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順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
11回戦
12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
1
江崎 文郎
196.0
57.3
46.2
60.5
-15.8
6.9
69.9
-29.0
2
吉田 基成
81.6
131.7
-38.9
-49.7
58.5
-59.5
-46.9
86.4
3
山崎 逸朗
59.5
4.6
93.2
13.6
-48.7
72.1
-25.1
-50.2
4
大浜 岳
-337.1
-193.6
-100.5
-24.4
6.0
-19.5
2.1
-7.2

1日目観戦記2日目観戦記|最終日観戦記|

【雀竜位決定戦 3日目観戦記】

不特定多数の人と争い累計のポイントで昇降級を決めるリーグ戦が、タイムや飛距離で競う陸上競技のようなものとするならば、特定の相手と争いたった1人の勝者を決める決定戦は、鍛え上げた技で相手を攻撃し、最後まで立っていられたものを勝者とする格闘技のようなものだ。

江崎、山崎、吉田、わずか10.7ポイント差に上位3名がひしめく今回の雀竜位決定戦。
果して最後まで立っていられるのは誰なのか―――

11回戦南1局
 ドラ
江崎が8巡目に大物手を入れる。
1000点離れた2着目吉田が初巡にを、16900点離れたトップ目山崎が4巡目にを切っている。
両ライバルから直撃で捉えるイメージは十分、当然江崎はダマテンを選択する。


山崎のリーチは12巡目、江崎はそれを受けてなおダマテンを続行した。
確かに他家が少しでも行く気があれば、4巡目のを頼りにが溢れることもあるかもしれない。
江崎の判断はよくわかる。決して間違った選択ではないのだが・・・・


件のメンチンをツモアガリ、トップ目で迎えた南2局の親番。
江崎は9巡目に上図の三暗刻をテンパイした。その後12巡目に出た2枚目のをスルー、ダマテンを続行してを出アガリ4800点を加点する。
をポンして単騎待ちに受け変えるトイトイ三暗刻、またはが2枚枯れた直後にツモ切りリーチ。
大浜がマンズのホンイツ、役牌を仕掛けてドラのを余らせていた。
が打ちにくいとすれば、江崎は後者を選択するのではないかと予想していたのだが・・・・

ダマテンは最高ではないが悪くもない。
微差ではあるがトップ目ということあり、大浜に対して将来的にオリることも視野に入れた無難かつ及第点の選択といえるだろう。
しかしここまでの決定戦、江崎は無難な選択をしていただろうか?決定打の意識が高い江崎が?
この半荘は江崎がトップで逃げ切ったものの、最終日を迎え、少しだけ慎重になっているような印象を受ける11回戦の内容だった。

11回戦終了時
江崎+164.0
山崎+111.4
吉田+43.1

もしかして江崎は緊張しているのではないだろうか? 
しかし筆者の杞憂は12回戦の東1局であっさりと吹き飛ぶことになる。

12回戦東1局東家・大浜の先制リーチを受けて15巡目に追いついた江崎の選択。
リーチに対する安全度で選ぶなら打よりも打が、自身の打点的にも打よりも打が優秀な局面。
及第点の選択、無難な選択をするのなら打のダマテン。今日の江崎ならそうするか―――と予想していた。
しかし江崎は長考の末、そのどれでもない打リーチを選択した。

-は残り3枚、-は残り4枚。しかしこれは単純な見た目枚数差の話ではない。
みなさんも大浜の河、吉田の河、山崎の河をよくご覧になって欲しい。
吉田の3、4巡目、山崎の5巡目、大浜の5巡目に打たれたに注目すると、山に残る可能性が高そうな牌はのほうと予測できないだろうか?実際この巡目にしては3枚全て山に残っていたのだ。


続く東2局にも江崎は魅せた。山崎の先制リーチ、親である吉田の仕掛けはテンパイ確実といった状況。
江崎はライバル2人に挟まれながらこの牌姿。やっと追いついたという感じではない。どちらかといえば僥倖のテンパイだった。
残りツモ番3回、どちらの牌も危険度はそれほど高くない。
無難な選択をするならどちらかの牌を縦に置き、危険な牌を引かされたら単騎を振り替えテンパイ維持で御の字とするところ。
しかし江崎の選択は単騎のリーチだった。リーチの山崎、そして親の吉田もほぼ止まらない。
ならば後3回?いやいや、後9回もチャンスはあるのだ。
場況的に良さげに見える生牌は、終盤まで全く顔を見せない以上相手にトイツ、いやこの捨て牌相なら暗刻で持たれていたとしてもおかしくない。
純カラか―――或いは山にごっそりか―――答えはすぐに山崎が出した。

トータル2着目をラスに叩き落とす強烈な満貫のカウンター。
ここに来て相手を本気で倒しにいった江崎の最強手が牙を剥く。
なるほど、江崎の判断基準は―――という話はまた後ほどじっくりと。


吉田は予見していた。
これまでの戦いを振り返って、この半荘のリーチ攻勢を目の当たりにして、決定戦連覇に向けて最大の障害は間違いなく江崎だと。
その江崎が6巡目に小気味よくドラのを切り出した。それを受けて吉田はこのままリーチを選択。
江崎のドラ切りがなければ宣言牌のは一旦縦に置いたかもしれない。この程度で江崎を止められるかどうかはわからない。
でもこのまま江崎に自由に打たせるわけにもいかない。結果は吉田の一発ツモ。11回戦にラスを引かされた吉田がここで息を吹き返す。

12回戦終了時
江崎+146.2
吉田+101.6
山崎+62.7

決着まで残り3半荘―――


山崎は雀荘メンバーの10年選手だ。
メンバー業はとにかく拘束時間が長く、店内の状況によっては卓からずっと抜けられないことも珍しくはない。
長時間勤務を乗り切るコツは、あまり気を入れすぎず淡々と麻雀をこなすこと。そのためどうしても打牌選択が単調、淡白になりやすい。

山崎は11回戦2着目で迎えたオーラスの出来事を猛烈に悔いていた。
3段目に差し掛かり完全にベタオリだったはずなのに、うっかり今通ったばかりの牌を合わせ、トップ目である下家の江崎にテンパイとなる牌を下ろしてしまったのだ。江崎は早々に仕掛けをいれてその後ずっとツモ切りだった。既にテンパイしているように見えても全くおかしくないのだが、普段の麻雀のクセともいうべきか、張り詰めた気がフッと緩んでしまったのだろう。

13回戦、奇しくも江崎の上家となった山崎は東場に大きくリードを広げると、江崎の親番でこのオーラスにも執拗に江崎に対して牌を絞り続けた。
「絶対に、2度と緩くは打たない―――」
奥歯がギリギリと鳴る音が画面越しに聞こえてくるようだった。
結局は2着を獲られてしまったのだが、道中決して江崎に楽をさせることはなかった。その意気込み、その執念や良しだ。
この決定戦、山崎にもまだまだチャンスはありそうだ。

13回戦終了時
江崎+155.1
山崎+134.8
吉田+42.1

決着まで残り2半荘―――

この観戦記を読んでくださっている方の中には放送対局をご覧になる方も多いかと思う。
今後注目して見ていただきたいのは対局者の「指先」だ。
対局者の迷いや不安は「指先」に現れる。しきりに牌を親指でなぞるもの、一旦選びかけた手を引っ込めるもの。
別に迷うのが悪いというわけではない。ただ場況や捨て牌、手牌の考察に集中しているものの「指先」は決して牌の方向に向かったりはしない。

江崎は要所要所自分の手番で熟考した。しかし彼の「指先」は卓の上でビタッと止まっている。
「考察する → 結論を出す → 選択する」といったプロセスをしっかりと踏んでいる何よりの証拠である。


当面最大のライバルである山崎のリーチを受けて一発目の選択。
山崎の河


シャンポン待ちにせよカンチャン待ちにせよ、見えている残り枚数は全く同じ4枚。
ただの危険度は雲泥の差、圧倒的にのほうが危険である。
現に山崎の入り目はで待ちは--の4面張だった。が当たりになる未来があっても全くおかしくなかった。

この決定戦の命運を分ける江崎の20秒は、歴戦の強者から学んだ技術を模倣し、選択に至るまでの思考のプロセスに共感し、自身の経験から蓄積された知識を再現する時間。
江崎の決断は打リーチだった。ドラの手応えは明らかに悪い、はそれに比べたら若干マシといった程度。
しかしここは2軒リーチだ。場をよく見ると江崎の河も山崎の河も、この巡目にしては危険ゾーンを特定するヒントが少ない部類の捨て牌相だった。ということならば、山崎、江崎がリーチ後にをツモ切った時、全く別の勝機が生まれる可能性がある。
それはのシャンポン待ちでは到底考えにくい脇2人からのオリ打ちだ。
そう、江崎の判断基準は捲り合いになってからの勝率に重きを置いたものだったのだ。
そう考えると11回戦のメンチンも、三暗刻もダマテンに受けたのも合点がいく。このを山崎から捉えると―――
1本場、3900は4200。
2本場、4000オールは4200オール。
3本場、4000オールは4300オール。
と一気に畳み掛け、リードを瞬く間に6万点へと広げたのであった。

14回戦終了時
江崎+255.0
山崎+109.7

平素ならば14回戦で物語は終了だ。
しかし決定戦の醍醐味はなんといっても直接対決。当たり前だが山崎がトップなら、江崎に残された席は2〜4着しかない。
トップラスで35300点、トップ3着で53500点差―――それが山崎に残された逆転の条件。


山崎の作戦は並びを作った上での親番勝負。
東場の親番で吉田の先制リーチを受けたピンフテンパイもダマテンに構えた。
誰しもが喜んで曲げるタンピンドラ1の3面張もダマテンに構え吉田からは見逃した。
115ポイントの差はとてつもなく大きい、普段なら到底逆転できるような点差ではない。
しかしそこに対戦者の強烈な意志が加われば―――


形くらいはできたとしても不思議ではない。
南1局、山崎今決定戦最後の親番、並びは既に出来ている。ここで6000オールが飛び出せば、あの大差もたった一撃で逆転することが可能だ。
山崎は最初からここに標準を合わせていた。祈るように配牌を取る。打点は見込めないが牌姿は整っている。
ここが本当に最後の踏ん張りどころ、全身全霊の力を込めて挑む山崎。江崎も同様に最後の試練と覚悟を決める。しかしこの決着は―――


想定を遥かに上回る吉田のアガリで幕を閉じた。
山崎はこの親被りで直ぐに敗北を悟ったが、江崎はあまりのインパクトに一瞬だけ我を失ったという。
しかし正気に戻るまでの時間はさほどかからなかった。
南3局吉田の最後の粘りも3本場まで。江崎が自力で親を流し、第15期雀竜決定戦は終戦した。

江崎は勝利者インタビューで何度も何度も仲間への感謝の思いを口にした。
勝利をほぼ手中に収めた後もプレッシャーで胃がキリキリと締め付けられる思いだったという。
真剣に取り組んできた時間が長ければ長いほど、勝ちたいと願う想いは比例して強くなる。
期待に応えたいという想いが強ければ強いほど、プレッシャーは比例して大きくなる。


プロ入りしてまもない2年前、江崎は最強戦プロ予選という大舞台を勝ち上がり、ファイナルステージで敗れ去った。
当時の麻雀はさておき、画像をご覧頂いてもわかるとおり、どことなく表情も雰囲気も緩やかな印象を受ける。
少なくとも今決定戦期間中は対局前にも、対局後にも、無論対局中にも一度たりともそのような印象は受けることはなかった。
あれから2年間、江崎が費やしてきた練習の量が、共に切磋琢磨してきた仲間達への想いが、江崎を闘う男の顔に変えさせたということは想像に難くない。
3日間この決定戦をずっと見てきたが、本当に勝者にふさわしい素晴らしい内容だったと思う。

(文・木原 浩一)

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