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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
6回戦
7回戦
8回戦
9回戦
10回戦
1
斎藤 俊
355.1
65.9
64.2
-19.4
8.0
65.5
77.2
59.4
24.0
4.6
5.7
2
武中 進
-54.9
-1.4
-21.3
61.2
-56.2
-25.7
-59.1
13.8
-73..3
54.0
53.1
3
板倉 浩一
-143.0
-21.6
0.6
-58.7
-14.8
-53.5
8.3
-9.1
64.1
-40.1
-18.2
4
渋川 難波
-158.2
-42.9
-43.5
16.9
63.0
13.7
-26.4
-64.1
-14.8
-19.5
-40.6

|1・2日目観戦記|最終日観戦記

【雀竜位決定戦 1・2日目観戦記】

【選手紹介】

渋川 難波(A級3位)
第10期前期入会
第11期雀竜位、第12期雀竜位戦3位

最早説明不要の魔神・渋川。
読みの精度、押し引き、門前及び仕掛けの手組み。
どこを取っても一流以上の技術を持つパーフェクトプレイヤー。
この雀竜位戦も4期連続の決勝進出となった。
敢えて難を挙げるとすれば、自分の力だけで十分勝てるからこそ、アナログな思考が若干少ない点か。

「平運であれば僕が勝ちます」と対局前に語っていたが、
神の名を冠する彼に、勝利の女神は何を思う。

 

 

板倉 浩一(A級2位)
第4期前期入会
第4期新人王戦2位 2012年 マーキュリーカップ優勝 ヴィーナスカップ優勝

板倉を知る者は、彼を語る時に口を揃えてこう言う。
「押しが強い」
だが、トップの価値が高いルールにおいてこれは勝利へと繋がる最も明快な道筋であり、
ましてや15戦で優勝を争うとなればある程度のラフさはむしろ大きな武器だ。
事実、彼はその力で2012年のワンデー大会を2度も制している。

もちろん、その武器は時に自分傷つけることもあるだろう。
しかし、それはもとより承知の上。
彼はどれだけ血を流そうとも、その柄を離そうとはしない。

 

武中 進(A級1位)
第2期後期入会
第6回オータムチャレンジカップ2位

武中の麻雀はわかりやすい。
読みや不確定な要素を極力排除し、目に見える枚数を最優先した手組みをする、
いわゆる「デジタル」という奴だ。
もっとも、本人の前でその言葉を口にしようものなら、
「そもそもデジタルという言葉の定義が〜」と始まってしまうのだが。

「ツイてりゃ勝てます」という乾いたコメントも納得というものだ。
言うまでもなく、彼は麻雀のゲーム性を軽視しているわけではない。
勉強会にも頻繁に足を運び、そんな彼を慕う後輩も少なからず存在する。
彼を過小評価するのは、その秘めたる熱意を知らない者だけだ。

 

斎藤 俊(現雀竜位)
第12期前期入会
第12期雀竜位、第7回 TwinCup2位

ディフェンディングで登場したのは、最も入会期の遅いこの男。
話を聞こうとするなり、
「ネットの人(渋川)は平運ならとかすぐ言い訳するんですよね」
と冗談めかして語る。

誤解を呼びそうな発言ではあるが、プロとして決められたルール内で戦う以上、
それが事実だとしても、短期戦だから運の要素が強いだとか言うのは私も好まない。

斎藤はこの4者の中では間違いなくそういった「短期戦の勝ち方」を最も知り、実践している。
彼の卓越した麻雀に対するセンス、そして自分の読みと心中できる胆力は、
トッププロ達に近しいものがあると言えるだろう。
入会2年目にして、連覇達成なるか。

 


★1回戦★ (板倉→斎藤→武中→渋川)

オープニングヒットは斎藤。
2巡目にドラのを切りイーシャンテンに受けると、そのまま8巡目に先制リーチ。
斎藤(南家) 8巡目
 ドラ

慎重に受ける板倉に対し、仕掛けてテンパイを入れる武中。
表情や手つきから見ても武中は平常心のようだが、板倉からはやや緊張が窺える。
一方、5巡目に下記の牌姿から飄々とをトイツで落としゆったり構えていた渋川。
渋川(北家) 5巡目
 ドラ
4巡目にはも切っており、打点が見込めなければ早々に撤退の構え。
しかし、斎藤のリーチに飛び込んだのはその渋川だった。

渋川(北家) 12巡目
 ツモ ドラ
もちろん、ここまで形が整えばくらいは押しても良いだろう。
ドラのは既に3枚見えており、で放銃したところでたかが知れている。

裏ドラは乗らず、2600。
斎藤対渋川、将来を嘱望される若手二人の対決で雀竜位決定戦は開局した。

東2局はその斎藤と渋川が両者ともドラドラのチャンス手。
斎藤(東家) 4巡目
 ドラ

渋川(西家) 4巡目
 ドラ

4巡目でこのリャンシャンテン。動けるぶんだけやや斎藤が有利か。

しかし、このを板倉が中々手放さない。

板倉(北家) 4巡目
 ツモ ドラ
単純なシャンテン数なら斎藤・渋川と同じリャンシャンテン。
ここで翻牌を離す打ち手を咎めるつもりはない。むしろ現代的だと言えるだろう。
だが、板倉はそれを良しとしない。打
との振り替わりで789の三色までは誰しも構えるところだが、
その先のチャンタまで見る打ち手がどれだけいるだろうか。
これは打点もそうだが、斎藤の手牌進行を遅らせる一打にもなっている。
結果斎藤のテンパイは渋川からを鳴いた10巡目。

斎藤(東家) 10巡目
 ポン ドラ

しかし同巡、静かに手を進めていた武中からリーチが入る。
武中(南家) 10巡目
 ドラ

ドラのは既に山にはないが、斎藤が一発で掴んだのは
自身が5800のテンパイかつリーチ者の現物待ちなら止まらずとも致し方なし。
裏ドラがで5200のアガリとなった。

これを斎藤の不運で片づけるのは簡単だが、その影で板倉の隠れたファインプレーがあったことを忘れてはならない。
アガった武中との見えざるコンビネーションが、まだまだ若手に劣らぬことを主張する。

東3局は斎藤と渋川の勝負となるが流局。
武中の親は流れて東4局1本場、今度は板倉に大物手が入るが、武中がその間隙を突いて2000点で捌く。
誰かに最初の決定機を与えたくないのはみな同じだ。
運が良ければ手は入るが、それを捌くのは技術と経験、そして精神力が無ければ難しい。

南1局、今度は板倉がすぐさま返しの一手を繰り出す。11巡目が印象的だ。
板倉(東家) 11巡目
 ドラ
ここから武中の切ったにポンの声をかける。
親番でこの手は是が非でもアガリに結び付けたいところだが、
この時既に斎藤と武中がイーシャンテン、渋川も好形のリャンシャンテン。
ソーズが高い場にめくりあいは不利と見るや、すぐさまブラフに切り替えていく。
この時点で見えていない翻牌は3種類。
周りからは渋々バックのテンパイを取ったように見えるだろう。
実際、残った翻牌を掴んだ子方3人は次々と対応し、オリに回った。
開かれた10枚を見て、彼らは何を思っただろうか。
ここは板倉の技巧が光る1局となった。

かと思えば、1本場は早々に仕掛けてテンパイを入れた渋川に対しストレートな手組みで棒テン即リー。
これを一発で渋川が掴む。役はリーチのみだが一発がついて3900は4200.
麻雀に調子というものがあるとすれば、正に板倉は絶好調といったところ。

2本場も早々にドラのを離してこのテンパイ。
板倉(東家) 11巡目
 ドラ
ダマテンなら簡単に拾えそうな12000だが、同巡武中がこれを捌きに向かう。
武中(西家) 11巡目
 ポン ドラ
をポンして打でテンパイなので、
本来ならば仕掛けずチャンタ三色にしたいところだが、
巡目との兼ね合いでテンパイを取る。
幸い、は板倉の現物となっているため捌くには絶好の待ちだ。

これに対してダマテン続行を選択した板倉。
抑えつけるよりは零れるを拾いたい局面、これは妥当だろう。

しかし、続けざまに斎藤と渋川もテンパイを入れる。
斎藤(南家) 12巡目
 チー ドラ
渋川(北家) 14巡目
 チー ドラ

ここで板倉はツモ切りリーチを敢行したが、結果的にはこれが最悪。
すぐにを掴んで斎藤に8000は8600をリーチ棒つきで献上してしまう。

終局時、斎藤の河はこうなっていた。


若干匂いは薄いが、それでも明らかなホンイツ。
自分の手はダマテンでも12000とリーチの価値が低い以上、だけは止める意思でダマテン続行という選択肢はなかっただろうか。

対して斎藤はこの半荘、半分近い局をホンイツに費やしていた。
競技麻雀は得てして二翻役が試合を決めるということをよく理解している。

また、ホンイツに向かう局を増やすことによって相手の警戒は薄れがちになる。
そうそう毎局ホンイツに足る手が入るわけではないからだ。
多くの場合、5割以上が足止めを兼ねたブラフだろう。
とはいえ、この局面で押し返してくるのならばそれは本物なのだが。

いずれにせよ、ここは斎藤の戦略が板倉を上回った。

これに気をよくした斎藤、続く親番で武中からあっさりと12000。
斎藤(東家) 13巡目
 ロン ポン ドラ
その後は熾烈な2着争いを後目に局を潰していく。
オーラスはドラのをポンしている武中に上家から有効牌を降ろす余裕まである始末。
しかし、それをみすみす許すわけにはいかない板倉が冷静に仕掛け、3着を確保して1回戦は終幕となった。

1回戦結果
斎藤 +65.9
武中 ▲1.4
板倉 ▲21.6
渋川 ▲42.9

 

★2回戦★(板倉→渋川→武中→斎藤)

東2局、板倉が勝負に行ったドラのが斎藤の先制リーチに捕まる。
斎藤(西家) 12巡目
 ロン ドラ 裏ドラ
ドラを切ってロンと言われた時に想像しうる最悪の形はいくつかあるが、これは間違いなくそのひとつだろう。
雀竜位決定戦は15回戦とはいえ、開幕の連勝によるアドバンテージは決して小さくない。
斎藤以外の3人は出来れば斎藤のトップを阻止したいところだ。

東3局は渋川が板倉から8000をアガり一旦トップ目に立つものの、
南1局1本場ではその渋川と斎藤のリーチ対決で斎藤があっさり一発ツモ。
斎藤(北家) 6巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

僅か6巡でこのハネ満だ。

とどめはオーラスの親番で2着目の渋川からこの7700。
斎藤(東家) 8巡目
 ロン ドラ

渋川は更に1本場で武中に交わされ、ラスまで落ちてしまう。
簡単に連勝を決めた斎藤は気分よく打てているだろうが、オーラス2着目から気付けば連続ラスの渋川、その心中は。

2回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +64.2(+130.1)
板倉 +0.6(▲21.0)
武中 ▲21.3(▲22.7)
渋川 ▲43.5(▲86.4)

 

★3回戦★(斎藤→武中→渋川→板倉)

東1局、武中がいきなり倍満のツモアガリ。
武中(南家) 18巡目
 ツモ ポン ポン ポン ドラ

ここまで先制テンパイこそよく入るものの、その後半分近くが放銃になってしまうという不運続きだった武中がようやく会心の一撃。
東3局には渋川が親番で2600オールをアガり、展開で斎藤がラス目になる。独走を阻む体制が整ってきた。

しかし、この日の斎藤は出来が違う。
迎えた東4局の斎藤、第一ツモでこの手。
斎藤(西家) 配牌
 ドラ

ここから打
リーチよりも翻牌を重ねてドラドラをより生かしたい構え。
次巡のもツモ切るが、これは打てそうで中々打てない一打ではないだろうか?
私はメンツ手を捨てきれずを外してしまいそうだが、
そうすると3巡目の、そして5巡目のを逃してしまっていたかも知れない。
斎藤(西家) 5巡目
 ドラ
あの手が僅か5巡で6400テンパイ。
リーチを打っても良さそうなところだが、一旦ダマテンに構える。
出アガリ云々というよりも、山にいる牌を探しにいくのだろう。
そして、9巡目に引いた2枚切れのに入れ替えた瞬間武中からリーチ。
武中(北家) 9巡目
 ドラ

結果論だが、当たり牌を先に処理することが出来た。

しかし、更に11巡目は板倉からリーチ。
板倉(南家) 11巡目
 ドラ

こうなるとチートイツは攻め手として心細い。
同巡斎藤はを引き、とりあえずと入れ替えてダマテン続行かと思いきやここでリーチと打って出た。
斎藤(西家) 11巡目
 ドラ

確かには自身でを3枚(7巡目ツモ切り)使っている上、リーチの武中と板倉は使っていなそうな河をしている。十分勝負になりそうだ。
実際、リーチ時点ではあと2枚生きていた。
これはチートイツの待ちとしては申し分ない枚数だろう。
ほどなく板倉がを掴み、8000。
斎藤の戦術、読みの鋭さ、センス、すべてが垣間見える1局だったと言えるだろう。

だが、何も技術とセンスが要求されるのはアガリばかりではない。
恐らく、この半荘で最も観る者を沸かせたのは次局の渋川だろう。

渋川(北家) 6巡目
 ドラ

取り挙げる局を間違えたわけではない。
アガるには何のビジョンも見えない手だが、問題はこれが武中のリーチ一発目だということだ。
武中の河はこうなっている。

まぁ、とりたてて何の情報もない河だ。
は武中の自風だが、とりあえずを切って何ら問題はないように思える。
ところが、渋川は打とした。
更に次巡を引きさすがにかと思えば今度は打

ここまで言えばおわかりかと思うが、武中の手はこうなっている。
武中(西家)
 ドラ

理屈としてはわからないことはない。
武中は非常に理に聡い打ち手であるため、を切ったあとにと連続手出しでリーチときて、
がリャンメンで当たるパターンは通常より限定される。
例えば

こういったターツ過多の状態からならのカンチャンターツを先に落とすだろう。
また、という手出し順からが当たるケースも少なくなる。
言うまでもないことだが、からを先に切るのはせいぜい678の三色など、何か理由がある時だけだ。
そして、武中はそこで三色を決め打つようなタイプではない。

しかし、今挙げた理由はただの推測でしかなく、実際に相手がどう打つかは非常に曖昧な問題だ。
その読みにすべてを委ねられるかどうかは、ひとえに日々の研鑚と自分への自信がないと不可能だろう。

結局この局は親の板倉が追撃のリーチを放つも流局。
渋川としては目論見通り最低限の出費でやり過ごすことが出来た。

斎藤は攻撃で、渋川は守備で。
それぞれの卓越した技術と読みの深さ、そして絶対的な自信を言外に語る。

その後渋川が武中をもうひとアガリの位置まで猛追するも、
最後は武中が自ら渋川の親を流し、オーラスは斎藤が3着を確保して3回戦は終了した。
武中としてはなんとか東1局の倍満でそのまま逃げ切った形、一安心といった表情。
対して渋川は是が非でもまくっておきたいチャンスだっただけに僅かに落胆の色を見せる。

3回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 ▲19.4(+110.7)
武中 +61.2(+38.5)
渋川 +16.9(▲69.5)
板倉 ▲58.7(▲79.7)

 

★4回戦★(板倉→斎藤→武中→渋川)

東1局は親の板倉が武中とのリーチ合戦に競り勝ち3900で連荘。
しかし、1本場は渋川が迷うところのない3000・6000をツモり、一歩抜け出す。

その渋川の東2局。
渋川(西家) 7巡目
 ドラ
イーシャンテンだが、ドラの出て行く形。
とりあえずを切って、リャンメンが埋まればピンフ・ドラ1で十分という構えもあるだろう。
しかし、渋川はを選択。
なるほど、こちらのほうが仕掛けも考えると柔軟か。

その後、9巡目に親の斎藤から切りリーチが入った同巡。
渋川(西家) 9巡目
 ドラ
静かに無スジのを河に置く渋川。
ハネ満のリードを持っている人間が親の一発目に無スジを切る。
明らかなテンパイ、しかも現物待ちの可能性が高い。

これを見て、北家の板倉は頭を抱えただろう。なにしろ共通安全牌がほとんどない。
結局打つのは親の現物なのだが、次巡の渋川がドラのをツモ切ったため更に苦しくなる。
渋川の立場からを打つということは、テンパイはもちろん打点もあると見てほぼ間違いないからだ。
親の現物「だけ」を大量に持っていた板倉にとっては大変な窮地だったが、ここは斎藤がを掴んで決着。
渋川にとっては2局で20000点を超える大きな加点となった。

更に東3局は武中が2000オールをツモ。
これで斎藤は早くも残り10600点となってしまう。
この半荘は厳しいかと思われたが、迎えた一本場で3人がぶつかり合う展開をあっさり制し武中から8000は8300。
斎藤(北家) 13巡目
 ロン ポン ドラ

展開に救われる斎藤とは対照的に、またしても女神にそっぽを向かれてしまった武中。

東4局では斎藤から2600を取り返すものの、
南1局、板倉・斎藤の二人テンパイを挟んだ一本場では東1局と同様、先制リーチを打つも板倉に被せられて一発放銃の5800。
更に2本場はその板倉が斎藤に8000は8300を献上と、自分が板倉に渡した点棒を斎藤に流される最悪の形。

それでも南2局、今度は板倉から3900をアガるが、迎えた南3局の親番は僅か6巡で渋川が400・700と肩を落としたくなるような展開が続く。

4回戦はここまで10局中3局を制していると言えば聞こえは多少マシだが、
実際はその2倍近い先制テンパイを入れている上に、その半分は放銃に回っている。

とどめはオーラス、必死にラスを逃れようと入れた5200のテンパイから板倉に8000の放銃とまさに踏んだり蹴ったりな半荘。
脇で点棒移動する局が多く、最後までほとんど点棒を減らさなかった渋川がそのままトップとなった。

4回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +8.0(+118.7)
渋川 +63.0(▲6.5)
武中 ▲56.2(▲17.7)
板倉 ▲14.8(▲94.5)

斎藤から板倉まで200ポイント以上の差がついたが、
まだあと10半荘以上を残しているため、順位を意識するのは尚早かと思われたのだが…

 

★5回戦★(板倉→渋川→武中→斎藤)

ここで斎藤が走る。
序盤こそ渋川が満貫をツモって一歩抜け出す展開となったが、
南1局にはこの好配牌。
斎藤(北家) 配牌
 ドラ
これを--待ちに仕上げてリーチ、ドラをツモって2000・4000。

更に南3局、武中が粘りを見せるも1本場ではこのアガリ。
斎藤(南家)
 ロン(一発) ドラ 裏ドラ
この12000で渋川をあっさり抜き去る。

どうにかして斎藤のトップだけは阻止したいが、その権利を持つのが渋川のみでは中々厳しい。
更に、斎藤がダメ押しの5800で加点していく。
斎藤(東家)
 ロン ドラ 裏ドラ
飛び込んでしまったのはどちらも板倉。
板倉の攻めが、ここまでは終始斎藤に利する形となってしまっている。
これで箱を割った板倉は完全に脱落し、渋川も満貫ツモ条件と突き放された。

オーラスの親番で加点はされたくないがトップも取られたくない。
こういった状況では、ひとつひとつの選択がそれぞれ難度の高いものになる。

1本場、渋川が初巡から動いた。
渋川(西家) 1巡目
 ドラ
ここからを暗カンし、嶺上からを引くと珍しくを強く河へ放る。
渋川が感情を打牌に表すのは珍しいが、それだけ逼迫した状況ということだ。

武中も選択の難しい手が入る。
武中(北家) 8巡目
 ドラ
点差は斎藤まで21900、渋川まで10100。
が2枚切れのためここは打としたが、この後出る1枚目のをスルー。
武中からしても、ハネ満の直撃か倍満でトップの可能性をみすみす逃して斎藤を簡単に逃がすつもりはないのだが…
「あれは鳴いたほうが良かったかな?」
珍しく自信無さげに語ったのは、10巡目に渋川から出た2枚目の
確かに平素であれば鳴かない選択肢がないだとは思うが、この場合はどうだろうか。
門前テンパイを果たしてリーチすれば、リーチ・メンホン・
斎藤をまくるためには一発ツモ裏1かあるいはツモ裏2が必要。
天文学的とは言わないが、現実的ではない確率だ。

それならば、確実な素点を拾って運が良ければ渋川を捕えることの出来るポンが妥当に思える。
しかし、タイトル戦の決勝は1回勝負。平均化された打牌では勝ち切れないのも事実だ。
この議論に答えを出すのは少々難しいかも知れない。

結果はすぐにを引き入れ、最後のに賭けてリーチを打つものの、
もはや着順争いに参加出来ない板倉に押し返され、結局またしても8000を献上する羽目になってしまった。
板倉としてももはやギリギリの戦いになってしまっているため、これは致し方無しとも考えられるが…。

5回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +77.2(+184.2)
渋川 +13.7(+7.2)
武中 ▲25.7(▲43.4)
板倉 ▲53.5(▲148.0)

 

★6回戦★(渋川→板倉→武中→斎藤)

日が変わっても斎藤の勢いは止まるどころかむしろ増すばかりだった。
この6回戦は見事なまでの斎藤オンステージ。
40000点を超えて迎えたオーラスの親番では、2巡目にこれ。
斎藤(東家) 配牌
 ドラ
…なんとメンホンテンパイ。
更にを引いて一通までつけた挙句、高目のをトータル2着目の渋川から直撃。
これには流石の渋川も目を見開く。
1本場はなんとか渋川が流すが、これで斎藤は6万点近いトップとなってしまった。

6回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +77.2(+261.4)
渋川 ▲26.4(▲19.2)
武中 ▲59.1(▲102.5)
板倉 +8.3(▲139.7)

 

★7回戦★(板倉→斎藤→武中→渋川)

条件戦というものは難しい。
私は解説の立場から「3人が協力して斎藤をラスにしないといけませんね」などと気楽な言葉を吐いているが、それは容易な話ではない。

ましてや、ここ2日間の斎藤はスキのない麻雀に展開まで味方につけている。
この7回戦も全員が斎藤の親を流そうとするが、仕掛けるべきを仕掛け、アガるべきをアガり、東場で4本場まで積まれてしまった。
ようやく渋川が親を流した頃には、斎藤の点棒は38500点。
須田が「もう斎藤のチョンボに期待しましょうか」などと茶化しているが、実際ここに風穴を開けるのは至難の技だ。
それでも、それでも3人はやるしかない。最早局面はそこまで難化しているのだ。

さて、特定の誰か(今回の場合は斎藤だが)をラスにしたい場合、方法はいくつかある。
そのうちのひとつが「見逃し」だ。

しかし、この見逃しが最もポピュラーであり、かつ最も難しい。

理由はいくつかある。
まず一つ目は、見逃しをかける価値のある手が入らなければ意味がない。
例えば、2副露3副露で満貫の見えているホンイツにもはや斎藤が飛び込むことは期待できない。

東4局の板倉がまさにそれだ。
板倉(南家) 11巡目
 ツモ ポン ポン ドラ
高くて早くて枚数の残っている待ちがあって、見逃しは初めて意味を持つ。

だが、実はその前にもっと大きな問題がある。
それが二つ目の理由だ。

南1局 斎藤(東家) 3巡目
 ドラ
34200点持ち、トップ目である親の斎藤から3巡目リーチが飛んでくる。
これはピンチではあるが、場合によっては大きなチャンス足りうる。

渋川(西家) 4巡目
 ドラ
この時点で渋川はともかく、斎藤の待ちは山にない。
「これは魔神便りじゃないですかこの局は」
伊達が解説で言っているように、ここは渋川に斎藤を蹴落としてもらうほうが良い。
渋川も8巡目にを引き、「ここは僕がやるから退いて下さい」と言わんばかりにリーチを打つ。
そして、このが山に3枚。斎藤を止めるには絶好の機会だ。
武中も必死のベタオリで、決着は渋川のアガリか流局しかない。

かと思われた。

「ロン」

板倉(西家)
 ロン ポン ドラ
終盤、渋川の切った牌にロンの声をかけたのは板倉だった。

語弊があるといけないので言っておくが、私はこの板倉のアガリを批判したいわけではない。
板倉からすれば、トップ目の斎藤が早々にリーチをかけてきている。
打点があるか、待ちが広い、自信のリーチに見えるだろう。
それに対して渋川は、直撃のチャンスであれば多少無理な手でもリーチと行くだろう。
そう考えれば、この対決は斎藤に分がある。
斎藤にアガられる前に自分が捌ければそれでいいだろう。
これは自然な考え方だ。
武中もこのアガリを見て、「まぁベストとはいかないがベターな結果だ」と感じていたのではないだろうか。

だが、渋川からしてみれば「ここは僕に任せてくれればいいじゃないですか」という思いを抱くなと言うほうが無理な話だろう。

つまり、二つ目にして最大の問題は「三者の意思疎通」だということだ。
結局のところ、前述した思考はすべて「自分視点」の話でしかない。
3人で協力して斎藤を陥れるには、3人の協力が必要不可欠だ。
しかし、麻雀のルール上それを口に出して語るわけにはいかない。
相手に自分の意思を伝えるには、自らのプレイングにメッセージ性を持たせる必要がある。

もちろんそれが勝ち方のすべてであるとは言わないが、少なくともそのうちのひとつであることは間違いないだろう。

板倉のアガリに対して、
「これは難しいんだけどね。勝ってる奴がどんどん楽になる」
「鈴木達也なら見逃すんだけどね、見逃して斎藤にツモられることもあるから仕方ないけど」
と伊達や須田が言ったのも、彼ら自身がそういった局面で意思疎通が最も重要だと思っているからこそであり、
そのためには何が必要か、ということを理解しているからだろう。

もうひとつだけ断っておくが、この「意思疎通」がスムーズに出来るプレイヤーは私を含めてほとんどいない。
そして何度も言うようだが、それが必須であるとは限らない。
ただ、競技麻雀を打つのであれば把握しておくべきもののひとつとして、
一体何が足りなかったのか、何が必要だったのか、それを見ていきたいと思う。

では、意思疎通のために必要なものとはなんだろうか?
メッセージ性を持たせたプレイングとは?

それは、これ以降起こる出来事とプレイヤーの思考を追いながら説明しよう。

7回戦、オーラスの武中。
武中(北家) 8巡目
 ドラ

点棒状況は東家から下記の通り。
渋川 3900
板倉 30900
斎藤 39400
武中 25800

武中がトップになる条件は斎藤からの満貫直撃かハネ満ツモ。
しかし、斎藤は同巡に直撃狙いを警戒しながら役無しのダマテンを入れている。
斎藤(西家) 8巡目
 ドラ
武中の選択はリーチ。ダマテンで条件を満たすのはドラの直撃のみ、無論そうするべきだ。
そのリーチ宣言牌を渋川がチー。渋川はラス親で当然連荘しなければならないため、不要牌はすべて切るしかない。
それが例え、武中の一発ツモであるはずだったドラのであっても。

武中(北家) 10巡目
 ロン ドラ 裏ドラ

武中からすればこうだ。
「これを見逃したらアガリは厳しい、素点をもらっておこう」
対して渋川はこう。
「僕からなら見逃すかも知れないと思ったのに。まぁでも、その形ならアガってもしょうがないですよね」

どちらもごく自然な発想、自然な手順に基づいている。
しかし、このアガリによって「見逃しは最後の手段でよい」という共通認識が出来てしまったように感じた。

7回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +59.4(+320.8)
渋川 ▲64.1(▲83.3)
武中 +13.8(▲88.7)
板倉 ▲9.1(▲148.8)

 

★8回戦★(斎藤→板倉→武中→渋川)

開局から斎藤と武中のリーチ合戦を斎藤が制して12000。
それを3者がそれぞれ自分のアガリで追いかけるが、全員が前がかりになっている上、先程の7回戦で無理に見逃す必要はないと(恐らく)全員が感じているため、必然放銃も多くなる。
そんな中、ひとり冷静に攻守のバランスを保つ斎藤の点棒は中々減っていかない。

最後は攻め合いに負けた武中がせめて斎藤のトップだけは阻止しようと前に出るが、そこを斎藤に咎められて8000の放銃。
僅か100点差でギリギリトップは板倉、斎藤は2着だが、その持ち点は44000。
斎藤のポイントは増え、結果全員との差は縮まっていない。

8回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +24.0(+344.8)
板倉 +64.1(▲84.7)
渋川 ▲14.8(▲98.1)
武中 ▲73.3(▲162.0)

 

★9回戦★(板倉→渋川→武中→斎藤)

東3局の板倉。
板倉(西家) 10巡目
 ドラ
若干巡目は遅いが、直撃のチャンス。ダマテンに構える。
しかし、掴んだのは親の武中。これを板倉は倒して、8000は8300。

武中は少し意外そうな表情を見せるが、恐らくこう思ったはずだ。
「あれを見逃さないのであれば、板倉はよっぽどのことがない限り見逃すつもりはないのだろう」
また、アガった板倉はこう思っていたのではないか。
「今は自分が一番斎藤に近いのだから、まずは自分の加点をして、それから周りのことは考えよう」

もちろん、これは正しい考え方なのだが、恐らくこれが3人で協力するならば最後のチャンスだっただろう。
これをアガるということは、もう恐らく見逃しをかけることはほとんどない。

そして、ここぞという勝負には必ず斎藤が勝ってしまう。
こればかりは誰にもどうすることも出来ず、斎藤は加点を続け、そして稼いだ点棒をまったく吐き出さない。
恐ろしいほどの守備力を見せる斎藤。必然、放銃での点棒移動は残りの3者の間でしか行われない。

南3局、武中がなんとか4000オールをツモり一歩抜け出すが、
オーラスは親番の斎藤があっさりと2着で終わることを選択してベタオリ、終局。

9回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +4.6(+349.4)
武中 +54.0(▲108.0)
板倉 ▲40.1(▲124.8)
渋川 ▲19.5(▲117.6)

 

★10回戦★(斎藤→渋川→板倉→武中)

この半荘も斎藤が攻守に渡るセンスを発揮していく。
ブラフ気味のホンイツをしたかと思えば役ありのダマテンで局を潰し、相手に反撃のチャンスを与えない。

これは後で聞いた話だが、
「6回戦オーラスのメンホンは板倉さんからは見逃すつもりでした」
と語るように、斎藤はこの日ずっと下位3人のポイントを平均化しようとしていたらしい。
その結果が9回戦終了時の平たい下位争いなら、恐ろしいとしか言いようがない。

斎藤に操られるようにお互いの親を潰していく3者。
象徴的なのは南3局の渋川だ。
渋川(北家)
 ドラ

点棒状況は東家から下記の通り。
斎藤 26700
渋川 21000
板倉 19200
武中 33100

「1000点アガるとオーラス満貫ツモトップなんですよ」
「あそこで板倉さんにゆっくりやらせてもあんまり自分に良い結果になったことがないんで」

僅か6巡でポンテンの1000点をアガった渋川は、終局後にそう語った。
しかし、この時放銃した斎藤の手はこうだ。

斎藤(西家) 6巡目
 ドラ
斎藤は渋川のポンを見た瞬間、ノータイムで差し込みにいった。
これはとりもなおさず、
「渋川がこの局面でポンから入ったからといって、打点があるとは限らない」
と斎藤に思わせてしまっている証左だ。
実際、斎藤はそうも語っていた。

こういう言い方は少し公正さに欠けるかもしれないが、仕掛けたのが鈴木達也ならどうだっただろう。
あるいは、鈴木たろうだったなら。

10回戦結果(カッコ内はトータル)
斎藤 +5.7(+355.1)
武中 +53.1(▲54.9)
板倉 ▲18.2(▲143.0)
渋川 ▲40.6(▲158.2)

2日間通して、斎藤の強さが際立つ結果となった。
取り挙げなかった局の中でも、魔法のように相手の当たり牌を止め、スピードをコントロールし、そして展開を支配し続けていた。
この時点で斎藤の連覇を疑う者は誰もいなかっただろう。

自分の利を追い求めるのが麻雀の本質だ。
しかし、自分の利が必ずしも相手の不利益足りえないのもまた麻雀である。
3者が優先すべきは、自分の利よりも斎藤の不利益ではなかっただろうか?

たしかにアガリ牌を見逃すという行為は、その瞬間直接的に自分の不利益となる。
だが、誰かがそれをやらない限り、他の誰かも動かないだろう。
しかし、見逃した結果より悪い事態を引き起こすことも往々にしてあるのが麻雀だ。
果たして何が正しい選択だったのか、それは神にしかわからない。

ただあるのは、400ポイントを超える圧倒的なポイント差のみ。
これから何かが起こるとすれば、それはこう語られるだろう。

奇跡。

…これをご覧の皆さんであれば、もう最終日の5半荘で何が起こったかご存知のことかと思う。
今更、こんな陳腐な幕引きはやめにしよう。

だが、それを語るべきは私ではない。
ここからはその「奇跡」を起こした者に、ある意味では最も近しいあの人に筆を譲ろう。

(文・綱川 隆晃)

 

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