎見が6400の和了をものにする。

須田は終局後の休憩中でもずっと悩んでいた。
そして、悩んだ末にこう宣言。

『来年は、ダマにします!』

四者の顔から緊張の色は伺えない。

1回戦終了
崎見+26.3  大脇+13.4  須田▲12.8  小倉▲26.9

 

☆2回戦☆

起家から 大脇-小倉-須田-崎見

須田の一人テンパイの流局を挟んだ後の東3局1本場
前局に痛い6000の親被りを食らった小倉。
1回戦のラスを含め、他の3人から大きく引き離され掛けている。
東3局1本場 5巡目
北家 小倉
 ドラ
ここから、須田のをポン。
この手から高打点を叩き出すことは不可能だろうから、ここは素早く仕掛けて親番を流すつもりだ。
しかし、この-がなかなか顔を出さない。
あげくに終盤、和了できないを持ってきてしまう。
すると、直後の15巡目に須田が小倉の和了牌のを引き入れテンパイ。

東3局1本場 15巡目
東家 須田
 ドラ
高め三色の-待ち。
そして、またその直後に小倉がを掴んでしまう。
まっすぐ手を進めていたであろう須田の先程の手出しは、二枚見えの
テンパイはかなり濃厚。
小倉は、程なくツモ切った。

11600は、11900の放銃。
小倉らしい手の進行、そして小倉らしい放銃だ。
何もぶれてなどいない。

須田の点棒は50000点を超え、トップをひた走る。

そして、東4局。
大脇が、5巡目に、6巡目にをポン、そして10巡目にを引き入れ、チンイツテンパイ。
東4局0本場 10巡目
南家 大脇
 ポン ポン ドラ
最終手出しは、打
ドラであるが大脇の河には、萬子は1牌も放たれていない。
そこへ崎見がを放銃。
親番の崎見は、あまり躊躇しないという印象がある。
大脇のこの仕掛けに対しても、イーシャンテンの手牌からサッとツモ切った。
8000は大きいが、崎見らしい放銃に見えた。

続く南1局、崎見の手牌。
南1局0本場 7巡目
北家 崎見
 ツモ ドラ
ここから少し考えて打
ホンイツへ。
すぐさま須田からが出る。
崎見は動かない。
方向性が決まったのであれば、仕掛けてもおかしくない牌だ。
仮に打でなかったとしたら、トイトイで仕掛けていたかもしれない。
ただ横伸びも考慮して、ここは焦らず行く構えか。
しかし、次のツモは
あっさり自分で引き入れてしまった。
そして、当たり前のように、さらにはドラのまで引き入れてツモり四暗刻のテンパイ。
 ドラ
まさに豪腕。
前局8000点を献上したが、自分らしさを失ったわけではない。
この引き込みは、そんな崎見の強さを如実に表していた。
すぐさま大脇からが出てくる。
倍返しの16000点。
大脇も少しあっけに捕らわれている。

気分良く前局8000点を和了の後、親で配牌も悪くなく形は十分。
だが、なかなか最終形に至らない。
自分の手牌が微妙に進まない苛立ちはあっただろう。
を引き戻し、さらに十分な形となった瞬間の放銃。

(やっぱ、甘くねぇなぁ・・・。)

大脇から、少し笑みがこぼれた。

南2局0本場
北家 大脇 配牌
 ドラ
この配牌からと引き入れた大脇、あっさりと小倉から8000をもぎ取る。

いきなり訪れた超乱打戦。
結局、被害者は小倉一人になってしまった。

迎えた南4局
まだ少し遠い須田を追いかける崎見がリーチ。
南4局0本場 9巡目
東家 崎見
 ドラ
リーチ宣言牌のを大脇がポン。
すると、ここから崎見の和了牌のを食いとり、自分の和了牌までもさらってきた。
南4局0本場 17巡目
南家 大脇
 ポン ツモ ドラ
不意に食らった大きな失点をもろともせず、きっちり2着に食い込む。
やはり、この攻撃力は半端ではない。

終局後の休憩中の大脇の一言。

とかあいつホントバカだよね。』

とは南1局の放銃の前に引き戻した牌。
そして、あいつとは全自動卓のことである。
未だ、四者の顔から緊張の色は伺えない。

2回戦終了
須田+38.1  大脇+13.0  崎見▲2.9  小倉▲48.2

2回戦終了時トータル
大脇+26.4
須田+25.3
崎見+23.4
小倉▲75.1

 

☆3回戦☆

起家から 崎見-小倉-須田-大脇

ポイントは大脇、須田、崎見がほぼ横並び、小倉が一人取り残された形で迎えた3回戦。

東1局1本場、大脇がリーチを放つ。
東1局1本場 7巡目
北家 大脇
 ドラ
役もドラもない。
入り目のをツモってきた瞬間、実に不満そうな表情を見せたが、ここは待ちの良さを見て打点よりもスピードを選んだ感じだ。
そこへ小倉が牙をむく。
ドラを叩き切って、追っかけリーチ。
東1局1本場 9巡目
南家 小倉
 ドラ
こちらも役なし。
ポイントを大きく引き離されているこの状態でも小倉のスタイルは崩れない。
小倉からしてみれば当然の勝負なのだろう。
この勝負は、大脇がを掴み1000は1300をリーチ棒付きで小倉に献上。

ここから、くすぶっていた小倉に勢いがつき始める。

東2局、親番の小倉の先制リーチ。
東2局0本場 6巡目
東家 小倉
 ドラ
に振り変われば、純チャン三色に化けるこの手。
食い替えの可能なこのルール、ダマに構える人も多いのではないだろうか。
しかし、ここでも自分のスタイルを崩さない小倉、さすがに驚かざるを得ない。
結果は、が通った後に、崎見が後スジを追っかけ3900の放銃となる。

続く東2局1本場、今度は須田から12000は12300をもぎ取る。
東2局1本場 9巡目
東家 小倉
 ポン ロン ドラ
須田も役なしながらテンパイはしていたが、小倉の捨て牌を見ても、
この北でロンの発声が聞こえれば高打点の可能性は極めて高い。
一人ポイントの離れている小倉だからこそ少し甘くなってしまったか。

東2局2本場は、須田が3巡目にドラ2のシャンポン待ちのリーチを掛けるも、一人テンパイで流局。

東3局3本場、前局チャンスを逃した須田だったが、
ドラのを終盤に重ね七対子ドラ2の9600は10500を大脇からもぎ取り、原点近くまで復活を果たす。
東3局3本場 14巡目
東家 須田
 ロン ドラ

東3局4本場、この勢いで小倉を追撃といきたかったが、
その小倉にあっさりリーチツモの500・1000は900・1400を和了される。

南1局、須田の先制リーチを巧みな打ち回しで捌ききった大脇が須田から2000をリーチ棒付きで奪う。
ここまであまり見られなかった捌きだが、ラス目の状況下においても常に冷静だ。

南2局、いち早くテンパイを入れていた小倉だが、
11巡目〜12巡目立て続けに他の3者からリーチが入る。
イーペーコードラ2のチャンス手、東場の勢いがまだ続いていると思われたが、
ここは為す術なく須田に3900の放銃。

そして迎えた南4局、須田と2着争いの崎見が序盤から仕掛ける。
少し遠いところからのホンイツ仕掛けではあるが、点差を考慮すると、ここから仕掛けないと少し苦しいかもしれない。
しかし、この崎見の仕掛けが、大脇の手を見る見るうちに変化させていく。
なかなか萬子を引いてこない崎見をよそに、7巡目にこのテンパイ。
南4局0本場 7巡目
東家 大脇
 ドラ
しかも、すでにが余っている状態。
そして、が変化した後、牌を叩きつける音が会場に高らかに鳴り響く。
南4局0本場 13巡目
東家 大脇
 ツモ ドラ
このアガリに対して、この日初めて会場からどよめきが上がる。
この僥倖の4000オールツモアガリで、一気にトータルで競り合っている2人を抜き去った。
しかし、抜き去ったと言っても、3位の須田とは3100点差、ラスの崎見とも7300点差と油断はできない。

続く南4局1本場、大脇は冷静に場を見渡しながら手を進めていく。
南4局1本場 9巡目
東家 大脇
 ドラ
途中、テンパイを取らずのトイツ落としをして、高め三色のこの形に持ってくる。
そして、ダマに構え密かに罠にかかる獲物を待つ。
須田も崎見も着順を上げる為に必至の手作り。
南4局1本場 10巡目 
北家 須田
 ツモ ドラ
ここでを暗カン。単純に打点を上げる一手。
だが、この暗カンを見て大脇が突如ツモ切りリーチと襲いかかる。

手牌を短くした須田も一瞬、
『まずい…』
と思ったかもしれない。

次巡、須田がを掴む。
そして、力無く河に放たれる。
安目ではあるが、3900は4200を直撃。
熾烈な3者の着順争いは、ここで体勢を決する。

終局後、後半戦に入る前、少し長めの休憩に入る。

トップを獲った小倉は、さほど伸びていないポイントが書かれたホワイトボードを見る。
エレベーターに乗り込む際に一言。

『お疲れっした!』

だが、小倉からも他の三者からも少し緊張の色が伺えた。

3回戦終了
小倉+27.8  大脇+8.2  須田▲12.7  崎見▲23.3

3回戦終了時トータル
大脇+34.6
須田+12.6
崎見+0.1
小倉▲47.3

 

☆4回戦☆

起家から 須田-大脇-小倉-崎見

休憩中、須田と採譜者の佐久間と食事に出かけた。
前半戦2位の好ポジションにつけた須田は後半戦に向け、

『次は大脇より絶対に上につけなきゃダメだよね!』

と、改めて自分のすべき戦い方を確認する。

東1局、前半戦の様子と変わらず、四者が淡々と打牌を繰り出す。
私は、須田と崎見の手牌が見えるところで観戦をしていた。
二人とも配牌が良くない。
なかなか進まない二人の手牌を見ながら、静かな始まりだなと思っていた。

だが、中盤に差し掛かったその瞬間、牌を卓に叩きつける凄まじい音が会場内に鳴り響く。

東1局0本場 9巡目 
南家 大脇
 ツモ ドラ

『4000、8000』

『嘘でしょ???』

須田も崎見もうなだれる。
というか、須田はもう笑っている。
会場からも同じように苦笑が漏れている。

つい30分前に張りつめ掛けた緊張の糸が、ものの一瞬でブチ切れた。

そして、この観戦記の緊張もここで一気にブチ壊れる。

というわけで、
ついさっき着順勝負がウンタラカンタラおっしゃられた須田さん、ここで土星まで吹っ飛びます。

東2局親番の大脇が、2巡目にダブをポン、4巡目にをポン。
そして6巡目、須田の切ったをロン。
東2局0本場 6巡目 
東家 大脇
 ポン ポン ロン ドラ
土星まで吹っ飛んだその勢いで冥王星までご案内。
地球のみなさん、さようなら。

大脇は、さらに2600は2700オールを加点。

前半2位につけていた須田が星になった今、前半3位の崎見が大脇をどう捕らえるか。
とは言っても、崎見も爆風で地球外に飛ばされている現状は変わりない。

崎見は、大脇の親を5200は5800の直撃で落とした後、須田から3900を奪う。

が、この半荘はここで打ち止め。

さらには、オーラス小倉へ7700は8300を放銃。
2着から3着へ転落と、こちらも海王星辺りまでご案内。

終局後、須田はこちらに近づいてくるなり、こう叫ぶ。

『何なの!?あれは!?』

私は、こう答える。

『サイコロが下手』

四者の緊張の色?
そんなものあるわけがない。

4回戦終了
大脇+39.2  小倉+5.9  崎見▲12.8  須田▲32.3

4回戦終了時トータル
大脇+73.8
崎見▲12.7
須田▲19.7
小倉▲41.4

 

☆5回戦☆

起家から 崎見-大脇-須田-小倉

現在 地球(大脇)から 海王星(崎見)→冥王星(須田)→アンドロメダ大星雲(小倉)という並び。

もちろん、最後まで何が起きるかわからない。
役満というビッグバンが起きれば、銀河系の隊列なんて一瞬でめちゃくちゃだ。

東1局、小倉の先制リーチを受けた崎見、もはや後ろを振り返ることは一切ない。
11巡目に力強く追っかけリーチ、そして、
東1局0本場 13巡目 
東家 崎見
 ツモ ドラ
高めをツモり、6000オールで大脇に宣戦布告。

再び地球に向け、ロケットエンジンが火を噴いた。

一方、また爆風に吹っ飛ばされてしまった須田、もうその姿は最後まで誰も見ることがなかったという・・・。

ロケットエンジンを搭載した崎見、更なる反撃で地球を目指すが、遠方から大脇があっさり打ち落とす。

東2局、大脇は自身の親も加点が苦しいと見るやいなや、さっさと店じまい。

そして、東4局の小倉の親番も、あっさりとペンをツモり、着実に一つ一つを打ち落としていく。

南1局、崎見が再び地球を目指す為、最後の親番に望む。
南1局0本場 
東家 崎見 配牌
 ドラ
この手をから打ち出し始め、すぐさまドラのを引き入れてピンフドラ2の見える形から、
が重なるやいなや、ホンイツへ移行と、どんどん加速していく。
出来ればあと1牌を引き入れて門前テンパイを目指したいところだったが、
これ以上は無理と小倉からチーして、以下のテンパイ。
南1局0本場 9巡目
東家 崎見
 チー ドラ
捨て牌の派手な崎見の仕掛けを見て、大脇も動く。
フリテンではあるが、三色のテンパイで迎撃体勢を整える。
そしてこの勝負の行方は・・・。

を力強く引き寄せた崎見の勝利。
3900オールで、いよいよ地球が見えてきた。

南1局1本場、崎見の奇跡の生還に期待が高まる中、
遙か彼方からこの奇跡に待ったを掛ける者が現れる。

精密機械 小倉だ。
決して、空気を読んでない訳ではない。

自身も最後のオーラスの親番まで、いくら離されていようとも食らいつく姿勢なのだ。
そして、リーチと崎見に襲いかかる。

崎見も好形のイーシャンテン、迎撃体勢まであと少し。

二人の戦いが今始まろうとした瞬間、

大脇はホワイトボードを見てポイントを確認した後、何食わぬ顔でを打ち出す。

南1局1本場 9巡目
北家 小倉
 ロン ドラ 

崎見の奇跡の生還劇は果たされることなく、ここで幕を下ろした。

そして南4局オーラス・・・。
後は大脇の優勝をすべての人間が待っている状態。

だと思っていた。

だが一人、明らかに目の色が違う。
そう、ラス親の小倉だ。
遙か彼方、アンドロメダ大星雲から泳いで帰って来ようとしている。

小倉は4回戦終局後、こう言っていた。

『あれ(南4局のアガリ)は、絶対やんなきゃダメだよ。みんな絶対やった方がいいから。』

自分の言った言葉を、小倉は少しずつ証明していく。

南4局0本場  2600オールから始まり、
南4局1本場  大脇から1500は1800。
南4局2本場  崎見から9600は10200。
南4局3本場  流局一人テンパイ。
南4局4本場  2000は2400オール。
南4局5本場  崎見から2000は3500。
南4局6本場  流局一人テンパイ。

この男、とうとうあの銀河系の外から月まで帰ってきてしまった。

9600点以上を直撃すれば、大脇を地球外へ飛ばすことができる。
大脇優勝ムード満載だった会場が今、小倉の奇跡の遠泳生還劇ムードに飲み込まれようとしている。

南4局7本場、小倉の勢いはそのまま、中盤にリャンメン2つのイーシャンテン。

対する大脇、途中七対子のイーシャンテンが見えるも、メンツ手で勝負を決めた様子。
そして、12巡目初牌のドラを迷うことなくツモ切り。
大脇はここで決めるつもりだ。
誰もがそう感じ取った。

小倉のリャンメン2つは、一向に埋まらない。

すると15巡目、先に大脇にテンパイが入る。

南4局7本場 15巡目
西家 大脇
 ドラ
片アガリだが、役有りテンパイ。
しかし、アガることのできるは、直前に崎見、3巡前に小倉に切られている。

残り一枚はどこに。

その答えは、すぐ近くにあった。前巡を切った崎見に再び舞い戻る
すうっと、そのは崎見の手から離れた。

最後の最後で張り詰めた緊張が、この優勝者が決定した瞬間、心地よく大きく弾けた。

5回戦終了
小倉+56.9  崎見+4.4  大脇▲23.9  須田▲37.4

最終成績
大脇+49.9
小倉+15.5
崎見▲8.3
須田▲57.1

 

日本プロ麻雀協会を代表する四人のトッププレーヤーは、
5回戦という短い勝負の中で、自分らしさをしっかりとアピールして見せた。

もちろんそこには勝敗という結果があるのだが、
ここまで一局一局すべてから四人の色を見て感じ取れる対局というのは見たことがなかった。

途中まで緊張の色が伺えなかったと書いたが、
これは最後まで変わらなかった四人それぞれの持つ自分らしさという色のせいだろう。

自分らしさ・・・
勉強になった。

今の私の自分らしさと言えば・・・
まぁ、飽きっぽいところかな。

※途中から観戦記が乱れたことをここでお詫び申し上げます。


(文:大窪 貴大)

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