【第5節】(B1:橘哲也)

「流れ」とはなんなのだろうか?
そもそも存在するのだろうか?

麻雀を打つ者なら誰しもが口にし、耳に入る言葉。

5節終了し、現在の私のポイントはマイナス300を超え、目下降級ポジションである。
毎節同卓する相手の中に、必ずと言っていいほどその節の勝ち頭がいる。
言ってみれば、「流れが悪い」ということか。

しかし、対局が終わる度に訪れる疲労と反省の多さは、一言で片付けてよいはずがない。
そんなことはわかっているのだけれど・・・

一年という長いスパンで行われるBリーグも、半分を消化した。
一節に200P勝てることもあれば、逆に200P負けれることもわかった。

「流れが良い」ことで勝てるならば、そんなものにも頼りたくなってしまう。
もはや、そんなところまできてしまったようだ。

 

【第4節】(B1:橘哲也)

「宮崎和樹」

第3期後期、共にプロテスト合格。
同期で同い年の彼はプロ一年目にしてビッグタイトルの一つ「王位」を史上最年少で獲得。
その後もBリーグに順調に駆け上がり、このB1リーグも二年目になる。
同じスタートラインだったにも関わらず、常に背中を見続けた相手。

久しぶりに肩を並べた今、
今度は自分の背中を追わせる番がやってきた。
・・・はずだった。

大敗。

協会で打ってきた麻雀では経験がないほどの敗北。
積み上げてきたものが音を立てて崩れていく。
見えたと思った背中が今まで以上に霞んでいった。

奇しくも、Bリーグ対局初めての快晴。
雲一つない空は人の気持ちを嘲笑うかのように、強く輝いていた。

それでも逃げることは許されないのだ。
ただ卓につき、牌を握るのみ。

残り24半荘を打ち終えた時、この空を思い出すために。

 

【第3節】(B1:橘哲也)

三度目の雨。
今期のリーグ戦は、今回まですべて雨である。
三度目の鬱陶しい朝を、傘を差して歩く。

しかし対局会場が近付くにつれ、気合以外の思いは消えていった。


B1リーグは全16名で一年を通して昇降級を争う。
凌ぎを削る相手は15名。

その中に2人だけ「負けられない」選手がいる。

その1人。
「市川裕樹」
第5期前期にプロテスト合格し、以降リーグ戦をストレート昇級。
自分より後輩は同リーグには彼一人。

1・2回戦、ストレートに攻めてくる市川の麻雀に対し、普段の麻雀を打てない自分がいた。
負けられない相手に対し、着順は

市川・1−1
橘・4−4

と、まったく話にならない。
思うだけなら誰にでも出来るのだ。

陰鬱な思いを拭うために、会場の外に出る。
雨はいつの間にか止んでいた。

「マイナス100か・・・」
一人今日の対局を振り返る。
そしてあと2回戦で出来ることを考える。
答えは簡単だ。
――ただ前を向くだけ。


相変わらず衰えを見せない市川の攻撃。
だが自分にも反撃の材料が揃う。
後は、刃を交えるだけだ。

そして四回戦が終了し、結果は

市川・1121
浪江・3334
金・2243
橘・4412

市川が200Pオーバーの一人舞台。
一気に二位まで上り詰める。

今日間違いなく得るものが多かったのは市川であろう。

だが、自分にも光明は見えた。
それが、雨上がりの曇り空の隙間から見える僅かな光ほどだとしても。

次節に闘うもう1人の「負けられない」相手に生かしてみせよう。

 

【第2節】(B1:橘哲也)

5月10日、開幕戦に続き太陽に嫌われる。

傘を差さずに歩ける程度だった雨足が、外出を億劫にさせるほどの強さに達したその頃、対局が終了した。

雨の第2節は先行した選手たちが足を取られ、下位集団が意地を見せて踏みとどまる結果となった。

しかし、重馬場に苦しんだ上位陣の中で、「順当」にスコアを伸ばした者もいる。


「吉田光太」

16名のB1選手の中で、本命石野に対して唯一の対抗と目される選手であろう。

独自のスタイルと強固な意志。
最近は「右手に龍を宿す」と言う都市伝説が巷を賑わしている。

Cリーグ・B2リーグでは立ち止まることもあった吉田だが、
一年目のB1リーグでは出足のよいスタートを切ったと言えるだろう。

対抗が頭1つ抜ける形。

しかし麻雀が「順当」な結果になるのがどれほど難しいか?

一番自覚しているのは、過去何度か苦渋を舐めた本人であろうか・・・

 

【第1節】(B1:橘 哲也)

4月13日、外は生憎の曇り空。

第7期Bリーグの開幕―
この日くらいは快晴で迎えたかったと思うのはエゴなのか・・・
だが天候によって自らの麻雀に変化があるわけではない。
空の重たさとは対照に、足取り軽く会場に踏み込む。
挑戦者に気負いは必要ないのだから。

今期のB1リーグで最も注目する選手は?
と聞かれれば、大多数の者が
「石野 豊」
と答えるだろう。

前・雀竜位であり現・發王位。
先日行われた雀竜決定戦での闘牌も記憶に新しい。

実績は16名のB1リーガーの中では抜きん出ている。
第6期Aリーグにおける残酷な形での降級により、今期はB1からの挑戦となる。
「勝って当然」と言わんばかりの周囲からのプレッシャーを本人も感じているだろう。


その石野は好スタートと呼ぶに相応しい成績で、無言の圧力に答えてみせた。

Aリーグへの2つの昇級枠を争う闘い・・・

―全ては結果のための過程である―

私の信条であり、プロと呼ばれる者の真理だと思っている。

次節こそは私も「プロ」と呼ばれる由縁を見せたいものである。