『第17期雀竜位戦A級4位』
前年の坂本の最終成績である。
前年までは決勝4人打ちのため、A級3位までが決定戦進出ボーダー。
最終戦までもつれた決定戦進出争いに敗れたことで付けられた肩書きである。
1年前に味わったその悔しさを胸に、堂々の1位通過で迎えた念願の決定戦。
9半荘を終え、2位の矢島に140ポイント以上の差をつけた首位と順風満帆。
しかし残り6半荘を残している中ではセーフティリードとは言えない。
それを一番理解しているのは坂本自身だ。
東1局から3巡目リーチ、東2局1本場には4巡目リーチと攻め手を緩めない。


どちらもアガリとなったものの、1300と2600は2900のアガリだったため、まだ戦況に大きな影響はない。
東3局坂本の親番。
ここでは千貫の先制リーチを受けるが同巡にテンパイ。

無筋の
を切ればペン
のテンパイだが役無しドラ無し。
いくら親でもぶつけるほどの手ではないと判断し現物の
切り。
次巡
を引くと、今度はピンフイーペーコーに加えドラ受けも出来たことで打
で一筋勝負。
通っていない
を引くと現物となった
切り。
次巡ドラの
を引きテンパイを逃した形になったが、すぐにもう1枚ドラを引き一気に勝負手となり追っかけリーチ。

これを3人目の追っかけリーチに出た大浜の宣言牌
で捉える…がこれは千貫の
-
待ちの頭ハネ。
大きな加点には至らなかったが、愚直にペン
リーチやペン
リーチに行っていれば自身の
放銃の未来もあった。
坂本の繊細なバランスが光った1局。
そんな坂本でも、常に最善の手順に最良の結果が付いてくるわけではない。

矢島が索子の染手に向かっていそうなこともあり索子受けを見切る
切りとするも、すぐに
を引きチートイツのイーシャンテンを逃す。
さらに
や
の対子も河に並ぶこととなり、最速のテンパイ・アガリを逃す格好となった。
中盤を過ぎても手の伸びにかけたこともあり、早めにケイテン仕掛けを開始。
後はハイテイで危険牌を掴まなければ無事テンパイ料をもらえるところ。

役はなにかと聞かれたならば、ハイテイドラ3と答えるしかない。
最善の手順とはいかなかったかもしれないが、最良の結果は付いてきた。
この僥倖のマンガンのアガリで頭一つ抜け出すと、展開も坂本に味方する。
トータル2位、この半荘でも二着目に付ける矢島の親番が続く中、ラス目の大浜にドラドラのチャンス手。

巡目も早く
が1枚切れのため打
のテンパイ取らずもあるかと思われたが、大浜はテンパイを取ってヤミテンを選択。
すると矢島からリーチが入る。
少考する千貫、じっと親の河を見渡すと、そこには
の姿が。

この横移動でライバル矢島の親が流れると、次局は矢島からの直撃を決めさらに突き放す。
極めつきは南3局の自身の親番。

2巡目に勝者のドラ
ツモ。
すぐ出る
のポンから入るとネックのカン
も鳴け、高速のテンパイから音速のアガリ。

この半荘のトップを決定付けた。
ここまでの坂本は、参加する局がとにかく多い印象を受ける。
もちろんそれなりの手が入っているというのはあるが、それを差し引いても存在感が際立つ。
打点を作る手順や確保する安全牌の優先順位などの判断は元より、状況にあった押し引きや仕掛けがうまくハマっている。

決して恵まれた配牌ではなかったが、安易に国士に走らず素直に手を進めテンパイを入れる。

そして親の大浜のリーチに対し、現物2枚中筋2枚を持ちながらも一発目に1枚切れの
、二発目には全く通っていない
をノータイムで押し切る。
すると大浜から切られた
を捉え自ら勝負を締めくくった。

2日目を終え初日のリードをさらに広げることになった首位坂本。
この日の内容を見る限り、ここから負けるイメージが湧かないというのが正直な感想だ。
しかし下に控えるは百戦錬磨の現雀竜位 矢島亨、A級所属年数最長 大浜岳、雀王雀竜ダブルAリーガー 千貫陽祐。
負けるイメージは湧かない、しかしこの三人がこのまま終わるイメージが湧かないのもまた事実。
決定戦も最終日5半荘を残すのみ。
どのような結末を迎えようとも、そこに辿り着くまでに最高の過程を見せてくれることだろう。
