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第9日本オープン

順位
氏名
所属
合計
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
多井 隆晴 RMU
97.9
57.3
62.4
-24.4
-50.5
53.1
2
橘 悟史 協会
21.1
-51.2
6.8
72.4
-15.9
9.0
3
大柳 誠 最高位戦
-3.1
9.6
-18.2
-1.0
55.7
-49.2
4
橘 哲也 協会
-117.9
-16.7
-51.0
-47.0
10.7
-13.9

≪決勝観戦記≫

「祈るだけでは勝利は得られない。努力を重ねつつ祈るのだ。」
プロボクサー、イベンダー・ホリフィールドの名言である。

この拙文を読んでくださる方の殆どは『麻雀バカ』であると思う。
「お願いだからこのテンパイだけはアガられせてくれ!!」
「頼むから残り1巡でツモられないでくれ!!」
皆さんも数え切れないほどの経験があるだろう。
そしてそれが叶わなかったことも……


開始5分前、ビッグタイトル特有の張り詰めた空気はそこには無く、雑談を交わし全員がリラックスしているように見えた。

★1回戦★(大柳−橘(悟)(以下悟史)−橘(哲)(以下哲也)−多井)

麻雀にせよボクシングにせよ自分のスタイルと言うのは非常に重要である。
この1回戦は各々の持ち味が非常に良く出ていたように思う。
東1局大柳(東家) 6巡目
 ドラ
大柳誠…最高位戦日本プロ麻雀協会Aリーグ所属。
ファイターというスタイルは耳に挟んでいたが果たしてどのような麻雀なのか。
上記の牌姿で6巡目に打たれたをスルー、直後に引き悩むこと無くリーチ。
3巡後、力強くを引き寄せ4000オールの先制パンチを決めた。
次局もフリテンながら躊躇うことなくリーチ。
 ドラ
思い切りの良さが体格と相まって打点重視攻撃型のイメージがぴったり合う。

東1局2本場
大柳の親を落としたのは悟史。
 ツモ チー ポン ドラ
橘悟史…日本プロ麻雀協会C2リーグ所属。
日本プロ麻雀協会公認『セガネットワーク対戦麻雀MJ4 Evolution』では
最高段位である『最強位』の称号を獲得している(2011年3月現在)。
そんな彼の麻雀は、メンゼン時にはハードパンチを繰り出し、捌ける時には捌き、
先手を取られれば引いて守る現代風ネット麻雀に多いスタイルである。

東2局
その悟史の仕掛けに丁寧に対応しているのは哲也。
橘哲也…日本プロ麻雀協会B1リーグ所属。
やや守備寄りで、カウンターを得意とするアウトボクシングスタイルの麻雀を打つ。
2巡目
 ドラ
字牌に手をかける打ち手も多いだろう。もちろん、それはスタイルの違いなのでここで是非を問うつもりは無い。
だが、ここから字牌を切りだしていくと、親の悟史にをポンされ、恐らく
 ツモ ポン ドラ
この6000オールに仕上げられているだろう。
悟史の序盤の切り出しが変則であったこともありこの局、哲也の手牌からが打ちだされることはなかった。
次局も字牌を丁寧に扱い大柳から2900点の出アガり。

東4局2本場
そしてその三者を鋭い目つきで表情、仕草、テンポ…全てを観察しているのは多井。
多井隆晴…RMU(リアル・マージャン・ユニット)S級所属。第1回日本オープンの覇者でもある。
インファイトからヒットアンドアウェイまで全てのスタイルを熟知し、卓越した場況を読む力をも兼ね備えているオールラウンダーである。

13巡目 多井(東家)
 ツモ ドラ
「(は2枚切られているけれど)1枚は確実に山に。
残り1枚は下家(大柳)が持っている可能性があるので平均1.5枚くらいいるからね。」
対局後に聞いたところそう答えてくれた。
この状況でこの手牌であればリーチをする人が多数であろう。
だが、目を瞑って勝負することは誰でも出来る。
本当に難しいのはしっかりと目を見開いて、怯えることなくパンチを打ち返すことだ。
結果は同じであったとしても、蛮勇と勇敢は違うのである。

南4局
オーラスをトップ目で迎えた多井。しかし2着目の大柳とは3800点差、3着目の哲也とも9200点差であり安全圏と言える差ではない。
哲也が三元牌を2つ、大柳もドラメンツを晒している。
その状況下でこのテンパイ
多井(東家) 12巡目
 ツモ→打リーチ ドラ
果たしてこの手をリーチと踏み切れる人がどれだけいるのか?
勿論蛮勇ではなく勇敢なリーチを、だ。

1回戦結果
多井+57.3 大柳+9.6 哲也▲16.7 悟史▲51.2


★2回戦★(悟史−哲也−大柳−多井)

結果から書くと、この半荘も多井が制することとなる。
また、悟史と哲也は前のめりになり、自分の麻雀を完全に見失っていたように見えた。

東1局
1回戦、後手を踏むことが多かった悟史にチャンス手が入る。
悟史(東家) 11巡目
 ツモ ドラ
で当然のリーチ。
が、打ち返してきたのは再び多井。

14巡目にを手繰り寄せたのは……
多井(北家) 14巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
「3000・6000」

このハネマンをツモられてから悟史の様子がおかしくなる。
頭に血が上っているのか、打牌選択、テンポ、動作に違和感を覚える。
書くべきか迷ったが……結果的に満貫をツモったものの、この第一打はプロとして言い訳できないだろう。

多井のペースで進んで南1局。
東家:悟史24800
南家:哲也15000
西家:大柳24800
北家:多井35400

「今日一番後悔したよ。結果ではなく振り込んだ時の精神状態が良くなかった。」
この半荘の決定打に振り込んだ哲也の談である。

決定打…いや、多井が決定打にした、と言える1局だったように思う。
多井(北家) 6巡目
 ツモ ドラ
ここから打。その後と引いた8巡目、
 ツモ ドラ
テンパイ取らずとなる打とし、次巡ツモ
 ツモ ドラ
全体を見渡し「リーチ」

哲也(南家) 11巡目
 ツモ ドラ
ここから打で放銃となる。
多井(北家)
 リーチロン ドラ 裏ドラ

この点棒状況で多井がのトイツ落としをしてのリーチ。
安いことなどあるのだろうか?普段の哲也ならオリていただろう。
また、一番のミスは「を切ったこと」ではなく「が危ないかどうか考えずに単に要らないから切ったこと」である。
しっかりと構えている相手に、浮足立って上半身だけの半端なパンチを繰り出そうとしてもカウンターを決められるのが関の山だ。

その後も多井主導で局が進み第2ラウンドは終了。

2回戦結果
多井+62.4 悟史+6.8 大柳▲18.2 哲也▲51.0

(2回戦終了時)
多井+119.7
大柳▲8.6
悟史▲44.4
哲也▲67.7


★3回戦★(多井−悟史−哲也−大柳)

「もう残り3半荘でしょ?多井の圧勝で決まりそうだな。」というムードが漂い始めている。
全5試合中3トップを取れば文句無くTKOだろう。
しかし対局者は『もう』ではなく『まだ』3半荘もあるのだと言う顔をしている。
少なくとも悲壮感を露にしている選手は見当たらない。

東1局、多井の親は悟史の1人テンパイで流局。

この3半荘目ここからの12局中11局、誰かしらがアガる超乱打戦となる。

羅列させてもらうと、
東2局1本場 悟史が6000は6100オール
東2局2本場 哲也が700・1300は800・1400
東3局0本場 悟史が2000・4000
東4局0本場 哲也が3200オール
東4局1本場 流局
南1局2本場 大柳が2000・4000は2200・4200
南2局0本場 悟史が6000オール
南2局1本場 悟史が1000は1100オール
南2局2本場 哲也が3000・6000は3200・6200
南3局0本場 大柳が6000オール

南3局1本場
この時点で持ち点が
多井▲6700(+53.0)
悟史55500(+31.1)
大柳26100(▲2.5)
哲也25100(▲82.6)
※()内はこの着順で終了した時のトータルポイント

何と多井はこの半荘だけで32700点もツモられており、トータルポイントでも並びかけられている。
親番も無く、3着目とすら31700点差、更には残り2局。しかも親の大柳からリーチ。
この時多井の手牌はドラドラではあるもののリャンシャンテンである。
多井(西家) 7巡目
 ドラ

しかしここから危険牌を1枚も打ち出すことなく14巡目にテンパイ。
 ツモ ドラ
「リーチ!」
を横に曲げる。
そして、最終ツモ番となる17巡目にハネマンのツモアガり。
多井(西家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南4局
多井は大柳か哲也からの満貫出アガりで3着、ハネマンのツモアガりならば2着に浮上する。
8巡目に哲也がリーチ。
哲也(東家)
 ドラ

9巡目に多井が追いつく。
多井(南家)
 ツモ ドラ
不満の残るツモではあるが、リーチを敢行。
そして13巡目、哲也がをツモ切り多井がアガり裏ドラをめくる。
「ボクシングにラッキーパンチは無い。何千何万と練習した内の一発だ。」
良く言われるセリフである。
多井(南家)
 リーチロン ドラ 裏ドラ
唯一満貫になる牌でのアガり。
ツイている。その一言で済ますことも出来ると思う。
ただ、この手牌は哲也の捨て牌にがあるのでヤミテンという選択も当然ある。
それを踏まえた上で、わずかな着順浮上の可能性を優先してリーチを掛けたこのアガりは果たしてラッキーパンチなのだろうか?

3回戦結果
悟史+72.4 大柳▲1.0 多井▲24.4 哲也▲47.0

(3回戦終了時)
多井+95.3
悟史+28.0
大柳▲9.6
哲也▲114.7


★4回戦★(哲也−多井−悟史−大柳)

多井はこの4回戦にトップを取ることが出来ればほぼ優勝が決まる。
悟史、大柳は自身のトップあるいは多井より上の着順が欲しいところ。
哲也は自身のトップかつ多井をラスに出来れば逆転優勝もの可能性は残る。

東1局
哲也、多井、大柳の三人リーチを制したのは大柳。
大柳(北家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

東2局
再び大柳がアガる。
大柳(西家)
 リーチロン(一発) ドラ 裏ドラ
打ったのは多井。

多井ラス目のまま迎えた南3局、大柳に分岐点が訪れる。
全体図を見ていただきたい。


(多井はが手出しで、残りはツモ切り。)
大柳の手牌は
 ツモ ドラ
多井の捨て牌は明らかに変則的で、どの牌も打ちづらい。

長考の末大柳が打ち出した牌は
すると次巡ツモで打、更に次のツモがで打、そして15巡目
 ツモ ドラ
値千金の3000・6000

オーラスは悟史がアガり終了。

4回戦結果
大柳+55.7 哲也+10.7 悟史▲15.9 多井▲50.5

(4回戦終了時)
大柳+46.1
多井+44.8
悟史+12.1
哲也▲104.0


★5回戦★(大柳−悟史−多井−哲也)

最終ラウンドまでもつれ込んだこの戦い。
東場は決め手が出ないまま南入。
点棒状況は、
大柳26500
悟史27300
多井26400
哲也19800

南1局6巡目
 ツモ ドラ
ここからを切るのは…やはり多井。

意志や意図は分かる。分かるのだが、一発・裏ドラ有りのルールでトップを取れば優勝という局面。
6巡目にドラ含みの両面待ちでのテンパイ。
少なくとも私にはを打ち出すことはできない。

8巡目にをツモり、を横に曲げる。

こんなにもツモりたい、いや、ツモってほしいと祈ってもらえるリーチをしたことがあるだろうか?
少なくとも多井の後ろで観戦していた者は、ツモってほしいと切に思っていたであろう。

そして、16巡目
「ツモォ!」
観戦者のどよめきと共に、力強くを引き寄せた
多井(西家)
 ツモ ドラ 裏ドラ


南4局2本場
1300・2600以上のツモアガりで逆転優勝となる悟史が17巡目にリーチ。

――――――――――――

後日多井さんと電話でお話しをする機会があり、何点か質問させてもらった。
中でも印象に強く残っているのが1回戦南4局1本場17巡目に放った打

「僕だけでなく、観戦者の大多数が何故ではないのか?と疑問を感じる部分だと思うのですが」

是非皆さんにも考えてみてもらいたい。
多井さんの返答は以下を反転して読んでください。

「あの時哲也氏は2巡ツモ切ってリーチだったよね。
確かに僕は満貫を放銃すると2着に落ちるけど、四・七筒待ちは場況的に凄く良かった(ヤマに残ってそうの意)。
なので四・七筒待ちだったらツモ切りリーチじゃなくて即リーチすると思うよ。
それよりも大柳氏が(15巡目に)九萬を切ったことに注目したい。
安全そうではあるとは言え、通っていない1枚切れ(次巡多井、大柳共に九萬をツモ切りのため大柳が切った時点では1枚しか見えていない)の
九萬を切っているわけだからテンパイが入っていてもおかしくはない。
哲也氏に四・七筒でロンアガりされることは無いと思っている以上、
白を切って大柳氏にメンホンチートイツやチャンタ三色の白タンキでアガられるリスクの方が大きいと思うんだよね。
万が一哲也氏に四・七筒でロンされても満貫以上の可能性はそんなに高いとは思わない。
でも、白でロンされた場合はまず大柳氏に逆転されるよね?
特に協会ルールはトップの価値が高い(オカがあるためトップが非常に重要なルール)から、七筒を切ったんだよね。
でもこれがもし素点が重要になってくるRMUルールだったとするとまた難しくなっ……(以下略)」

このとき多井さんの手元にはこの牌譜は無いにも関わらず、これだけの答えが返ってきた。
もちろんこれだけではなく、他の局面でも常人が考えることの何倍も思考を巡らせているのだろう。

――――――――――――

残すは悟史のツモ牌のみ。
もはや悟史も多井も卓上で出来ることは何も無い。
出来ることはそこにアガり牌がいることと、いないことを祈ることくらいだろう。

多井が祈ったかどうかは分からないが、そうであれば努力を重ね最善を尽くした者の祈りであろう。

第9回日本オープン優勝『多井隆晴』

(文:大浜 岳)

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