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順位
選手名
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
蔵 美里
56.5
32.0
-12.6
5.9
-4.2
35.4
2
菊地 俊介
56.3
10.5
13.7
30.2
38.1
-36.2
3
中山 百合子
-37.6
-13.6
28.9
-27.2
-40.2
14.5
4
吉田 基成
-75.2
-28.9
-30.0
-8.9
6.3
-13.7

≪決勝観戦記≫

今年で11回目を迎えるオータムチャンピオンシップ。
過去の優勝者には伊達直樹、仲林圭、鈴木たろう・・・そうそうたる名前が並ぶが、いまだ複数回の優勝者はでていない。
崎見百合、大崎初音、水崎ともみとファイナリストに名前はあるものの女流選手の優勝者もでていない。
だが今年のファイナリストは4名全てが、オータム史上初の快挙として名前を刻む事ができる決勝になった。
はたして誰が歴史の扉を開けることができるのか。

★1回戦★(蔵→菊地→吉田→中山)

オータムチャンピオンシップのルールで普段の日本プロ麻雀協会ルールとの一番の相違点は、
「一発裏ドラ、カンドラがない」
「トップのオカがない」
というこの2点であろうか。
例えばピンフのみのリーチやリーチのみの手が満貫やハネ満になる事は絶対ない。
なので打点を上げる為にどんな手組みにするのかということが大事になってくる。

開局早々にその手組みを見せたのが蔵。

蔵 美里

5期後期入会。雀王戦Aリーグ所属。
夕刊フジ杯での団体戦の決勝はあるものの個人戦では
第8期新人王決勝戦以来である。

C3リーグからAリーグまで昇級した初の女流選手であり
二つ目の勲章を手にすることができるか?

 


東1局

ここから蔵の選択は全ての手役を残す。親番といえど先制のリーチのみなどこのルールでは必要ないのだ。
これが10巡目に最高の純チャン三色でテンパイすると、ほどなくしてツモアガリ。
東家・蔵
 ツモ ドラ
最高のスタートを切った。

ここから菊地の追撃を受けて迎えたオーラス。
南4局

菊地のツモるか直撃すればトップというリーチを受けるも蔵が冷静にかわすアガリでトップを守り切った。

蔵+32.0 菊池+10.5 中山▲13.6 吉田▲28.9

 

★2回戦★(吉田→菊地→蔵→中山)

吉田 基成

4期前期入会。
雀王戦B1リーグ所属。第3回大会の優勝者であり、現雀竜位。

団体対抗戦での活躍も記憶に新しい協会最強の吉田といえばこの人であろう。

この4人の中で一番遠くに高打点が見える仕掛けをするのがこの吉田。
遠くて高い仕掛けのメリットといえば他にもいろいろあるだろうが、
・向かってくる相手を見分けやすい。
・相手も致命傷を負いたくないために決着巡目が遅くなりやすい。
この二つが代表的なものだろうか。

これがはまったのがこの局。
東2局

ここから2巡目に親の菊地の切ったを仕掛ける。
ドラがということもありここから見える一番高い手役を見据えて仕掛ける。
MAXは役牌×3・ホンイツ・ホンロートイトイ・ドラ3、ミニマムが役役チャンタドラといったところか。

他の3者を対応させて決着巡目を遅らせ見事な2000・4000のツモアガリ。

北家・吉田
 ツモ チー ポン ポン ドラ

中山 百合子

14期前期入会。
雀王戦Dリーグ所属。

ニコニコ生放送の番組をきっかけに協会プロになったという経緯を持つ。

開始前のインタビューでも緊張していませんという、
なんとも肝の据わった新人である。

この中では唯一の予選からの勝ち上がりであり、
競技麻雀歴は短いが下剋上を見せることができるか?

 

南3局

5巡目に菊地のリーチを受けるもこの時点ではまだこの手牌。

リーチに上手く対応しながら押し返せる手牌に丁寧に育てていき、打点が見合う手になると思い切りよく無スジを押していく。
その結果11巡目にはこのリーチ

これを蔵から打ち取ってこの半荘のトップを決めた。

中山+28.9 菊池+13.7 蔵▲12.6 吉田▲30.0

(2回戦終了時トータルスコア)
菊地+24.2
蔵 +19.4
中山+15.3
吉田▲58.9

 

★3回戦★(中山→蔵→吉田→菊地)

先制したのは蔵。
東2局1本場 供託2.0
吉田の先制リーチを受けた時にはまだこの手牌。

冷静に打ちまわすと15巡目にはこう育ててを勝負。

すぐに吉田が高めのを掴んで5800+300+3000という大きなアガリに。
2ラスで後がなくなってしまった吉田。
相手のテンパイですぐにあたり牌を掴んでしまう。
今日は吉田の日ではなかったということか・・・。

菊地 俊介

11期前期入会。

ネット麻雀天鳳出身であり、入会してすぐ新人王戦の決勝に残り、
2年目には第8回のオータムチャンピオンシップ(当時の名称はチャレンジカップ)優勝。

普段から連対率の大事な東風戦の店で働いていることもあり、
こういったオカのないルールが得意なイケメンである。

ここまで連続2着ながらトータルトップに立っている菊地がこのルールならではの押し引きを見せる。
南4局

3巡目でまだこの形の手牌。
協会ルールであればトップを目指してまっすぐに手を進めるであろう局面。
このルールであれば着順アップとダウンが同価値であり流局すれば手牌を伏せるという選択もできる。
打点と相談しながらスリムな手牌にして丁寧に手を進めると

12巡目にこのテンパイ。
これを冷静にヤミテンに構えると高めのをツモアガリ。
この後も差を広げるべくリーチ攻勢をかけるも、
これ以上トータルトップの菊地に差を広げられると優勝が絶望的になってしまう吉田のアガリで終幕。

菊地+30.2 蔵+5.9 吉田▲8.9 中山▲27.2

(3回戦終了時トータルスコア)
菊地+54.4
蔵 +25.3
中山▲11.9
吉田▲67.8

 

★4回戦★(中山→菊地→吉田→蔵)

そろそろ4者とも条件を考えた麻雀を始める時間になってきた。
トップとラスで30P+素点差しかつかないこのルール。
最終戦での現実的な逆転条件は50ポイント差以内ぐらいであろうか。
吉田は菊地とトップラスを決めること。
中山は菊地より上の着順を取ること。
蔵は1着順なら下でもなんとかなりそうだが、上にいると最終戦をほぼ並びで迎えられる。
菊地は最終戦に楽をするためには自分→吉田→中山→蔵の並びが最高。
菊地以外はこの条件をクリアできないとかなり厳しい5回戦になるだろう。

4者4様の思いを抱いて始まった4回戦だったが、3者の希望を打ち砕くかのように東2局の親番で菊地のこのアガリラッシュが繰り広げられる。

0本場は1300オール。

1本場は、4000は4100オール。

2本場はダブリーで2000は2200オール。あっというまに50000点オーバー。
こうなると座順もいいので下家の吉田に対してアシストして着順操作することも可能になった。
実際に東3局の吉田の親番では無理に流そうとはせず、吉田を2着目に押し上げることに成功している。

かくしてオーラスは菊地にとって最高の、他3者にとっては絶望の並びと点差で迎えることになった。

菊地52400 吉田37700 中山19600 蔵10300
仮にこのまま終わるとしてポイントをトータルすると
菊地+91.8 蔵▲9.4 中山▲27.3 吉田▲55.1
二番手の蔵でさえトップラスで70000点以上の差を必要とする状況になってしまう。

ここから親の蔵が粘る。
テンパイで2本積むと中山からこの7700は8300のアガリでまずは3着浮上。

3本場ではすでに仕掛けていた菊地がテンパイだとみると、ここからドラのをポン。

菊地のアガリ牌を引き抜き一人テンパイをもぎ取る。
次局もアガって2着の吉田に500点差まで詰め寄るが蔵の粘りもここまで。
最後は菊地が自力で決めた。

菊地+38.1 吉田+6.3 蔵▲4.2 中山▲40.2

(4回戦終了時トータルスコア)
菊地+92.5
蔵+21.1
中山▲52.1
吉田▲61.5

 

★5回戦★(吉田→蔵→中山→菊地)

オータムチャンピオンシップでは協会の規定により、トータルトップの菊地が北家になるようになっている。
それに合わせて場所決めをした結果この並びとなった。
最終戦の条件としては3人が菊地とトップラスを決めたとして、
蔵41500点、中山114700点、吉田124100点必要(同点は先行有利という規定のため)
菊地がかなり有利な状況には変わりない。

東1局・東2局と親がノーテンで流れた東3局3本場に場面が動く。
東3局3本場 供託1.0
親の中山が6巡目にこのテンパイ

は切っているが二手変わるとタンピン三色への変化はある。これをヤミテンに構えるとその間に菊地が2副露してテンパイをいれる。
意を決した中山のツモ切りリーチを受けた同巡の菊地の手牌がこう。

ドラのは切らないとしてここからは消去法だ。
無スジのは切れない。中スジのはツモ切りリーチの場合逆に当たりそう。(最終手出しが
単純な-なら河的にリーチしてそうだし1巡しのげば3巡しのぐことができる。
菊地の思考が選ばせた牌は中山のアタリ牌であり3者にほんの少しの希望を抱かせる牌だった。

さらに舞台が動いたのは
東3局6本場 供託1.0

蔵のツモ・メンホン・一通・役・ドラ1の倍満のツモアガリ。
満貫のポンテンをいれずに我慢した蔵の祈りが通じたか。
これで一気にわからなくなった。

東4局
現時点の点棒を入れたトータルポイントは、
菊地+61.2 蔵+57.9と3400点差と一気に僅差に。
この親番で再びリードを広げたい菊地がドラポン含む2副露しているところに、吉田がこのテンパイ。

直前に蔵がを打っており、対子落としかもしれないがペンチャン(カンチャン)落としの可能性もある。
並びがいいので優勝するためには8000の出アガリよりも3000・6000ツモのほうがいい。
長考の後、吉田の選択は切りリーチ。手牌が進んだ菊地から出たで6400のアガリとなる。

南1局の菊地と蔵の勝負手は中山にかわされ、南2局の蔵の親番で菊地がツモって再逆転した。
その差わずか0.9ポイント。

南3局1本場

門前でテンパイをいれていた蔵。
痛い5800+300の支出だが、もともと負けていたと思えば開き直ることもできる。
最後まで諦めない姿勢を見せていた中山であったが、次局に蔵の6巡目リーチに2600+600の放銃となり終戦。

南4局
菊地+57.3 蔵+53.5その差は3.8ポイント。
蔵の条件は3900以上の出アガリ、700・1300以上のツモアガリ。
もしくは菊地からの2000点以上の出アガリ、リーチ棒を出さずに一人テンパイもしくは菊地以外の3人テンパイ。
菊地は上記の条件を満たされなければ優勝だが、蔵のノーテンは考えづらくテンパイは取らねばならない。




第1ツモでドラを引いた蔵。
カンがネックになるがこれで条件はできた。
蔵がリーチ棒を出すと、菊地はノーテン終了できるようになるが、リャンメン以上の役なしテンパイの時にどうするだろうか?
運命の分かれ道はは14巡目だ。

ここから生牌のをツモ切って蔵にテンパイを入れられてしまう。

このまま菊地にはテンパイが入らず。

蔵+35.4 中山+14.5 吉田▲13.7 菊地▲36.2

(最終結果)
蔵 +56.5
菊地+56.3
中山▲37.6
吉田▲75.2

「第11回オータムチャンピオンシップ」は蔵美里の大逆転優勝という形で幕を閉じた。
協会史上初の女流選手によるオータムチャンピオンシップ制覇という勲章を手に入れた蔵。

今回の決勝では持ち味である、メリハリのある押し引きと打点を狙う手組みを発揮し、
そして短所であるメンタルの弱い部分を全く見せなかった事が勝因だろう。
団体対抗戦の打ち上げの席で鈴木達也がよく言っていたことがある。
「顔で負けるな」
これは要は気持ちで負けるなということなのだ。今日の蔵の気持ちは強かった。

準優勝の菊地は今後夢に出てくる決勝だったと思う。
あの時これを切っていればというのは本人が一番思い出すだろう。
多井や鈴木たろうに「強い」と言わせた雀力は間違いない。
勝負に勝って結果で負けた今回の決勝のリベンジを近いうちに果たしてくれると思う。

中山にとっては今回の決勝は本当にいい経験になったと思う。
麻雀というのはきっかけ一つで一気にレベルアップできるゲームだ。
この舞台がそうなって欲しいと思う。

吉田は終始苦しい決勝だった。そんな中でも随所にらしさは見せてくれたし、
来年の2月に雀竜位決定戦で強い吉田を再び見せてくれると思う。

今は本当にいい時代だ。強い人の麻雀を映像で見て、簡単に学ぶことができる。
今年の団体対抗戦で協会は3位という結果に終わってしまったが、来年以降に優勝するためにももっと若い力が出てきてほしいなと思う。
なんか考えることが歳取ったなと思うが、もう協会に入って9年経ったんだもんなー。
そんな私が最年少!!な雀王決定戦もご覧になっていただけると嬉しいです。

第11回オータムチャンピオンシップ決勝戦 | FRESH! by AbemaTV

(文・小川 裕之)

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