|1日目|2日目|3日目| 【担当記者:新田友一】
今年から関西で独立リーグとして始まった関西雀王戦。 雀王リーグの期首順位順にA、B、Cリーグに振り分けられた。 全10節40半荘を終え、Aリーグの上位4名が関西雀王を決する15半荘の決定戦へ進出となる。
初代関西雀王決定戦へ進出を決めたAリーグの4選手を紹介しよう。
前年に雀王戦C1リーグで昇級を決めAリーグに滑り込むと、その勢いのままリーグ戦を首位通過で決定戦に進んだ中村一。 リーグ戦開幕時、誰がこの光景を予想しただろうか。 この決定戦でも結果を残し、もうフロックとは呼ばせない。 そんな意気込みが感じられる。
2位で通過したのは、去年の関西チャンピオンシップで初タイトルを獲得し花開いた後藤哲也。 安定した戦いぶりで決定戦進出を果たした。 プロ歴も今回の決定戦では最も長く、雀王リーグもA2に所属しており関西の重鎮選手である。 まだまだ若い世代には関西雀王は譲るわけにはいかない。
3位で通過したのは、デビュー当時から注目を集めたが最近は影を潜めていた柴卓司。 あれから年月は流れ、風化されつつあるその存在感。 再度注目を集めるには絶好のチャンス到来。 『俺の名を言ってみろ』どこかで聞いた台詞が頭をよぎる。
そして4位で通過したのは、Aリーグ紅一点の御崎千結。 リーグ戦最終戦では2〜5位の選手が2卓に分かれのデッドヒート。 自身は4着で終え絶望…しかしながらわずかなポイント差で辛くも決定戦進出となった。 前回の女流スプリントを制した御崎、関西女流の頂点から関西雀王へ一気にスターへの道を駆け上がれるか。
■1回戦(柴‐後藤‐中村‐御崎)
東1局、御崎がリーチしてドラのをツモアガリ。
ツモ ドラ 裏ドラ
東2局、親の後藤がリャンペーコーのイーシャンテン。
ツモ ドラ
手役を追うイメージが強く、チートイツを得意としている後藤だがここは形を重視して切り。 するとを引きヘッドを入れ替え、を引きピンフイーペーコーのテンパイ。 リーチして2600オールのツモアガリ。
東2局1本場、中村の8巡目先制リーチに同巡に追いついた御崎。
かを切ればテンパイ、は中村の中筋だがは2枚切れでは初牌。 共通現物が少ないため脇からの出アガリも狙えることもあり、枚数は少ないが切りのリーチといく。 この選択が功を奏し、中村が山に2枚残っていたを掴んで御崎の2600のアガリとなった。
東4局1本場、ここまで失点が続き16000点持ちの4着目の中村にドラが対子のチャンス手。 しかし親の御崎がすでにダブポンを含む3フーロをしており、6巡目ながらすでに終盤戦の様相。
いったん切りとしチートイツのイーシャンテンを維持する。 次巡に持ってきたのはで打、メンツ手へと移行するとをチー。 そしてドラを暗刻にしてテンパイ。 御崎とのアガリ勝負を制し、中村が会心の2000/4000のツモアガリ。
南1局、ここまで唯一アガリのなかった柴だったが親番で先制リーチ。 リーチのみだったがこれが一発でのツモアガリ。
一発ツモ ドラ 裏ドラ
南2局、ドラのをポンして早いテンパイを入れていた中村が好形1シャンテンの御崎から出アガリ、混戦から抜け出す。 オーラスは後藤の3面張リーチに柴が一発での放銃となったものの、2人の着順はそのままで終局となった。
【1回戦スコア】 中村:+54.6 後藤:+14.2 柴: △23.9 御崎:△44.9
■2回戦(中村-後藤-柴-御崎)
東3局、連続放銃で冴えない表情の柴だったが、親番で4巡目にタンヤオイーペーコーのリーチを打つと終盤にツモアガリ。 一気にトップ目に立つ。
東4局4本場、御崎のリーチ。 河はと並んでのドラ切りリーチ。 手なりのリーチにも見えるが、この手が実は超ド級の本手リーチ。
ドラ
河にはが3枚切られており、誰が掴んでも止まらないに見えたがこれを自身でツモアガり6000オール。 1回戦の鬱憤を振り払う強烈なアガリだ。
御崎はさらに加点し5万点オーバー。 熾烈な2着争いの中迎えた南2局。 御崎は2フーロでピンズのホンイツ模様。 をポンした柴はを両面チーして、と切っていく。 引き気味の進行をしていた中村、前巡に御崎が切ったばかりのを切ると柴からロンの声。
ロン ドラ
実はをチーする前からカンの8000テンパイだったが、チーしてホンイツへの移行も見れるタンキへ待ち変え。 すぐに絶好のを引き入れたところで中村から12000のアガリとなった。 中村にとっては痛恨、トップ目の御崎はヒヤっとした瞬間だっただろう。
オーラス、ダントツのまま迎えた御崎は更なる加点を狙った4巡目リーチ。
全員がオリに回ると、誰かが手詰まる。 今局その餌食になってしまったのは2着目の柴。 完全に手詰りの中、2枚あるを選んでしまい12000の放銃。
3着目の後藤に迫られたものの、最後は柴がアガリ切って2着を死守した。
【2回戦スコア】※()内はトータルポイント 御崎:+82.7(+37.8) 柴: +2.6(△21.3) 後藤:△22.6(△8.4) 中村:△62.7(△8.1)
■3回戦(御崎-中村-後藤-柴)
東1局、気分良く3回戦を迎えた起家の御崎の配牌がこちら。
御崎は第1打にを選択。 ところが、御崎に押し寄せたのは怒涛のソウズツモ。 10巡目には以下の牌姿になっていた。
柴の切ったをチーし待ちのチンイツテンパイを入れるが、すでに上家の柴が同じく待ちのテンパイを入れているため出アガリは頭ハネとなってしまう。 そしてこのチーで中村にドラのが流れドラドラチートイツのテンパイ。
は自身で切っているためタンキで果敢にリーチ。 リーチ後にが通り後筋となると、タンピン高目三色のテンパイを入れた後藤が切って中村に放銃。 裏も乗って12000のアガリとなった。
東4局、中村のリーチに親の柴が追っかけリーチと行くとツモって裏裏の4000オールのアガリ。 柴がトップ目に立つも、次局御崎が強気の姿勢を見せる。
全員に無筋のを終盤まで持ち続ける手組が功を奏し、タンヤオ高目イーペーコーのリーチ。 攻めの姿勢の御崎へご褒美とでも言わんばかりに、高目のを一発ツモ、そして裏裏の跳満! トップ目の柴が親被り、トップ争いが熾烈になる。
さらに次局、御崎が早い巡目にポンテンのホンイツドラ3をトップ目の柴から直撃し一気に引き離す。 オーラスは3着争いをしている中村の仕掛けに対し、御崎自身もテンパイしている手牌からピンポイントで抜き打ちを成功させ2連勝でフィニッシュ。
【3回戦スコア】※()内はトータルポイント 御崎:+56.3(+94.1) 柴: +6.9(△14.4) 中村:△21.1(△29.2) 後藤:△42.1(△50.5)
■4回戦(柴-御崎-後藤-中村)
起家の柴、イーシャンテンにはなったもののタンヤオも三色も消えるツモ。
テンパイ時の待ちの良さや三色移行も見れる切りの選択もあったが、くっつきの広さを優先して打を選択。 すると後藤から待ちのリーチが入り一転ピンチに・・・と思われたが次のツモは。 待ちで追っかけリーチを打つと一発でツモアガリ、見事加点に成功する。
東3局、ここまで恵まれない展開の続く後藤が親で4巡目リーチ。
仕掛けてテンパイを入れていた中村が無筋のを掴んで迂回すると、終盤その単騎で流局御の字のテンパイを組み直す。 するとこれに後藤がまさかの放銃。 リーチ時山に4枚いたは脇に流れ、山に1枚しかいなかったをピンポイントで掴んでしまう。
クラっとくるような展開だが、こんな苦難はこの4人で誰よりも乗り越えてきたであろう後藤。 南1局、「やられたらやり返す」と中村の4巡目リーチに対しで追っかける! リーチ後にをカンして打点があがってから中村からを討ち取る。
ロン ドラ 裏
裏は乗らずも6.4倍返し。
南2局、この半荘の明暗を分けた1局である。 点棒状況は後藤36600、柴34500、御崎16000、中村12900 4着目の中村が暗カン含みの先制リーチ。 これに対し同巡テンパイを果たしたのは柴。
ヤミテンに構えていたところに持ってきたのは通っていないドラの。 少し離れた4着目のリーチなのでツモられる分にはまだいいが、放銃となると致命傷になりかねない。 しかし2回戦・3回戦とトップのチャンスがありながら取り逃した感は否めない。 後藤の親でこの手を決めれれば、今度こそトップを大きく手繰り寄せれるはず。 そんな葛藤が柴にを切らせる。 このは無事通過したが、次に持ってきたのはまたしても無筋の。 押し寄せてくる危険牌、今度こそオリるか… 一貫性がないと言われることもあるが、ギリギリまで攻めて本当に危ないところでやめることができればそれがいい。 柴もこのあとの危険牌を押すつもりはなかっただろう。 しかし、「もう一牌」と押したこのが放銃となり中村に8000を献上。
この展開になればここはベテランの技。 うまく残りの局を回した後藤がトップのまま4回戦を締めくくった。
【4回戦スコア】※()内はトータルポイント 後藤:+59.1(+8.6) 柴: +5.7(△8.7) 中村:△17.1(△46.3) 御崎:△47.7(+46.4)
■5回戦(後藤-御崎-柴-中村)
1日目の最終半荘。 まだポイント差は少なく先は長いが、誰もがプラスで終えて気分よく2日目を迎えたいところ。
東2局、御崎・柴・後藤の3者が仕掛ける。 まずは、後藤がテンパイ一番乗り。
なら三色同刻も付き高目跳満のテンパイ。 御崎はピンズ、柴はマンズに染めているため充分期待できる待ちか・・・ そこに追いついたのは親の御崎。
ピンズが溢れたこの仕掛けに対し、柴はドラのを掴んで撤退。 後藤と御崎の一騎打ちかと思われたが、ここに割り込んできたのは門前で手を進めていた中村。 リーチの発声もその宣言牌は、御崎が12000のアガリ。 さらに12000を加点し、南入する頃にはダントツ。 他3者を均等に突き放すこの上ない展開のはずだった。
南2局、今日一番の事件が起きる。 中村がソーズの真ん中から切り出し。 次にピンズの真ん中を切り出すと、ついにはマンズの真ん中も切り出す。 すると柴からリーチが入る。 中村の手から安牌の19字牌が切られる…ことはなく、リーチの無筋が切られた。
この捨て牌の人がオリないのにリーチもしてこない。 これはもうあの手役じゃないか! そう気付いてから、さほど時間はかからずに中村の手は開かれた。
ツモ
茫然とする3者。 ダントツだった御崎はこの親被りで中村にトップを捲られてしまう。 この半荘だけは、悲劇のヒロインを演じても許してあげようではないか。
オーラス、御崎は満貫ツモでトップに再浮上。 親番の中村は伏せてもトップなので、高い手を狙いつつ深い巡目になれば手仕舞いといったところか。 そんな中村がまたもすべての色の中張牌を切り出していく。 誰もがオリ気味の進行に見えたところに、柴の切ったにロンの声が掛かる。
柴よ、今だけは悲劇のヒーローを演じても許してあげようではないか。
2着目との点差が開き、これはもう中村のやりたい放題の時間だ。 このチャンスをしっかり生かし、6000は6100オール、2600は2800オールと大きく加点に成功。
「今日はもうやめにしよう。」そんな心の声が聞こえる中、後藤のリーチ一発ツモのアガリをもって1日目の幕が閉じた。
【5回戦スコア】※()内はトータルポイント 中村:+95.9(+49.6) 御崎:△2.5(+43.9) 後藤:△59.1(△14.8) 柴: △70.0(△78.7)
リーグ戦をダントツで勝ち上がった中村はわずかではあるが首位で終え、持ち味を存分に発揮したのでないだろうか。 一方、4位の柴はあと一歩の展開が続き唯一のノートップ。2日目以降の巻き返しに注目である。
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