|1回戦|2回戦|3回戦|4回戦|5回戦| 【担当記者:五十嵐毅】
ここまでのトータルは、りんの+34.3、大塚+0.3、渡邊△6.3、筥崎△28.3 4回を戦って1半荘終えた点差よりも上下が詰まっている。 ようは誰がトップを取るかの半荘1回勝負。 口の悪い者は「ジャンケン」だの「ガラガラポン」などと言うが、ここまでの4回戦を条件を考えて必死に打った積み重ね、4人の合作による一発勝負である。 とくに2年目の大塚、1年目の渡邊はそのキャリアからしても実によく戦っていると思う。
筥崎のみ、りんのが2着の場合条件が厳しくなるが3着なら2700点差でOK。 渡邊もりんの2着では条件が付くが、わずか700点差でいいので気にするほどではない。 昨年は3人が最終戦着順勝負となる僅差の戦いであったが、今回は4人全員が「トップ取り」の条件の中にほぼ収まっている。 協会新人王戦史上もっとも緊張感溢れる最終戦が始まった。
座順は筥崎-大塚-渡邊-りんの。 東1局は親の筥崎がソーズホンイツで派手に仕掛け、1人テンパイで流局。
1本場、筥崎の6巡目リーチに手詰まった渡邊が放銃。 裏ドラは乗らず2000点となったが、条件付きの筥崎はりんの以外からの出アガリは安いほうが着順操作はし易くなる。
2本場は渡邊が6巡目にリーチ、ほどなくツモり1000/2000は1200/2200のアガリ。
ツモ ドラ 裏ドラ
東2局、3者が恐れていたことが起こる。 りんのが4巡目にリーチ。
だが2巡後、りんのが欲するドラをアンコにして渡邊がリーチ。
りんの・渡邊ともにリーチ時点で2枚残りだったが、ここは渡邊が引き勝ち大きな2000/4000のアガリ。
東3局1本場、筥崎が自風のを重ねて仕掛けられる形になって、すぐに出たをポンしてカンテンパイ。 これにリーチをかけていた大塚が捕まってしまう。
東4局、りんのの親で大きく局面が動く。
ドラ
このチャンス手をもらったりんのだが、筥崎がピンズに染めていることもあり、なかなかもも出てこない。 ここにを引くと、ソーズの下が場に安いと見て、打。 ほぼ七対子に決め打ったといっていいだろう。 しかし、すぐにドラのを引く。こう来るならは切らなかったと思ったのではないか?
ツモ ドラ
イーシャンテンとなった筥崎が切り、もちろんりんのはポン。
すぐにを引いてで12000、なら18000のテンパイが入った。 11巡目、筥崎がをアンコにしカンテンパイ。
りんのは14巡目、をツモって小考の末、打として-待ちに変えた。 を持たされ一人出遅れていた大塚だが、筥崎のテンパイ打牌でが通り、生牌のだけを残してピンフのテンパイが入った。
一牌勝負なら話は別と、果敢にを切ってリーチ。 りんのとしては18000を逃した格好である。 しかし、りんのは力強くをツモアガッた。
大塚一人を離し、りんの33800、筥崎32400、渡邊32300と3者僅差で並んだ。
そして1本場、さらにりんのに3者の心を砕くアガリが出る。
考えうる最高のツモ。当然打、アガリが約束されたような4メン待ちリーチ。 を一発でツモアガり6000は6100オール。
2本場は大塚がリーチピンフツモで終わらせるも、東場を終えりんの52100、筥崎26300、渡邊26200、大塚△4600と、りんの圧倒的リード。 あとは一人ひとりの親を終わらせていくだけである。
南1局、渡邊がリーチ。 この親を落とすわけにはいかない筥崎は好形イーシャンテンまでは辿り着くも、流局も見えた16巡目に渡邊が1000/2000のツモアガリ。 まだ大物手を連発させればトップは取れるかもしれないが、筥崎にはりんのを3着以下にしなければならない条件が付いている。 筥崎の新人王は実質ここで終了した。
南2局、りんのが9巡目にテンパイ。
局を進めることが最優先なのでヤミテンと思われたが、次巡ツモッたを空切りしてリーチを敢行。 あとでりんのに理由を訊くと、「渡邊との20900点差では心許なく、もっと差を広げたかった」とのこと。 たしかに渡邊は親番を残しており安全圏とはいえないが、ここ最近連続して決勝に残り、結果も出しているりんのでさえもそんな不安に駆られるのか――と意外に思ったものである。
そしてりんのが一番恐れるその渡邊から追っかけリーチが入る。
親を落とすわけにはいかない大塚、上家の筥崎が通ったを合わせると、これにチーテンを入れる。
しかし、テンパイ打牌の、はどちらも当たりである。大塚が選んだのはだった。
大塚にしてみればどのみち詰んでいたが、渡邊にとってはあまりに大きい上下差である。 大塚がを選んでいれば8000のアガリと場に出ているリーチ棒2本が入るところ、りんのに3900+2000持っていかれたのである。 その差は15900点、逆の結果が出ていればりんのはラス前・オーラスと相当なプレッシャーの中で戦うことになっただろう。 そしてここで大塚の新人王も幕を閉じた。
南3局、渡邊が500オールで連荘した1本場、渡邊・りんの共にテンパイが入る。
東家 渡邊 ドラ
南家 りんの ドラ
しかしここはりんのに軍配。渡邊がを掴みいよいよりんのの親を残すのみとなった。
オーラス、一番条件の軽い渡邊ですら倍満直撃・三倍満ツモ条件。 筥崎、大塚は役満ツモでも不可で、役満直撃かダブル役満が条件である。 奇蹟が起きるわけもなく、5分後にりんのの手牌が伏せられた瞬間優勝が決まった。
りんのは昨年プロクイーン(連盟主催)を優勝、この新人王決定戦の翌日に行われる晧王戦準決勝進出も決めていた(結果は敗退)。 ここ最近、協会女流の中で対外試合も含めもっとも結果を出している一人である。 筆者は前日の準決勝の際に彼女の麻雀を見たが、自分の手恰好だけでなく、ここで相手にアガられたらマズイといった勝負所の見極めが非常に長けているという印象を持った。 漫然と麻雀を打つだけでなく、密度の濃い勉強をしているのだろう。 この向上心を持ち続ける限り強くなり続けると思う。
新人王おめでとう。もっともっと獲得タイトルを増やしてください。
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