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順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
11回戦
12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
1
斎藤 俊
146.1
-28.2
39.4
82.3
-49.2
-51.8
73.0
80.6
2
木原 浩一
20.8
-124.6
129.3
16.3
8.9
9.8
1.3
-20.2
3
渋川 難波
-76.9
3.2
-110.6
-69.9
54.4
65.6
-26.0
6.4
4
吉田 基成
-91.0
148.6
-58.1
-28.7
-14.1
-23.6
-48.3
-66.8

【3日目観戦記】

1・2日目観戦記

2月13日、この日は東京マラソンが行われていた。
そのため、目白通りの飯田橋周辺は、一般車両完全通行止め。歩行者も通りを横断することができない。
トロフィーや牌譜用紙など荷物が多い決定戦最終日は事務局からタクシーで会場の「ばかんす」に向かうことが多いのだが、
おかげで立会人の私(五十嵐)を含む3人で地下鉄東西線に乗り込み荷物を運んだ。
重い思いをして運んだトロフィーを手にするのはいったい誰なのか?
(注・実際にはトロフィーはそんなに重くない。牌譜用紙のほうがよっぽど重い!)

定刻の10分前には渋川難波、吉田基成、斎藤俊の3選手は揃っていた。
しかし、あと1人木原浩一が現れない。木原は神楽坂のここにはだいたいタクシーを使ってやって来る。
いやな予感がすると、やはりタクシーが目白通りに入れず、九段下で降りて東西線に乗り換えるという連絡が入った。

結局遅刻はしなかったが定刻ギリギリ、息を切らせて会場入りした木原は、
「俺もマラソンしてきた」とつぶやいた。

マラソンとは言っても駅の階段を走った程度だと思うが、この呼吸の乱れではすぐに始められそうもない。
対局者3人の了解を得て5分ほど遅らせてのスタートとなった。
東京マラソン恐るべし。来年も警戒しなくては。

2日目(10回戦)までのスコアは、
吉田+90.5
斎藤+11.2
木原+4.7
渋川△107.4
となっている。

現雀竜位・渋川の1人へこみとなっているが、2トップでプラマイ0付近に戻せるポイントであり、
たとえ最終日とはいえ協会ルールでは致命的なマイナスではない。
ただし早い段階でポイントを戻さないと苦しくなる。
このポイントのまま残り2回戦となれば連勝必須の上に並びを作らなければならなくなるからだ。
加えてトップ走者がプラスを大きく伸ばすのは避けねばならない。
自分のマイナスを解消できても点差が離されていては苦しくなるだけだから。

斎藤、木原はフラットに打てる。
首位の吉田とトップラスで一気に順位を入れ替えられれば最高だが、そこまでして狙わなければいけない点差でもない。

首位の吉田も楽ではない。
逃げよりもポイントの上乗せを考えるべきだ。
協会ルールの90ポイントのリードはその程度のものなのである。

★11回戦★(座順・木原‐斎藤‐吉田‐渋川)

開局早々、起家の木原に好手が入った。}

絶好のドラ表を引いて三色確定。
ドラ1なので親満確定。ヤミでもツモなら6000オール。
だからヤミにする人もいるかと思うが、木原は迷わずリーチを打った。
私ならヤミにする。理由は、すでにをトイツ落とししている渋川はを、
をツモ切っている斎藤はどちらも、ヤミテンに気付かれなければツモ切ると思うからだ。
黙って拾える親満を「リーチ」の一声で逃したくない。

しかし、そうしたためにみんな真っ直ぐ打って、横移動で終わり後悔するかもしれない。
がヤマ深く、局面が長引くことも懸念しなければならない。

木原の先制リーチに対する考えが協会本『進取果敢〜強者たちの選択〜』(マイナビ)の97ページに記されている。
中略を挟みなが引用する。

「ときには本手に追いつかれ、手痛い放銃をしてしまうかもしれません。しかし、それを圧倒的に上回る頻度で相手を下ろしていたり、つまりは失点を阻止できていることも多いことがきっと分かるはずです。先制リーチは相手を引かせる非常に有効な戦略です」

この局は木原自身の手が本手なので「失点の阻止」はあまり関係ないかもしれないが、
相手を引かせて局面を長引かせ、6000オール引きアガリが第一希望だったのは間違いない。

しかし、長引くどころか渋川にすぐが行き、12000放銃で終わってしまう。
渋川はリャンシャンテン。
リードしている立場なら東パツの親リーチに向かうことはなかっただろう。
現物はしかないが、、スジのと打って安全牌が増えるのを待ったのではないか。
しかし、トータルラス目の現在、真っ直ぐ進む道を選んだ。後悔はなかったと思う。
ヤミテンされていればツモ切る牌。リーチに放銃となったが、値段はヤミテンバッサリと変わらないからだ。
むしろ木原のほうが少々ご不満か。
かつて最高位戦、順位戦101に在籍した大先輩の○田さんなら
「親ッパネ引きに行ったのに、ヌルイのがいるから親満で終わっちゃったよ!」と謳うところだろう。

この局、リーチを掛けてもらって「助かった」と思ったのが吉田ではないか。
7巡目の、リーチがなければ相当の確率でツモ切っていたと思う。

1本場は吉田が1000点で木原の親を蹴り(放銃・斎藤)、迎えた東2局、斎藤が怒涛の連チャン。
ポン・テンパネの2000をリーチの木原から。1本場は4000オール。

しかし、この局、渋川に逸機があったような気がしてならない。

斎藤リーチの次巡である9巡目、渋川は斎藤の切ったにポンテンがかけられていた。
そうすればすぐにツモ、1000・2000。
斎藤の連チャンもここまでだった。そうしなかったのは打点に不満があるということか?

ならば2枚目も鳴くべきではなかったと思うのだが……。
渋川らしくない思い切りの悪さを感じた一局である。

斎藤はさらに1本場2000オール、3本場4000オールとアガリを重ねた。
特に3本場のリーチは、
 (ドラ 裏ドラ
という勝ったも同然の4メンチャン、いわゆる仕上がった状態だった。
斎藤は南場になってもひるまず加点。渋川はハコラスでいよいよ危なくなる。

11回戦スコア
斎藤+82.3、木原+16.3、吉田△28.7、渋川△69.9

11回戦終了時トータル
斎藤+93.5
吉田+61.8
木原+21.0
渋川△177.3

 

★12回戦★(座順・木原‐渋川‐斎藤‐吉田)

東1局、木原が狙い通りの待ちでリーチ。

いわゆる「注文」にはまった吉田だが、現物のを切らなかったのはもちろん斎藤を警戒してのもの。
が4枚見えでアンコの切りもあるが、やはりこれも気持ち悪い。
を切ったあと、長考してスジのが切られたとき、木原は「次はあたりが出てくるんじゃないの」と期待したことだろう。

またも起家で好スタートを切った木原だが、次局は危機。
渋川にいきなり役満手が入る。

リーチ後、渋川にを鳴かせた木原、昨年やはりリーチ後に金太賢に大三元を放銃した記憶がよみがえったことだろう。
ここは吉田の放銃に助けられた格好だが、本当に危なかった。
木原リーチの時点では吉田がツモ切ったこのしか残っていなかったが、渋川のは2枚残っていたのだから。
吉田はドラのが通るとすかさずトイツ落としでベタオリは明白。
完全手詰まりになったためにのワンチャンスを頼って放銃となったわけだが、が渋川の現物というのも理由のひとつだっただろう。
次局は吉田が満貫ツモで2局続いた失点を挽回する。

東2局、ポンでトイトイのテンパイを入れた親の渋川と、
ポン、アンコでピンズホンイツのテンパイを入れた吉田の戦いに木原がリーチで割り込んだ。
結果は吉田が渋川に7700を放銃。

これで渋川、待望のトップ目に立ち、その後は安手でうまく場を回していき、この半チャン2000点を1回アガッただけの斎藤とのトップラスに成功。前回のハコラスを埋める大きいトップとはいかず、11回戦開始前のポイントに戻すわけにはいかなかったが、なんとか踏みとどまった。

12回戦スコア 
渋川+54.4、木原+8.9、吉田△14.1、斎藤△49.2

12回戦終了時トータル
吉田+47.7
斎藤+44.3
木原+29.9
渋川△122.9

 

★13回戦★(座順・渋川‐吉田‐木原‐斎藤)

起家を引いた渋川がドラポンの親満を斎藤から打ち取り、次局もポン加カンと大暴れ。
ドラのカンをツモアガッて3200オール。

そのまま行った行ったの展開で渋川連勝、斎藤連敗となる。

13回戦スコア 
渋川+65.6、木原+9.8、吉田△23.6、斎藤△51.8

結果、トータルは、
木原+39.7
吉田+24.1
斎藤△7.5
渋川△57.3
となって、渋川連覇が現実味を帯びると同時に、実に面白い点差状況となった。
この時点で私が思ったことは、この日トップなし、2着ばかりながらもトータル首位に立った木原の展開の良さである。

女流雀王決定戦2日目の観戦記に、
「大崎が首位となった。トップ回数は水崎4回、大崎3回であるのに、90ポイント近い差ができるという逆転現象になってしまった。
これは大崎の2着の多さにある。2着である間はポイントは減らない。
回数の限られた決定戦ではマイナスしない半荘を作ることがいかに大事であるか痛感させられる」
と書き、最終日にも似たような総評を述べた(大崎は最終日トップなしのまま優勝した)。

「トップが偉く、2着が軽視されがちな協会において、2着の重要性が見直される流れか?」とメモに書いて休憩に入った。

40分間の休憩を挟んで再開された14回戦(座順・吉田‐斎藤‐渋川‐木原)
渋川が東1局、700・1300。
 リーチ・ツモ(ドラ 裏ドラ

東2局は1300と、
 リーチ・ロン(ドラ 裏ドラ
立て続けにアガる。

どちらも安目で打点的には不満だろうが、文句は言っていられない。
渋川の立場ではアクセルを踏み続けるしかない。

迎えた親番で連チャンできれば――
といったところだが、これがいったんはテンパイを入れながらも、親を流してしまう。

斎藤の切ったでチーテンを入れた渋川、
 チー
次巡ツモでに待ち変え。
16巡目にツモッた生牌のはさすがに打てない。
ここでを打って形テンにすると、次巡はお約束の
しかし、渋川はなんとも思っていなかっただろう。
逃したのはたかが500オール。形テンであれ、親番維持できればこの勝負は渋川の勝ちである。
だが、18巡目にツモ……。
斎藤がポンしての最終手出しが
これでは打てない。
マンズホンイツで、を必要としながら最後に手出しされ、かつその周辺が当たらないのはのそばが雀頭になったケースぐらいだ。

つまり、
A.
B.
C.
からの打で、待ちはマンズの下のほうという場合である。

しかし斎藤は仕掛けだす直前に吉田に打たれたには反応していない。
A、Bならチーを、Cならポンをしているだろう。
だから、のマタギになるこのは、たったひとつの例外を除いて「だいたい当たります」と書かれた牌なのである。

渋川は「ノーテン罰符を払ってもまだトップ目」と自分に言い聞かせるように冷静にを抜いた。
開けられた斎藤の手はたったひとつの例外、自力でテンパイした場合はカンするつもりの「4枚持ちからの1枚はずし」だった。

東4局1本場は斎藤が2600を吉田から出アガリ。小場のまま南場に入ると、いきなり大物手が出る。
親の吉田、
 ツモ チー ポン 
何の変哲もない白ノミだが、がドラ。
この親満で一気に抜け出す。
ここまでの観戦記でほとんど出番のなかった吉田だが、ようやく主役に……。

だが、この親も次局あっさり終わる。これまた東3局の渋川と同じようにテンパイから下ろされるのだ。

16巡目、吉田はをチーしてテンパイを入れた。
 チー ポン

このときの斎藤は以下の手。
 チー
ドラ2枚で先ヅケの仕掛けを入れている。
次巡ツモ、打

渋川がを切ってリーチ。
斎藤はこれをポンしてテンパイ。
 ポン チー
渋川の現物を打ってカン待ち。これは見えているだけで残り1枚である。
アガるにはシャンポンのほうがよさそうだが、は打ち切れないのでこう受けた。
は渋川には当たらなかったが、吉田の2900ロン牌である。

すると渋川がドラを持ってくる。斎藤これをポンして満貫に値上げしての待ち変え。
この二度のポン抜けで吉田が掴まされたのがである。
つまり斎藤は吉田のロン牌が出ていかない手順を踏みながら吉田に渋川のロン牌を掴ませたのである。
すでに木原のリーチも入っている。吉田の手が止まった。
考えたのは当たるかどうかだけでなく当たったらいくらかも考えただろう。渋川、木原ともに表ドラは使っていない。
一人ノーテンになるくらいなら……。

結局、2分に及ぶ大長考の末、吉田は手を壊した。
開けられた渋川の手は1300点。3000点払うくらいなら勝負だったと思っただろう。
大連チャンになったかもしれない渋川、吉田の親を抜群の立ち回りで潰すことができた斎藤に「流れ」が来るのは必然だったのか。
「流れ」があるかどうかはともかく、結果はそうなった。

南2局2本場
 ロン ポン ポン(ドラ 5800点。放銃・渋川)
同3本場
 ロン ポン ポン(ドラ 2900点。放銃・渋川)
同4本場
 リーチ・ツモ(ドラ 裏ドラ 4000オール)
同5本場
 リーチ・ロン(ドラ 裏ドラ 3900点。放銃・渋川)

6本場は渋川がリーヅモ・ダブ南でようやく斎藤の親を落とすが、すでに5万点越えのダントツで勝負は決していた。
2着争いはオーラスにリーチ・ハイテイツモ・ドラ1の親満をツモッた木原が制した。

14回戦スコア 
斎藤+73.0、木原+1.3、渋川△26.0、吉田△48.3

14回戦終了時トータル
斎藤+65.5
木原+41.0
吉田△24.2
渋川△83.3

最終戦を前にポイントを確認する4人。
全員に可能性はあるが、渋川は難しい。
自分がプラスに回るだけでも63400点持ち以上の大トップが必要だ。
仮に7万点のトップを取ったとしよう。その上でさらに斎藤をハコ下のラスにしなければならない。
2人だけのポイントならそれだけだが、木原のプラスを削るためにハコテン近い3着にするという条件が付く。
それが面倒ならば10万点越えの大々トップで3人の点棒を根こそぎ奪い取る――それでも斎藤のラスが必須だが。

吉田は大トップなど必要ないが、トップを取って、斎藤ラス、木原3着が必須。
木原は斎藤と4600点差をつけてワンランク上ならOK(4500差で同点の場合はA級戦通過順位上位の斎藤が勝つ)。
あとは渋川、吉田に条件を満たされないこと。
それ以外は斎藤の勝利である。

★15回戦★(座順・斎藤‐吉田‐渋川‐木原)

東1局は木原が2000点(放銃・渋川)と静かな立ち上がりだったが、
東2局、着順ひとつ差の木原はともかく、他2人の心を折る斎藤のアガリが出る。

一発で出て行くタイミングでテンパイした吉田。
5巡目に強引に一通の芽を残してを打たずに切り。
あるいは6巡目にを打たず、を引いたときにピンフに切り替えられるよう切り。
先処理のタイミングとしてはこの2か所があるが、それもがドラでは無理な話だ。

決定戦開始前のコメントで、
「プロ1年目にして登り詰めた俺は、誰よりも持っている」
と答えた斎藤が「見せつけた」のが南1局である。

ダブリ牌が雀頭しかないピンフのみがハネ満になるのはリーチ一発ツモで雀頭が裏ドラになるケースしかない(ハイテイ、カンドラを除く)。
ハネ満に化ける可能性はいったい何パーセントなのだろうか?
それを大舞台の大団円で見せつけるのだから「持っている」と謳う資格はある。

ラス前の渋川の親をクイタン1000点で蹴り飛ばした木原。
ラス親の特権がいかせるオーラス勝負に持ち込む。
もはや渋川、吉田にアガる意味はない。
木原は斎藤との一騎打ちを続けながら斎藤を捲るまで連チャンし続けるだけだ。

ひどい配牌から早目に仕掛け、なんとか形テンでゲームセットを防いだ1本場、チャンス手が来る。

5巡目にして大物手のイーシャンテン。
しかし、純チャン三色と受け入れが狭いゆえにノーテン終了の可能性もあった。
木原にしては珍しく苛立ちを隠さずツモ切っていた。最後のツモでを引き入れてホッとしただろう。
3巡目のツモ切りのところで素直に切りとしていれば、
 リーチ・ツモ(ドラ 裏ドラ)
この形で18巡目の4000オールがあったかもしれないが、5巡目にを引いたところで、
 ツモ
やはりを落とすことになるだろう。
親満の一発・二発では足りない点差なのだ。8000オールの道筋は捨てられない。

しかし、木原の抵抗もここまでだった。

木原がテンパイを入れた直後、斎藤がアッサリとピンフをツモ。
「申し訳ないが、獲らせていただく」――有言実行となった。

15回戦スコア 
斎藤+80.6、渋川+6.4、木原△20.2、吉田△66.8

最終スコア
斎藤+146.1
木原+20.8
渋川△76.9
吉田△91.0

第3期の小倉孝以来の新人がC級予選からのぶっこ抜き優勝となった。見事というしかない。
「小倉リーチ」といわれた何でもリーチを主体に圧倒的攻撃力で勝った当時の小倉と比べれば、
新人らしからぬ攻守バランスの取れた戦い方だった。
それでいて親番での連チャン力は凄まじく、最終日3回のトップはいずれも大トップである。
コメントを見てもわかるとおり、いい意味で「図太い」のだろう。

「協会チャンネル」の企画を持ってきたり、いろいろ積極的なのも好感が持てる。
雀竜位の冠を引っさげて様々な面で活躍してもらいたい。

(文:五十嵐 毅)

 

1・2日目観戦記

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