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12月23日、オータムチャレンジカップの決勝戦が行われた。

この大会は、協会の通常の公式戦と異なる一発裏無しルールであり、
より競技性の高い麻雀の技術を研鑽する場として、開催された。

 
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
吉田 光太
42.8
28.3
-30.4
39.8
6.0
-0.9
中里 修樹
1.4
4.0
3.3
-2.6
-7.6
12.5
鍛冶田 良一
-11.0
-7.0
-10.8
-15.8
-23.1
24.1
土子 貴智
-33.2
-25.3
35.4
-32.3
24.7
-35.7

会場に一番乗りで現れたのは鍛治田良一だった。緊張を和らげるためかリラックスムードで談笑している。
33歳ながら協会内の最高タイトル雀王位、雀竜位を獲得し、そしてモンドでも活躍している。決勝の4人の中で実績ナンバー1。

この大会も難なく決勝まで駒を進めた。やはりこの男が本命か。

 

そして吉田光太が現れた。気合十分で落ち着いた表情である。

最もタイトルを渇望していたのは、この男かもしれない。過去には野口賞の最終審査に3度進み、新人王戦の決勝にも残った。しかしながら最後に勝ち切ることができず、未だに無冠。今回の決勝にかける意気込みは群を抜いているだろう。5度目の雪辱なるか。

 

次に中里修樹が顔を見せる。初の決勝戦の場であるだけに多少固さが伺える。
今年は前期にB2への昇級を決めマスターズのベスト8進出など活躍。今回の大会でも安定感を見せ決勝まで上ってきた。

あまり表に出さないが、熱い闘志を持っている。

 

最後に土子貴智。
こちらも初の大舞台で緊張気味の面持ちである。

2年前に協会入り、今期は昇級も果たした。
虎視眈々と下克上を狙う。


【1回戦】 起家から 土子 中里 吉田 鍛治田

東1局
開始早々3巡目に南家の中里が仕掛ける。

二萬三萬五萬六萬七萬七萬八萬三筒西西北白中 ドラ三萬

から、果敢に西をポン。
牽制含みではあるが、この姿勢を見る限りでは、緊張なく打てている印象である。

そして14巡目、吉田の四萬切りリーチに対して

二萬二萬三萬四萬四萬五萬六萬七萬七萬八萬 ポン西西西

から宣言牌を叩き、ドラの打三を勝負してテンパイをとる。
普段の中里に見られないアグレッシブな仕掛けが、今日はどんな結果をもたらすであろうか。
この局は2人テンパイで流局する。

東3局

五萬五萬七萬七萬二筒二筒六筒六筒七筒八筒八筒六索六索 ドラ白

親の吉田、このままダマで2巡回し、河の引っ掛け牌である二索を引いてきて七筒切りリーチ。
ペンチャン落とし途中の土子がすぐに放って9600のアガリ。

その後は大きな動きも無く、吉田が小場で進めて初戦を制する。
数字の上ではもちろん、精神的にも大きな1勝。

1回戦は吉田、鍛治田の放銃は0。逆に中里、土子の放銃が目立った。

1回戦終了時
吉田  +28.3
中里  +4.0
鍛治田 −7.0
土子  −25.3
(5−15の順位馬)


【2回戦】 起家から 吉田 土子 鍛治田 中里

東1局1本場
15巡目、我慢してメンゼンで仕上げた中里がリーチ。

三萬四萬五萬八萬八萬四筒五筒四索四索四索七索七索七索 ドラ三萬

同巡土子が追いつき追撃リーチ。

一萬一萬三萬七萬七萬二筒二筒四筒四筒九筒九筒九索九索 ドラ三萬

勝ったのは土子。すぐにドラ三萬を引きよせて大きなハネマン。

土子は親番でさらに叩き、持ち点は5万点を超える。

四萬五萬六萬三筒四筒四筒五筒五筒三索四索五索八索八索 ツモ六筒 ドラ東 1300オール

四萬五萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬五筒六筒七筒六索七索 ロン八索 ドラ七索 2900は3200


東2局2本場 
さらに加点を目論んで土子がリーチ。

九萬九萬六筒七筒四索五索六索八索八索 カン裏四筒四筒裏 ドラ八萬

それを阻止したのは吉田であった。

一萬二萬三萬八萬八萬一索三索五索六索七索發發發 ツモ二索 ドラ八萬 2000・4000

土子に満貫を被せ、一矢を報いる。


東4局
親の中里の5巡目。

二萬四萬五萬六萬七萬八萬九萬二筒二筒二索三索四索七索 ツモ九索 ドラ三索

このテンパイを取らずにツモ切り。9巡目に待望の三萬を引いてリーチ。

二萬三萬四萬五萬六萬七萬八萬九萬二筒二筒二索三索四索 ドラ三索

このリーチに対しベタオリを決めた吉田だったが、途中で手が詰まる。

一萬二萬三萬六萬七萬七萬一筒三筒六筒六筒六筒七筒七筒 ツモ二萬 ドラ三索

中里(親)
北一索白八筒九索七索
東北一索横二筒三索

吉田
九筒九索南中發三萬
二萬五萬東二筒

土子
一萬九萬南九萬發四萬
一筒九筒東南

鍛治田
南北白中東一萬
六索八索八筒八筒

この河を受け、小考して打一萬。痛恨の高目放銃である。
自身、今回の決勝で唯一悔いた打牌では無いだろうか。外から見ていた私もそう感じた。


南2局は親の土子がさらにアガって6万点を超える。

南2局1本場  
中里が先制リーチ。

七萬七萬七筒七筒九筒九筒東東西北北中中 ドラ七筒

ラス目の中里としてはこの手は是非ともアガりたいところである。

しかしアガリは鍛治田。七筒を手元にそっと引き寄せる。

一萬一萬七萬八萬九萬八筒九筒一索二索三索七索八索九索 ツモ七筒 ドラ七筒 3000・6000

今までのアガリこそ少ないものの、放銃は0。
我慢を重ねてのハネマン。鍛治田強しと思わせた瞬間であった。


南3局
6巡目、親の鍛治田がリーチ。

六萬六萬七萬九萬三筒四筒五筒七筒八筒九筒七索八索九索 ドラ東

鍛治田のリーチ宣言牌の五筒を、中里がこの形から鳴きにかかる。

二萬三萬四萬二筒四筒六筒八筒九筒四索四索七索八索八索 ドラ東

やや不用意な鳴きであり、焦りを隠せない様子である。

そこに吉田が追いかける。

四萬五萬六萬七萬七萬七萬一索二索三索五索六索東東 ドラ東

手牌を狭め、終盤安全牌に窮した中里が八萬を打ちあげる。
この日の仕掛けに逸る気持ちが裏目に出だした。


南3局1本場
11巡目の中里、一萬がフリテンのリーチをかける。

二萬二萬二萬三萬二筒三筒三筒四筒四筒五筒二索三索四索 ドラ西

同巡、先にテンパイを入れていた親の鍛治田がツモ切りリーチ。
安めマンガン高めハネマンの大物手である。

一萬二萬三萬四萬五萬七萬八萬九萬二索三索四索西西 ドラ西

鍛治田の目から五萬は4枚見えていて、山にも12巡目ながら鍛治田の待ち牌は4枚いる。
また、我慢を重ねてやっとアガれるようになってきた鍛治田と、不本意な失点をしてしまった中里の勝負である。
鍛治田自身も順風を感じて勝利を確信していたはず。

しかし、運命を自分の手で歪めるかのようにしてアガリ牌を掴み取ったのは、中里。

二萬二萬二萬三萬二筒三筒三筒四筒四筒五筒二索三索四索 ツモ四萬 ドラ西 3000・6000


オーラスは鍛治田が2着キープのアガリをして終了。
この荒れた半荘を土子が制す。


2回戦結果
土子  +35.4
鍛治田 +10.8
中里  −15.8
吉田  −30.4

2回戦終了時
土子  +10.1
鍛治田 +3.8
吉田  −2.1
中里  −11.8


【3回戦】 起親から 吉田 中里 鍛治田 土子

東1局と、東2局は穏やかに流れる。

東3局
北家中里の手。

二萬三萬七萬八萬八萬九萬一筒二筒一索二索三索七索八索 ツモ九索 ドラ東

手役を追って打七萬。すぐに一萬を引き入れてリーチ。

このリーチを受け撤退気味に打っていた吉田だが、終盤ドラを重ねて追いつく。

三筒四筒五筒五筒六筒七筒一索四索五索九索九索九索東 ツモ東 ドラ東

吉田が打一索で追いかけた。
すでにテンパイしている鍛治田から六索がこぼれて5200。
吉田がこの半荘まず先手を取る。


南1局
今回の決勝、吉田にとって会心の1局を挙げろと言われたらこれであろう。

8巡目
二萬三萬四萬五萬二筒三筒四筒七筒七筒三索四索四索五索 ツモ二萬 ドラ六萬

このテンパイをとらずツモ切り。
そして2巡後六索を引いてヤミテンに構える。

二萬三萬四萬二筒三筒四筒七筒七筒三索四索四索五索六索 ドラ六萬

終盤、鍛治田が二索を掴んで放銃である。

鍛治田は、

六萬三筒三筒四筒四筒七筒二索二索五索五索南南白 ツモ二索 ドラ六萬

この形からの二索ツモ切りであった。
先ほどのテンパイからの放銃はともかく、親の吉田の河にはドラが打たれていて、テンパイ気配が濃厚である。
やや失投気味の放銃で、吉田は強敵鍛治田からの大きな加点。

南4局
鍛治田が先制リーチしている土子に追い掛けてマンガンを討ち取り、ラスを回避して終了。

一萬二萬三萬七萬七萬一筒二筒三筒七筒九筒一索二索三索 ロン八筒 ドラ九筒

3回戦を終了してトータルは吉田の一人浮き。優勝に大きく近づいた。

3回戦結果
吉田  +39.8
中里  +8.3
鍛治田 −15.8
土子  −32.3

3回戦終了時
吉田  +37.7
中里  −3.5
鍛治田 −12.0
土子  −22.2


【4回戦】 起家から吉田 土子 中里 鍛治田

東1局
まずは土子が先手を取って満貫。

一索二索三索六索七索八索九索九索東東 ポン南南南 ツモ東 ドラ白 2000・4000

東2局
吉田が動く。7巡目の八筒に反応しテンパイを取った。

五萬六萬六萬七萬七萬八萬二筒四筒七筒八筒八筒四索四索 打七筒 ドラ二索

トータルトップなだけに妥当な鳴きにも見えるが、焦っている印象もあった。

それを咎めるように同巡鍛治田からリーチ。
まっすぐ行った吉田が放銃する。

二萬三萬三筒三筒七筒八筒九筒一索二索三索六索七索八索 ロン一萬 ドラ二索 3900

吉田、ラスのまま嫌なムードで南1局の親番を迎える。 

南1局 三本場 供託 2000
吉田  17600
土子  33800
中里  34700
鍛治田 31900

そんな雰囲気を払拭させるかのように、吉田に好配牌が入る。

二萬三萬四萬五萬一筒一筒一筒五筒五索東東東白白 ドラ七筒

しかし、吉田がなかなかテンパイしないまま、鍛治田が積極的に仕掛けて1シャンテン。

七萬九萬九萬二索二索五索六索 ポン一索一索一索 ポン南南南 ドラ七筒

吉田7回目のツモにしてやっとテンパイが入る。

二萬三萬四萬五萬一筒一筒一筒五筒東東東白白 ツモ五筒 ドラ七筒

シャンポンだがリーチと打って、すぐに鍛治田が五筒を掴む。4800は5700のアガリ。

次局も吉田がアガり、ラスを脱出する。

五萬六萬一筒二筒三筒四索四索七索八索九索北北北 ロン七萬 2000は3200

5本場は土子が引きアガり、3着のまま吉田の親が終わる。

二筒四筒六筒六筒一索二索三索四索五索六索七索八索九索 ツモ三筒 ドラ三筒 2000・3900


南2局
5巡目に役なしのダマテンに構えていた吉田、

五萬五萬六萬七萬八萬二筒三筒四筒六筒八筒七索八索九索 ツモ三索 ドラ三索 

ここから打八筒としてテンパイを外す。次巡五索をツモ、打六筒

次々巡、六索ツモで打九索。ピンフにせずにタンヤオドラ1に受ける。

そして8巡目にツモ六索である。

五萬五萬六萬七萬八萬二筒三筒四筒三索五索六索七索八索 ツモ六索 ドラ三索

ここから打三索でリーチとする。
流れるような手順で七索を手繰り寄せ、2着に上がる1300・2600。

南3局は吉田、オーラスは土子が局を潰して終了。 

4回戦は土子がトップを取り、吉田が2着となる。
吉田にとってはトータルラス目の土子がトップなだけに、非常に良い展開。

4回戦結果
土子  +24.7
吉田  +6.0
中里  −7.6
鍛治田 −23.1

4回戦終了時
吉田  +43.7
土子  +2.5
中里  −11.1
鍛治田 −35.1

最終戦を迎え、吉田は2着になれればほぼ優勝。
3着やラスでも周りの得点次第と、絶対的有利な状況であった。
土子は吉田を3着以下、中里・鍛治田は吉田をラスにしてトップを取らなければ勝機は無い。

その時私は、王手をかけた吉田に今の気持ちを尋ねてみた。

吉田「たとえ天和が出ても、それを受け止める覚悟はできています」

【最終戦】 起家・鍛治田 中里 土子 吉田

東1局 
まずは中里がリーチで先制のツモ。

二萬三萬四萬七筒八筒九筒一索二索三索四索四索五索六索 ツモ四索 ドラ五索 1300・2600

東2局、東3局は吉田が早々にアガって流す。

四萬四萬六筒七筒二索三索四索六索七索七索八索八索九索 ツモ五筒 400・700

四萬五萬六萬四筒四筒七索八索 ポン南南南 ポン白白白 ツモ九索 ドラ七索 1000・2000

東4局
親の吉田は途中からアガリを放棄し、守勢に回る。
2軒リーチが入るも横移動で決着し、吉田にとって都合のいい展開となる。
吉田はラス親なので、あと3局流せば吉田が勝利である。

親と吉田との勝負が始まった。

南1局
親の鍛治田、

二筒四筒六筒六筒六筒二索三索四索五索六索七索中中 ツモ三筒 ドラ三萬 1000オール

四萬四萬五萬五萬六萬六萬三筒四筒五筒五筒六筒五索五索 ツモ七筒 ドラ四索 4000は4100オール

と最後の意地を見せるものの、2本場は吉田が1000でかわす。

五筒六筒七筒四索四索六索八索 チー三萬四萬五萬 ポン南南南 ロン七索 ドラ九萬 1000は1600

あと親は2人。

南2局
親の中里、リーチと仕掛けで2本場まで積む。

四萬五萬六萬六筒八筒三索四索五索六索七索八索白白 ドラ九萬 流局

二萬三萬四萬七筒八筒九筒五索六索九索九索 ポン南南南 ロン七索 ドラ九索 5800

2本場で吉田が、やはり1000でかわす。

八萬八萬六筒七筒八筒六索七索 チー一索二索三索 ポン西西西 ロン七索 ドラ九索 1000は1600

残る親は土子。

南3局
土子、一索東 をポンしてドラ色のホンイツ一直線。

二索五索五索六索七索八索發 ポン一索一索一索 ポン東東東 ドラ二索

ドラ待ちの仮テンを入れていた吉田、3面待ちになる九萬をツモり少考。

四萬五萬六萬七萬八萬九萬四筒五筒六筒二索 カン南南南南 ツモ九萬 ドラ二索 

吉田、ドラ二索を叩き切り、その3巡後に三萬をツモアガる。


あとはオーラスのウイニングランを残すだけである。

南4局
すでに峠は越え、あとはただ平坦な道程を走れば良いだけである。
牌はまだアガれといわんばかりに寄ってくるが、それを拒否して彼は歩みを進め、そして最後の牌を河に置いた。

吉田光太5回戦
鍛治田 +24.1
中里  +12.5
吉田  −0.9
土子  −35.7

トータルポイント
吉田  +42.8(優勝)
中里  +1.4(2位)
鍛治田 −11.0(3位)
土子  −33.2(4位)

終了直後の吉田のコメント
「観戦に来てくださった方々、運営の方々、今日はありがとうございました。
 タイトルを獲ったから強くなるものではないので、これからも精進していきたいと思います。」

 

 

文:小倉 孝

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