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第8期女流雀王戦

 

【ポイント成績】

順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
最終日
1
朝倉 ゆかり
153.2
-22.0
131.0
44.2
2
眞崎 雪菜
95.4
-31.8
30.7
96.5
3
愛内 よしえ
54.8
92.0
-84.0
46.8
4
夏川 七七
-304.4
-39.2
-77.7
-187.5

【最終日観戦記】

1日目観戦記2日目観戦記

もう数年前のことであるが、新宿のとある居酒屋で、こんな話を肴に酒を呑んでいた。
相手は協会Aリーガー、第5期雀王の須田良規。

須田「この間さ、朝倉の麻雀を後ろから見たんだけどね」
筆者「ああ、朝倉ゆかりね」
須田「うちの女流であんなに丁寧で強い打ち手を初めて見た」
筆者「へえ。珍しいね他人を褒めるなんて(笑)」

当時は半信半疑、記憶の片隅に残る程度の話だった。
それからしばらく後、筆者が観戦記を担当する事となった第7期新人王戦。
その朝倉ゆかりが決勝メンバーに残っていたのである。
「そういえば、須田氏が高く買っていたな。本当かどうかは別だけど」

こんな事を考えながら観戦をした半荘5回。
結果、彼女は見事に新人王の栄冠を手にするのだが、
それ以上に驚かされたのが、繊細かつ緻密という表現がまさに相応しい麻雀の内容だった。

彼女が同年度、女流雀王戦の決勝にコマを進めた時、須田や筆者をはじめとした彼女を知る多くの者は、期待せずにはいられなかった。
新たなる女王の誕生を、である。
そして彼女は見事にその期待に応え、第7期女流雀王の栄冠に輝く。

我々は、この未来を確信に近い形で予見していた。
協会最強の女流プロとして、朝倉ゆかりの時代が到来すること。
そしてその中で無論実現されるであろう、女流雀王戦の連覇を――。


11回戦(朝倉→眞崎→夏川→愛内)

冬晴れの女流雀王決定戦最終日。
朝倉のエンジンが暖まるのには少し時間がかかった。

東2局にて、まずは親番の眞崎がこのアガリ。
 ロン ドラ

この12000に放銃したのは夏川、6巡目でのいわゆる交通事故である。
現在ポイントを1人離された状況におり、この半荘にラスを引けばほぼ優勝は不可能となる彼女。
そこに待ち受けていたこの無情の現実。
しかし「まだ終わりたくない」という彼女の強い気持ちが牌に通じたのだろうか。
この後の東3局親番にて怒涛の巻き返しが始まる。

まずは1本場、そこそこの配牌と迷いの無いツモにより、9巡目にリーチ。
そして流局間際にツモアガリとなる。
 ツモ ドラ 裏

安めながらの4000オール。

これを皮切りに彼女はツモアガリを3連発、そして4本場では愛内よりロンアガリ。
気付けば46000持ちで断然のトップ目となっいた。
このままトップを維持し、朝倉を下位に沈める事ができれば逆転も現実的になってくる。

そして夏川が連荘を続ける東2局5本場。
この局、やっと好配牌を受けたのは西家の朝倉である。
 ドラ

まずは1巡目、早々にをポンして役を確保。
とりあえずはドラを生かして3900以上、あわよくばソーズのホンイツと行った手組みで進めていく。
そして6巡目にもポンしてテンパイ、ソーズもうまい具合に伸びてテンパイとなった。
 ポン ポン ドラ

朝倉の河はマンズより先にが切られており、染め手とも分かりにくい。この数巡であっさり出るかもしれない。
そう思って見ていると、さらに朝倉は手の中からを打って手変わり。
そして直後に愛内が放ったに対して「ロン」。
過去2日間にて何度も強烈なアガリを他3人に見せ付けてきた朝倉、この手が本決勝における3回目の倍満となる。
 ロン ポン ポン ドラ

ドラのを引き入れての最高形、16000は17500となる。

さらに次局、朝倉はチートイツ・ドラ2をツモアガリ
 ツモ ドラ

この2000-4000で、夏川をもあっさりと捲ってトップ目に立つ。      

オーラスに入っての点棒状況は以下の通り。
愛内▲17300
朝倉50500
眞崎24500
夏川41300

この局面で先手を取ったのは親番の愛内。8巡目にリーチ。
 ドラ

が河にあるため、他家から出てくる可能性はある。
とりあえずは足止め、あわよくば高得点をといった形。

そして皆がオリ気味に打っていった終盤、夏川が最後のツモで現物切れとなる。
 ツモ ドラ

長考の結果を切る事になった。
愛内この終盤にてようやくのアガリ・・・とせずに、そのままツモ山に手を伸ばした。
結果は愛内の一人テンパイ。

つまりここで夏川からロンとした場合、朝倉のトップはほぼ確定、これは愛内にとっても一番いただけない結果なのである。
そして見逃せば、次局は1本場のため夏川はマンガン出アガリでもOK。
当然と言えば当然の行為なのだが、愛内があまりに淀みなくこれを行ったため、筆者は一瞬気付かなかった。
ましてや競技生活2年目の若干20歳というのだから舌を巻く。

しかしこの抵抗も実らず、結局2本場にて朝倉がアガってトップ。
他3人をさらに突き放す最高のスタートダッシュとなった。

朝倉+69.0 夏川+17.6 眞崎▲18.6 愛内▲68.0

11回戦終了時トータル
朝倉+178.0
眞崎▲19.7
愛内▲60.0
夏川▲99.3
供託1.0


12回戦(愛内→朝倉→眞崎→夏川)

対局間の休憩中、場の空気が今までと明らかに違う事に気付いた。
今朝までは少々和やかな空気さえ流れていた会場内、今は一転して重い。
タイトル戦決勝独特の雰囲気、先ほどの愛内の見逃しで「もう場は煮詰まっている」ということを選手達や観客、全員が実感してきたのである。
ポイント的にはいきなり大きなアドバンテージを得た朝倉。
しかし同時に愛内が見せた執念は、精神的プレッシャーとなって彼女にのしかかっていることだろう。

東1局。0本場、1本場と流局により愛内がテンパイ連荘。

そして2本場、朝倉が素直なピンフ系の手を9巡目にリーチ、終盤にツモる。
 ツモ ドラ

1300-2600は1500-2800でさっそく一歩抜け出す。

迎えた東2局、親番の朝倉にさらに好配牌。
 ドラ

それが7巡目にこの形でリーチ。
ドラ

本当にこの半荘で決まってしまうのではないかと思うような勢いである。
眞崎と愛内は完全に撤退。朝倉にツモられるのはまずい、しかし自身が放銃するのはもっとまずい。
まだこの半荘の先は長いだけに、耐える。

そんな中、仕掛けを入れて捌きに掛かった夏川、11巡目に以下の形となる。
  チー ドラ

無筋のドラ表示牌を切ればテンパイ。
現在トータルラスの彼女は、4連続トップを取らなければもう優勝は厳しい。
長考の末、勝負の打。しかしそれが朝倉への放銃となる。
 ロン ドラ 裏

この12000によりさらに朝倉を届かぬ位置に押し上げ、彼女自身も優勝争いからほぼ脱落となる。

傍目には少々無理な勝負ではあるが、この放銃自体は、今のポイント状況ではそこまで責められることではない。
しかし敢えて言えば、「勝負に行く」という決心が遅すぎた。

勝負どころからの逃げは、結局最後に「無理な勝負」をしなければならない状況を作ることが多い。
ここでを勝負するほど追い込まれる前に、今までの半荘11回の中において、積極的に戦っていれば勝てていた局面も実際にあった。
そうすれば全く別の状況も出来ていただろう。

さて、朝倉はこのアガリでダントツとなる。
しかし彼女のトップは何が何でも阻止したい残り二人の猛攻がここから始まる。

まず次局の東2局1本場。愛内がツモ。
 ツモ(一発) ドラ 裏

2000-4000は、2100-4100。反撃の狼煙をあげる。

同じく愛内、南2局では迷いの無い好ツモにより5巡目に3面チャンリーチ。
そして朝倉からのデバサイ。
 ロン ドラ 裏

5200直撃により、トップを捲る。

次局には、親番の眞崎も朝倉から直撃。
 ロン ドラ 裏

2900と点数は高くないが、これも朝倉からの直撃。

これにより朝倉の3着も見えてきた。

そしてオーラス、夏川はひたすら連荘をしての奇跡のトップ狙いをする局面。
眞崎と愛内としても、夏川が朝倉からの直撃を取ってくれるとかなりありがたい。
しかし全員ノーテンにより終了。朝倉は2着のまま。
夏川は、優勝争いから完全に脱落となる。

トップは愛内、彼女もここでトップを朝倉に譲るともはや苦しかった中でこれは値千金。

ちなみにこの局、もはや連荘するしかないはずの夏川だったが、16巡目に入ったテンパイをなぜか取らず、最後の親番を失っている。
 ツモ

も直前に眞崎が切っているし、特に切れない牌ではない。
途中では落ち着いて打てていた局もあったが、結局夏川は緊張を拭い切れなかった感がある。

3年目にして決勝進出を果たした夏川、そのこと自体は大いに評価したい。
まだ始まったばかりの競技プロの道、今回の経験を糧として更なる成長を遂げてくれるのを期待したい。

 

愛内+60.9 朝倉+8.3 眞崎▲13.7 夏川▲55.5

12回戦終了時トータル
朝倉+186.3
愛内▲0.9
眞崎▲33.4
夏川▲154.8
供託1.0


13回戦(夏川→愛内→眞崎→朝倉)

愛内、もはや朝倉の着順を下回る事は許されない状況。

そんな中での東3局、10巡目にテンパイ。
 ドラ

タンヤオのみ、とりあえずの手変わり待ちとする。
そして12巡目に引いてくる
  ツモ ドラ

を切れば3面待ちだが、を切っておりフリテン。
だがもはやダマなどと悠長なこともしていられない。リーチを敢行。
17巡目にやっと、を引きよせる。
 ツモ ドラ 裏

1000-2000だが、逆転優勝への気迫が表情に映った。
もうギリギリである状況が、逆に彼女の迷いを断ち切りプラスの方向へと持って行った。

一方の朝倉はここに来て少々の硬さが見て取れる。
南2局1本場、6巡目。
 ツモ ドラ

ここから打とする。
この形ならばを素直に切ってもよいのではないだろうか。
結局10巡目にを引いてこのテンパイ。
 ドラ

しかしアガリには結びつかず、親の愛内が加点。
この手筋が彼女なりのチョイスか?単なるミスか?
やはり2連覇が現実的になってきたこの局面、多少なりともの不安や緊張は隠せないのか?

思えば前の12回戦も、東2局時点では大量のリードをしていた朝倉。
そのままトップで終えて優勝をほぼ確定させてしまうのでは、とギャラリーの多くは思ったことだろう。
ところが先述のように2連続の放銃で2着キープが精一杯。
愛内に5200を打った局面などは、点棒やポイントを考えれば多少無理にでもオリるべきであったかもしれない。
逃げる側もまた、受けるプレッシャーは計り知れないものであろう。

この後に眞崎のアガリも出て、南3局において朝倉は接戦ながらラス目に立たされる。
親番は眞崎、彼女も愛内と同様にトップがなんとしても欲しい。
連荘に向けてドラを早々と手放して、最速のテンパイを狙いに行く。

8巡目に愛内から出たを鳴いてイーシャンテンに。
 ポン ドラ

一方の朝倉は10巡目にこの形。
 ドラ

好形ではあるが、実に3巡目で既にイーシャンテンになっており、そこからほとんど動いていない。
一刻も早くラスを脱出したいこの局面だが、あと1枚が来なくて苦しんでいた。

そして12巡目、眞崎がテンパイ。
 ポン ドラ

こうなると朝倉の手に余るが確実に放銃となる。
朝倉の形からこれを回避するにはを暗刻にする以外に道はないが、山にあるのはが1枚だけ。
眞崎の手は点数的には安いが、ここで朝倉が打ち込めば彼女のラスがさらに現実味を帯びてくる。

そんな中、愛内がリーチ。
 ドラ

これに対して眞崎は手変わりせずにツモ切り。
そして同巡の朝倉がツモ牌を確認した後に発声。
朝倉「リーチ」
この瞬間に早とちりの筆者は自分のメモ帳に「朝倉が眞崎に1500」と書いていた。
しかし下家の夏川が平然とツモ山に手を伸ばす。
と言う事は?朝倉のツモ牌はなんと。もちろん宣言牌はである。
 ドラ

強運だ。しかし運も味方にしなければタイトル戦を勝ち抜くことなど出来るはずがないのも事実。
眞崎がこれにで放銃。
 ロン ドラ 裏

点数は1300だが、これにより夏川を捲ってのラス脱出である。
このアガリで彼女も大分気が楽になったのか、表情が少し緩んで見えた。

結局この半荘は、小さいながらも愛内のフリテンツモ1000-2000が決定打で終了。
ここに来て、朝倉を射程範囲にとらえる大きな2連勝だ。
眞崎も積極的な打ち回しで2着。虎視眈々と朝倉の背中を追い続ける。
まだ勝負は終わらない。

愛内+50.1 眞崎+5.1 朝倉▲17.2 夏川▲38.0

13回戦終了時トータル
朝倉+169.1
愛内+51.0
眞崎▲28.3
夏川▲192.8
供託1.0


14回戦(愛内→夏川→朝倉→眞崎)

さて残るはあと2回、引き続き朝倉トップならその時点で決着という状況と言えよう。
まず東2局、眞崎が好配牌とツモにより6巡目にテンパイ。
 ドラ

本来なら迷わずリーチと行くだろう。
だが朝倉の河はかなり変則的でありが切られている。よって直撃の可能性を残してのダマ。
結局これに夏川が放銃。
 ロン ドラ

眞崎、できれば朝倉からの直撃を取りたかっただろうが、高めなら渋々と言ったところか。8000で一歩リード。

そして次の勝負どころ、おそらくこの3日目におけるターニングポイントの一つとなったであろう、南1局1本場、愛内の親番。

この半荘もここまで我慢が多かった朝倉、ようやく勝負になりそうな配牌。
 ドラ

1巡目で自風の、6巡目でドラがそれぞれアンコとなる。これで迷う事はない。
そして8巡目にをポンして8000のテンパイ。
 ポン ドラ

一方で親番の愛内、をポンして10巡目に追いつく。
 ポン ポン ドラ

朝倉のはかなり強そうな気配。
一方で愛内のカンは、枚数的にも劣る上に、河もマンズ染めが濃厚と来ている。
絶対的に朝倉が有利と思われたこの勝負。だがここでイーシャンテンの眞崎が引いたのが愛内の待ちであるだった。
 ツモ ドラ

形勢逆転。愛内の最終手出しがと、まだ染まり切っているようには見えない。
前に出るしかない眞崎のポイント状況、これくらいは行く可能性が充分にある。

実際、眞崎はこのを切ろうと手をかけた後に長考に入る。朝倉のチャンス手もこれで水泡に帰すか?
しかし眞崎の決断は、打。打ち込み回避となった。
だけの勝負ならば行ったかもしれない。
しかし、現在トップ目でさらにまで勝負するのは得策でないと踏んだのか、回し打ちに入る。
確かにここでを止められる眞崎の勝負勘は大したものである。
しかし、この眞崎の強さがここでは仇となってしまう。

ほどなくして朝倉のツモアガリ。
 ツモ ポン ドラ

会心の2000-4000は2100-4100。
点棒を払う愛内の表情が少々苦しく見えたような気がした。ここでの朝倉のアガリはあまりにも痛く、そして重い。

しかしこのまま終われない愛内、南3局朝倉の親番にてチャンス到来。
配牌から染め手が十分に狙える形、3巡目から積極的に仕掛け、7巡目テンパイ。
 ポン ポン ドラ

ツモならば朝倉に4000の親被りをお返ししてのトップ目となる。
逆転優勝に向け、ツモる手にも気合が入ろうというものだ。
もはや他家も完全に絞りに入り、出アガリは期待できない中、12巡目に愛内の大きな声。
「ツモ!」
 ツモ ポン ポン ドラ

安目だが、ここは十分な1000-2000。これで眞崎と同点のトップとなりいよいよオーラスへ。

3人の気迫がぶつかり合ったこの半荘、ここで各人の点棒状況は以下の通り。まさに大接戦。

眞崎30400
愛内30400
夏川9800
朝倉29400

そして0本場、アガリトップの愛内がなんと3巡目テンパイ。
 ドラ

そして次巡にを引く。
 ツモ ドラ

ここで愛内が長考。普段のリーグ戦ならばおそらく切りのリーチがベストと思われる。
しかしこの局面、眞崎が親番であるため、1000-2000ツモは朝倉は眞崎と同点の2着、それ以上になると朝倉を単独2着に引き上げてしまう。
できればそれは避けたい、となるとダマ続行になるだろう。問題はどちらの受けとするか?
愛内の選択はツモ切り、シャボのままダマに。
後で聞いたところ、「眞崎さんからのはポン、でも場況次第ではポンをするつもりだった」とのこと。

しかしこの局、選択が難しかったのは愛内だけではない。
朝倉の8巡目だった。
 ツモ ドラ

ここからを切ってチートイのイーシャンテンにしつつ、メンツ手も見る構えに。
この直後に眞崎がこの形。
 ツモ ドラ

無論ドラの叩き切る。そしてダマテン。
確かにリーチ棒を出すと愛内が何をツモっても3着転落になってしまう。
しかしここでトップを取らなければ彼女自身の優勝はかなり厳しい。
リーチでの押さえつけもあるのではないだろうか。

一方の朝倉、微動だにせずにこのをスルー。筆者ならばおそらくノータイムでポンを入れそうだ。
ここはもう眞崎への警戒も考えてチートイツへ決め打ったか?
しかし直後にを引いた朝倉。
 ツモ ドラ

今度はを切って、メンツ手のリャンシャンテンへ戻す。
そして後に夏川が出したをチーして打
 チー ドラ

後に朝倉自身も「微妙だったかも」と語る一打。
が一枚出たここでのメンツ手への切替、だが眞崎にソーズは普通に危ない。
勝負に行くならば1枚目のをポン、眞崎に対応して打つのならばここはスルーではないだろうか?
筆者には、13回戦でも見せた緊張が隠せないようにも見受けられた。
眞崎のダマテン、朝倉の微妙な手順。
歴代の女王2名であっても、ここまでギリギリの局面ともなると、微妙な日和りが心の中に生まれるのも無理はない。

そして朝倉、次巡に6を引く。
 ツモ チー ドラ

ここから放たれたが、先ほどのカンより待ち変えをした眞崎のカンチャンに命中。
 ロン ドラ

これにより眞崎がとりあえずの単独トップ目になる。

さて連荘の一本場。
愛内が10巡目に両面チーから動く。
 チー ドラ

もう巡目も中盤。
自分のトップは少々厳しくなるが、朝倉を3着のまま終らせるという明確な意図の仕掛け。
それに対して朝倉、同巡にリーチ。
 ドラ

ツモもしくは裏で2着浮上。ツモでの裏付きならばトップとなり、第8期女流雀王をほぼ決定させるアガリとなる。
この1発目に愛内。
 ツモ チー ドラ

は自分が既に切っているためフリテン。
よって手牌進行だけを考えるならツモ切りだろう。
しかし宣言牌がであるため、ここは100%の安全を買って打
そして次巡にを引いてテンパイ。
 チー ドラ

直後に朝倉から放たれる、もしも一発目に少々強気のが打てていれば、ここでトップとなっていた。
ただ振り込めば朝倉のトップまで見える局面。
果たしてどちらが正解か?筆者にも判断し難いものである。

いずれにしても、結果的には愛内への放銃を回避することとなった朝倉。
そして16巡目だった。
「ツモ」

朝倉の手元に引き寄せられた。これで2着は確定となる。
問題はめくられる裏ドラ。「ここで決まってしまうのか?」という緊張の一瞬。
 ツモ ドラ 裏

のらず。700-1300は800-1400。
眞崎、辛くもトップを死守。なんとか優勝への蜘蛛の糸は切れずに最終戦となった。

眞崎+51.0 朝倉+10.4 愛内▲10.4 夏川▲51.0

14回戦終了時トータル
朝倉+179.5
愛内+40.6
眞崎+22.7
夏川▲243.8
供託1.0

15回戦(夏川→朝倉→眞崎→愛内)

愛内と眞崎の条件を確認してみよう。
自身のトップは必須として、朝倉の各着順における必要な素点差は以下の通り。
       愛内      眞崎
朝倉4着 59000点以上 76900点以上
朝倉3着 79000点以上 96900点以上
朝倉2着 99000点以上 116900点以上

いずれも可能性はあるが、そう簡単に実現できるものではない。
ただ万が一が起こるとしたらやはり・・・。

思えば決勝が始まる前に朝倉がこう語った。
「眞崎さんと戦える事が本当に嬉しい。私にとっての目標だったから」
実は朝倉が協会に入った当初、眞崎は同じ雀荘で働いている先輩だった。
当時から眞崎の実力は店内でも認められており、朝倉もそれを肌で感じ、彼女を目標として己の実力の向上を目指してきた。

「いつ眞崎さんに捲られるのかって、本当にドキドキしていた」
試合後の朝倉の感想。これは冗談でもなんでもない。
彼女にとって眞崎雪菜はそれだけの超えがたい壁であり、追いつきたい目標だったのだろう。

この最終戦東場、まさにその朝倉の不安が的中するかのように眞崎が猛攻、最後の壁として立ちはだかる。

まず東1局。
 ロン ドラ

リーチをしていた親番の夏川より6400。

次の東2局は眞崎の一人テンパイで流局。

迎えた眞崎の親番、まずはリーチドラ1の3900は4200を朝倉から直撃。
 ロン ドラ 裏

そして2本場、眞崎に好配牌が訪れる。
 ドラ

これがツモにも恵まれた。
6巡目に3枚目のを引いて以下の仕上がりでリーチ。
 ドラ

高めのツモならば6000オール以上が確定である。
さらにここから4枚目のを引いて暗カン。新ドラがとなる。
 暗カン ドラ

そう簡単に最強の称号を明け渡すわけにはいかない。
終局間際、眞崎が力強く手元に引き寄せた牌は、まさしくそのであった。

さてこの時点で7本折れて、6000オールが確定。
もしもここでが裏にいて12000オールなどと言うことになれば状況は劇的に変わる事になるが・・・。
 ツモ 暗カン ドラ 裏

しかしどころか1枚も乗らず。6000は6200オール。

この時点で眞崎が58200持ち。もしも次局に朝倉から12000を直取りできればほぼ並びとなるのだが、あと一歩の運が足りなかった。

もう一人の逆転候補である愛内も黙ってはいない。
3本場において、以下のアガリ。
 ツモ ドラ 裏

2000-4000は2300-4300。
このまま眞崎にトップを取られるわけにも行かないのだ。

さて、朝倉にようやく手が入ったのが東4局、この先制テンパイ。
 ドラ

「リーチ」
このトータルトップの状況でクビをさらけ出すことに恐怖もあるだろう。
しかしここでラス目の夏川に少しでも差はつけておきたい。
初日で書いたように、守備重視といってもこういった加点が出来ない打ち手は所詮「ただ堅いだけ」なのである。

結果は2巡後ツモの1000-2000。
 ツモ ドラ 裏

そしていよいよ勝負はクライマックスへ。
夏川の親が流局となり迎えた南2局、朝倉の親番。
ここで眞崎にチャンス手。
 ツモ ドラ

形だけを見れば、落としだが、前巡に切られた3枚目のをみるとここの両面は少々苦しそう。
眞崎もそれを察して、が切られると同時にを手牌の右に寄せてスタンバイ。
そしてノータイムでここを外しに行く。次巡テンパイ。
 ドラ

三色ならずのヤミテン。すると次巡にひょっこりとを引いてくる。
さてツモアガリではあるが、三色でのフリテンリーチもありえる。
ここで朝倉にある程度の親被りをさせておくのは大きいだろう。しかしもう11巡目。
長考の結果、ツモを宣言。
 ツモ ドラ

500-1000で朝倉の親番を終了させる。

さあ迎えた南3局、眞崎最後の親番である。
ここで東場のような手が入れば逆転もありうる。
しかし最後の最後に、また眞崎に襲いかかった不運は、朝倉と愛内の牌姿である。
なんと2巡目にて二人が以下の形。

朝倉
 ドラ

愛内
 ドラ

もはやこれまで。
8回戦に眞崎の好形を朝倉が信じられない形からかわした局はあった。
しかし今回は相手が2名、しかも朝倉は打点にこだわる必要もない。
朝倉4巡目にをチーして待ち。
愛内からあっさりとで1000点。
 ロン チー ドラ

眞崎の希望も露と消えた。
今回の決勝が最後まで緊張感のある素晴らしいものになったのは、やはり眞崎雪菜の存在が大きかっただろう。
巧みなバランスと的確なゲーム回し。
最後の最後まで朝倉にとって脅威であり続けたのは間違いなく彼女であった。
「幾つかのミスがあった」
本人が言うように失着も確かに存在している。
しかし彼女だからこそ出来た堅実な加点と失点の防止、そして不運な場面にも心折れずに立ち向かい続けたタフな精神力。
全てを含め、「眞崎はやはり強い」と多くのギャラリーに知らしめたことだろう。

 

朝倉にとってまず越えるべき山場であった南3局は好配牌に助けられた。
これが終わっても無論油断は出来ない。朝倉自身もそんなつもりはあるまい。
そして最終戦南4局、残すは愛内の親番である。
点差はとりあえず以下の通り。

愛内24200
夏川3600
朝倉15300
眞崎56900

累計ポイントを考慮すると、眞崎も朝倉からの3倍満直撃、もしくはW役満ツモでの優勝条件は残っている。
愛内は、朝倉が3着のままと仮定して、あと50100点以上の差をつける必要がある。無論トップは必須。
初日から朝倉を苦しめ続けた愛内、逆転はあるのか?

0本場、終盤の残りツモ3回の時点で愛内にメンホンのテンパイが入る。
 ドラ

一度はダマにしたものの、意を決してのリーチ。
ツモれば6000オールから。一気に条件が現実的になってくる。
そしてこれに対して、テンパイをしていた朝倉がを掴む。

 ツモ ポン チー ドラ

さすがにこれは打てず、を切ってオリ。
逃げ切るだけの最終局、たとえ愛内がダマでもおそらく打たなかっただろう。

結局愛内の1人テンパイで流局。
裏ドラチェックによりめくられた
「ツモれていれば・・・」
そんな愛内の心の声が聞こえるようだった。

しかしこの後の1本場は、テンパイ流局。
そして2本場では朝倉から3900は4500を直取りする。
 ロン 裏

まだあきらめない。あきらめてたまるか。
彼女の心の声が聞こえてくるかのようだ。

そして迎えた3本場、愛内に好配牌。
3巡目にてこの形となる。
 ドラ

タンピンの好形。これが門前で仕上がれば。
愛内、ここからをポン。タンヤオでの最速のアガリに向かう。
 ポン ドラ

そして500は800オールで連荘。
 ツモ チー ポン ドラ

これを見て筆者を始めとしたギャラリーの数名が予感していた。
第8期女流雀王戦の結末、愛内の敗北をである。

このポン、確かにアガリに対する最短経路をとっている。鳴いた方が間違いなく早い。
しかし朝倉との点差はまだ数万点ある。
さすがにこの手なら朝倉の先手が取れそうだし、スルーのためにノーテンで終わる事もあまり無さそうである。
もしこのスルーにより敗北するようならば、「今日はここまで」なのだ。
こういった勝負手がある程度の高さで何度も実らなければ、捲れるような差ではないのである。

この決定戦に、「敢闘賞」というものがあるならば愛内に贈りたい。
手牌構成や押し引きについてはまだ荒削りな部分もある。
しかし協会に入って1年半という短いキャリアに対して、それを感じさせない堂々とした戦いぶりであった。
そして決勝戦終盤近くでの優勝条件を意識した打ち方は、賞賛に値する。
この先彼女が自分の麻雀をさらに磨いていけば、いつか新女王となる日も来るのではないだろうか。
ひょっとしたらそれは、そう遠くない未来かもしれない。

 

その次局、朝倉の手牌が16巡目に倒された。
 ツモ チー ドラ

第8期女流雀王、そして眞崎以来2人目となる連覇達成者が誕生した瞬間である。

眞崎+72.7 愛内+14.2 朝倉▲26.3 夏川▲60.6

15回戦終了時トータル
朝倉+153.2
愛内+95.4
眞崎+54.8
夏川▲304.4
供託1.0

全てが終わった後、感極まって涙する彼女。
おそらく3日間の苦しい戦いを思い出していたに違いない。

さて表彰式後、打ち上げの席にて朝倉に聞いてみた。

筆者「何か自分にとって印象に残った牌譜ってある?」
朝倉「10回戦ののバッタでアガったやつ!」
筆者「・・・そんな局あったっけ?覚えてない」
朝倉「あそこでドラので即リーチしちゃったのは私らしくなかったから」

なんとも地味なチョイス(笑)。
だが強者にこういった感想を聞いたとき、大体返ってくるのはこのような答えなのだ。
たまたまアガれた、ロン牌を止めた、等という結果とは切り離し、自身の思考や過程を重んじる。
これこそが麻雀に勝つ上でもっとも重要なのである。

この返答を聞いて思った。来年も彼女はきっと素晴らしい麻雀を見せてくれるだろう、と。
一応本人の希望があったので牌譜を載せておくとしよう。

この地味な1300に、彼女は自ら猛省を課していたのである。

来期はどのような決勝になるだろうか。
眞崎、そして崎見がこのまま黙ってはいないだろう。
愛内や夏川をはじめとした他の女流選手達も、雪辱に燃えているに違いない。

そしてまた、彼女の麻雀に魅せられた多くのファンが、期待していることだろう。
前人未到の3連覇、伝説の続きを。

(文:竹中 慎)

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