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順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
11回戦
12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
1
中林 啓
211.1
48.2
230.1
-20.5
-12.6
-53.6
10.0
9.5
2
内海 元
81.5
127.7
-145.6
58.2
-48.1
58.1
-44.2
75.4
3
二見 大輔
-76.1
-97.5
-40.2
-41.2
52.9
13.4
54.2
-17.7
4
木原 浩一
-217.5
-78.4
-44.3
3.5
7.8
-18.9
-20.0
-67.2


 
【最終日観戦記】

1日目観戦記2日目観戦記

麻雀において大事なことの一つに、自分の読みと心中できるということがある。
自分の麻雀を打ちきるため、また自分の読みに委ねるだけの地力を身につけるためには、
日々の鍛練はもちろんだが、確かな結果から得られる自信も必要となる。

そう、全ては勝利という名の結果のための過程である。

 

★11回戦★(内海→二見→中林→木原)

中林が独走している現状を打開出来る最初のチャンス。
それと共に実質のコールドゲームにもなり兼ねない半荘でもある。

残り半荘5回を残し1位の中林と2位の内海で約300P差、木原と二見に関しては約400P離れてしまっている。
ここで中林がトップを取れば内海が2着につけても350P差がつき、残り4半荘でこのポイント差を捲るのは如何ともし難い。

東1局
南家の二見からリーチがかかるも、内海も追いつきリーチと出る。
これだけの説明ではなんの事もないのだが、内海のこのリーチ、18巡目である。
自分のツモ番がない、というより二見のツモ番しかないリーチである。
通常ならばリーチは勿論、打ち出す牌が通っていないのでテンパイにとるかも微妙な局面。
しかし内海は「追う者」がすべきことを知っている。

――第9期雀竜位決定戦、この時の内海も追う立場であった。

首位の伊達に210Pのビハインドがある暫定3位、その場にいた者の大半は伊達と60P差で追う二見の一騎打ちだと思っていた。
しかし結果はご存じの通り、見事な逆転劇を作り上げた。
しかも終わってみれば伊達に180P差をつけた。
つまり5半荘で390Pを捲った経験があるのだ。
第9期雀竜位決定戦最終日観戦記

「よくやった」と自分に言い聞かすのは15回戦終了時でよい。
結果は流局となったが、内海の連覇への思いが会場中に行き届いた瞬間であった。

東2局
決着は4巡目の中林のロンの声。
終焉へのレクイエムを自ら奏でるかのように。

中林(南家)
 ロン ポン ドラ

この最悪のシナリオだけ見れば木原のドラのを切りは雑に見え、二見の落としも脇が甘く見えるが、それは度の過ぎた客観だろう。

東3局
気分良く親を迎えた中林、勢いそのままにと全て手出しのリーチ。
後に内海に聞いたこのリーチのイメージは筆者とほぼ同じく、「好形か打点が絡む手牌構成」であった。
ターツ選択でを落とすということは、それ以上に有効なターツを抱えているということになる。
真っ先に思い浮かぶのはリャンメンターツかドラ絡みのターツ、後は役牌のシャンポンというケースが高いか。
そんな読みをしながら、中林の「怖いリーチ」を覗いてみる。

中林(東家)
 ドラ

・・・人の読みとは時として当てにならないものだ。
とはいえ今回のケースは下家の木原のマンズの染め手に対応したのだろう。
そしてテンパイしたからには木原の手を止めるためにもリーチとした。

しかし読みは外れることもあるというのは先ほど証明したばかり。
木原の速度を見誤った中林、すでにイーシャンテンだった木原に押し返され8000の放銃。

東4局
その親の木原にらしくない手順。

木原(東家)
 ツモ ドラ

ここからをツモ切る。
ドラのないこの手牌ではイッツーを狙っての切りが最良の一打。
それ以外では1枚差だろうが受け入れの広さを重視する打だろう。

更に同巡二見のリーチを受け、一発目に通っていない引きであっさりメンツから中抜きオリたことも気になる。
確かに手役派の二見が早い巡目にドラを切っているので、打点が確保されている可能性が高い。
しかし現状トップ目とは言え圧倒的な負債を抱えている現状で、10回しか訪れない親番を簡単に諦めるのはどうなのだろうか?
もちろん優勝以外は意味がないとはいえず、何処にモチベーションを委ねるかは本人次第なのだが・・・

次局もイーシャンテンから中林のリーチを受ける木原。
親の内海の仕掛けもあったためか、イーシャンテンからオリに回ったが2人のスジを頼り内海に放銃。
結果的には2局で1→3着となり、中林を2着に上げる形となってしまった。

南1局1本場
南家の二見がをポン、開始1分で場に緊張が走る。
実際は大三元まではいかないものの2役チャンタドラ1の満貫テンパイ。
山に4枚残るを最初に掴んだのは内海。

内海(東家)
 ツモ ドラ

どこに手をかけイーシャンテンを維持するのか悩みどころ・・・
そんな気持ちでいたのも束の間、内海の河にはその場にもっとも似つかわしくない牌が置かれていた。

追われる者は「ローリスク」が判断基準で良い。
一方追う者は「リターン」が判断基準であり、そこには「ハイリスク」と「ローリスク」の判断基準の概念は存在すべきではないと思う。
(リーチに対して愚形の3シャンテンから無スジを何枚も押すなどは別のベクトルにある)

先ほど木原の守りの姿勢に切言したばかりであるが、内海の手牌からの切りもまた別のベクトルな気がしてならない。

『こんなが当たる確率なんて低い』
『パオがない協会ルールならば、ポンまでは許容範囲』
『万が一当たりでも二見の立場が「ポン」と言わせるかも知れない』

様々な思惑があるこの選択の是非は、申し訳ないが読者の皆様に委ねたいと思う。

南4局
東家:木原 26400
南家:内海 35300
西家:二見 18800
北家:中林 19500

内海の「雀竜位連覇物語」の序章を匂わせるオーラスとなっている点棒状況。
さらに加筆すべく、内海の手牌が5巡目にして完成する。

内海(南家)
 ドラ

役がないのは不満だが、ドラが無いのは好都合。
木原から満貫以上を出アガりしてしまうと中林を2着に押し上げてしまうためだ。
このリーチに対して中林は当然のオリ、二見は中林を捲るために当然の攻め。
木原も流石に前に出るが、リーチ宣言牌が内海へ放銃となってしまい2着で終了と厳しい結果となった。

11回戦結果
内海+58.2 木原+3.5 中林▲20.5 二見▲41.2

(11回戦終了時)
中林+257.8
内海+40.3
木原▲119.2
二見▲178.9

 


★12回戦★(内海→木原→中林→二見)

東3局
1日目の観戦記で記述したように、本来木原は赤ナシの競技麻雀において手役やドラを意識する打ち手である。
まさにこの局は木原の協会ルールでの打ち方を表していた。

木原(東家)
 ツモ ドラ

ここからが2枚切られていることもありのトイツ落とし。
ドラのくっつきから三色移行と流れるような手順でリーチ。
場況、捨て牌の強さ、そして打点を兼ね備えた至極のリーチに引き込まれたのは、内海。

木原(東家)
 ロン ドラ 裏ドラ

仕掛けていた中林が掴んでも出ていたであろう
1牌の巡り合わせが内海を深い闇へ誘い、中林を確かな光明が照らす。

東2局1本場
二見に絶好の手が入る。

二見(西家)
 ドラ

「役アリ」「好形」「高打点」は中林を直撃するために願ってもない手である。
だがその中林は二見の上家、もっとも山越しがしにくい座順である。
少考するも意を決しリーチとし、ハネ満のツモアガりにかける。
しかしすぐに内海にもテンパイが入る。

内海(北家)
 ツモ ドラ

この形でテンパイしたならば、追っかけリーチが自然だろう。
だが、これが悲劇への引き金となってしまうとは当然知る由もなかった。

この放銃で内海は持ち点が5000点を割るが、悲劇はこれで終わりではなかった。
東3局、中林が親番で2600オールのツモアガりで一気にトップ目に立つ。
このまま終わればトータル2位の内海ですら中林と300P以上の差が開き、残り3半荘は消化試合に成り兼ねない。

東4局に1000・2000をツモアガり親番で3局連続の加点をするも、二見と木原がアガりをものにし、大きく水をあけられる。

南4局
東家:二見 33400
南家:内海 12200
西家:木原 28100
北家:中林 26300

二見はこの親番で更なる加点を目指しながらも、中林を3着以下にしたままが望ましい。
木原もトップが是が非でも欲しいので、アガり場所を選んでいる余裕はないだろう。
内海はハネツモでも3着と苦しいので、中林を3着に留まらせることを優先するか?
そして渦中の中林は難しいことは考えずに自身の着順を上げることだけを考えればよい。

その中林の手牌が軽く、3巡目に早くもテンパイ。

中林(北家)
 ツモ ドラ

ここはテンパイを取るもリーチは保留。
待ちが悪く打点も足りていないので、リャンメン変化かシャンポンでの狙いリーチをかけたいところ。
しかし2巡後に引きよせたその牌が、瞬間の安堵と不確かな未来を天秤に掛けさせた。

中林(北家)
 ツモ ドラ

ここでアガりを宣言すれば3着のまま終了だが、同時に内海を大きなラスを押しつけたままに出来る。
だがこの手牌を貰いながら着順そのままで半荘を終えるのは腑に落ちない。
しかもマークしている内海が着順を上げるのは容易ではない現状。

ここ一番の長考に入る・・・と思いきや、特に躊躇なく手牌は倒された。
この判断の是非は、15回戦終了時の中林を見れば答えが出るだろう。

12回戦結果
二見+52.9 木原+7.8 中林▲12.6 内海▲48.1

(12回戦終了時)
中林+245.2
内海▲7.8
木原▲111.4
二見▲126.0

 

★13回戦★(内海→二見→中林→木原)

3半荘連続で中林と内海が対面通しに座る。
麻雀の神様が2人の勝負を演出しているのだろう、とは考えすぎか。

東1局1本場
親の内海が連荘し迎えた今局、中林には珍しく気合の入ったモーションでリーチ。
手牌を見るまでもなく、答えは明白だった。

中林(北家)
 ドラ

高めが2枚切られていることを加味しても十分な本手である。
内海と木原はそれを感じとってか、素直に手仕舞いとする。
二見もおそらくそう感じていただろうが、ここで決められるワケにはいかないとばかりにかわしに行く。
終盤に二見が手出しで生牌のを切ると、それに反応した木原が冷静に差し込み勝負あり。

このアガリで気を良くした二見、細かくアガリを重ねトップ目に立つ。
その間に一旦はラス目に落ちた中林、東4局1本場に危うい仕掛けもあったが続く1本場では木原と内海のリーチを見事にかわしきる。


中林の立ち回りには脅威を感じざるを得ない。
元々守備的な打ち手であったこともあり守備力には定評があった。
そこに一手踏み込む強さを身につけ、一昨年の雀竜位戦決勝に比べ総合的な能力が飛躍的に上がっている。
抜群のゲームバランスを保ち続ける中林、この牙城を崩すことは容易ではないだろう。

南1局
二見が5巡目にリーチ。
このリーチを受けた親の内海は微差ながらラス目、尚且つトップの二見とは2万点近く離されている。
誰が見ても維持したいと感じる親番、この正念場で内海が魅せる。

二見から切られたをスルー。
行かざるを得ない局面、鳴いて絵を合わせに行く判断も否定はできないがここは安牌としての機能を優先した。
その後も安牌を切りながらもシャンテン数を維持し続け、11巡目にはケイテン狙いのチー。
イーシャンテンでワンチャンスの、テンパイでを通すと見事に親番を死守。
深謀をめぐらす内海、中林を楽にさせる事だけは出来ない。

南1局1本場
連荘のご褒美と言わんばかりに、内海のリーチ一発ツモが炸裂。

内海(東家)
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

これだけでは終わらない。
2本場には中林のリーチ後すぐに500は700オールのツモ。
3本場にはトップ目の二見が、木原の隠れドラ3の仕掛けに放銃し一躍トップに立つ。

南2局
この決勝、手の入らない木原とは対照的に良く手は入っていた二見。
だが競り負けが多く、前局のようなトップ目からの交通事故も稀ではなかった。
しかし、この局の判断には疑問を持たざるを得なかった。

二見(東家)
 ツモ ドラ

この最終形が与えられたのはなんと5巡目。
リーチで8000オールまで見えるこの手牌、これをダマテンにする。

対局終了後、二見にこの局について聞いたところ、
・下家が中林だったので直撃を狙った
・点棒というよりもメンタルを削りにいくつもりだった
タイトル獲得経験のない中林にここで大きいラスを喰らわせることで、残り2戦の戦い方に影響させる算段だ。
なるほどと思う反面、置かれている状況の把握に疑問を感じ、中林のメンタルを軽視し過ぎと思わざるを得ない。

二見はトータルで4位、この半荘も3着目に甘んじている。
当然目標は中林である事は間違いないのだが、まだ上に内海がいるのも事実。
そもそも中林がを余らせる保証がなく、安目の5800や2600オールでは自分のトップが確定しない。
結果は最も不満が残るツモで、机上の空論ならぬ卓上の空論と化した。

だが、中林のメンタルを揺らすという意味では二見のこのアガリは確かな効果を生んでいる。
中林にとって最悪なのは「内海がトップを取る」ことである。
つまり中林にとっては、二見に高い手をアガってもらいトップを確定してもらう事は望ましい結果の一つでもある。
しかし2600オールではまだまだ内海に逆転の目が残されている。

中林啓の憂鬱、そこに突きつけられた現実はあまりにも残酷な演出だった。

南3局2本場
内海が4巡目にテンパイ、そして・・・

内海(西家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

オーラス、終盤にかかった二見のリーチに差し込もうと思案するも時すでに遅し。
唯一起きてはいけない奇跡が、中林の眼前で展開された。

13回戦結果
内海+56.6 二見+12.9 木原▲17.4 中林▲52.1

(13回戦終了時)
中林+193.1
内海+48.8
二見▲113.1
木原▲128.8

 

★14回戦★(内海→中林→二見→木原)

この3日目、内海は休憩中常にトータルスコアが書かれたホワイトボードを見続けていた。
周りを寄せ付けない雰囲気を放つその集中ぶりは、公私ともに付き合いのある筆者でさえ声をかけるのに戸惑うほどであった。
対する中林も、その様子に気付いてか誰よりも早く休憩から戻りに席に着いていた。

雀竜位、その称号を維持するためのパターンを模索し続ける内海。
圧倒的なアドバンテージがありながらも慢心せず、挑戦者としての姿勢を保つ中林。
名勝負と言われる対局には、必ず好敵手の存在があることを忘れてはならない。

東2局
いよいよ内海に背を見せる形となった中林だが、その安定感が色褪せる事はない。
8巡目に二見のリーチを受けるも現物のアンコ落としから回りきりリーチ。
これが二見からの出アガりとなり頭一つ抜け出す。

東2局1本場
北家の内海がリーチ。

内海(北家)
 ドラ

東家の中林にも直後にテンパイが入る。

中林(東家)
 ツモ ドラ

多少不満が残るテンパイだがが良く見える場況、リーチとし真っ向勝負。
一つの山場となったこの勝負は、内海が一発で持ってきたソーズにて決着。

珍しく牌を力強く引き寄せた内海。
中林に満貫の親かぶりも押しつけ、いよいよピントが合ってきた。

東3局
内海にまたも勝負手が入る。
9巡目にをポン、次巡手出しでドラのとすると・・・

内海(西家)
 ポン ドラ

すぐにツモ切りの待ち替え、しかしその巡目に親の二見からリーチが入る。

二見(東家)
 ドラ

心許ない手牌ではあるが、ここで行かなければならないほど垂らされた蜘蛛の糸は細くなっているのだ。
そしてこのリーチこそ、内海が「唯一後悔した局」を生みだすきっかけとなる。

リーチの一発目、かなり危険に見えるを掴む。
内海自身、まだまだ中林の姿が見えただけで触れる位置まで達していない事は重々承知。
それがわかっていながらも目先のトップに気を取られ現物を中抜きし、結果的アガりを逃す格好となった。

また、10巡目に中林から切られたにポンの声が出なかった事も同時に反省していた。
待ちのペンは自分の目から2枚見えており、場況のピンズの高さからも期待が出来る牌ではない。
攻める事が前提ならばをポンし、単純に待ちの枚数を増やしてからアガリ抽選を受ける方が理に適っている。
これも結果論だが、をポンし打とすればをツモアガっていた。

中林にしても、ドラのを切った内海に対してリャンシャンテンからを切るという微妙な一打でもあった。
2人にとってターニングポイントとなり得た一局だっただけに、咎めることの出来なかった内海の傷は深い。

東3局1本場
中林が7巡目にテンパイ。

中林(北家)
 ツモ ドラ

しかしこれをテンパイに取らず打とする。
連続形も多く優秀な変化も多くあるためテンパイを取るのが普通かと思うが、この選択が功を奏す。
すぐにを引き打、テンパイに取っていれば早速待ち替えが出来ていたなと思っていると、次巡のツモがなんと
文句なしの最終形となりリーチ、仕掛けていた親の木原から高めでのアガりとなった。

中林(北家)
 ロン ドラ 裏ドラ

このアガリでトップの内海まで200点差と迫るも、木原の4000オールに続き二見に3900を打ちこみラスも見える点差まで引き落とされる。

南1局
内海が17巡目にリーチ、ツモは1回しか残されていないが攻めの姿勢は崩さない。

内海(東家)
 ドラ

一発目且つ最後のツモはドラの、ツモ切りの義務を果たすと二見からロンの声。

二見(西家)
 ロン ドラ

ダマにしていればドラと振り替えることが出来た。
だが内海は、また同じ局面を迎えても間違いなくリーチを打つだろう。
最善の一手が生んだ最悪の結果に対して、下を向き後悔する時間など必要ないのだ。

南2局
ラスに落とされ親番もなくした内海だが、ここぞというところで手を入れてくる。

内海(北家)
 ドラ

これが成就すればトップに肉薄、ツモならば親でもある中林をラスに落とせる。
連覇への渇望、今の内海を奮い立たせるのはその思いのみ。
しかし、内海渾身の一撃はまたも画竜点睛を欠く。

二見(南家)
 ツモ ポン ドラ

このアガりで二見が一歩抜けだす。
内海はトップが厳しくなったが、中林もまた同じ境遇を辿っているのがせめてもの救いか。

南3局
3巡目にして親の二見を除く3人の手牌がまとまる。

木原(南家)
 ドラ

内海(西家)
 ドラ

中林(北家)
 ドラ

テンパイ一番乗りは木原、だがドラを切るのを嫌いツモ→打と高打点を目指す。
その2巡後、を引いた内海がテンパイ。
巡目が早いだけに切りなどもあると思ったが、ドラ周りが場に多く見えているのもあり打でリーチ。
それを木原がポンしトイトイドラ3のテンパイ、一気に場が沸き立つ。

木原の待ちがが一枚に対し、内海の待ちはリーチの時点で5枚。
木原がオリることは考えづらいこともあり、内海のアガりも時間の問題だろう。

しかし内海の待ちは、自分や木原のツモばかりか中林のツモスジにも顔を見せない。
二見の手牌に3枚吸収されたあげく、降り気味に進行していた二見が待ちでテンパイしてしまう始末。
中林も瞬間的にテンパイを入れたが、2者の攻撃に挟まれては白旗を上げざるを得ない。

勝負手を二見に潰されることの多い今日の内海、これもまた空振ることに・・・
誰もがそう思っていた中、内海の最後のツモが卓上を揺らした。

内海(西家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

奇跡を起こすための布石が輝きを放った瞬間。
このアガリで中林はラスに落ち、いよいよその後ろ姿を捕らえる。
元々簡単に逃げ切れるとは思っていなかった中林だが、これほどまでに劇的なドラマになろうとは考えもしなかっただろう。

「第10期雀竜位決定戦」
この物語の台本に最後に書かれる名前は一体誰か・・・

南4局
東家:木原 24100
南家:内海 20900
西家:中林 17700
北家:二見 37300

中林が1巡目から仕掛ける。

中林(西家)
 ドラ

この配牌から内海が切ったをポン、ホンイツとドラのに期待の苦しい仕掛けだがやむなし。
しかしこの後が面白い。
続けても鳴いた中林に対し、内海が仕掛け返す。

内海(南家)
 ポン ドラ

どう転んでも2着の木原を捲る手にはならなそうだが、内海からしてみれば中林にスピードはともかく3900の手が入っているように見えるだろう。
ならばこの手牌から1着順を上げ20Pを取りにいくよりも、中林に捲られ上下40Pの損をするリスクは避けたい。

更にその内海の仕掛けを見た中林も、内海に木原を捲る手が入っていると考え必死の1000点を取りにいった。

中林(西家)
 チー ポン ポン ドラ

この不思議な一局に新たな風を吹き込んだのは親の木原のリーチ。

木原(東家)
 ドラ

こちらも苦しいリーチだが手変りを待てる状況でもない。
この流局御の字リーチにまさかの放銃をしたのは内海、スジを頼ったオリ打ちである。

裏ドラは乗らず、なんとか3着を維持したが・・・

南4局1本場
決勝の最終日には、勝負を決めるアガりがある。

第10期雀王決定戦・鈴木 達也のペンチャンとカンチャンのツモ。
第10期女流雀王決定戦・大崎 初音のタンピン三色に6000オール。
そして第9期雀竜位決定戦・内海 元の三倍満に48000直撃。

3者は中林にそのアガりが来ないよう全力で抗い、時には神に祈りここまできた。

3日間を通し好調に恵まれず、常に後手を引く戦いを余儀なくされた木原。

手は入るものの競り合いに勝ち切れず、当たり牌を引かされる役を任された二見。

ディフェンディングとして見事にその新しい麻雀の形を見せつけ、中林を苦しめ続けた内海。

そして・・・
すべての半荘でその力を如何なく発揮し、攻守のバランスの黄金比をその身で表現してみせた中林。
長らく続いたこの闘牌も、1人の「新星」の覚束ないツモ動作と共にその幕を閉じようとしていた。

中林(西家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

14回戦結果
二見+54.2 中林+10.0 木原▲20.0 内海▲44.2

(14回戦終了時)
中林+203.1
内海+4.6
二見▲58.9
木原▲148.8


15回戦は、3者にこのポイント差を捲る術はなく中林が逃げ切った。


1日目の観戦記にて、この雀竜位戦は「次世代を担う打ち手」を決める戦いと記した。

 

「鍛冶田 良一」、「小倉 孝」、「石野 豊」、「吉田 基成」、「福田 聡」、「伊達 直樹」

いずれも協会を代表するプレイヤーであり、タイトル戦の決勝進出は数えきれない。
内海も雀竜位を取った直後にB1リーグを昇級し、いよいよAリーガーの仲間入りを果たす。
奇しくも今期B2リーグを昇級し、次期はB1リーグで戦う中林と同じ境遇である。
内海が出来た事を自分が出来ないワケにはいかない。
中林の最初の試練はすぐそこに迫っていた。

「中林 啓」

協会のエースとして活躍が義務付けられた若者の経歴に、「第10期雀竜位」が刻まれた。

(文:橘 哲也)

1日目観戦記2日目観戦記

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