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第8期女流雀王戦

 

【ポイント成績】

順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
最終日
1
朝倉 ゆかり
153.2
-22.0
131.0
44.2
2
眞崎 雪菜
95.4
-31.8
30.7
96.5
3
愛内 よしえ
54.8
92.0
-84.0
46.8
4
夏川 七七
-304.4
-39.2
-77.7
-187.5

【1日目観戦記】

2日目観戦記3日目観戦記

先日行われた協会最高峰タイトル第8期雀王決定戦、鈴木達也が第2期と第6期に続いての3回目の優勝を成し遂げた。
歴代8期中、複数回優勝をしているのは彼のみ、この成績は強豪ひしめくAリーグの中でも、彼が「最強」である事を示していると言っても過言ではない。

一方で女流における最高峰タイトル女流雀王戦、過去7期において複数回の制覇者は2名いる。
崎見百合 第3期、第6期
眞崎雪菜 第4期、第5期

 

昨年まで実績はもちろん実力的にも突出していると目されてきたこの2名、
もし「協会最強の女流は誰か?」と問われた場合、協会員にはこの両者以外に選択肢は存在しないとさえ思われていた。

そう、「昨年まで」である。

この2強の時代についに終止符を打ったのが、現女流雀王の朝倉ゆかりだ。
女流以外にも第7期新人王や第20期マスターズ準優勝と近年の協会でNo1の実績をあげている彼女。
まさに「新たなる協会最強の女流」として、今1番注目されている存在と言えるだろう。

さて今年の決勝進出4人は以下の通りである。

朝倉ゆかり
眞崎雪菜
愛内よしえ
夏川七七

昨年崎見を下した新女王に、2強のもう一角眞崎が挑むという構図、神様もなかなかに憎い演出をしてくれたものだ。
そしてその強豪2名に挑むのが、第6期生夏川と第7期生愛内、まだ協会に入り日が浅い若手2名である。

朝倉が連覇を果たし、女王の地位を確固たるものにするのか?
女流雀王史上で唯一連覇を成し遂げている眞崎の復権か?
もしくは愛内、夏川が下克上に名乗りをあげるのか?
今年の展望は以上の様なところだろう。


1回戦(夏川→愛内→眞崎→朝倉)

第8期女流雀王戦決勝、その最初のアガリ者は愛内よしえだった。
それも通常の手筋とは明らかに一線を画す、「異端」とも取れる代物である。

夏川・眞崎の二人テンパイで迎えた東1局1本場。
ある程度の配牌をもらった愛内、ヤオチュウ牌から切り出す無難な進行、そしてファンパイからの仕掛け、
以下の形で9巡目にテンパイとなった。
チー ポン ドラ

高めのならロンで3900、ツモで1300-2600である。
そして次巡に眞崎が打、とりあえずのファーストヒットで2000は2300。
・・・・と思いきや、なんとこれをスルー。
この終盤では高めのは簡単に出るような牌ではない。やりすぎではないか?
と思い見ていると、眞崎が終盤に追いつきリーチ。
 ドラ

残りツモ2回だがソーズは場にかなり安く、拾える可能性もある。
そしてこれに対して、愛内が無筋のを一発でつかみ、渋々自身がスルーしたトイツに手をかけてテンパイ崩し。
そして次に本来のアガり牌であったを引いて以下の形で張りなおす。
チー ポン ドラ

残すはツモはハイテイの1回、眞崎に安全な牌、もしくはマンズ周りを引いて、テンパイで終える事ができれば上等。
と考えていたのだが、ハイテイに眠っていたのは、なんと僥倖の
ホンイツ、役々、ハイテイ、ドラ1、驚愕の3100-6100である。

そして続く東2局親番。ここでも愛内の感性が発揮される。
4巡目に以下の手牌。
 ドラ

何切るのマジョリティはおそらくだろう。
仮にを残しても、この手でドラを使いきっての好形テンパイになるケースは少ない。
ならばテンパイ効率を重視して手広く受けるのがセオリーである。
しかし彼女はそんな常識をあざ笑うかのように、打とする。
2巡後にを引き先手好形テンパイを逃す。
しかし直後にを引いてタンヤオを追加、そして13巡目に以下の形。
 ツモ ドラ

河にはツモ切ったが二枚、が一枚となっており、出る可能性も多少はある形になっている。
これを何故か即リーとは行かずに、次巡にを引いてと入れ替えてリーチ。
 ドラ

結果はベタオリをしていた朝倉が手詰まりとなり、を放銃。裏1で12000となった。

愛内よしえ。第7期生、協会に入ってまだ1年半の新人である。
昨年、自身初の女流リーグにていきなりのAリーグ昇級。
そして今年、昇級組の選手達が揃ってAリーグの洗礼を受ける中で、唯一堂々の決勝進出を果たしている。

今考えると、この二つのアガリによるスタートダッシュこそが決定戦初日における愛内の「快走」、いや「暴走」の始まりだった。
この半荘、そしてその後も、彼女は対戦相手の心を折らんとするようなアガりを連発していくことになるのである。

 

一方、大きく出遅れた現女流雀王である朝倉ゆかり。
最悪のスタートはであるが、けして責められる放銃ではない。
東1局0本場では、テンパイ形から夏川のロン牌を止めての失点回避、
東1局1本場では、愛内の仕掛けに対しての慎重な対応、
ここまでの内容も悪くない。
まだ先は長い、ここからの逆転劇に期待、

と思った矢先の東2局1本場、朝倉がツモアガリ。
 一発ツモ ドラ 裏

13巡目テンパイのメンタンピン、次巡に一発ツモ裏1で3100-6100。
先ほどの失点をいきなりリカバーである。
特にこれと言った特別な一打があるわけでもない。
のトイツ落とし、カンツからの切りと、自分の手に素直にかつ現在の点棒状況を加味して多少の点数を意識した結果である。

この後、しばらくは流局やかわし手で局が進行していく。

大きく場が動いたのは南2局、愛内の親番。朝倉が再度華麗なアガリを披露する。
ここまで先述の2つを含めた5回のアガリで大きくリードしている愛内、この親番でも8巡目に先制の親リーチ。
 ドラ

他家を押さえつけながらのアガリ狙いである。
それに対して朝倉、リーチの一発目に以下の手。
 ツモ ドラ

ノータイム、いっさいの迷いなく無筋のを切り出す。
直後に夏川が切ったをポンし、同じくノータイムで表示牌の切り。
ポン ドラ

そして次巡のツモ牌が一切の淀みなく見事に朝倉の手元に引き寄せられた。
ツモ ポン ドラ

会心の4000-8000。

朝倉ゆかりと言えば、とにかく「守備」の印象が強い。
実際彼女は堅実な受けを主力とした打ち手であるのは疑いようのない事実である。
しかし放銃のリスクを負ってでも、攻めるべき手を攻める事の大事さについても十分に承知している。
「自称守備派」が口にする「放銃していないのに負けた」等という言い訳を彼女がする事はありえない。
麻雀というゲームに対する理解の深さ、朝倉の打ち筋を見ているとそれが随所に垣間見える。

 

これでトップ目愛内に6200点差となり、遥か遠くにあったトップが一気に現実的になった。
しかしこの後の南3局、そんな朝倉の希望を打ち砕くかのように、愛内があっさりツモ。
三暗刻、役々で2000-4000。
 ツモ ドラ

オーラスは夏川が3着浮上のアガリで終了、愛内のトップとなった。

愛内+70.2 朝倉+12.7 夏川▲31.3 眞崎▲51.6


2回戦(朝倉→眞崎→夏川→愛内)

「来年の決定戦も、楽しみだ。
 と、書くと他人事のようだが、一女流雀士として筆者にとっても全く他人事ではない。
 浴びせかけるような拍手を、私も、してもらう側に。
 ああ、それは、悪くないな――」

第7期女流雀王戦決勝最終日の観戦記、その最後の一節である。
そしてこれを書いたのが今期決定戦進出者の一人、夏川七七だ。
今回の決勝について事前に意気込みを聞いた所、
「プロとして、華やかさではなく実力をウリにして行きたい。その真価が今回問われると考えている」
と述べていた。
やはり見守るだけだった決勝に自分が座ると言う事に対して、思い入れは人一倍強いことだろう。

 

1回戦はほとんど出番のなかった彼女、2回戦でビッグチャンスが到来する。
誰にも大きな手が出ずに淡々と進んで迎えた東4局0本場。
配牌自体はが3枚ある位で平凡だった夏川、しかし驚異的なツモにより6巡目に以下の形。
 ツモ ドラ

さすがにチートイツには取らずの打、次巡にをポンして大三元のイーシャンテンとなる。
 ポン ドラ 

これに対して親番の愛内、11巡目に以下の牌姿。
 ツモ ドラ

ドラも無ければ待ちも悪い。しかし小考後に打でシャンポンリーチに踏み切る。
確かに夏川の手はの先切りが少々不気味ではあるが、傍から見るとまだポンが1つ入っているだけ。
愛内もさして気にせず親の押さえ込みに行ったのだろう。
しかし実際には、踏めばタダでは済まない地雷級。
しかし眞崎が愛内の現物が無い形から、早め目の切りを見て一発で打、3900の放銃。
振った眞崎、それ以上に夏川がガッカリ、この手があっさり終了は痛い。

ところが続く東4局1本場でまたもや夏川にオバケが入る。
まず7巡目に眞崎がテンパイ即リーチ。
 ドラ

そして次巡夏川が追っかけリーチ。
 ドラ

なんと再びの役満手、今度は四暗刻である。
しかしこれは2人テンパイで流局。2局連続の大魚を逃した夏川の心境や如何に。

この後も特に大きな手は出ずに、1回戦とは全く違う展開で淡々と局は進む。
オーラス突入時の各点数は以下の通り。
朝倉23700
眞崎23500
夏川27800
愛内25000
ラス目の眞崎ですら3900でトップ。まさに混戦である。

しかしここから抜け出したのはラス親の愛内だった。
まず0本場、夏川から2900を直撃し一応のトップ目。
1本場は早いピンフテンパイから即リーチ。誰も立ち向かえず1人テンパイ。
これにより愛内は3人と4000点以上の差、一人ノーテンでもOKとなる。
次局は注文どおりに手牌を伏せて終了。
マンガン以上のアガリは0回という、1回戦とは真逆の地味な展開、まさに手数の勝利である。

一方で夏川、上記にもあるオーラス0本場で2900放銃。
そして2本場ではノーテンをなるべく避けねばならない状況からベタオリにより朝倉・眞崎に捲くられる展開。
ラスに転落となった。

この2半荘を見ていて、夏川は全体的に手狭に受ける傾向があり、勝負すべき手をスリムに構えてしまうケースが目立つ。
またトイツ系に対する拘りもかなり強い。
決勝故の緊張か?それとも普段からの打ち方か?
いずれにしてもそれが影響しての力負けのような展開、本人はその危うさに気付いているのだろうか?
夏川の残る戦いに不安を感じずにはいられない内容であった。

愛内+48.4  朝倉+4.2 眞崎▲16.0 夏川▲37.6

2回戦終了時トータル
愛内+118.6
朝倉+16.9
眞崎▲67.6
夏川▲68.9
供託0.0


3回戦(朝倉→愛内→夏川→眞崎)

この半荘も愛内は手が落ちない。
東1局0本場 
 ロン ドラ

10巡目テンパイ。直後に朝倉からのでロン、1600。

東2局0本場
 ツモ ドラ

10巡目テンパイ、打ダマテン。2人テンパイの流局。

両方に言えるのは、リーチという選択肢もあったのでは?という点である。
先手かつ得点期待値も十分。元気良く行ってもらいたい気がしないでもない。

この直後の東2局1本場にて、朝倉が2100-4100をアガリ、トップ目に立つ。
こうなると、上記の2つのチャンス手でもうちょっと点数を叩きたかったのでは?とますます考えてしまう。

しかしその後も愛内には立て続けに手が入る。
そして南1局には以下のアガリ。
愛内(西家)
 ロン ドラ

12巡目にテンパイをした直後、眞崎から即出アガリ6400。
これでトップ目の朝倉とほぼ同点の2着目となる。

しかしこの半荘の決定打が出たのは、南3局、夏川の親番。
夏川(東家) 10巡目
 ツモ ドラ

大体の人間はを切ってリーチと言うだろう。
しかし先述の通り、夏川の麻雀はトイツに対する拘りがかなり強い。
よってこの牌姿を見た時に「彼女ならやりそうだ」という印象があった。
案の定、選んだ牌は。そしてリーチ。
この後に眞崎が追いかけるも16巡目に夏川がをツモ。
裏はのらずで2600オールである。
らしいと言えばらしい。
リーチ後には引いておらず、正解と言えば正解。
これは彼女にとってはそんなに不自然なチョイスではないのだろう。

結局このまま夏川が念願の初トップ。
オーラスのアガリで朝倉がまたまた2着となった。

夏川+56.8 朝倉+4.8 愛内▲16.8 眞崎▲44.8

3回戦終了時トータル
愛内+101.8
朝倉+21.7
夏川▲12.1
眞崎▲112.4
供託0.0


4回戦(愛内→夏川→朝倉→眞崎)

眞崎雪菜。「協会最強の女流」に彼女を推す人はやはり多い。
筆者の目から見て、彼女の最強の武器は卓越した攻防のバランスである。
彼女と比較すると崎見は攻を、朝倉は防を好む打ち方をする印象がある。
そのどちらにも決して傾斜せずにタイトロープのような的確なバランス取りを常にキープできるのが彼女の強みなのだ。
ここまでも内容的には、それを十分に見せてくれている。
しかしとにかく手が入らない、入ってもアガり切れない今日の眞崎である。

そんな彼女にようやく楽な手が入ったのが、この4回戦東1局だった。

眞崎(北家) 2巡目
 ツモ ドラ

ドラが2枚で、ホンイツも見える。
先にを引くと選択の余地が出てくるが、を早々にポンする事ができたため、迷うことなくホンイツへ。
7巡目に絶好のを引きテンパイ。
 ポン ドラ

2巡後に朝倉がを掴んで8000。

眞崎は東3局も好形の8巡目リーチ。11巡目にツモアガリ。2000-4000となった。
 ツモ ドラ 裏

ようやく吹いてきた順風。
ここで眞崎がトップを取り、試合を振り出しへ戻すのか?
しかし南場の展開は、そんなギャラリーの期待とは完全に逆の方向へ進む事となった。

迎えた南1局。
まずは眞崎が10巡目に鳴いてテンパイ。
 チー ドラ

当然ここは門前にこだわる必要性は無い。最短でゲームを回しに行く。
2巡後にはを引いて待ちとなる。

そして終盤16巡目に、眞崎はをツモって長考。
残り2巡、そろそろおりてもいいかもしれない。しかし場は夏川が一つ仕掛けをしている程度で大きな動きは無い。
結局ツモ切られたその牌に対して、夏川の手が開かれる。
 チー ドラ

痛恨の8000放銃。
夏川の手は形式テンパイも普通に考えられる状況、止めるのは弱気なようにも思える。やはり今日の彼女は不運。

これで夏川と眞崎はほぼ同点となった。
この後は2局連続でリーチ対リーチの打撃戦となったが、各自決定打は出ずにオーラス。

南4局
眞崎30700
愛内25200
夏川28600
朝倉15500

まだ眞崎がかろうじてトップ目である。
この局、まず好形だったのが北家の朝倉。
6巡目に早くもピンフドラ1のイーシャンテン
 ドラ

8巡目にはこの形。
 ツモ ドラ

でタンヤオもプラス。
マンガンツモの3着、ハネマンツモのトップが現実的に見えてくる。
それに対して南家の愛内も6巡目にて以下の形。
 ツモ ドラ

ここから打で染め手に一直線。
そして10巡目に夏川のをポン、
 ポン ドラ

さらに朝倉が打ったをポン。
 ポン ポン ドラ

直後にを引いて以下のマンガンテンパイ。アガればトップである。
 ポン ポン ドラ

これに対してイーシャンテンで足踏みをしていた朝倉がようやくテンパイになる。
 ツモ ドラ

もしも朝倉がイーシャンテンの時に、よりを先に切っておけば、それは変えることのできた結果であった。
確かに目一杯に受けるべき状況もあるにはあるが、ただ「朝倉らしくはない」そう思った一局だった。

ここで放たれるに、愛内の「ロン」という声。
放銃した朝倉はもちろん、残りの2人にとっても目を覆いたくなる結末。
「そこにだけは・・・・」
そんな心の声が聞こえてくるかのようだった。

重苦しい雰囲気が漂う会場内、愛内が本日3勝目。暴走は留まる事を知らない。

愛内+53.2 眞崎+10.7 夏川▲11.4 朝倉▲52.5

4回戦終了時トータル
愛内+155.0
夏川▲23.5
朝倉▲30.8
眞崎▲101.7
供託0.0


5回戦(愛内→夏川→朝倉→眞崎)

東1局
先ほどトップを決めた愛内にこの親番も元気に手が入る。

3巡目
 ドラ

無論即リーチ。
3巡後に夏川からでアガリ5800。

今にも他3人の心が折れる音が聞こえてきそうだ。

この後しばらくは流局の連続となる。
大物手が入っている者はいるが、アガリには持っていけない、そんな展開が続く。

そして東4局1本場
親番の眞崎が前局に500オールをツモった直後の局。
ここでまた愛内に好形、第1ツモでチャンタのイーシャンテンである。

 ツモ ドラ

。もう好きにしてくれという具合である。
これが8巡目にテンパイ。
 ドラ

無論ダマ5200を選択。
山に2枚残っており、出る可能性も十分である。
また愛内か・・・・と思って場に目をやる。
しかし4巡後に愛内が引いたドラのを親の眞崎がポン。
 ポン ドラ

ツモなら6000オールのテンパイである。少々怪しい風が場には吹き始めていた。
さて愛内の手も悪くは無い。次巡あたりに眞崎のロンパイを引いてもおそらくは止まらないだろう。
だたここから愛内がどの程度までテンパイを維持し、どの程度でオリるのかが非常に興味深い。
彼女の勝負バランスではどこまでを「押し」と判断するか?
と思い見ていると、彼女は即座に持ってきた牌を横に曲げてしまう。

「リーチ」

退路を断っての勝負宣言。
ただこれは正直な所、悪手と呼ばれるであろう要素が多い。
この手をリーチしても打点的に大して価値は上がらない。
眞崎の手に対してオリという選択をもう出来なくなってしまう。
そしてリーチと言ったとしても、眞崎がオリる可能性は限りなく低いのである。

案の定、立て続けに無筋を飛ばしてトータルトップ目の愛内に切りかかる。
眞崎は途中で引いたをアンカン、新ドラ表示はなんと、親倍が確定。
愛内からするともはや恐怖しか感じなかったであろう長い時間、
彼女が最後のツモ牌であるを切ると、眞崎の手牌が開かれた。
 暗カン ポン ドラ

デバサイの24000。自身のトップ、そして愛内を一気にラス目に追いやる値千金のアガリである。

次局は流局となり、迎えた南1局3本場、愛内の親番。
3人の意志はもはや1つ、「この親は全力で流して愛内をラスに」である。

全員手はそんなに早くなく、遅い展開だった。
そんな中まず眞崎が11巡目に仕掛ける。
 チー ドラ

そして眞崎の上家である朝倉の12巡目
 ドラ

フラットな状況なら、おそらくここは眞崎の仕掛けを警戒するだろう。
しかし今回は眞崎に鳴かれても問題はない。
よって自分の手牌に最大限我侭に、かつ眞崎のアシストになるように手を進めるのがベストなのである。

躊躇なく眞崎の河に高いソーズを払いに行く。
結局眞崎は鳴けなかったが、朝倉自身は次巡でテンパイ、即リーチで一発ツモとなった。

 一発ツモ ドラ 裏

この1000-2000で、愛内のラスがほぼ確定となった。
となればここから先、眞崎はトップ目のキープ、他2人は「あわよくばのトップ」を狙いに行くのが定石である。

夏川南2局の親番。朝倉のピンフ手によってあっさり終了、あえなくトップ争いから脱落。
一方の朝倉、南3局親番にて連荘はしたが大物手は決まらず。夏川がアガる。同じく脱落。

南4局
こうなるともはや眞崎はボーナスステージに突入となる。
既に2着の朝倉でも20000点差、ハネ満ツモや満貫直撃でも捲くれない状況である。
得点力1.5倍のこの親で彼女はいくら稼ぎに行くのか?
と考えていたのだが、なんと眞崎ノーテンにより、この親番は0本場で終了。
しかもテンパイに取ろうと思えばいくらでも取れた所を、彼女は放棄しているのである。

この局は本日の眞崎の打ち方の中で、一番違和感を覚えた局だった。
これはまだ残り10回ある事を考えたという余裕から来るものなのか?
それとも、散々だった本日の4半荘によって弱気になっているのか?

いずれにしても眞崎はトップ、愛内のラスオマケつきでひとまずは上々の結果となった。

眞崎+69.9 朝倉+8.8 夏川▲15.7 愛内▲63.0

5回戦終了時トータル
愛内+92.0
朝倉▲22.0
眞崎▲31.8
夏川▲39.2
供託0.0

1日目を終えて、愛内の独壇場を3者がなんとか阻止した、という形である。

まず愛内。
とにかく今日は凄まじいまでに手が入った。
多少のロスがある選択も、ツモや展開が上手くそれをリカバーしてくれた一日である。
ただ試合運びという点に関しては少々稚拙な面も見られた。
5回戦の痛恨の24000放銃等はまさにそれにあたる。あれは「仕方が無い放銃」とは呼べないし、猛省すべき局だ。
2日目にどれくらいの手が入るかはわからない。しかし「これで互角」くらいに考えておいた方がいいかもしれない。
朝倉と眞崎。
2人について特に言うことはない。
幾つかの好みが分かれる一手や、少しの疑問手(ミス?)もあったが、
双方が女王としての実力・考え・試合運びの上手さを見せてくれていると感じる。
2日目にこの2人のどちらかがポイントを叩き、愛内を捉えて優勝してしまうのではないか?というのが今のところの筆者の予想である。
最後に夏川。
今まで書いたように、「危うい」。
一日中見て思ったのは、彼女がマジョリティと呼ばれるような一般的な打牌を選ぶタイプではない、ということだ。
確かにそのおかげで3回戦は値千金のアガリをしてトップを取っている。
しかしその裏には極端な手牌進行ゆえに「逃しているアガリ」が確実に存在している。
今回の決勝面子は、そういったロスをしながら勝てるような甘いものではない。
危うさが最悪な方向に転がれば、二日目にして彼女の敗退決定があり得る。逆に仮に良い方向に転んでも不安は終始つきまとう。

ともあれ、初日終了時点でまだ「脱落者」は出ていない。
協会を代表する女流2名と、新鋭2名の熱い戦いは、まだ始まったばかりである。

 

 (文:竹中 慎)

2日目観戦記3日目観戦記

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