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順位
選手名
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
濱 博彰
72.4
-19.2
-50.1
16.6
72.8
52.3
蔵 美里
44.0
5.3
6.5
57.3
-31.3
6.2
小川 裕之
-20.0
60.6
-26.7
-53.8
18.4
-18.5
加藤 ひとみ
-97.4
-46.7
70.3
-21.1
-59.9
-40.0

野球界を代表する名手イチローや岩隈久志。野球を知らない人間であってもその名前は聞いたことがあるであろう。
毎年のようにタイトルを獲得し、先日行われたWBCでは世界一の立役者になった両名。

――しかし、この先彼らがどれだけ実績を上げ一流の座を守ろうと出場さえ叶わない試合がある。

全国高等学校野球選手権記念大会、通称「夏の甲子園」だ。
プロ野球の年間を通して行われるペナントレースと違い、一度負ければどんな実力者であろうと再戦を果たすことは出来ない。

新人王戦もそれに似ている。入会五年未満の選手にだけ出場権が与えられ、リーグ戦と違い一度負ければそこで終了。
一年に一度の栄光を掴めるのはただ一人である。

この限られた機会に一瞬の煌きを追い求め、決勝まで負けることなく勝ち上がってきた四人の“球児”たち。
まずは彼らのここまでの戦いぶりの紹介から入らせていただこうと思う。

小川 裕之(第八期前期入会)
場況と己の感じたものを信じ、ブレが少ない男である。
見た目通り豪快なアガりもあるが、ダメだと感じたら南場の親番であろうがなんだろうが最初から守りに回ることも多々ある。
準決勝では15巡目にこのテンパイ。

三萬三萬四萬四萬六萬六萬七萬八萬一筒二筒三筒七索八索 ツモ五萬 ドラ三萬
残り2巡であるが、場況・ツモの感触が彼にリーチの発声をさせた。
結果裏は乗らずも一発ツモの3000/6000。一躍トップに躍り出た。
また次局の配牌を取るや否や役牌を絞り、仕掛ければ簡単に和了できそうな当面の敵の親を流している。


加藤 ひとみ(第八期前期入会)
基本に忠実でミスが少ないのはこの加藤だろう。また、細かい牌の切り出しもしっかりと盤面と照らし合わせて対応しながら打っている。
特に、仕掛けに対してのケアは人一倍慎重で彼女が押す際はかなり警戒しなくてはならないだろう。

準決勝1回戦では親が序盤に三索二索四索でチー。しっかり見ていないとパッと見タンヤオを警戒してしまうような捨て牌である。

そのとき加藤は
二萬四萬六萬七萬七萬三筒七筒八筒九筒七索七索八索發發 ドラ六萬
「親は絶対に役牌暗刻かバックの仕掛けだと思っていたので、縦を意識した」

ここから三筒七索を切らずに打四萬

数巡後にはこのテンパイ。
六萬六萬七萬七萬三筒三筒八筒九筒九筒七索七索東發發 ドラ六萬

彼女が言った通り親はバックの仕掛けである。この段階で残っている役牌は3種類。
大半の打ち手は恐らく東単騎でリーチ。
昨年の新人王である朝倉ゆかりならば東単騎のヤミテンか。しかし彼女はアガりを求め、八筒単騎のヤミテン。
ほどなくして6400を打ち取り、決勝へ大きく前進した。
四者の中で準決勝の内容は一番良く思えた。


蔵 美里(第五期後期入会)
4人の中で一番真っ直ぐで素直な打ち手であろう。
入会当初は門前の攻め一辺倒という感じで、仕掛けはあまり得意ではない印象を受けていた。
だが、準決勝では本手はしっかりと門前で仕上げ、かわし手は鳴いて捌く局面もあった。
また、仕掛ける際にもテンパイまでのスピードではなくアガりまでのスピードを意識した打牌が出来ていた。
準決勝オーラス。蔵はアガりさえすれば決勝進出である。

3巡目にこの形。
二筒二筒四筒二索三索三索七索九索白白白 チー七筒六筒八筒

ここで打四筒とせずに打三索
その後ツモ五筒でソーズの上を払い一索をチー。見事六筒を手繰り寄せ自力で決勝への切符を掴んだ。


濱 博彰(第七期前期入会)
軽い捌きはあまりせずに、高打点で仕上げて一撃で決める打牌が多いのがこの濱。
例えば準決勝でこんな局面があった。親番で以下の牌姿である。

一萬三萬五萬一筒二筒三筒六筒六筒七筒一索二索三索八索八索 ドラ二筒

現代の一発裏有りの麻雀であれば四萬を引いてのピンフドラでのリーチも見据えて打六筒が一般的であろう。

しかし濱はここから打五萬としている。
決勝でも打点の非常に高かった濱。常に手役を意識した打牌がその源になっているのだろう。


1回戦 蔵―小川―加藤―濱

さすがに昨日までとは違い、全員顔が強張っている。
そんな中、蔵が小川から1500、1本場は2000は2100オールと軽く加点。
ツモった瞬間から蔵の顔から気負いが消え、彼女らしい良い笑顔がこぼれた。

しかし小川も負けてはいない。同2本場に400/700は600/900で蔵の親を流すと、東3局は加藤から5200は5500。

北家小川9巡目
五萬五萬六萬七萬八萬四筒五筒三索四索五索發發發 リーチ ロン三筒 ドラ白 裏七萬

東4局も再び小川。

西家小川11巡目
四萬五萬七萬七萬五筒六筒七筒二索三索四索五索六索七索 ロン三萬 ドラ四索
この手を慎重にヤミテンにし、蔵から打ち取りトップに浮上。

南場に入っても小川が連打で加点する。
南1局南家小川6巡目
二萬二萬九萬一筒一筒一筒五筒五筒八筒八筒九筒九筒南 ツモ三索 ドラ六索

対子の牌は全て生牌であるが、場を見渡した後小川が切った牌は七対子に決める一筒
8巡目に思惑通り三索を重ね即出アガり。打点こそ1600だが、大振りせずに冷静な選球眼が冴えた一局である。

南2局、ここまで慎重に打ってきた小川に決め手が入る。

東家小川配牌
二萬二萬三萬五萬七萬七萬六筒七筒二索三索三索八索東南 ドラ一筒

ここから丁寧に仕上げて8巡目
一萬二萬三萬七萬七萬二筒六筒七筒一索二索二索三索三索 ツモ一索 ドラ一筒

4枚目の一索を引いた小川、悩むことなく即リーチに踏み切り一発ツモ。更には裏裏で三者を突き放す。

一萬二萬三萬七萬七萬六筒七筒一索一索二索二索三索三索 ツモ(一発)八筒 ドラ一筒 裏七萬

南2局1本場は3巡目に役なしの仮テンを入れた小川が500は600オールをツモりさらに加点。

同2本場
小川は配牌を取ると序盤から受けの形をとれる手組みに構える。
東場の親でも序盤から受けて誰にも鳴かせずしっかりと全員ノーテンで流局させた小川。
しかしこの局は違っていた。

先手を取ったのは濱。
西家濱9巡目
二萬三萬四萬五萬六萬七萬九萬二筒三筒二索二索八索九索 ツモ四筒 ドラ八索

九萬を切ってリーチと踏み切ると、同巡に蔵。

北家蔵9巡目
二萬三萬四萬四筒五筒六筒四索六索八索東東南南 ツモ六索 ドラ八索

六索を打ち切れず取りあえず打東

次巡に七索をツモり打東でヤミテンに構えると13巡目に再び六索を引き入れリーチ。

北家蔵13巡目
二萬三萬四萬四筒五筒六筒六索六索六索七索八索南南 ドラ八索

これに安全牌に窮した小川が一発で放銃し、8000は8600。ダントツの小川に一矢報いる。

南3局1本場
ここまで全く手にならなかった加藤。緊張のためか普段と比べて動きが固くテンポが良くなかったがなんとか4000オールをツモりあげる。
七萬七萬三筒四筒五筒六筒七筒八筒五索六索九索九索九索 リーチ ツモ七索 ドラ六筒 裏七索


南3局2本場
ここから更に加点したい加藤だが、濱のリーチにつかまってしまう。
濱の先制リーチを受けた次巡
東家加藤8巡目
三萬三萬三萬五萬六萬七萬八萬九萬四筒四筒五索七索九索 ツモ七萬 ドラ三索

濱の捨て牌が
二筒西南六萬七索九索横三索

七索九索の切り順が五索八索待ちの感を薄れさせている。六索七索七索九索と持っているのであれば普通は九索七索と切るであろう。

加藤は自分の出アガりのしやすさを求め、五索を切ってリーチの宣言。それと同時に濱の「ロン」の声。
二萬三萬四萬九萬九萬六筒七筒八筒一索二索三索六索七索 ロン五索 ドラ三索 裏六筒

前述した通り濱はかなり打点を意識した麻雀を打つ。「ちょっと遠いのですがジュンチャンの目を消したくなかった」とは濱の談。
結果その切りが加藤の放銃を呼び込んだ。

オーラスは蔵が400/700をツモり2着でまとめ、細かい安打で繋げて一撃を決めた小川がトップを守り切った。

1回戦終了時のスコア
小川 +60.6
蔵  +5.3
濱  ▲19.2
加藤 ▲-46.7


2回戦 加藤―蔵―小川―濱

休憩中に吹っ切れたのか、加藤の動きに固さがなくなった。準決勝以前のように小気味よく打てている。
2900、1人テンパイと加算した次局、しっかりと自分の手順を踏み6000オールで一気に突き放す。
東家加藤15巡目
四萬四萬五萬六萬七萬七萬八萬五筒六筒七筒二索三索四索 リーチ ツモ九萬 ドラ二索 裏四萬

流局を挟んだ後の東3局5本場も無理にホンイツにせずに300/500は800/1000で1回戦目トップの小川の親を流す。

途中蔵にマンガンを2回ツモられるも、緩急をつけた仕掛けと安定した守備を見せ、
危なげなくトップをキープし1回戦に取られたポイントを取り戻した。


2回戦終了時のスコア
小川 +33.9
加藤 +23.6
蔵  +11.8
濱  ▲69.3

3回戦 加藤―蔵―小川―濱

動きがあったのは東4局。
加藤のリーチを受けた蔵、現物とスジを頼りにテンパイ。
北家蔵11巡目
二萬四萬七萬九萬四筒五筒六筒三索四索五索六索七索八索 ツモ四萬 ドラ五索

二萬を切ればテンパイだが、八萬が3枚枯れのため取らずの打九萬

次巡ツモ五萬で役有りテンパイ。

六萬は現物ではないが、全体的にマンズが安くリーチの中筋になっており、脇の2人からこぼれる可能性は十分ある。
結局即ツモって1000/2000で加藤のリーチを蹴る。

北家蔵13巡目
四萬四萬五萬七萬四筒五筒六筒三索四索五索六索七索八索 ツモ六萬 ドラ五索

南2局1本場
蔵が軽くアガりを決めたが全員がまだ20000点代。
ここまで小川・加藤を中心に役牌が切り出される巡目が遅いこともあり、
テンパイ巡目が基本的に遅くぶつかり合いになるケースが少なかったが、この局は全員が前へ出る格好になる。
最初にテンパイを入れたのは親の加藤。

東家加藤9巡目
五萬四筒六筒七筒八筒九筒九筒九筒二索三索四索五索五索 ツモ四萬 ドラ發
ドラは既に枯れており、当然の即リーチ。

これに捌いて対応するは西家濱。蔵の切った四筒にチーの声。
西家濱9巡目
六萬六萬六萬一索一索六索七索七索南南南 チー四筒二筒三筒 打七索 ドラ發

そのチーで流れてきた六筒でテンパイを入れたのは小川。
北家小川10巡目
二萬三萬四萬一筒一筒七筒八筒三索四索四索五索六索北 ツモ六筒 ドラ發

二索が親の現物ということもありヤミテンに構える。

10巡目
加藤の和了牌である六萬が濱に流れてくる。
西家濱9巡目
六萬六萬六萬一索一索六索七索南南南 チー四筒二筒三筒 ツモ六萬 ドラ發
渋々……といった感じで濱がカン、新ドラは七索

同巡小川の手が止まる。恐らくヤミテンを継続するかリーチをするかの間であろう。
意を決してツモ切りリーチと踏み切る。

直後に蔵も追い付く。
一萬一萬一萬二萬三萬七萬八萬九萬四筒五筒二索三索九索 ツモ六筒 ドラ發七索
こちらは悩まずリーチ。

下家の濱が加藤のアガり牌の三萬を持ってくる。苦悶の表情を見せながらも、流石に三者に無筋となる三萬は放てず撤退。

直後小川が一発で掴んだ牌は一索

蔵への放銃となり、裏ドラが乗って8000は8300。

たらればは禁句だが、小川としてはトータルポイントを考えると加藤・蔵の潰し合いは望むところなので、
カンが入らずヤミテンを続行していれば、蔵のリーチが入ったところでオリに回ったであろう。

小川は次局も濱のヤミテンに8000を放銃しダンラスとなってしまう。

南4局
序盤すぐにテンパイを入れたのは加藤。
西家加藤3巡目
二萬三萬四萬六萬六萬七萬五筒四索五索六索六索七索八索 ツモ七萬 ドラ四筒

しかし点棒状況が
東家 濱  33700
南家 小川  5500
西家 加藤 21200
北家 蔵  39600
となっており、ここで軽くアガるのは蔵がこれから楽になるだけである。
それならせめて自身の着順が上がるアガりか、蔵を2着に落とすアガりをしたい。

テンパイ取らずの打七萬。ドラ及びドラ周りを引けばリーチ棒を放るだろう。
しかしドラ周りを一切引くことなく終盤、仕掛けを入れた濱がツモアガりを果たす。

東家濱16巡目
一萬二萬三萬六筒七筒八筒北中中中 チー二筒三筒四筒 ツモ北 ドラ四筒
この1300オールを引かれたことによって2着浮上が難しくなった加藤だが、蔵と濱が700点差になり蔵の着順を落とすことは格段に楽となった。

南4局1本場
8巡目に「リーチ」の声。誰だ?
小川だ。
南家小川8巡目
七萬七萬三筒三筒三索三索五索五索七索七索北白白 ドラ三索
ドラドラの七対子。

本来ここは蔵をトップから引きずり下ろしたい。

ヤミテンに構えれば誰が掴んでも出す北であり、上手い具合に蔵から直撃出来れば最良だが、単純にそれは1/4。
また、加藤から6400を直撃しても自身の着順は上がらないのである。
リーチをして加藤からの8000ならば、蔵のトップは変わらないが自身は3着に浮上できる。また、ツモった場合も裏さえ乗れば3着浮上となる。
よって小川は変化球を使わず、真っ向勝負のストレートリーチを選択。

しかし加藤と蔵に一枚ずつ流れ、親の濱もテンパイを取ることが出来ずに流局。
結局蔵のトップとなった。

3回戦終了時のスコア
蔵  +69.1
加藤 +2.5
小川 ▲19.9
濱  ▲52.7


4回戦 小川―濱―加藤―蔵

全5回戦ではあるが蔵はトップを取ればその時点でコールドゲーム、ほぼ優勝といったところだろう。
他の三人は蔵だけにはトップを取られてはならないし、濱に至ってはここでトップを取らないと優勝の目は潰えるといっても過言ではない。

東4局
東3局までは互いが牽制しあい、細かな展開。
先手を取ったのは濱。
北家濱4巡目
一萬二萬二萬六萬六萬七萬七萬一筒一索一索東東北 ツモ北 ドラ一筒

捨牌が
七索八索二索一萬横(リーチ)
で全て手出し。かなり露骨なチートイツ風の捨牌ではあるが、ここは大きく取りに出た。
しかし蔵も追い付く。

南家蔵6巡目
六萬七萬九萬九萬五筒六筒七筒八筒三索四索五索九索九索 ツモ八萬 ドラ一筒
やや蛮勇とも思えるリーチであるが、安全牌に窮した脇から拾えそうな捨て牌になっている。

加藤も追撃。
東家加藤12巡目
一萬二萬三萬三萬四萬四萬五萬六萬二筒二筒二筒三筒五筒 ドラ一筒
この十分形に三筒を引き、親につき当然のリーチ。

しかし、次巡加藤が引いたのはドラの一筒。先ほどまでは喉から手が出るほど欲しかった一筒が一変、濱の痛烈打の餌食となってしまう。

二萬二萬六萬六萬七萬七萬一筒一索一索東東北北 リーチ・ロン一筒 ドラ一筒 裏二筒


これで一歩リードした濱、このアガりの余勢を駆って南場の親番でも手を入れる。

南3局2本場
東家濱4巡目
四萬五萬六萬三筒四筒五筒三索三索白白發中中 ツモ發 ドラ五萬

直後に出る中をポン。直前に發が切られたばかりで、今すぐにでもアガれそうなテンパイ。
これに捕まったのはトータルトップ目の蔵。

東家濱8巡目
四萬五萬六萬三筒四筒五筒白白發發 ポン中中中 ロン發 ドラ五萬

これで濱は50000点オーバーのダントツ。
オーラスは3着目の蔵をラスに落とすべく2着目の小川が仕掛けるが、結局1000/2000をツモアガって終了。


4回戦終了時のスコア
蔵  +37.8
濱  +20.1
小川 ▲1.5
加藤 ▲57.4

5回戦 濱―蔵―加藤―小川

トータルトップ目は蔵だが、濱と小川もトップを取れば無条件で優勝。
加藤は並びを作ってのトップが前提となるが、それでも現実的には可能である。

各々条件を確認し、順次卓に着く。四者ともその表情は一回戦目よりも落着き、そして決意に満ち溢れた凛々しい顔立ちである。


東1局
素直に手を進めた小川がテンパイ一番乗り。
北家小川6巡目
五萬六萬七萬四筒五筒二索二索三索四索四索四索中中 ツモ六筒 ドラ九索
そのままリーチ棒を放つ。

これに一発で飛び込んだのは、この最終戦までただの一度も放銃の無かった濱である。

東家濱7巡目
一萬三萬七萬八萬九萬一筒二筒三筒七筒九筒一索二索九索 ツモ中 ドラ九索

これをツモ切りで5200。手牌はリャンシャンテンではあったが、
トップ縛りの半荘で満塁ホームランの可能性を秘めた手牌であっただけに止む無しといったところか。

これで優勝旗へ一歩近づいた小川だったが、次局がその小川にとって忘れられない一局となる。

東2局
先ほど打ち取った濱からのリーチを受け一発目の小川。
五萬六萬九筒九筒九筒二索二索七索八索西北北白 ツモ三索 ドラ一索

全員の捨牌は下記のとおりである。(↓はツモ切り)

東家:蔵
          ↓ ↓
一筒一萬發中九筒九索
     ↓
二萬六索三萬五筒

南家:加藤

九萬一萬六萬中南六筒
↓    ↓ ↓
七萬七筒八筒八萬

西家:小川
   ↓    ↓ ↓ ↓
二筒三筒七筒八筒二萬發
   ↓
一筒四筒五萬

北家:濱
      
南東發五筒二筒七萬
↓ ↓
三筒五索八萬横(リーチ)

この切り番が、小川が日本プロ麻雀会所属の肩書を持ってから恐らく一番長考したであろう局面である。
安全牌は皆無。熟考した小川が手にかけた牌は……西

虎視眈々とその甘い球を待ち構えていた濱が、鮮烈の一打を放った。

北家濱9巡目
一萬一萬二萬二萬三萬三萬一索二索三索七索八索九索西 ロン(一発)西 ドラ一索 裏西

小川は冷静な表情で16000を、濱の手元にそっと置く。

終了後に小川は振り返る。
「正直この日の麻雀の内容は、自分の中でかなりしっかり打てていたと思っています。
……でも、あの放銃で結果も内容点も0点です。来年またこの舞台に立って、今度は100点の麻雀を打ちますよ!」

小川裕之。最後の最後まで自分の麻雀を貫いた小川。
彼が再び何かの決勝の舞台に上る日も、そう遠くはないだろう。


東3局
蔵のリーチと小川の仕掛けに挟まれた加藤。
東家加藤12巡目
二萬三萬四萬二筒三筒四筒五筒六筒七筒四索六索南南白 ドラ九索

小川の仕掛けは發を鳴いてのマンズの一色であり、三元牌は全く顔を覗かせていない。
とはいえ、並びを作ってのトップ条件の加藤。打点こそないが、蔵から直撃を狙える局面ではある。

仮にここで白を切って小川に振り込んだとして誰が攻めることができるだろうか?
…しかし、彼女は切らなかった。

歯を食いしばって南を切り、終局間際16巡目に白を重ねてのテンパイ復活。

是が非でも連荘したい加藤。だが、運命とは非情である。
海底に彼女が引いてきた六萬は抑えようもなく、力無くそのまま放たれた。

北家蔵18巡目
四萬五萬三筒三筒四筒五筒六筒三索四索五索六索七索八索 リーチ・ロン六萬 ドラ九索 裏七索

この放銃で折れてしまったのか、その後加藤に何度か手が入るも全てヤミテンに構えてしまう。
「悔しい。本当に悔しいです。特に1回戦目にしっかりと自分の麻雀を打つことが出来なかったことが心から悔しいです」

女流だから…と言われるのが誰よりもキライである彼女。
加藤ひとみ。夏の甲子園のマウンドには女子高生は上がることができないが麻雀は違う。
今回彼女の麻雀を見た者は今後女流選手としてではなく、一競技選手として見ていくだろう。


自らのアガりの後、東ラスに濱がダマテンの加藤へ放銃したことにより、濱まで1600点差と詰め寄った蔵。
「優勝するチャンスはありました…。でも自分の未熟さ故にそのチャンスを逃してしまった。それが分かるだけにあの局は後悔しています」

南2局
東家蔵6巡目
三萬四萬五萬六萬七萬八萬九萬三筒四筒四筒五筒三索五索 ツモ三筒 ドラ三筒

優勝の懸かったこの局面。蔵が放った牌は三索
指運といえばそれまでだが、嫌な予感を抱えつつ後ろで見ていると、次巡のツモは三索

その後小川のリーチを受け守勢に回り流局したが、12巡目に二筒を引いていただけにその悔しさはより一層のものになっただろう。

対局後、蔵は泣いていた。
「来年は最後のチャンスなので、腕を磨いてもう一度この場に立ちたいと思います」
蔵美里。その涙は高校球児が流すそれと比べても勝るとも劣らない美しいものだった。

南4局
南家濱5巡目
五萬六萬七萬四筒五筒六筒六索七索七索八索八索西西 ロン六索 ドラ四萬 

「7期入会なんですけど、年齢的に今年が最後の出場チャンスでした。
準決勝までは楽しさと苦しさが半々くらいだったのですが、決勝は結果を気にせずに楽しみながら打つことができたと思います。
対局会場では集中したいので、基本的に誰とも喋らずに精神統一するように心がけていたことが結果につながったのかな、と思っています」


濱博彰。34歳にして遅咲きの新人王誕生である。
アガり回数・放銃回数ともに最も少なかった濱。
しかしその静かな一打一打には、はっきりと意志が込められていた。

最終成績
優勝 濱 博彰   +72.4
2位 蔵 美里   +44.0
3位 小川 裕之  ▲20.0
4位 加藤 ひとみ ▲97.4

初夏は目前。筆者も大好きな、夏の甲子園が始まる。
まだ見ぬ球界のスーパースターたちが、まさにそこで産声をあげようとしているのだ。
今年の新人王戦は、それぞれ将来を期待させる、素晴らしい打ち手が揃った。
来年また、甲子園より少し先駆けて、協会の若獅子たちの熱い戦いが繰り広げられるだろう。
これからの協会を支える、未来ある選手がまた現れることを切に願い、ここに筆をおきたいと思う。


(文:大浜 岳)

 

 

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