≪大会レポート≫
第4回を迎えたNPMウェスタンカップ。
この大会を優勝するということは、「NPMが認める関西最強雀士」を1年間名乗れるわけである。
「1年間関西最強雀士を名乗ってきましたが、まだ言い足りないので今年も優勝してあと1年間言い続けようと思います」
という挨拶を開会式で話そうと思っていた筆者であったが、時間が押していたので喋る時間がなくなってしまった。
おそらく私が今大会あっさり負けてしまった原因は、そこで肩透かしを喰らってリズムが狂ってしまったせいだな、うんうん。
冗談は置いといて、大会レポートに移ろう。
4回戦を終え、ベスト8に残った協会選手は3人。
その3人全員がベスト8で同卓となり、そこで抜け出したのが第2回大会優勝の米崎。
屈強な男性雀士3人を相手にアガり倒して7万点超えの大トップ。
アドバンテージを持って決勝にコマを進めた。
決勝進出となったのは以下の4名。
1位 米崎 奈棋 +221.9
前述した通り、第2回大会チャンピオン。
前回もポイント差をつけた有利な条件で決勝を迎え、そのリードを守りきった。
同じ舞台を経験しているという意味でも有利と言えるか。
2位 新子 雅典 +170.0
日本プロ麻雀協会関西本部初期生の1人。
数年前に退会したが、毎年この大会には出場している。
準々決勝で、同じく初期生の桐山や橋上(現・麻将連合)と同卓していたのが印象的。
3位 福原 コロ助 +133.6
何故かこれが本名だと言い張る、変な名前の新人プロ。
イロモノ枠と思いきや、前期雀王戦昇級と今回の決勝進出、結果を残している。
4位 小西 隆之 +132.8
新子が元協会選手であることを考えると、決勝唯一の一般選手。
関西で行われている色んな競技大会によく参加している。
タイトル戦の本戦などで、東京でも顔を合わせることがしばしば。
新子は米崎が2着の時のみ12000点差つけてのトップ条件。
コロ助と小西は米崎を3着以下に沈めつつトップを狙わないといけない。
新子→コロ助→米崎→小西の並びで始まった決勝戦。
いきなりチャンスを迎えたのは新子。
ドラ2枚の配牌を貰い、終盤にテンパイにこぎつける。
ドラ
リーチをかけることは当然として、切りと切りのどちらでテンパイを取るかどうか。
を切っているため、どちらを切ってもいわゆる引っ掛けのリーチになる。
新子は切りリーチを選択、が1枚切れでが2枚切れなので枚数重視か。
このリーチは流局、どちらを切っても結果は同じだったか。
粘ってテンパイを入れた小西との2人テンパイ。
次局は米崎が牌に弄ばれる。
ツモ ドラ
4巡目でこの形。
カンチャンを崩すか、アタマを固定するか、いっそのことツモ切るかの三択か。
米崎の選択は打。
次巡ツモ切りを挟み、コロ助のリーチが入った直後に引いたのが。
ここで現物のを抜き、次巡を引かされ現物の打とトーンダウン。
しかし次のツモがでやる気復活、スジとなった切りでドラ3のイーシャンテンに。
ドラ
次のツモは、たらればのテンパイ牌だがここでは現物なのでツモ切り。
そこからスジやワンチャンス切りで攻め続け、またもやを引いてのテンパイ。
今度はたらればのアガリ牌だがそれはやが通っていればの話。
ここでテンパイ取りの打とし、コロ助に振り込みとなった。
ロン ドラ 裏ドラ
米崎の打牌にロンの声が掛かったことは新子や小西にとっても朗報だが、2600ではいささか火力不足。
しかし小場とはいえ米崎がラス目。
しかも東3局に米崎が1人ノーテンを喰らい、持ち点が2万点を割る。
他の3人は、このまま抜け出すことが出来れば優勝が見えてくる。
展開が大きく動いたのは東4局。
まず仕掛けたのは新子、ポン・ポンと元気よく発声していきテンパイ。
ポン ポン ドラ
さらにここにを引き、カンしてを引き打で待ちを変更。
このを米崎が合わせ打ち。
そして1巡後にコロ助が切ったに、まさかの声が掛かる。
東家・小西
ロン ドラ
ドカンと一発18000。
言うまでも無く、たった今テンパイしたというわけである。
合わせ打ちとは大事なものだ。
たった1巡残して置いたがために、こういうことになってしまうのだから。
麻雀は怖い。
これで半荘内では小西が抜け出した。
自分より着順が下の人が出来たという意味では、米崎にとっても悪くはないアガリ。
東場を終えての持ち点がこちら。
新子 26500
コロ助 9100
米崎 18900
小西 45500
米崎と小西はほぼ並び。
新子とコロ助はトップを捲ればトータルトップに立てる。
南1局、この親番で点差を詰めておかなければならない新子がリーチ。
ドラ
ここまでテンパイまでは入るが、ことごとくアガリ牌に恵まれていない新子。
この局も流局、しかも小西がうまく回してテンパイを入れ、2人テンパイ。
安全牌を並べながらもテンパイを諦めない手順が素晴らしい。
このテンパイ料でついに小西がトータルトップに躍り出た。
次局は米崎が速攻。
ポン ポン ロン ドラ
本場と供託を回収して再逆転。
次も米崎が動く。
10巡目にこのリーチ。
ドラ
アガれば大きい、おそらく決まりと言えるアガリになるだろう。
しかし、親のコロ助が絶対に押してくると読めるだけにこの待ちでは怖すぎる。
一か八かのギャンブルをここで仕掛けてきた。
これを受けたコロ助、全押しはしないものの形テン狙いで仕掛けてテンパイを狙う。
終盤には小西からもチーの声。
危険牌を切り出してきたのでここもおそらくテンパイか。
流局直前にコロ助が2つ目を鳴き、ここもテンパイ。
これで流局かと思ったが、コロ助が打ち出したホーテイ牌に声を掛けたのは小西だった。
チー ロン ドラ
ドラドラの手にホーテイと三色がついて満貫。
またもや小西がトータルポイントをひっくり返した。
南3局
米崎 20600
小西 56000
新子 27000
コロ助 △3400
小西と米崎のトータルポイント差は6.3P。
米崎にとっては、小西だけではなく2着の新子をターゲットに出来ることが有利な材料。
親が無くなった新子はかなり大きめの手が入らない限りアガらないので、
2着に上がってトータルポイントを逆転することはそう難しいことではない。
逆に、小西はそれをさせないためにもすぐに米崎の親を流さないといけない。
優勝の行方を大きく左右する米崎の親番が始まった。
11巡目、最初に仕掛けたのが米崎。
ドラ
ここからをポンしてチンイツへ向かう。
次巡にを引いてソーズ全てを受け入れられるイーシャンテンになるも、なかなかソーズを引かない。
ノーテン流局にはしたくない米崎だったが、小西の切ったをポンして何とかテンパイを取れた。
ん?小西が切った??
とにかく親を流したい小西がソーズを切る?
ということは・・・。
南家・小西
ドラ
あらあら、ものすごい手が入っていらっしゃる。
ちなみにこの手、米崎を2着にしてはいけないので新子からはアガれない。
しかし米崎の仕掛けが目立っているため、誰からアガリ牌が出てもおかしくなかった。
両者ともアガリ牌には巡り会えず、この局は2人テンパイで流局。
これで2着が近づいてきた米崎。
あとひとアガリ出来れば安全圏へ逃げ込むことができる。
そして次局、米崎の7巡目リーチ。
ドラ
さぁクライマックス。
押すしかない小西の手はどうだろう?と覗き込んでみる。
ドラ
何だ、テンパっているじゃないか。
ならばここはぶつける一手だ。
ツモ牌を握り締めながら考え抜いていた小西だったが、その牌を横に曲げてリーチを宣言。
この手をアガった方が優勝する。
多くの人がそう感じているはずであり、おそらく当人達が1番そのことに気づいているだろう。
ここから決着が付くまでの時間を形容する表現が見当たらない。
お互いが自らのアガリ牌に出会えることを期待し、お互いが相手のアガリ牌に巡り合わないようにと祈っている。
牌山だけが知っている勝者の行方。
そして牌山が答えを出したのは7巡後。
米崎が力なく放ったによって勝負は決した。
オーラス、小西が親なので1局勝負。
米崎の条件は、「1600・3200、新子から3900、他から8000」
気落ちしているだろうが、不可能な数字ではない。
ドラ
配牌は悪くない、ドラは使えなくともタンヤオピンフ三色辺りを狙うのが本線か。
7巡目にイーシャンテンとなるが、タンヤオのみの愚形残りではまだ物足りない。
ピンフ・イーペーコーのイーシャンテンになったのが13巡目、そしてテンパイした時には残りツモが1回。
ドラ
残りが1回だろうがやることはひとつ。
リーチをかけて、次のツモにかがいることを願うだけ。
単純計算で2/34、優勝確率約6%
これが本当に最後のチャンス。
絞り出すような声で「リーチ」の声を発した。
そしてツモ番、ゆっくりと手を伸ばす。
祈りを込めて掴んだ最後の牌に描かれていたものは、欲していたものとは全く異なる絵柄だった。
「ツイてました、ただただそれだけです」
表彰式でのスピーチでそう謙遜していた小西さん。
しかし、これだけいい決勝戦が見られたのも、小西さんの頑張りがあってこそ。
決勝戦での3度のアガリと4度のテンパイ、どれかが欠けていれば優勝出来ていなかったのではないだろうか。
しかもその加点は全て、リーチや仕掛けを掻い潜りながら粘って勝ち取った点数である。
初めての舞台で緊張している様子は見られたが、打牌には迷いが無く攻めるべき場面でしっかり攻めた結果、勝ち取った優勝である。
胸を張って「関西最強雀士」を名乗ってください。
(文・田村 洸)
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