第20期雀竜位決定戦観戦記 3日目(最終日)

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第20期雀竜位決定戦観戦記
3日目 12回戦

【担当記者:中島由矩】

12回戦(吉田-秋山-富永-小池)

11回戦を終えて、富永の1人沈みがスコア表にクッキリとその形を現した。
▲117.4というポイント状況だ。一方の1位秋山・2位小池・3位吉田は1トップで順位が入れ替わるポイント差。
こういう状態を一般的には「三つ巴の争い」という。

この離された1人沈みが別の誰かなら、あるいはこの12回戦で早くも雀竜位戴冠に黄色信号がともったかもしれない。
しかし考えてもみてほしい。現在▲117.4ptの富永修は、現雀竜なのだ。2日目、下石との熾烈な脱落レースもなんとかしのいできた。
ここでまた持ち前の粘り強さを発揮したいところ。

富永が、意地もプライドもかなぐり捨てて投げ続けた7本のリーチ棒を見ていこう。
「七転八起」といくか、はたまた「七転八倒」となるか。

この12回戦で富永のリーチ回数は実に7回
こう書くと好調だったようにも読めるかもしれないが、そのほとんどがアガりには結びつかなかった。
リーチ時山にあったアガり牌はことごとく他家に流れ、自らの好形テンパイが他家の愚形テンパイに競り負ける辛い展開。
終盤は、何なら放銃の危険しかない摸打を繰り返す。

これが野球なら激高してバットをへし折っていたかもしれないし、サッカーならガックリとピッチに両手をついたかもしれない。しかし、テーブルゲームである麻雀ではそういったことが一切許されず、富永は懸命に持ってきた牌を丁寧に河に並べ続けた。

富永最初のリーチは東1局。

4巡目にできたカン待ちのテンパイを取らずに打として、タンヤオに寄せ、かつ好形テンパイを目指す。

5巡目のカン2600テンパイはいったん採用するものの、

次巡のツモで打とし、

最後はマンズを変化させ、ピンフもつくツモを引き入れて納得のリーチ宣言。この間に他家からアガり牌が放たれなかったことも含めて、12回戦は富永のものだと思った。

しかし、ここに親の吉田が忍び寄る。

お世辞にもいい配牌とは言えなかったところから、チャンタ・三色を目指してと真ん中の牌を河に並べ、

ツモ ドラ

富永のリーチ後に掴んだ

を切れば、チャンタ三色のテンパイ。
自身の待ちがなので筋引っ掛けにもなる。
しかし、このは富永のアタリ牌。

何と吉田が曲げた牌はではなく
富永の捨て牌の3巡目がで宣言牌がの危険度の差は歴然で当然の選択ではあるのだが、手牌の誘惑に負けず見事な放銃回避となった。

追いかけリーチを打ったわずか2巡後、吉田が手元に引き寄せた牌は、富永のアガり牌でもあるだった。
リーチ・ツモ・三色の4000オール。こうして、富永最初のリーチ棒は吉田の元へ。

富永2回目のリーチは、続く東1局1本場。
前局のリベンジとばかりに、同じのピンフリーチ。

ここは、ダブ仕掛けの吉田と、を暗刻にした小池を振り切って、富永がツモ。700/1300は800/1400を手中に収めた。

富永3回目のリーチは東2局。

ドラのをトイツにしたの三面張。ぜひともツモって裏ドラを乗せ、3000/6000に仕上げたい。

ところが、この三面張がアガれずに流局となり、富永としては東1局と同じく暗雲立ち込める展開となる。

富永4回目のリーチは東3局1本場。

4局連続リーチの待ち牌は全てマンズで、そのうち今局を含む3局がなのだが、これをマンズの流れだとか言うとデジタル派の人たちに怒られるかもしれない。

は小池に、は吉田に、それぞれ流れ、二者は苦しみながらもなんとかしのいで流局。

対局中の吉田の表情が豊かであることは2回戦や7回戦の観戦記にも書いたが、詳しく見ていくと、どうやら今局のように苦しい場面でよりそうなる傾向が強いようだ。

富永5回目のリーチは東3局2本場。当会における何かの記録になるかもしれないから書き残しておくが、開局から5局連続のリーチとなる。

このリーチに関しては、ドラドラであったにも関わらず、道中7巡目のをチーテンに取らなかったことを書き添えておかなければならない。
ずっとリーチが結実していない中でも、手ごろに拾える5800ではなく、この半荘の決定打となる12000あるいは18000にしようという明確な意志を、富永は卓上に示した。だが、このリーチも流局となってしまう。

ツモ ドラ

富永6回目のリーチ・・・の前に、南1局の牌姿だけでも見てもらえたら。

北家の小池からリーチを受け、西家の富永はを抱えていったん打としたが、そこにツモときては勝負せざるをえない。ツモってきたを入れて理牌した図を下に用意する。

ドラ

のメンチンは跳満テンパイで、前巡の打もフリテンになっていない。
富永はそっとを縦に置いたが、1度もツモれないまま吉田のツモアガりを眺めるしかなかった。

富永6回目のリーチは南3局親番でのこと。

点棒状況が
東家・富永31400
南家・小池7100
西家・吉田30500
北家・秋山31000

となっており、富永が自らのトップを目指すのはもちろんのこと、吉田・小池の両者も秋山のトップは受け入れがたい。
秋山は秋山で他家の思考を分かった上で、老獪な仕掛けを入れて場を揺さぶってみせた。

秋山はオタ風のをポン、ドラであるを放し、遠いところから仕掛けて、

最後はカンのチャンタテンパイとしたところで、

富永が秋山を押さえつけるリーチ。
秋山の仕掛けは明らかに安く、「その手で親リーチに向かって来れますか」と剣を喉元に突きつけたわけだ。

ここで競技麻雀らしく面白い選択を見せたのは、なんと四者の中で1番後輩(16期後期入会)の小池。

このツモでのツモアガりを拒否した。
そもそも追いかけリーチを打っていないこともそうなのだが、7100点しかなく自らの着順上昇を狙いづらいラス目の小池の立場からすると、トータル1位秋山のトップよりもトータル4位富永のトップを歓迎したい。
自分が500/1000以上のツモアガりをすると、400点差の富永と秋山の着順が入れ替わることになり、それは自らの首を絞めることになると分かっていたのだ。

ツモ ドラ

他家を牽制しつつ我武者羅にトップを目指した秋山の遠い仕掛け、それをとがめにいった富永の親リーチ、そして着順をコントロールしようとする小池。
息詰まる三者の攻防は、秋山は回り、小池が富永に2000点を放銃する形で決着した。
小池は、自らがアガらなかったばかりか、富永にいったん点棒を預け、雌伏(しふく)の時を過ごす。

このような小池の選択もあって迎えた南3局1本場で、12回戦最後となる富永7回目のリーチが入った。

ツモでもタンヤオの両面待ちになる広いイ―シャンテンに、ピンフもつく絶好のツモ
わずか5巡目に先制リーチを打った。

時間はかかったものの、富永はこれを14巡目にツモアガり、裏ドラも1枚乗せて4000は4100オール。

踏まれても、蹴られても、たとえ泥水をすすることになっても、這いつくばって前進する。
そういう力強さが、富永にはあった。7本のリーチ棒は、最後の7本目で報われた。

小池の思惑通り、このトップで富永は+66.5ptを返すものの依然として4位のままで、1位の秋山も+8.3ptしか伸ばせず、2位の吉田ともさほど離れてはいない。


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