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順位
選手名
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
朝倉 ゆかり
84.3
23.1
25.1
15.0
20.4
0.7
2
中山 百合子
24.3
-5.5
-5.7
15.0
-22.3
42.8
3
高津 圭佑
-45.7
7.7
5.4
-26.3
-4.7
-27.8
4
須田 良規
-63.9
-25.3
-24.8
-3.7
5.6
-15.7

≪観戦記≫

麻雀のルールは一発裏ドラなし。システムも本戦からはトーナメント戦という、普段のリーグ戦とは異なったルールとシステムで戦うこととなるこのタイトル戦。

毎年増え続けている参加人数も100名を越え、予選から決勝までの道のりは毎年徐々に険しくなってきている。

そして、その険しい道のりを勝ち進み、決勝戦へと駒を進めたのは、須田良規・朝倉ゆかり・高津圭佑・中山百合子の4名。
自団体・他団体のタイトル戦や麻雀番組の大会などでの優勝経験を持つ4名の激突となった。

この対局はいつものようにインターネット配信も行われていたので、この観戦記をご覧いただいている方も、対局のほとんどの内容をご存じかと思うし、配信では矢島亨・小川裕之・五十嵐毅代表の3名の解説が非常にわかりやすく、的確な解説を行ってくれていた。
私も会場でこの解説を聞きながら、選手の思考や心理をよく拾えているなと感心していたのだが、その半面『これは観戦記を書く意味があるのだろうか・・・』と途中から複雑な心境にもなっていった。


◆1回戦

中山が東1局で須田からタンヤオドラ1の2600。そして次の東2局では リーチツモピンフの700・1300と連続でアガリをものにした。

アガリをものにした中山は当然点棒を得るわけだが、その他の3人はそのアガリの形を見て、その手順や思考を推理しつつ情報として得ていく。
この形でリーチをするのか。この牌は先に切って手役を作りにいったのか。などと言う風にである。

東2局0本場 ドラ

東2局でピンフのみのリーチを放った中山、この局面ではテンパイをしたのが6巡目、打点上昇する手変わりも見当たらない形なので、このリーチは自然かと思う。
一発裏ドラのないルールは、このリーチをするという局面が普段とは違い極端に少なくなる。
リーチのメリットというものが1翻アップというこの1点しかなく、1000点の供託を支払い、アガることができるまで一切の手変わりもできないツモ切りマシーンと化すデメリットは同じ。相手に与えるプレッシャーが全く違うということは皆さんもご理解いただけているだろう。

このルールにおいて、リーチを打つという判断というのは、選手によってかなり差があると言っても過言ではない。
最近ではよく『レンジ』と言葉を使うのだが、これは攻撃の幅という意味を示す言葉だ。
リーチというのは一番わかりやすい攻撃の意思表示であるので、和了した際、流局となった際に開かれる手牌から、どのくらいの打点でどのくらいのタイミングで放っているのかというレンジを測ること、これは戦う上で重要な情報となりうる。
何の変哲もない局かもしれないが、このリーチ棒が放たれる局面は、今後の駆け引きを左右する重要な局面でもあるわけだ。

手牌を開く中山、その手牌をじっくり観察する3者。

『これくらいのリーチは当然打ちますよ。』
『ふ〜ん、なるほどね。覚えておくよ。』

そんな会話が聞き取れそうな、妙な間があったので、とりあえずこの局面を取り上げてみて、私もこの情報を心の片隅にとどめつつ観戦を続けていった。

続く東3局1本場 ドラ

中山が再びピンフ手をアガるわけだが、今度は黙テンを選択した。
今度は打点上昇が見込めるのと、ドラがということで押し返される可能性があるという点でもこれはこれで自然に見える。

『今度は黙テンなんだ。ふ〜ん』
『ドラ見えてないし、怖いですもん!』

と心の会話があったかどうかは私のただの想像でしかないが、この黙テンは中山が他の3人に揺さぶりをかけているように見えた。
続く東4局、『この決勝戦の主導権は私が握らせてもらいます。』

東4局0本場 中山 
ドラ

再びピンフのみのテンパイ、11巡目とはいえ先制となるリーチ。先ほどもドラは字牌だったが、親番維持の為にここは抑え込みにいった。

このリーチを受けた高津は、直後に三色のイーシャンテンとなるも、1牌抱えているドラを切ることができずすぐさま撤退。

しかし、ドラを2牌持っている朝倉は、シャンポン待ちのテンパイ。
朝倉
ドラ

無筋のとさっさと切りだしていく。

須田は6巡目に役なしのテンパイを入れていたが、
須田
ドラ

次巡に引いてきたで打のテンパイ外し。
345の三色などを目標にしつつ、打点上昇且つアガリ安さを求め手を変化させていく。
そして、再び追いつくこと15巡目。

須田
ドラ
中山のリーチ後に朝倉がを切っているが、思い切ってリーチと宣言。

さぁ、二人の先輩が、同時に牙をむいてきた。

結果、朝倉がツモ南ドラ3で2000・4000。
中山がリーチをかけたことで、高津の持っていたドラを封じ込めたわけだから、このリーチの意味はあったわけだが、朝倉・須田を抑え込むことはできなかった。

『やっぱり、この先輩たちへは中途半端に攻めると危ない。この先もう少し慎重に行くかなきゃ・・・。』

中山がこう思っていたかどうかは、私の想像でこれまた定かではない・・・。

南2局1本場 高津
ドラ
10巡目にこの役なしドラなしのテンパイを入れていた高津。
途中、須田と中山からリーチが入るが、黙テンで何とかそれを維持しながら、迎えた18巡目
須田がツモ切ったを見て手が止まる。
チー、打という現物喰い替えができるこのルール。ハイテイが中山に回ってしまうが、こうすることで安全にテンパイを維持できる。

高津はこの大会も今回が初参加で、これまで一発・裏ドラのないルールをほとんど打ったことがなかったという。
チーをすることは簡単なことで、至極当然なことかもしれないが、一打一打しっかりと考えて落ち着いて対応をするということが大事なのだ。

過去に新人王・チャンピオンロードのグランドチャンピオンを獲得し、徐々に経験も積み上げている。
いずれもっと大きな舞台でも活躍するだろうと期待をさせてくれる若手プロだ。


高津は時間をかけて考えた末、チーを選択。中山に回った海底牌には誰からも声が掛からず、この局は全員テンパイで流局となった。

直後の南2局2本場は、高津が親である須田のリーチをかわしつつ、中山から1000点を出アガリ。
積み棒と供託を合わせて微差ではあるが朝倉を交わしてトップ目に立ち、2度の流局を経てそのままオーラスを迎える。

南4局3本場
朝倉 34000
須田 19700
高津 36800
中山 29500

南場は細かな点棒の移動だけで、誰も決め手を入れることができない拮抗した状態。
この局も親の中山が、タンヤオ仕掛けで連荘を目指すテンパイを入れるが、朝倉の黙テンが成就。

ダブ南の3200点は4100点を高津から出アガリ、朝倉がトップで1回戦は終了となった。

受けの麻雀に定評がある朝倉が、勝負所をしっかりと見据え我慢を重ねた結果、逆転の条件を満たす黙テンをここで決めてくるところを見て、この決勝戦は派手な展開にはならなそうだなと思ってしまうそんな貫禄のあるトップだった。

1回戦終了時
朝倉 +23.1
高津 +7.7
中山 ▲5.5
須田 ▲25.3


◆2回戦

東1局は中山が須田から2600、続く東2局の親番は朝倉から7700を直撃し、スタートダッシュを決める。
トータルトップの朝倉から直撃を取ったところで、勝負はあっさりと振り出しに戻った。

あれだけ1回戦から一進一退の攻防をしてきたのに、麻雀というものはつくづく展開の読めないゲームである・・・。

東2局1本場
朝倉が早々と仕掛けて、7巡目にテンパイ。
チー ドラ
このまま気分良く勢いをつけさせない為に、中山の親番を蹴りに掛かる。

続く8巡目に須田もテンパイ。
ドラ

ここはもちろん黙テンを選択。ピンフやイーペーコー、567の三色のような役ありテンパイへの変化を待つ。
ツモ切りを繰り返す朝倉と須田。親の中山はドラを重ねての七対子イーシャンテン。高津はホンイツへ向かい役牌を仕掛け始めた。
ドラのも全く顔を出さない不穏な空気を察してか、12巡目に須田は朝倉の切ったに声をかける。

須田
チー ドラ
喰い替えをして、三色の役アリテンパイへと移行。
これもオータムCSならではの動きだ。


中山から1000点を出アガリ、親番を落とすことに成功。
1 回戦の高津と同じく、しっかりと状況を見定めて落ち着いた対応をしているところを見ても、流石だなとうならせるアガリだった。

東4局。
リードをしている若手二人が素早くテンパイ。
高津
ポン ドラ

中山 
ドラ

親の須田は撤退を余儀なくされたが、途中の暗カンを入れていた朝倉が10巡目に追いつく。

朝倉
ドラ

ドラのは、高津と須田が1牌づつ切っているが、の暗カンが見えているリーチなので、そこそこの打点は見えている。
高津は中山のアタリ牌を掴んで冷静に撤退。女性二人の勝負となったが、

この勝負は朝倉に軍配があがり、中山から8000の出アガリで東2局の借りを返す形となった。

南場に入り、親番の高津が流局時のテンパイ料で徐々にリードを広げつつあったのだが、ここで朝倉に電光石火のアガリが舞い降りる。

僅か3巡でリーチツモ七対子ドラ2の3300、6300。
ただ、これぐらいのことはよくある話。他の三人はここでいかにこの理不尽な展開を受け入れて、反撃に転じることができるかが問題だ。

その点、そこからの三人は至って冷静だった。やはり決勝戦までの厳しい戦いを勝ち抜いてきた強者なのだから、いらぬ心配である。

ドラを丁寧に抱えて、反撃の機を伺っていた中山が見事な2000、4000のツモアガリ。
逃げる朝倉に必至に追いすがる。

迎えた南4局。
逃げる朝倉は、5巡目に須田の切ったをポン。
ポン ドラ

チャンタもしくは三色を見た仕掛け。タンヤオの仕掛けと違い、もし誰かに反撃されたとしても比較的安全に対処しやすいので、早々と前に出た。

高津 30400
中山 29300
朝倉 34900
須田 25400

トップ目の朝倉とラス目の須田との点差は10000点弱。つまりは全員がトップを十分狙える位置にいる。全員が猪突猛進に手を進める中、親の須田にも大物手が入りつつあった。

メンゼンホンイツのイーシャンテン。
普通に考えれば、一気通貫も見えるを残して切りとなるが、朝倉のポンが視界に入る。
須田はを鳴かれて役をつけられた後に、でロンと言われるのはまずいと、ここは先にに手をかけた。


しかしこれが鳴いた後にあっさりとテンパイを入れていた朝倉の片アガリのチャンタへの放銃となってしまった。
もしかすると回避できていたかもしれない放銃であったが、これはしっかりと考えた上の選択が故の不運としかいいようがない。

大接戦の2回戦も少ないチャンスを手繰り寄せた朝倉がトップ。
5回戦勝負という決勝戦での連続トップはとてつもない価値であることは言うまでもない。

2回戦終了時

朝倉 +48.2(+25.1)
高津 +13.1(+5.4)
中山 ▲11.2(▲5.7)
須田 ▲50.1(▲24.8)


◆3回戦

3 回戦開始後も、中山が東1局で2000、3900のツモアガリ。

続く東2局も須田から2600と軽快にスタートダッシュを決める。
最初に連続トップの朝倉を親被りさせて、再び反撃ののろしが上がった。
『今度こそ、追いついてやる!』という気合いがひしひしと伝わってくる力強いアガリだ。

この勢いでトータルトップ目の朝倉をどう捉えるのかが問題なのだが、その朝倉はとにかく付け入る隙を見せない。

そして東4局、朝倉の鉄壁の受けが光輝いたシーンがこれだ。

まずは親の須田が先制リーチ。

すぐさま、高津もメンゼンでホンイツテンパイ。
朝倉はドラのを対子で持ったイーシャンテン。するとリーチ者の須田からがツモ切られた。

当然のポンテン。
『親リーだろうが何だろうが、こちとらドラ3テンパイですよ』

ここも最後まで勝負するだろうなと思っていたのだが、

次巡、すぐさま須田のアタリ牌を喰い取ってきてしまう。あら残念。

だが、朝倉はここで手が止まるのである。そして長考の後、この手をオリた。
矢島プロが『これが止まるのは、変態レベル』という何とも失礼な表現で解説をしていたのだが、確かにこれが止まるのは『変態レベル』だ。

後で、このがなぜ止まったのか朝倉に聞いてみたのだが、このは十中八九当たるであろうと思っていたそうである。だとしても自分がトータルトップ目ではなかったなら勝負をしなければいけないので止めることはないが、ここではこの後もこの有利な展開を維持するためにとにかく無駄な失点をしたくなかったそうだ。

ドラポンをしているので、親のリーチの打点はそこまで高くはなさそう。でもここで簡単に打ってしまっていては、この小さなほころびから大きな怪我に繋がるかもしれないという慎重さが、今まで培ってきた朝倉の強さだということをまざまざと見せつけられた気がした。

東4局4本場、朝倉の10巡目の手番。もしくはドラのを切ればイーシャンテンという局面で、打でイーシャンテン取らずとした。
他の三人からは特に攻撃の意思表示は見られない。さらに3巡目にはドラそばのも切っている。ならばなぜここで手を進めないのか?
答えはこうである。

ドラをスッと引き寄せ。1300、2600は1700、3000のツモアガリ。さらに供託の1000点付き。
これはもう3巡目にを切った後、ドラのを引いた瞬間に想定していたアガリの形なのであろう。他に隙を見せず安全に手を進め、あわよくばという形であったが、こうもうまくはまってしまうと、何かのマジックのようにも思える。

トータルの点棒状況、そして現在の点棒状況、他者の動向・・・ありとあらゆる角度から客観視して導いてきた打牌の一打一打がとにかく素晴らしかった。

ここの後、さらに親番で4800点を加点した朝倉は、あれよあれよと言う間にトップ目へ。
失点を最小限に抑えて、トップ目を維持したまま南4局へ。

南4局0本場 ドラ

9巡目に中山がテンパイ。朝倉との点差は4000点、1本場なのでどこから出ても逆転トップという局面。
とにかくここは朝倉に一矢報いたいところなのだが・・・。

アガリ牌は中山の手に来ることもなく、他者から放たれることもなかった。

親番の須田もテンパイを入れて連荘したかったのだが、最後まで手が進まずにノーテンで終局。
中山の一人テンパイで、朝倉と同点トップという形となった。

3回戦終了時
朝倉 +63.2(+15.0)
中山 +3.8(+15.0)
高津 ▲13.2(▲26.3)
須田 ▲53.8(▲3.7)


◆4回戦

ここからはトータルトップ目の朝倉を是が非でも引きずり落とさないといけなくなってしまった三人。
朝倉にこうも隙のない進行をされては、残る2半荘でどれほどもチャンスはないだろう。
とにかく朝倉の牙城を崩すきっかけがほしい。
しかし、3人の思惑が成就することもなく4回戦もさほど点棒の動きがないまま、半分が過ぎていった。

南1局2本場。
親の高津が役牌を仕掛け、ホンイツへ。中山・朝倉もこれを見て、役牌バックの仕掛けで応戦。
三者は仕掛けたものの、お互いをけん制しながらの進行でテンパイまでは辿りつかない。
そんな中、須田は567の三色という手役を見据えてしっかりとテンパイにこぎつけた。


仕掛けの応酬の中で、朝倉が一瞬だけ隙を見せた。
巡目も深くなり、もちろん須田がテンパイの可能性もあることはわかっていた。
ロンの声が掛かった瞬間、少し驚いたようにピクリと手が止まった朝倉。

そして、点棒を支払った後、卓を見つめて、ふと笑みがこぼれた。

何とも朝倉らしい、この決勝戦で私が一番心に残ったワンシーンだ。

『ここまで順調に進ませてもらっていたことで少し甘えていたな。やっぱりこうやって咎めてくれる強者がいてくれてありがたいな。』

そう思って、自分に気合いを入れ直したのだろうか。
このアガリで朝倉はラス目に落ち、一矢は報いることができた。
しかし、朝倉の背中は遥か前方のまま。二の矢、三の矢を次々と打ちこまないとまだまだその牙城を崩しきることはできない。

南3局、トップ目の須田は6巡目にこのテンパイ。

ピンフドラ1のテンパイ。リーチを打って3900または1300-2600のアガリでもものにはしたいが、それでは生ぬるい。ここは更なる高みを求めて一気に浮上を目指す。

ドラのを引き入れて2翻アップ、ここでリーチと打って出て、3000-6000までのアガリが見えた。

しかし、須田が最初のテンパイを入れた直後に朝倉にもテンパイが入っていた。

早々とを暗カンの後、すぐにをポンしてあっさりテンパイ。ホンイツトイトイ、ツモれば三暗刻のテンパイである。

この勝負の決着は、12巡目に訪れる。
朝倉が静かにを手繰り寄せた。
三者の望みを打ち砕く大きな3100、6100。

そして、朝倉はオーラスの親番をしっかりとオリきってトップを守った。

4回戦終了時
朝倉 +83.6(+20.4)
高津 ▲17.9(▲4.7)
高津 ▲18.5(▲22.3)
須田 ▲48.2(+5.6)


◆5回戦

朝倉は同点トップも含めるとここまで4連勝。さすがに大勢は決した。

東3局
朝倉 1巡目
ドラ ツモ

四暗刻のイーシャンテン。この大差のついた状況でこれである。
不公平!
としか言いようがない。神様の遊び心にもあきれたものだと思っていたのだが。

親の中山は三フーロでこのテンパイ。

中山
ポン ドラ

どちらでアガっても倍満の24000。
実は神様はこっそりと最後の試練を与えていたのである。なかなかやりおる・・・。

結局、朝倉から直撃をすることはできなかったが、中山がここまでで一番大きなアガリをものにした。
離れていた点差はここで約半分まで減少。これまで日本プロ麻雀協会のタイトル戦の決勝では数々の大逆転劇が繰り広げられてきた神様は、まったくこういう演出に飽きていないらしい。

そして、トドメの演出がこれだ。

中山が17巡目に国士無双テンパイ。待ち牌のは山に1牌。
親の朝倉に親被りさせれば、よもやよもやの大逆転劇の完成となる。

しかし、中山の手にした最終牌はヌルリと手の中で滑ることはなかった。

5回戦終了時
朝倉 +84.38(+0.7) ※優勝
中山 +24.3(+42.8)
高津 ▲45.7(▲27.8)
須田 ▲63.9(▲15.7)

朝倉の麻雀は、どちらかと言えば『受け』を主体とした麻雀が持ち味だ。
しかしこういうタイトル戦などの決勝戦では、攻撃を数多く繰り出した選手の方がそのまま勝ちきっているイメージが強い。
じっと耐えているばかりで、何もできずに終わってしまうというのが一番辛い展開だというのは、誰しもが思っていることだろう。だから、『倒れるのなら前のめりに』という思いで前に出て勝負をするのである。

今回の決勝戦も全員が全員にチャンスが訪れたというわけではない。
敗れた中山・高津・須田の進行もミスらしいミスというものはなかったように思が、別の選択をしていればと今後の展開が変わっていたかもという場面は何箇所かあったのも確かではある。

しかし、その前に出る三人を最後まで『受けの麻雀』で戦い抜いた朝倉の麻雀はとにかく圧巻だった。
誰にも真似できない自分の個性を出し切った麻雀で勝つ喜びは、最高のものだろう。

優勝した朝倉は現女流雀王として、年末にまた違う大舞台での戦いが控えている。
システムやルールもまた違う戦いとなるわけだが、そこでもまた朝倉らしい戦いっぷりを見せてくれるだろう。

そこで最強の盾として君臨する女王に勝る、最強の矛は現れるのか。
どうやら年末の楽しみ方が決まったようだ。

                                                                              (文・大窪貴大)

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