
順位 |
選手名 |
トータル |
1日目 |
2日目 |
3日目 |
4日目 |
1 |
鈴木 達也 |
108.9 |
116.0 |
-26.6 |
20.6 |
-1.1 |
2 |
五十嵐 毅 |
41.8 |
101.9 |
-24.1 |
-34.6 |
-1.4 |
3 |
須田 良規 |
-60.0 |
-35.9 |
-118.2 |
46.0 |
48.1 |
4 |
阿賀 寿直 |
-93.7 |
-182.0 |
168.9 |
-34.0 |
-46.6 |
3日目 →「前半観戦記」はコチラ
10分ほどの余裕をもって会場へ向かったところ、エレベーターで五十嵐と2人きりになった。
軽く挨拶を交わしてだんまり。観戦記者ならここで談話のひとつでも取るべきなのだろうが、とても話しかけられる雰囲気ではない。
選手の気合を肌で感じ、思わず身が引き締まった。
会場入りした瞬間、もっか首位の鈴木が陽気に声をかけてきた。
「田中どうした田中。おれの応援か田中」
「観戦記者ですって。この前言ったでしょ」
「そうか応援か田中。まあ頑張るから見とけ」
相変わらずまったく話が通じない。とたんに気分が緩んだ。
ふと気づくと、卓のほうからパチンパチンといい音がする。阿賀が打牌の練習をしているのだ。
相変わらずどっしりと構え、緊張の色はまったく感じられない。雀士というよりも、むしろ武道家のような雰囲気である。
初日に絶望的なマイナスを叩くも、2日目には赤字をほぼ帳消しにしてしまったほどの豪腕を持つ阿賀。
よい雰囲気を漂わせている。漢(おとこ)の麻雀が、今日も嵐を呼びそうだ。
脇で若手と楽しそうに談笑しているのは須田だ。もっか最下位の焦りが少しはあるかと思ったが、なんのことはない自然体である。
この男と初めて会ったのは、もう6年も前になる。須田が勤めをエスケープし、毎日を麻雀に費やしていた時期である。
50円の麻雀を月に600回も打ち、それでも場代負けしない安定感の持ち主だった。
団体の催しでバッタリ顔を合わせたときは、なんとなく気まずかったのを憶えている。
いまや雀王様か。こちらはパッとせずCリーグで降級するありさまだ。ところで実は、「ダースー」の愛称を授けたのは筆者である。
誰が勝つかな。誰が勝ってもいいだろう。せっかくだから面白い麻雀が見れればいいな、などと勝手なことを思いつつみている。
観戦者は未だまばらのまま、静かに11回戦が始まった。
2節終了時のトータルポイント
鈴木 +89.4
五十嵐 +77.8
阿賀 −13.1
須田 −154.7
11回戦
開局から、阿賀の連荘が小気味よい。
5メンチャンの1300オールで軽く先制し、1本場はわずか5巡で1500は1800をアガってみせる。
            ドラ
須田はここからツモ切りの で放銃。
点数も安くどうということはないが、ゼロメンツのまま5巡で支払いとはじつに気分が悪かろう。
思えばこれが地獄の始まりであった。須田はこののち、丸一日を通じて牌の巡りに苦しめられることとなる。
続く2本場は、鈴木が喰いテンでサラリとかわす。
そのまま親番を迎えた鈴木、3巡目にしてこのテンパイである。
            ドラ
いったん に切り替えたのち、 タンキでリーチといった。
     リーチ
異様な河ができてしまっているため、ション牌のダブ東待ちは避けていきたいのが普通であろう。
選択の根拠は、のちに採譜者の大脇貴久が語ってくれた。鈴木とは10年来の親友であり、鈴木の麻雀をもっともよく知る男だ。
「こいつは昔からこれやるんだ。先に仕掛けが入ってるときだけなんだよな」
他家の仕掛けがなければ絶対にリーチはかけない。そう大脇はいう。
この局は、須田が2巡目に を鳴いている。字牌を仕掛けた者は、さらに孤立した字牌を抱えて攻守兼用としていることが多い。
受けの牌は、リーチをかければ出が早まる。そこを狙って殺しにいくというわけだ。
「おれは絶対にやらないけどね」大脇はそうも付け加えていた。
しかし今回はこの“鈴木スペシャル”も空振り。
須田は仕掛けた時点で字牌を持っていなかったうえ、宣言牌の を叩いて果敢に向かってくる。
      ポン  ポン  
鈴木の現物にしてヤマに3枚生きという最高の待ちだが、この がじつに深かった。
ション牌の 、無筋の と通すも、 を持ってきてギブアップ。 を打ってテンパイを外した。
仕方ないとは思うが、直後にやってきた がなんとも恨めしい。
そのまま流局して親の1人テンパイとなったが、須田はもちろん鈴木にとっても気持ちの悪い1局となったであろう。
きわどい所を押していったものの、テンパイにたどりつけなかった阿賀も然り。
2枚生きであった をすべて吸収し、降りきった五十嵐だけが気をよくしたか。 もしっかりと止めていた。
続く東2局1本場。
            ツモ ドラ
ここからの 切りがいかにも須田らしい。ドラの はション牌であり、須田は西家である。
結局両面を引けなかったが、終盤 とチーして を落とし、阿賀の を捕まえて1000は1300のアガリ。
東3局。
            ツモ ドラ
親の五十嵐、10巡目でこの手格好。前巡に をツモ切っており、点棒状況もまだ平たい。
筆者ならリーチをかけてしまうが、五十嵐はグッとこらえて打 のダマ。あくまで手役を志向する。
是非に関してはなんとも言えないが、この選択がのちにちょっとしたアヤを呼ぶことになる。
12巡目、阿賀の手牌がこうである。
            ツモ ドラ
形だけ見れば 切りしかないが、 が3枚切れている。さらには、下家である鈴木の捨て牌にソーズが高い。
阿賀が選んだのは 。 の薄さと、鈴木にドラ表を鳴かれるリスクをしっかりと踏まえた打牌である。
筆者なら深く考えずに を切ってしまうところだ。するとどうなるか。
            ドラ
前巡このテンパイを果たした鈴木に、みごとハネ満を放銃している。
攻撃派の阿賀がみせた意外なファインプレーだったが、じつは五十嵐がリーチならまた別の結果があった。
は五十嵐の現物、 は無筋である。その場合は阿賀も親リーを立て、打 としたに違いない。
五十嵐の我慢と阿賀の細やかさが合わせ技となり、鈴木の大物手を阻止した格好である。譜としてはなかなか面白くなったと思う。
次巡、五十嵐が を空切ってリーチ。確かにこのあたりで曲げておかないとまずいのだが、 これによって鈴木のアガリ目が再び浮上してきた。
同巡、阿賀がこの形。
            ツモ ドラ
五十嵐の河がこう。
     
     
リーチ
これはさすがに を打つかなと思ったが、阿賀はなんと を叩きつけて追っかけリーチ。
この強気が放銃回避につながってしまうのだがら、つくづく感覚派である。しかし残念ながら、このカン はカラテン。
残り2枚の を五十嵐と鈴木がめくり合う展開になったが、こうなると頭ハネの利く鈴木が圧倒的に有利である。
しかし、ここで追っかけないのが鈴木流。
「おれなら怒って曲げてるよ。誰がいちばん高いと思ってんだ」とは大脇談だが、筆者もやはり曲げぬであろう。
2軒リーチに対抗するには、ちょっと弱い待ちに思えるからだ。
実は鈴木の待ちがいちばん強いのだが、もちろん本人は知る由もない。
いつでも降りる構えの鈴木だが、道中ちょっと面白い選択が発生する。
            ツモ ドラ
がすべて見えているため、リーチ前に と を切っている阿賀には ・ どちらも通る。
五十嵐は − も − もありうるが、 の先切りから 絡みのシャボはない。
同じ理由からカン もないようなものだが、 絡みのシャボはないわけではない。
さらには鈴木から見えている ・ ・ の枚数からみて、 − の危険度はわずかながら − を上回る。
つまり は よりも、ほんの少しだけ危険度が高い。
しかし基本的にはどちらも通っていない牌であり、同様に通りそうな牌でもある。
長考ののち、鈴木は打 とする。これには思わず目をむいた。
危険度の違いはわかる。わかるのだが、それは本当に薄っぺらい紙3枚程度の差だ。 を打てば、確実に3翻下がるのだ。
結果はすぐに をツモって2000・4000。「もったいない」と思うだろうか?
あまり関係ないかもしれないが、そういえば五十嵐の入り目は − であった。
東4局。ようやく親番を迎えた須田だが、ここから本格的に苦しくなりはじめる。10巡目にこの形。
            ツモ ドラ
ドラドラのチャンス手だが、東を仕掛けている下家の阿賀がこの河。
     
   
しかも  と続けて手出しである。イーシャンテンか、あるいはテンパイとみて間違いない。
リーチには比較的タンパクに押し引きする須田だが、他家の仕掛けには非常に敏感である。
阿賀の捨て牌をみれば、この は簡単に降ろせない。では何を切る? 珍しく須田が長考に入る。
安易に を切れば、喰いタンへの道はかなり狭くなる。しかも は2枚切れており、これを抱えてチートイツはいかにも厳しい。
もまだ切りたくない。マンズはそもそも選択肢に入らない。加えてこの手は、おそらく鳴かなければアガれない。
須田の選択は 落とし。もちろんこれも阿賀に危ないのだが、ギリギリまで を切らずに手をつくる。
その後ピンズが快調に伸びて11巡目。
            ツモ ドラ
ここでフワっと を放す。安牌でも切るように、そっと投げ捨てていったのが印象的であった。
阿賀の声が「ロン」ではなく「チー」だったことに安堵した様子の須田。
しかし3巡後に を持ってきてしまい、須田は再び頭を抱える。阿賀の河がこうだ。
     
     
   
チー時の打牌が 。 が手出しである。
チーテンを前提に読むなら、阿賀の待ちはもう3パターンしかありえない。
すなわち − 、カン 、 となにかのシャボである。前のものほど危険度が高い。
ツモはあと1回。やめたいのは山々であろうが、まだチートイツをテンパイする可能性がある。
阿賀の 手出しをみて を置く。安全牌の にせず、少しでも重なりそうな牌を残していった。
続いて阿賀が をツモ切ると、やや遅めの「ポン」の声がかかった。
誰の声か? もちろん須田しかいない。だが鳴いてもテンパイしない上、須田のツモ番はなくなってしまう。
何事かと思ったが、これが“インプットの選択”を重視する須田麻雀の真骨頂。損得を超えた須田の俺節である。
          ポン  ドラ
打 。最後のツモ番を放棄し、場に ・ ・ が打たれる可能性に賭けるというビックリ鳴きだ。
結果はむべなるかなの親流れとなったが、須田の麻雀観が端的に表れた1局であった。
参考までに、阿賀のテンパイ形がこう。
      チー  ポン  
最後のツモでテンパイを果たした鈴木の手牌がこう。
            
河には不自然な と があり、やはり と を止めていることが伺える。
そして南場は鈴木の独壇場となる。打点こそ低いものの着実にアガリを積み重ね、ダントツの形をつくる。
オーラスには須田が本日初めてのリーチをかけたが、誰も降ろせずに全員テンパイ。リー棒損となる。
そして迎えた南4局1本場。
点棒状況は
須田 17800
阿賀 14700
鈴木 48700
五十嵐17800
8巡目に鈴木がリーチ。
     

リーチ
その1発目、親の須田。
            ツモ ドラ
死ぬほど行きたいイーシャンテン。しかし鈴木のリーチがノミ手だとしても、一発に裏が乗れば地獄行きである。
とりあえずの 落とし。すぐに 、 と引き、 を抜いてベタオリに向かった。
すでに降りはじめている五十嵐とは同点である。互いにノーテンで流局すれば、順位点を分けられる。
須田の想いは「阿賀よ、打て」か。阿賀はもう行くしかなく、実際にかなりキツいところを通しはじめている。
しかし結果は鈴木の1400−2700ツモアガリ。待ちは奇しくも、須田が一発目に掴まされた − であった。
目下トータルラスの現雀王、いまだ冷静なり。カスカスの展開ながらも、どうにか根性で3着をもぎ取った。
11回戦終了時のトータルポイント
鈴木 +164.6
五十嵐 +74.2
阿賀 −59.8
須田 −179.0
12回戦
須田の雰囲気がよいな、と思ってみている。
展開は苦しく、位置的にも厳しいのだが、気負いも苛立ちもあまり感じられない。
東1局、その須田の親。
            ツモ ドラ
2巡目にペン のテンパイを外したのち、4巡目にこの形。
を切ると、次ツモも 。お得意のオーバーアクションでおどけてみせたが、すぐに を引いて言うことなし。
即リーチで高目 をツモり、2600オール。悪くない滑り出しである。
1本場は五十嵐の高目三色リーチに、鈴木が安めで飛び込んで5200は5500。鈴木はこれが本日の初放銃となった。
流局をはさみ、東2局1本場。
            ドラ
親の五十嵐、4巡目でこの好形。しかしこれがまったく動かない。 − − すら引かぬまま、先に鈴木のリーチが入ってしまう。
先に追いついたのは須田であった。
            ドラ
この形で、むろんダマ。勢いよくドラをツモ切り、闘志を隠そうともしない。すぐに を引き、 − に受け変える。
ふと五十嵐の手牌を見ると、 が1枚だけ右端に置かれていた。ソーズが入ると危ないか?
            
ここに、上家の須田から4枚目の が打たれた。五十嵐の動きが止まる。どうする? 鳴けば8000の放銃だ。
しかし場にピンズは高く、須田のテンパイ気配もぶんぶんである。親とはいえ、ここは行けない。グッと堪えて降りにむかった。
すぐさま鈴木に をツモられたところで、五十嵐は「鳴けばよかった。 も通っていた」と思ったであろうか。
ファインプレーにもかかわらず気持ちの悪い結果である。本手を逃した須田もまた嫌なムード。
この後は須田がノーテン罰符とかわし手で徐々に加点し、局を潰してゆく展開が続く。
結局このままリードを守りきって須田がトップ。並びは須田・鈴木・阿賀・五十嵐の順となった。
12回戦終了時のトータルポイント
鈴木 +170.5
五十嵐 +31.0
阿賀 −79.9
須田 −121.6
13回戦
前回のラスが痛い五十嵐。須田の仕掛けがスピーディーに決まり始めると、五十嵐の重い麻雀はやはり後手を踏む。
半ツキ気味で、展開にもあまり恵まれない。ここで五十嵐が落ちれば、首位走者の鈴木はだいぶ楽になってしまうが。
東1局。
             ドラ
親の阿賀が、4巡目に気持ちよく先制リーチ。一人旅なら鉄板なのだが、北家の五十嵐も早い。
            ドラ
ホンイツまで見たい手牌であったが、親リーが入ってしまっては厳しいか。
− が現物となっており、 が出れば叩いてかわしにゆきたいところ。
と、上家の須田が を打つ。これは鳴くかな、と思ったがスルー。
次巡も須田は打 。都合5枚目の − だが、五十嵐はこれもスルーした。
すぐに を引き、追っかけリーチ。
安牌に窮した須田が一発で を打ち、裏も乗って8000。五十嵐ならではの重い手筋で、最速最高のアガリをものにした。
ちょっと雰囲気が変わりはじめたが、すぐに親の鈴木が阿賀から7700。
鈴木にトップをとらせたくないのは誰もが同じであるから、空気は一気に緊迫する。
続く東2局1本場。6巡目、須田が手なりの棒テンリーチで先行。
            ドラ
は鈴木に暗刻で、ちょっと苦しい。これに阿賀が打点を作って追いかける。
            
2枚切れのカンチャンだが、ポロっとこぼれそうな場況でもあるか?
は五十嵐が1枚使っており、1枚対1枚という危なっかしいめくり合いである。ここに鈴木が追いついてしまったからたまらない。
            
を豪快に叩きつけてのリーチ。3軒目だけに 切りで − 引きをケアする手もあったが、弱気ならそもそもヤミでいいのか。
− は、残り2枚。さらに鈴木の参戦を見て、すでにテンパイを入れていた五十嵐もツモ切リーチと出た。
            
決勝卓ではかなり珍しい4軒リーチとなったが、五十嵐だけはカラテンというのが悲しいところ。
鈴木も のカンができない形なので、こうなると誰が勝ってもおかしくない。
結果は、須田が をつかんで終了。しばらく音なしだった阿賀の勝利は、観戦子としては少し意外であった。
東3局。4人リーチに打ち勝った勢いを駆り、阿賀が8巡目に先制リーチ。
            ドラ
これを受けた親の須田が、まさしく生き地獄のテンコシャンコに陥った。
            ツモ ドラ
一発目でこの形。阿賀の河がこうである。
     
 リーチ
小考ののち、現物の 。フラットな状況なら何を切っただろうか? かなり難しいような気がする。
次巡、ツモ 。何事もなければ ・ 落としでよさそうだが、そもそもリーチがなければこの形になったかどうかもわからない。
腹を括って といった。叩きつけるでもフッと置くでもない、いい音で打ったのをよく憶えている。
次巡 ツモ切りのあと、 が入って最初のテンパイ。
            ツモ ドラ
が完全無筋であれば、 切りでジャンケンリーチと行ったかもしれない。
だが今は と が通っているうえ、 − にはまるで手ごたえのない状況。
ひとまず を打ってフリテンの − に受ける。むろんヤミである。
同巡、鈴木の追っかけリーチ。ここで1勝をあげることの価値を知りつくしている鈴木は、守ることなくどんどん攻めてくる。
            ドラ
4枚生きの − は、かなり強い。
さらに同巡、須田は を引く。少考したのち、決意の 切りリーチとでた。
            ドラ
数多の選択を重ね、意思をもってようやく辿りついたこの − は、なんとカラテン。
付け加えるなら − もカラテンであった。これはちょっと悲しすぎる。
結果は阿賀が高目をツモって1300−2600。これにて須田は6900点持ちのダンラスとあいなった。
須田にアガリ目があったとするなら、やはり ツモ時の ・ 落としか。これだと4000オールになっている。
あるいは一発目にドラ切り。これでも2600オールになる手順があったが、どちらもあまり現実的ではないと思う。
この後は、阿賀と五十嵐が互いに親を蹴りあう展開。 ここまで誰も“良い親番”を引けていないあたり、さすがに試合巧者が揃っている感じである。
南2局。9巡目、親の鈴木が先行リーチ。
            ドラ
いつツモってもおかしくない感じだ。これに須田が立ち向かっていったのは10巡目。
            ドラ
三色ならずの出来損ないリーチにみえるが、鈴木の河に 、須田の河には早々に があり、悪くない待ちとなっている。
これに阿賀が一発で飛び込み5200。通りそうにみえるし仕方ないのだが、鈴木の次ツモは であった。
須田はできれば鈴木のほうからアガりたかったか。 ポイント的に阿賀のトップが望ましいという状況もあり、アガってなお気持ち悪いムードが続く。
南3局は、その須田が親番である。先制リーチはまたしても鈴木。
            ツモ ドラ
ここからノータイムで を曲げてゆく。
同巡、須田の手牌。
            ドラ
− を引けば一発放銃か。というか、これはだいたい放銃のような気がする。
しかし、ここは鬼の 引きでいったん助かった。通りそうにみえる を打たず、強気に 切り。
こうなると須田がかなり強いのだが、次巡まさかのラス をつかまされてしまった。
さらに無筋の を払って気合をみせるが、もう も もヤマにはない。あとは放銃するか、 を切ってアガれないかだ。
だが、この時点で7枚生きていた − は、なんと1枚も須田に回ってこないまますべて場に放たれるのだった。
本人にとっては胃が痛い風景だろうが、これ実はかなり助かっている。
しかも阿賀が最後のツモでテンパイを果たし、ハイテイ前に鈴木から5200を討ち取るというおまけもついた。
須田にとっては悪くない並びができつつあるわけである。しかも、これで3着目の鈴木と7800差だ。
オーラス。点棒状況は
五十嵐 32000
阿賀 34000
鈴木 20900
須田 13100
五十嵐はとにかく加点しにゆくだけだが、鈴木に対しては降りることもあるだろう。
阿賀はできれば鈴木の着順を上げたくない。自分がトップ、須田が3着の並びが理想か。
鈴木はマンガンをツモれればラッキーだが、基本的には3着を守りたい。
須田はとにかく3着をめざすのみ。トップは阿賀に取ってもらったほうが好都合だろうが、 まだ意図的に選んでゆくほどの状況ではなさそう。
10巡目に五十嵐がリーチ。
            ドラ
同巡、須田がこの苦しい形。
            ツモ ドラ
マンガンで3着になれるため を押してもよさそうだが、 がフリテン。
現物の を切ると、次ツモが 。今度はスジの を打っていく。
すると次巡は を引いた。こじれそうな牌姿だったが、あっというまに条件クリアのテンパイである。
            ドラ
力強く を叩き曲げると、勢いあまって入り目の が倒れた。すると一発目、五十嵐のツモが である。
ハネ満を打てばラスまで落ちる五十嵐、これには肝を冷やしたか。めずらしく強目に叩きつけたが、これはご愛嬌の大通し。
2対3で須田に分があるめくり合いだったが、まあ大差なしか。五十嵐が安目をツモって裏1枚。
1本場は阿賀と須田の2軒リーチとなるも、流局。
並びは五十嵐・阿賀・鈴木・須田の順。五十嵐にとっては数字以上に大きなトップである。
13回戦終了時のトータルポイント
鈴木 +149.4
五十嵐 +88.0
阿賀 −67.9
須田 −171.5 供託 +2.0
14回戦
この回でラスだと、須田はそろそろ厳しくなってくる。
その場合は、残り6戦で最低5勝が必要か。これはあまり現実的な数字ではない。
3者から標的にされつつある鈴木も苦しい。 そこまで抜けているわけでもないのだが、やはり皆どこか鈴木を意識した打ち方になっている。
首位戦線に踏みとどまった五十嵐も、ここが剣ヶ峰。比較的自由に闘えるのは、やはり阿賀か。
起家の鈴木が7巡目にリーチ。これが終盤までもつれたところで、須田がドラの を叩っ切って追いかけた。
         カン   ドラ 
残りツモ1回で、この形からである。 機があれば鈴木を叩きたいという気持ちはわかるが、これはちょっと見合わない気がしなくもない。
須田の指先、やや熱いか。結果は2人テンパイで流局。
1本場は、ピンフのみで阿賀が軽く流す。続く東2局、その阿賀が12巡目にこのテンパイ。
            ドラ
ファン牌がまったく見えていない不気味な場につき、ダマを選択。2巡後に須田からリーチが入るも追いかけず、慎重に押してゆく。
直線的な攻めを得意としながら、時折このようなイナシを入れてくるのが阿賀のおもしろいところ。
あがれそうな雰囲気もあったが、ここは早くして場の異常さに気づいた鈴木と五十嵐の好判断。
2人ががりで全種類のファン牌を握り潰し、そのまま流局となった。
東3局。親番をむかえた阿賀が3本まで積むも、ここではほとんど加点できず。
ようやく入った親満のテンパイも、須田にあっさりとかわされた。
東4局は、五十嵐に大物手が舞い込んだ。
            ドラ
8巡目でこう。すべてのトイツがまだ1枚以上生きている。西家なので、仕掛けてもハネ満確定である。
注目の牌姿だったが、まったく動かぬまま鈴木に3900放銃となった。
            ロン ドラ
高目三色というのもあるが、それよりも − の薄さをみてのダマテンである。
バタバタと鳴きが入った末に五十嵐がつかまされる展開となっており、リーチならもつれた可能性も高い。
その場合は、五十嵐の大物手が成就していたかもしれない。これは点数以上に大きなアガリとなった。
南入。依然として細かいアガリが続く。
この日ずっと続いていた“スモールマージャン”的展開を打ち破ったのは、やはりというべきか豪腕・阿賀であった。
南3局、阿賀の親番。
            ドラ
7巡目に鈴木がこのリーチ。手応えもクソもない。この巡目で役無しのリャンメンを張ったら、リーチをかけねば麻雀にならぬ。
だが、これが思わぬダメージに繋がった。12巡目に をアンカンすると、すぐさま阿賀から追っかけが入る。
            ドラ 
ここでキーマンとなったのが、すでにベタオリしつつも安牌を切らしていた須田であった。
            ツモ ドラ 
完全安牌は1枚もなし。情報としては の4枚切れがあるものの、ドラが なので の安全度は低い。
ソーズの下もまったく切れていない。
筆者ならそれでも に手がかかる状況だが、須田は をアンカンして安全牌を掘り起こしにゆく。
ところがリンシャンから持ってきた牌は、安牌どころか阿賀の当たり牌である 。いよいよ大ピンチとなった。
長考の末、阿賀の現物である を切った。こうなったら並びがどうとか言っている場合ではない。
フラットな麻雀であれば、ここは親の現物を追ってゆくしかないだろう。
そして同巡、鈴木が を力なく河に置いた。
            ロン ドラ  裏  
須田のカンでさらにドラが乗り、メンピンドラ4の18000点となった。
この日を通じて初のハネ満であり、鈴木にとっては本日初の高打点放銃でもある。
ここまで大事に大事に致命傷を避け続け、コンスタントに良いアガリを積み重ねてきた鈴木。
尋常の麻雀であれば、この優位は覆されようがなかったはずである。だがこれは優勝しか意味のない決定戦。
隙のないところに隙をつくるため、3者が結託することもある。五十嵐が降り、阿賀が手をつくり、須田が種をまいた。
点数以上に大きな大きな18000点である。鈴木優位のムードが一気に動く。
風が、戦ぎ始めた。
1本場は、五十嵐が力強くドラをツモって2100・4100。オーラスも阿賀が5メンチャンのヤミテンをものにし、あっさりと終了。
並びは阿賀・須田・五十嵐・鈴木の順。下位走者のワンツーフィニッシュを皮切りに、ここから試合はますます盛り上
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