最終ポイント成績
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TOTAL
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1回戦
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2回戦
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3回戦
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4回戦
|
5回戦
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大浜 岳 |
61.0 |
56.1 |
-8.9 |
-31.1 |
19.6 |
25.3 |
濱 博彰 |
40.4 |
-17.3 |
27.8 |
29.1 |
8.7 |
-7.9 |
三木 敏裕 |
-50.0 |
-39.3 |
9.3 |
10.7 |
-5.6 |
-25.1 |
サイコロ太郎 |
-51.4 |
0.5 |
-28.2 |
-8.7 |
-22.7 |
7.7 |
第4回オータムチャレンジカップの決勝戦が行われた。
この大会は一発裏ドラ無しルールを採用しており、通常の協会の公式戦より仕掛けや手役作りの巧拙が問われる
一層競技性を増した性質の対局となる。
【オータムチャレンジカップ決勝戦観戦記】
「努力したものが必ず報われるとは限らないが、成功したものはみなすべからく努力している」
某ボクシング漫画の有名な台詞である。
これは、今回の優勝者がよく口にする言葉なのである。
麻雀はそのゲーム性質上、明確に実力差が出にくいゲームだと思う。
その為か、麻雀プロの世界でも努力という行為が軽んじてみられる傾向がある。
そんな昨今の風潮に対する、彼なりのアンチテーゼなのだろう。
大浜 岳
あなたの周りに麻雀牌を4セット持っている人はいますか?
私の知り合いには一人だけいる。
それがこの大浜だ。
高校生のころから麻雀書籍を読み漁り、ノーマーク爆牌党の
主人公と同じ事をするために麻雀牌を4セット買ってしまう男。
☆長所
・短期決戦に有利と思われる攻撃寄りな思考、またその攻撃時に生かされる牌理の強さ。
☆短所
・4セット買わずとも牌の裏に色違いのシールを張ればいいことに気付かなかった頭の悪さ、もとい要領の悪さ。
サイコロ太郎 ※以下:サイ
決して誤植ではない。
今期より佐井孝太郎から登録名を変更。
そう、第2期オータムCCの優勝者である。
予選のトーナメントも危なげなく通過、その勝ち方からこのルールでの打ち方を一番熟知しているのはこの男と言えよう。
☆長所
・大浜と同じく攻撃型、また決勝経験者ゆえに一番普段通りの麻雀が打てるであろうメンタル。
☆短所
・サイコロが下手、なワケではなく守備力、特に手牌が短くなった時にやや脆くなりがち。
濱 博彰
先日行われた第8期新人王戦の優勝者。
準決勝で前年度オータムCC覇者吉田基成とAリーガー福井とのオーラスまでもつれた大接戦を制し、今期2度目の決勝進出。
勢いやその勝ち方からもこの決勝でも何かをやってくれそうな雰囲気がある。
☆長所
・守備的な打ち手でイージーな失点をしない。
☆短所
・新人王だが初々しくない。また仕掛けた時の押し引きに難あり。
三木 敏裕
濱と同じく準決勝を辛くも勝ち上がり、初の決勝の舞台へ。
協会に所属する前から一発裏ナシのルールを数多く経験している異色な人物。
大浜と同じく初舞台だが、ルールの精通度合いでは三木に分があるだろう。
☆長所
・手役重視の麻雀で、手数は少ないが一撃の打点には定評がある。
☆短所
・齢27歳にして常軌を逸した腹回り。やや攻めっ気に欠ける部分がある。
-第1話- せめて、自分らしく
大浜-濱-サイ-三木
東1局
人間である以上、大舞台に緊張はつきものである。
そんな緊張を少しでも拭う方法としては、アガることがもっとも手っ取り早いだろう。
その一番手となったのは親の大浜。
三木のリーチ宣言牌を捕え1500のアガリ。
1500点の収入と連荘以上に得たものは大きいだろう。
東1局1本場
大浜が2巡目にドラのを重ね一気にやる気が出る。
だが最初のテンパイは先ほど今大会の初失点者となった三木。
三木(北家)
ツモ ドラ
10巡目でタンピンドラ1の立派な勝負手で河に偏りもないが、取りこぼしを避けるためダマテンを選択。
やはり三木も初アガリが欲しいのだろう。
だがアガリ牌は顔を見せることなく大浜、サイとの3人テンパイで流局。
東1局2本場
ここで三者三様の手筋が顕著に表れる。
まずはサイの4巡目
サイ(西家)
ツモ ドラ
サイはここで打とする。
ピンズが安いためにを残したらしいが、ここは形で打が優秀か。
結果論だがこの後と引き9巡目のツモであっさり2000/3900をツモっていた。
場況を重視して打ったサイであるが、この雀風が後に大きな紛れを起こしてしまうとはまだ知る由もない・・・
一方、連荘中の大浜の7巡目にも微妙な選択が。
大浜(東家)
ツモ ドラ
ここから打は一見セオリー通りに見えるが、ここは打として一通を見たいところ。
どのリャンメンを引いても一通ORピンフの選択が出来るのが実に魅力的。
一発裏ナシのこのルールでは普段打つ麻雀よりも手役が重要になる。
大浜らしい選択だが、オータムルールにはそぐわない選択だ。
だが一番疑問なのは10巡目の濱。
濱(南家)
ドラ
ここから上家の大浜のをカンチャンでチー。
たしかにイーシャンテンにはなったが、役を限定させる形で好形のマンズを仕掛けるくらいなら、前巡のこそチーするべきであろう。
残るは三木だが、ここは鳴かざるを得ないをチーしてバックのテンパイを取った瞬間にが流れる。
しかも濱にを暗刻にさせ放銃まで担当。
テンパイまでは行くがフィニッシュが決まらない三木、たった3局とはいえフラストレーションの溜まる展開だ。
東3局
6巡目の大浜。
大浜(西家)
ドラ
雀頭のないこのイーシャンテンに望外の引きでテンパイ、これをリーチと行く。
奇しくも東1局1本場での三木のテンパイと同じタンピンドラ1の待ち。
状況は多少違うが、こういったリーチ判断こそ2人の決定的な差だろう。
結局大浜の1人テンパイで流局。
リーチの是非は次の機会に持ち越された。
東4局1本場
ここまで一番自分通りの麻雀が打てているのは大浜だろう。
この局も存分にらしさを見せる。
大浜(南家)
ドラ
この形から、終盤の12巡目に持ってきたドラのをノータイムでツモ切り。
初の決勝とは思えない肝の据わりっぷり。
その後を引きリーチと行って、力強く最初のツモで1000/2000。
結果は同じだったように見えるが、実は13巡目でを引いている。
あそこでドラをツモ切っていないとおそらくドラ周りはいじれないので、この巡目でのアガリはなかっただろう。
南1局1本場
大浜の配牌がまたも良く、役牌トイツ+ドラドラの強力タッグだ。
当然積極的に仕掛けていく。
しかし最初にテンパイしたのはサイ、役ナシだが手変わりは十分ある。
サイ(西家)
ツモ ドラ
場をじっくりと見渡すサイ。
「リーチ」
確かにそう発声しを横に曲げた。
前述の三木と大浜のタンピンドラ1が良い例だが、このルールはリーチバランスが非常に難しいと思う。
一般的なルールよりリーチの是非を決めづらいこのルールだが、このリーチは「非」と判断出来るだろう。
当然のように大浜に押し返され、ダマテンならば自分の最優秀手変わり牌であったドラのもオートツモ切りとなってしまう。
これを大浜がポン、ほどなく山に5枚残りのをツモり3900は4000オール、この半荘の決定打となった。
大浜(東家)
ツモ ポン ポン チー ドラ
「ピンズがよく見えたので・・・」
場況読みに頼りすぎたサイ、両脇も被害者にさせたことがせめてもの救いか。
南2局3本場
リーチに対してオリ気味に見えるダントツの大浜へ2枚切れのでチートイドラドラの6400の放銃、これも三木。
毎局のように辛い失点を続ける三木だが、南3局でリーチドラドラの5200を濱から討ち取って待望の初アガリ。
南4局
それでもラス目の三木に、4巡目にして捌きの難しい手牌が与えられる。
三木(東家)
ツモ ドラ
筆者ならタンピンくらいにはなってくれよと願いながら手拍子でを切ってしまいそうだが、三木の選択は。
なるほど。これならと引き以外はすべて三色のイーシャンテンに受けることができる。
ルールと点棒状況にマッチしたプロの一打。
すぐに狙い通りのイーシャンテンになるも今まで同様あと1牌が引けない。
そんな三木に待ち構えていたのは本日の2回目の悲惨な放銃だった。
大浜(南家)
ロン ポン ポン ドラ
ダブにトイトイも付いて8000。
ここで全体牌譜に注目して欲しい。
4巡目の時点で打とすると
大浜(南家)
ドラ
この形の大浜はまず間違いなく仕掛けるだろう。
ここで打でなくでも次巡のツモでを切る手順になりそう。
これでもほぼ大浜のアガリにはなりそうだが、素点で8Pを失うことはなかっただろう。
最善の一打が最悪の結果を生む、これが麻雀の怖さでありおもしろさなのだろう。
この僥倖のマンガンも含め大浜は7万点オーバーの大トップ。
1回戦成績
大浜+56.1 サイ+0.5 濱-17.3 三木-39.3
-第2話- ダブリー、襲来
サイ-大浜-三木-濱
「大浜のトップだけは阻止する」
短期決戦でデカトップを取った相手を2連勝させれば、ほぼ優勝は決まってしまう。
自分のためにも、そしてせっかく観戦に来てくれた方々のためにもそんな対局にするわけにはいかない。
東2局
前局、サイ→三木へ2600移動して迎えた大浜の親番で早くも波乱が起きる。
三木(南家)
ツモ ドラ
この3000/6000で大浜に大きな親っかぶりをさせる。
東4局
親の濱のリーチに対して安牌のない大浜が1枚切れのを切るとチートイに刺さる。
アガった濱以上に嬉しいのは三木。
1回戦で大きな負債を背負った三木にとって、1回戦と逆の並びが出来ている最高のシチュエーション。
「このまま終わってくれ」
三木のそんな願いを引きずりながら、局は進む。
南2局
当面のターゲットとされている大浜の親。ここで事件が起こる。
濱のダブリーだ。
現在16400点まで落ち込んでいる大浜にさらにトドメの一撃を加えることができれば大きいが、困ったのは三木だ。
三木(南家)
ツモ ドラ
濱の捨て牌は
オリたい。
だが現物がない。
みなさんなら何を切るのだろう?
三木の回答
打
人それぞれ考え方はあるだろう。
三木の考えは1枚通れば2巡凌げる理論でトイツの3択、その中で端に近い牌をチョイス。
結果は・・・
濱(西家)
ロン ドラ
3メンチャンにタンヤオにドラのオマケつき。
自分では言いづらいだろうから、代わりに筆者が言ってあげよう。
「ツイてない」
南3局
親番を迎えるも2件リーチに挟まれた三木だが、ここは技ありの仕掛けで危機を脱する。
南3局1本場
一難去ってまた一難。
今度は大浜のリーチが入る。
またも仕掛けでかわそうとするも、大浜の2000/3900のツモアガりとなり、大浜はサイを捲り3着に浮上。
南4局1本場
親の濱が早々にを仕掛ける。
北家の三木も2000点をアガればトップという点差で下記の手牌。
三木(北家)
ツモ ドラ
濱は字牌から切り出しの平凡な捨て牌で、とが1枚ずつ切られている。
三木はドラのツモ切りを選択。
これはどうだろう?
親の上家でなければ問題なさそうだが、条件が満たせそうとはいえこちらは苦しいリャンシャンテン。
あまり親に手を進められても困りもの。
ここはかを落とすのが無難に思える。
どうしてもトップが欲しい三木の思いの強さが、前のめりの手順を踏ませる。
結局このドラを濱がチー、条件を満たすテンパイを入れた三木から2900のアガリ。
1本場は静かに流局となりそのまま濱→三木→大浜→サイの順で終局。
2回戦までのトータル
大浜+47.2 濱+10.5 サイ-27.7 三木-30.0
-第3話- 決戦、第3回戦東京市
サイ-大浜-三木-濱
開局早々、フラストレーション溜まりまくりだった三木が爆発する。
三木(西家)
リーチ ツモ ドラ
三木(南家)
ツモ アンカン ポン 加カン ドラ
どちらも2000/3900のアガリで早くもダントツに。
東3局
絶好調の三木にまたも先制テンパイが入る。
三木(東家)
ツモ ドラ
三木は迷うことなく打でリーチとする。
そのリーチを受けた直後の濱の手牌。
濱(南家)
ツモ ドラ
濱が長考の末選択したのは、のワンチャンスである。
これは流石にまずい。
行くならのツモ切り、どうしても回りたいなら現物のだ。
次巡のツモは濱の期待をしっかり裏切る。
さらに三木からすぐにが切られる。
トドメはサイの追っかけリーチだ。
こうなってしまえば撤退するほかはない。
もつれた結果、サイが安目だが700/1300をツモアガリ。
サイ(西家)
ツモ ドラ
この局一番得をしたのはアガったサイより三木の方だ。
9000点失うところが2300点で済み、サイのツモアガリなので並びがいいと来ている。
一方9000点を取り損ねた濱は、微妙な手順が目立つようになってきたか。
東4局2本場
三木(北家)
ツモ ドラ
ソウズが好形で三色も見え、ドラで雀頭のが自風。
打の取らずにする条件が揃っているように思えるが、三木はリーチを選択。
これはらしくなかったかもしれない。
親がタンヤオで安い仕掛けを入れていたせいだろう。
結局ここは1人テンパイで流局。
その後濱が連続でアガリを重ね三木に迫る一方、サイと大浜はジリ貧だ。
南4局
アガればトップとなる三木の手が順調に伸びる。
10巡目には完全イーシャンテンとなり、待望の初トップがそこまで来ている。
しかし1つの懸念があった。
三木(北家)
ツモ ドラ
そう、まさにこのテンパイの時だ。
役ナシですでに3枚見えている待ちのテンパイ。
2着目は親の濱で、3着目と2万点近く離れているので相当前に出てくるだろう。
そう、この待ちでは親と勝負するには弱いのだ。
後に本人も言っていたが、ここはテンパイを取らずにツモ切って、役アリダマテンかマンズのリャンメン変化を待つ。
これで初めて攻めてくる親と勝負が出来るのだ。
人は追い詰められると、頭の奥ではわかっていても、つい簡単な選択を選んでしまう。
「リーチ」
安易なその言葉が、三木の口から放たれた。
このテンパイ取りのが濱に鳴かれ、あろうことかを喰いとられてしまう。
しかも濱の1000オールツモアガリで、あっさり捲られた。
南4局1本場
東場の圧倒的なリードを捲られた三木に返す力は残っておらず、それどころかサイに5200は5500の放銃でフィニッシュ。
ここまで傷口に塩を塗られる男も珍しい。
3回戦までのトータル
濱 +39.6
大浜 +16.1
三木 -19.3
サイ -36.4
-第4話- 奇跡の勝ちは
濱-サイ-大浜-三木
東1局
序盤は展開こそ味方しなかった三木だが内容はよく見えた。
しかし2回戦の終盤辺りから少し違和感を覚えるような選択が目に付く。
その違和感に間違いがなかったことをここで確信する。
三木(北家)
ツモ ドラ
これが6巡目である。
当然高みを目指したいところだが、一先ず打で問題ないだろう。
しかし三木、が一枚切られているのを見てかここから打とする。
やりすぎだろう、これは。
たしかに手役重視と紹介したが、こういった歪んだ手順を踏む打ち手では決してない。
決勝の重圧か、追い詰められた焦燥感か、とにかく三木は本来の手筋を見失っている。
このを親の濱がカンチャンでチー、誰から見てもピンズの一色手だ。
そしてすぐにテンパイ一番乗り。
大浜もすぐにマンズのホンイツで追いつくが、待ちはドラの単騎と苦しい。
もっと苦しいのは未だテンパイ復帰せずにも抱えたままの三木だが、これは自業自得。
2つの一色手に挟まれたサイ、もうオリ時であろうが甘いを打つ。
これが濱に捕まった。
濱(東家)
ロン チー ドラ
チンイツにまで仕上がっており12000。
このアガリを見て落胆の色を隠せない大浜と三木。
ここまでのトータルトップにいきなり12000点の収入があったとなっては、平常心を保てという方が難しいか。
しかし思わぬ展開で局は進む。
1本場にサイが1300/2600をツモアガると、親番で濱からの3900直撃を含む4局の連続のアガリで早くもサイが濱を捲る。
4本場となったところで大浜が500/1000で流し、長かったサイの親が終わる。
まさか濱も12000の貯金がこんなに早くなくなるとは夢にも思わなかっただろう。
その後も大浜、三木ともに小さなアガリを重ね、観てる方としては面白い状況になってきた。
東4局1本場
原点復帰まであとひとアガリの三木。
三木(東家)
ツモ ドラ
ここからが1枚切れなのでマンズのカンチャンを払うと、ジャストタイミングで濱の声。
濱(南家)
ロン ドラ
今回は濱にのトイツ落としの後手出しが2枚入っているので不注意と言ってしまえばそれまでだが、やはり他者に比べて若干不幸な放銃が多い。
これで三木は20000点近くまでへこみ、濱がトップに返り咲き。
南2局1本場
三木が遠いホンイツ、濱がドラドラのタンヤオでそれぞれ仕掛けると、配牌からは一番遅いと思われた大浜からリーチが入る。
濱の立場なら決して大浜には打ってはならないが、終盤、手が詰まった。
濱(北家)
ツモ ポン ドラ
濱、ここからワンチャンスを頼りにを切ると、大浜の手が開かれる。
大浜(南家)
ロン ドラ
一見仕方がない放銃に見えるが、実は大浜の河にが切られている。
これなら話が違う。
待ちのリャンメンではないのだから、後は当たるパターン数で考えればトイツのの方がかなり安全度では優れているだろう。
通れば2巡凌げるのだし、トップでドラドラなのだからトイトイなんて余計な役はいらない。
大浜より着順が上なら相当有利な最終戦を迎えられるのだから、ここは慎重に考えるべきであった。
避けられたであろうこの放銃で濱は3着まで落ち、大浜がトップに立った。
南3局
沈んでいた三木にもやっと本手のリーチが入る。
三木(南家)
ドラ
ツモなら一気にトップに立てる。
しかし後がないのは三木だけではない。
親番のないサイもテンパイ、ここは勝負どころと踏んでリーチに打って出る。
サイ(北家)
ツモ ドラ
が3枚切れだが欲しいのはでのアガリなので問題なし。
これをアガった方が最終戦に望みを持って戦うことが出来るだろう勝負、その軍配は三木に上がった。
サイからで8000のアガリ。
これで三木は2着に浮上したが、サイがラスに落ちて並びは悪い。
オーラスの親でさらに加点を目指すも、濱とのリーチ合戦に敗れ3着落ちの致命傷。
アガった濱は、トータル首位に立って最終戦に臨むことが出来た。
4回戦までのトータル
濱+48.3 大浜+35.7 三木-24.9 サイ-59.1
-最終話- 神楽坂の雀荘でアイを叫んだけもの
大浜-三木-濱-サイ
濱と大浜のマッチレースとなった最終戦、簡単に言えば2人の着順勝負である。
東2局
いきなり2人の足を止めた殴り合いが始まる。
先のテンパイは濱、5巡目に高めがドラのピンフテンパイでリーチ。
濱(南家)
ツモ ドラ
その2巡後に大浜もピンフテンパイ。
大浜(北家)
ツモ ドラ
ここは冷静にダマを選択。
次巡ドラのを引きと振り替えリーチの発声をするも濱の手が倒される。
しかし2000の被害でホッとしたのは大浜の方だろう。
追いかけリーチを先に敢行していれば、リーチ棒プラス3900の出費になっていた。
東3局
早くも2ラウンド目のゴングが鳴る。
親の濱が今度は4巡目にリーチ。
ドラ表示牌のカン待ちだが親でこの巡目のリーチ、脇はもちろん踏み込みにくい。
濱(東家)
ドラ
しかし濱の計算に狂いが出る。
リーチを受けた時点ではまとまりのなかった大浜の手が激変する。
それほど危険度の高い牌を打ち出すことなくイーシャンテン、ついにはテンパイを果たす。
大浜(西家)
ツモ ドラ
ここは引くところではないと、真っ向勝負リーチ。
この時点で待ちは濱1:4大浜と圧倒的な差。
濱が掴むようなことがあれば勝負を決めるアガリとなりそうだ。
だがここでサイにチーが入る。
最終戦開始前、「最後まであきらめません」と口にしたサイ、かなり苦しい形だが有言実行と言わんばかりにチー。
なんとこのチーによって濱が掴むはずだったがサイに流れる。
更に三木にもが流れる。
大浜、この地獄絵図に気付けるはずもない。
数巡後またもサイがチー。
かを切ればテンパイだが雀頭を落として回る。
このチーで大浜のツモが三木に流れる。
今度はその牌、である。
サイの仕掛けに振り回された大浜だったが、最後のツモで待ち望んでいた感触が指先に行き届いた。
東4局
濱がまたまたまたリーチ、7巡目にしてメンタンピンドラ1と文句なし。
これをイーシャンテンだった親のサイがすぐに7700の放銃。
これで微差ながらトータルで大浜を捲った濱。
南1局
なんとここでも終盤で大浜と濱の本手同士がぶつかる。
結果は2人テンパイで流局となったが、ここまで手がぶつかるのは珍しい。
麻雀の神様も憎い演出をしてくれるものだ。
南2局
親の三木が配牌でメンホンのリャンシャンテン。
しかし配牌でトイツが3つしかなかった大浜が6巡目にあっさりとチートイツのツモアガリ。
三木、奇跡の逆転劇の台本はたった6行で終止符。
南3局
再度大浜に捲られた濱が7巡目にリーチ。
濱(東家)
ツモ ドラ
しかし今日の濱は大事なところで本当によく手が入る。
今回こそ1人旅に思えたが、ここでもすぐに追っかけリーチが入る。
今回の相手はサイだ。
濱がすぐに当たり牌をつかんで3900の放銃。
茫然自失の濱をよそに、大浜は心の中でガッツポーズか。
南4局
東家から順に各自の優勝条件は
サイ→捲るまで連荘
大浜→無条件(アガるOR流局)
三木→現状なし
濱 →大浜との点差を8400以上詰める
濱にテンパイが入るも条件を満たさない手格好。
だが諦めない男・サイが1000オールで連荘。
だがこのアガリのおかげで濱は3900直撃でよくなった。
南4局1本場
サイがまたも仕掛ける。
サイ(東家)
チー ポン ドラ
アガれば優勝の大浜もイーシャンテン、そして運命の6巡目。
大浜(南家)
ツモ ドラ
このドラを、大浜はノータイムでツモ切った。
2副露の親がいるこの状況。
決勝で戦う者が、必ずといっていいほど使う言葉がある。
「自分の麻雀が打てればいい」
では実際その言葉を初の決勝の舞台で遂行出来た者が、過去に何人いただろうか?
この決勝戦、一番自分らしく打っていたのは間違いなく大浜だった。
最終局面でもその「らしさ」は揺るがなかった。
サンメンチャンを固定し苦しいところを厚く持つ。
大浜にとっては当然の選択なのだ。
その意思にツモが答える、そして・・・
大浜(南家)
ロン ドラ
「2000は2300」
その声は、とても勝者のものとは思えないほど憔悴しきっていた。
大浜は今期から運営、新人研修等に専念するために、苦悩の末リーグ戦欠場の判断をした。
そのことで周りから心ない言葉を浴びせられることも少なくなかった。
リーグ戦に出ないで何のプロか。
昇降級の苦しい戦いの螺旋から逃げたのか。
それでもすべては協会のために、将来の麻雀界のためにと、現状を受け入れて裏方を引き受けた。
そんな大浜にとってこの優勝は、麻雀プロに対する自分の真摯な姿勢の証明となったに違いない。
大浜が担当している新人研修で始めに必ず言っている言葉がある。
「たしかに麻雀が強いことも大事です。 ですが麻雀だけが強くて横柄な人より、多少麻雀が拙くても人間としてしっかりしていることの方が大事です」
優勝はしたが、むしろこのことで謙虚でありたいと、後日大浜は語った。
競技麻雀を愛し、麻雀プロ業界を本当に大切に考えている男の姿がそこにはあった。
この優勝が協会にとって良い効果を生んでくれることを、1人の友人として切に願う。
文:橘 哲也
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